メジロ家の落ちこぼれ   作:神咲胡桃

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感想欄で、ライス勝利の圧がすごいw


ふと思った。(唐突)理事長代理に雲ちゃん突っ込ませたら曇るんじゃないかと(にちゃぁ)


5最悪のシナリオ

 

――9月 セントライト記念

 

 

3着までのウマ娘に菊花賞の優先出走権が与えられるだけあって、出走するウマ娘たちの闘気は膨れ上がっていた。

 

そんな中スタートしたレース。序盤7番手に着いたウマ娘は、これからの展開を窺っていた。

 

「(よし。良い位置には着けた。後はどこで勝負を仕掛けるか。だけど……)」

 

何故かも分からない嫌な予感が、思考の影にちらつく。

 

「(なによ……何なのよこれ。まるで、霧の中にいるような、気持ち悪い感じ……)」

 

その不快感の原因が分からないまま、そのウマ娘は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「(よしっ! 最終コーナーでスパートをかける! このままいけば勝てる!)」

 

中盤、三番手に着いているウマ娘はこれからの展開を頭の中で描く。

 

もちろん、このまま上手くいくとは思っていないが、彼女の強みはその末脚だ。

 

終盤まで先頭にくらいついていれば、そのまま追い抜かすことが出来る。

 

「(最悪3番手に入れば、優先出走権は貰える! だけど、どうせなら勝ちたいよねぇ!)」

 

徐々にスピードを上げ、同時に闘争心を膨らませる。しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「(後は逃げ切るだけ。でも、油断はしない)」

 

終盤、一番手を走るウマ娘は、現状もっとも勝利に近く、しかし油断していなかった。

 

トレーナーと共に作戦を練りに練って望んでいるのだ。負ける要素はないと思いつつ、一抹の不安が拭えないでいた。

 

「(あのウマ娘の姿が見えないのが不気味ですね)」

 

作戦を考える際、トレーナーから一番の警戒要素だと言われたウマ娘。そのウマ娘がどこにいるのかを、彼女は確認できないでいた。

 

「(クラシックからの戦績は振るわないとはいえ、それでもURA賞を受賞したウマ娘。気にしすぎる必要はありませんが……気にしすぎも良くないですね)」

 

確認できたのは、最後方にいたということだけ。もし追い込みだとすれば、そろそろ上がってくるはず。

 

そう考えて、最後のスパートに入る。

 

だが次の瞬間

 

「――『蜃気楼』が由縁、教えてあげます」

「……は?」

 

彼女の隣を、白い影が通り過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「俺はいったいどうしたらいいんだ!」

「……飲み過ぎよ」

「沖野さん、お酒は静かに飲みましょうよ」

 

顔を赤くした沖野さんが音を立ててグラスを置くと、ガタンッとこじゃれたお酒の席には耳障りな音が響く。

 

私はおハナさんと沖野さんに誘われて、いつものバーに来ていた。

 

最初は静かに飲んでいたのだが、次第に沖野さんがうるさくなってきた。

 

「俺は、アイツに前を向いてほしいんだよ。だからトレーニングのプランも考えた。レースのプランもだ。でもよぉ……」

「普通ね」

「そうなんだよ! 普通にこなしてるだけなんだ」

 

春の天皇賞後、沖野さんの方でもいろいろ大変だったらしい。

 

まず、トウカイテイオーの足に怪我が見つかった。軽いものだったとはいえ、それなりにてんやわんやだったのだとか。

 

次にメジロマックイーンも怪我を負った。こっちは全治六か月。療養のために、学園を離れて実家に戻っているらしい。

 

そして今、沖野さんの頭痛の種がトウカイテイオー。どうやら、以前のレースに対する情熱が小さくなっているようなのだ。

 

まあ、立て続けに夢が破れればそうなるのも仕方なしだ。こればっかりは、本人がどうにかするしかない。

 

「どうしたらいいんだ……」

「呆れた」

「あとお金もないし……」

「沖野さんのところには、あのスペシャルウィークがいますもんねぇ」

 

トレセン学園の手伝いをしていた頃、食堂のヘルプに入ったこともあるんだけど、確かにあれはヤバかった。ウマ娘は人間よりも食べるけど、彼女はそれ以上だった。

 

あの子にご褒美と称してご飯に連れて行くのは絶対にダメだ。金欠になるのが目に見える。

 

沖野さんに同情していると、横目におハナさんが息を吸い込んでいるのが見えた。

 

思わず手で耳を塞ぐ。

 

「――――――ッ! ――――――ッ」

「――――。―――――?」

「―――――――。――――――ッ!」

 

そろそろ終わっただろうか? 恐る恐る手を離すと、おハナさんの喝は終わったらしい。沖野さんが背中をさすっているのが見えた。確かに痛いよね、おハナさんの張り手。

 

「まったく……それで、雲莉の方は大丈夫なの?」

「あー。そういえば、菊花賞出るんだっけか?」

「……ええ、まあ」

「どうしたのよ。歯切れ悪いわね」

「いや、出るには出るんですよ」

「なんだぁ? あれか。担当が勝てるか心配なのか? トレーナーが信じてやらなきゃ、誰が信じてやるんだ?」

「あいや、勝つのは知ってるんです」

 

おそらく今のままなら、彼女の勝ちは堅い。

 

「知ってるとは、大きく出たなぁ!」

「あなたが信頼しているのは分かるけど、なら何をそんなに顔を顰めているのよ」

「あ、顔出てましたか」

 

今考えているのは、あくまで予想の域を出ないもの。だけど、どうにも不安が拭えないので、思い切って相談することにした。

 

「実は、ミホノブルボンってウマ娘いるじゃないですか」

「ああ。あの無敗の三冠候補の」

「となれば、菊花賞でぶつかるわけか」

「そっちじゃなくてですね。心配なのは、その後なんです」

「後……?」

「……まさか」

 

どうやら、おハナさんは私の懸念に気付いたらしい。

 

はっきり言って、想像の斜め以上に世間が騒いでいた。それだけなのだが……。

 

「もしミホノブルボンが三冠を達成できなかった時の、世間の反応か」

「……それは確かにな」

「私の考えすぎで済んでほしいんですがね」

 

最悪のパターンを想像して、私たちの間に沈黙が流れる。

 

私たちトレーナーから見たレースと、特に詳しいことを知らない世間から見たレースが一致することはまずない。

 

だからこそ、想像がつかない。何か起こるかもしれないし、何も起こらないかもしれない。結局は、やってみなければ分からないのだろう。

 

「ま、やるだけやってがんばりなさい。それでもし何かあったら、遠慮なく私を頼っていいわ」

 

この空気を断ち切ったおハナさんは、立ち上がってカバンを持つ。

 

「アンタも。トウカイテイオーのこと、ちゃんと支えてやりなさい。それはトレーナーであるアンタの仕事でもあるんだから」

「ああ……サンキュー」

 

おハナさんが店を出る。それを見送った沖野さんが、おもむろに財布を取り出した。

 

それを見た私も、財布を取り出す。

 

「……フッ。マス「お会計お願いしまーす」え?」

 

財布の中身を見て笑みを浮かべた沖野さんが何か言う前に、レジに向かう。

 

当然払うのは、今回の飲みの代金だ。私と沖野さんとおハナさんの3人分。

 

「ありがとうございました」

「行きますよ。沖野さん」

「お、おい雲莉ちゃん。さすがに後輩に払わせるのは……」

「じゃああるんですか、お金」

「うっ……」

 

さっきお金ないって言ってたじゃないですか。

 

これでもお世話になりましたし、尊敬だって一応してるんです。お願いしますから、グラス洗いを申し出るところを見させないで下さいよ。

 

「何時か返してくれたら、それで良いですよ」

「す、すまん……」

 

項垂れる沖野さんを尻目に、すっかり暗くなった空を見上げる。

 

光溢れる都会では星々の眩きも見えず、訳も分からず不安がのしかかってきた。

 

柄にもないことはするもんじゃないなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――11月 菊花賞

 

 

……ああ、くそっ

 




次は菊花賞。さすがにレース描写は書くつもりです。


極限の集中状態になるとオーラが出て来るウマ娘は、準バトルアニメでもいいと思います。

カフェ引けたらタキオンとドロッドロのやつ書きます。てか書きたい
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