いつか、きっとどこかで 作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)
私は千冬姉さんに連れられてアリーナの方へと向かっていた。どうやら私がここにいるために必要な事であるらしいけど、多分入学試験の様な感じのものだと思う。それ以上のことは千冬姉さんからは聞かされていない。
(そういえば蒼龍の状態ってどんな感じになってるんだろ……榛名、聞こえる?)
〔はい、聞こえていますよ。現在の蒼龍の機体状況ですね?〕
(うん、そう。これから動かすことになるんだけど、どう?)
とりあえず、蒼龍の状態を確認だけはしておこう。悠助もよく言ってたっけ、機体の状態は常に把握しておけって。いざという時にダメだったら何の意味もないから普段から備えておけって。……まぁ、点検のほとんどは榛名に任せっきりなんだけどね。悠助みたいに詳しいわけじゃないし、そこまで激しい戦闘はできないから。それに、必要な時以外ほとんど動かしてなかったりしたしね。
それはともかく、今は蒼龍の状態だ。覚えている限りでは、確かあの時自爆に巻き込まれてしまったから、もしかすると蒼龍も大きなダメージを受けてしまっているかもしれない。そんな不安があった。
〔——機体状況の確認ができました。本体装甲並びに各部フレーム、電装系、重力子エンジンに異常はありません。あの特攻兵器が自爆したのと同じタイミングでこちらに飛ばされたからでしょうか?〕
(いや、榛名も自信持って言えないの……?)
〔流石にこればかりは……本来であれば蒼龍級の薄い特殊複合装甲では耐えられるか怪しかったのですから……榛名にも理解できません〕
蒼龍はとりあえずいつも通りに使えるようだ。それを聞いて少しだけだホッとした。同時にどうして無傷にも近い状態にあるのか疑問に思ってしまった。榛名も詳しいことはわからないって言っているし、ましてや私になんかわかるわけがない。今は蒼龍も無事ということがわかればそれで十分だった。
〔武装面も全武装が使用可能な他、いざという時には
(完全に無事って感じなんだね)
〔はい。ただ、武装類に回す粒子がまだ少し足りてないので、一部武装は使用できないかまたは制限がかかりますね〕
(具体的には?)
〔アームカノンは両腕で80発、ブレードライフルはライフルモードが使用不可のほか、ビームサーベルは短刀状態が基本となります〕
無事だったのはいいけど、武器は少しだけ制限があるようだ。蒼龍の射撃兵装って全部ビーム兵器だからね。それに消費する粒子が足りなかったら使えなくなるのは仕方のない事だ。それに……どうせ射撃は私下手だし。
(わかったよ。それ以外は特に無いんだね?)
〔もちろんです! ——と言いたいところですが……〕
(え? どうかしたの?)
〔……いえ、これは後ほど話します。ですが、これだけは忘れないでください〕
榛名は一拍、時間を置いてから言葉を紡いだ。
〔私は、榛名は一夏のために全力を尽くします。これまでも、これからも変わりません〕
それでは、と言って榛名は話を切り上げた。さっきは一体なにを言い淀んだんだろ……わかんないや。でも、榛名の事だからきっと悪い事じゃ無いことは確かだ。それだけは信じている。
「——また考え事か?」
千冬姉さんは私にそう話しかけてきた。多分、いろいろ考え込んでいるって思われてるんだと思う。さっきの部屋にいた時と同じく、榛名と話している時は無言になるしね。
「え、ええ、はい」
「まぁ、そうなるのも仕方ないか……私も突然別世界からの来訪者と言われて少々困惑しているからな」
あはは……確かにそうだね。私だって正直最初はそんな事全然考えてなかったわけだし、わかるわけなんてないよ。でも、そう言う千冬姉さんの声はどこか困惑がありつつも優しい声音だ。本当だったら怯えているところなのに、むしろ安心を感じるなんて……違和感がありすぎだよ。
「だが、同時にお前から感じた妙な既視感の理由が知れた訳だがな」
「既視感、ですか?」
「ああ、そうだ。最初に見た時、何故か私の弟と似ていると感じた。それが、別の世界にいた弟だと知ったら納得するほかない」
そっか、こっちでは私は男になっているんだったね……だとすると、こっちの世界にいる一夏君はきっと幸せな生活を送っているんだろうね。ちょっと羨ましいかな……。
「それと聞いておきたいことがあったんだ」
「なんです?」
「お前が名乗った『紅城』という性についてだ。流石に咄嗟に思いついたものではないだろう?」
「……どうしてそう思ったんですか?」
「お前がその名を口にした時、どこか物寂しげな雰囲気がしたからな」
……気づかれちゃってたみたいだ。私は思わずため息をついてしまった。何に対してのため息なのかわかんないけど。
「……私の大切な人の名字なんです。突然離れ離れになっちゃいましたけど、いつか、きっとどこかで会えるかなって……」
「……すまなかった。軽率な質問だった」
「いえ、気にしないでください……きっと会えると信じてますから」
私がそう言うと、千冬姉さんはこちらを向いてきた。
「強いんだな……お前は」
そう言う千冬姉さんの表情は、あまり変わってはいないけどどこか物悲しそうな感じがした。そんな風に思ってもらえるとは私も思っていなかったから思わず面食らってしまう。
「……なんだその顔は」
「なんというか……そういう表情もするんなだなぁって思って……」
「……私をなんだと思っている? 私だって一人の人間だぞ。感じる心は持ち合わせているつもりだ」
心外だと言わんばかりに呆れたような表情をする千冬姉さん。私の知っている千冬姉さんとは違って表情が豊かだ。
「……まぁ、いい。そろそろアリーナに着くぞ」
「……なんというか、違う世界に来たはずなのに学園の作りは同じだから違和感が」
話をしているうちにアリーナの近くまで来ていたみたい。ただ、本当道が私の知っている道と同じで、まるで元の世界にいたのと同じような気分になる。
「私としては通常の制服でここにいるお前が一番違和感の塊なのだがな」
否定できないから困る。未だに私は中学の頃に着ていたブレザー制服を着ているわけだし。……あんまり思い出したくないことばかりだから、いい思い出なんてないんだけどね。
「そ、それは……」
「冗談だ。——時間はあまりない。早いところ稼働試験を行いたい。やれるな?」
その言葉に私は頷く。ここまで来てできませんなんて言えないしね。
「よし、ならピットに向かうとしよう。道は……わかっているわけか」
「あはは……おっしゃる通りです」
私達は少し急ぎ足になりながらアリーナのピットへと向かったのだった。
◇
ピットに着いた私はその見慣れた景色にどこか安心感を覚えていた。整備用の機材にリニアカタパルト、そしてこちらを見下ろす形にある管制室……何から何までが元の世界と酷似している。知らない景色より見知った景色の方が心が落ち着くのは当たり前だ。
『聞こえているか?』
そんな風に考えに耽っていると、千冬姉さんから通信が来る。既に管制室の方に行っているようで、窓の方からこちらを見ている。ただ、返答しようにもどうやって返答したらいいのかわからない。一番は蒼龍から通信で返答するのがいいはずなんだけど、できるのかな……?
〔問題なく行えますよ。開放回線も個人回線も無事に接続が完了していますので〕
(あ、そうなんだね)
悩んでいたらいつのまにか榛名が準備をしてくれていたようだ。やっぱ頼りになるなぁ。けど……考えている事を読まれるのはなんというか、すごい事なんだろうけどちょっと変な気分。悪い気はしないんだけど、迂闊な事を考える事できないよね。
それはともかくとして、通信の準備が整ったという事で、私は蒼龍の後頭部アンテナ部のみを部分展開した。通信をするにはこの部分を展開するのが一番だからね。
「はい、問題なく聞こえてます」
『そうか。これからお前にやってもらうことはさっきも話した通り、お前の持つ機体の性能確認だ。模擬戦形式で行い、相手は山田先生が務めてくれる。ここまで質問はあるか?』
「えっと……特には。こっちのタイミングで動いて大丈夫です、よね?」
『ああ。そこはお前に一任しよう。ただし、まず無いとは思うが、何かしらの不穏な動きを見せた場合は警告なく撃墜及び捕縛する可能性がある事は頭に入れておけ』
そんな目には遭いたくないので心配しなくて大丈夫です、と心の中で呟いた。痛い目に遭うのは誰だって嫌でしょ。多分、悠助だったら無理やり突破してどうにかしちゃいそうだけど、私にはそんな度胸は無い。それに、例えここを抜け出そうとしても行くアテなんて無いからね。余程のことがない限りは素直に従った方が良いと思う。
「肝に命じておきます」
『よろしい。ならば後はお前に任せよう。山田先生は既に出ているようだ。あまり待たせるなよ?』
「はい!」
通信は切れた。後は私に任せる、かぁ……なんだか放任されているような気もするようなしないような。でも、いいか。私はとりあえず自分にできることをやるだけ。自分の首に下げられているペンダントを握りしめてそう思った。
(榛名、そっちは大丈夫?)
〔はい! こちらの準備も整いました! いつでもいけます!〕
蒼龍の方もいつでも大丈夫と榛名からお墨付きを貰えた。それならもう問題ないね。
「それじゃ……行こっか、蒼龍」
その言葉と共に私の全身を無数の六角形の非発光体が包んでいく。そして非発光体が解除されていくと同時に蒼と白のカラーリングが目立つ鋭角的な装甲が展開されていく。最後に一層クリアになった視界とそこに映し出された[ARMOR COMPLETED]の表示。悠助から私に託された希望の一つ、RATX4-01 蒼龍は今、違う世界でも翼を広げてくれた。
「蒼龍、行きます!」
ウイングブースターを点火、爆発的な加速力にその身を任せてアリーナへと私は飛び出した。
◇
「お待ちしていましたよ、えっと……織斑さん?」
アリーナに出た時、山田先生はそう言って私を出迎えてくれた。緑色の機体色とシールドバインダーが目立つ機体、ラファール・リヴァイヴを展開し、既にアサルトライフルを構えていた。あと、私の事はまだ織斑呼びである上に何やらあまり自信のない感じで呼んでる。
「ええっと、今後は紅城と呼んでください。なんか紛らわしい事になりそうなので……」
「え、あっ、はい。それにしても本当に織——じゃなかった、紅城さんなんですよね……? 全身装甲の機体なんてあまり見たことがないので……」
山田先生が私の事を自信なく呼んだのは蒼龍の状態にあると思う。蒼龍や悠助の黒龍は全身装甲の機体であり、素肌が一ミリも出たりしていない。私はそっちの方が見慣れているけど、普通はシールドバリアと絶対防御があるから装甲が腕とか脚にしか出てないのが多いって悠助言ってたっけ。それに、蒼龍も今は全身装甲モードでいるけど部分装甲モードに切り替えることができるしね。とりあえず、一旦フルフェイスバイザーだけは解除しておこう。
「はい、もちろん私ですよ」
「本当だ……」
「あのー、山田先生? そろそろ始めた方が……」
「はっ、はい! あ、そ、そうでした! で、ではこれより模擬戦を始めます!」
……なんだろ、山田先生が山田先生していてすごく安心するんだけど。この慌てっぷりは間違いなく山田先生のそれだ。でも、慌てながらも私から距離を取って戦闘態勢を整えている。私も同じように距離を取って武器を装備する。視界の両端には武器の名前が書かれた武器スロットがある。視線でそのスロットを動かし、慣れ親しんだ武器を取り出す。長大で重厚な剣と小型の銃が一体化したブレードライフル、それと同じ大きさで腕を覆うように装備されるトンファーブレード。二種類の大剣を展開し、腕の武装コネクタに接続した。蒼龍のような細身の機体には少し不釣り合いにも思えるほど大きな武器だけど、不思議と馴染んでいる。
「では、いきます!!」
先制攻撃は山田先生から。アサルトライフルの弾が放たれ、私を狙って突っ込んでくる。それを見た私はとにかく回避に専念するしかない。というか、山田先生に近づくことができなかったらアームカノンもライフルモードも使用制限されてる私じゃ勝ち目がない。
「そう簡単に当たるわけにはいきませんよ!」
距離を取られて射撃が続くが、私だってやられっぱなしでいるわけにはいかない。ウイングブースターの莫大な推力に任せて一気に距離を詰めようとする。そのまま切り結んでも離脱してもいい。蒼龍は速度はあってもパワーは少し低いから、力任せにされてしまったら押されてしまう。
「やはり操縦は結構なれているようですね!」
「私だって専用機持ちですから!」
回避しながら接近を試みる私に向かって山田先生はもう一つサブマシンガンを取り出して攻撃してきた。単純に火力が上がっただけじゃなくて、散らばる弾も増えるから、ちょっと回避が大袈裟になってしまうし、その分スピードは落ちてしまう。意地でも接近しなきゃいけないのに……! このままじゃ、ジリ貧になってしまう……やっぱり使うならここしかない!
「てやぁぁぁぁぁっ!!」
私は左腕を前に突き出し、心の中でトリガーを引いた。その瞬間、袖口から小型のビーム弾が放たれる。数少ない蒼龍の射撃兵装であるアームカノンだ。弾数はあまり余裕がないけど、あの山田先生の攻撃を牽制するにはこれしかない!
「び、ビーム兵器……!?」
放った十発は山田先生にはほとんど当たらなかった。回避されたり防御されたり、ダメージとしては効果が薄いと思う。でも、私が思った以上に山田先生は動揺しているような感じだ。おかげで攻撃の手は少しだけ緩んだ。
「今……っ!!」
ウイングブースターを最大推力で点火する。風を切る音とあまりの衝撃と速さで体が軋む音が聞こえてくるけど、あんまり気にしてられない。それに、私が戦える距離まで近づけた!
「せやぁぁぁぁぁっ!!」
「そう簡単には……ッ!!」
一気に近づいてブレードライフルを振るう。けど、その攻撃はシールドバインダーによって塞がれてしまう。山田先生自身にはまだダメージというダメージはないが、切りつけたシールドは三分の一が切り裂かれていた。相変わらずすごい切れ味だ。
「嘘ッ!? が、頑丈なリヴァイヴのシールドがこんなにも簡単に……!?」
「まだまだぁっ!!」
私はその場で一回転する様に身体を捻る。ウイングブースターに備え付けられている、姿勢制御用の安定翼を兼ねた武器、ウイングブレードが回避運動すら攻撃に変えてくれる。そのまま薙ぎ払うようにトンファーブレードを振るう。今度は何か硬いものを引き裂く感覚があった。きっとシールドバリアを切り裂いたんだと思う。蒼龍って全身刃物みたいなのが特徴だからね。
「きゃあっ!!」
「このまま一気に——!!」
「けど、こっちもまだ……!!」
衝撃で吹き飛ばされる山田先生だけど、すぐに体勢を立て直して再び銃口をこちらに向けてくる。今度両手に握られているのはグレネードランチャー。しかも、もうすでに放たれていた。迫りくるグレネードはもうかなりのところまで来ていた。まずい、このままじゃ当たっちゃう……!
「やってみるしかない……!」
私は直ぐに背部に備えられているもう一つの特殊な武器を展開する。飛び出したそれらは私の周りを飛ぶと同時に、輪形に配置され、エネルギーシールドを張った。グレネードは私に当たることなく爆ぜる。ブレードビットだ。まぁ、私はあんまりうまく操作できないから榛名にいつも任せてるけどね……でも今なら少しうまく使える気がする。バリアを張るという感じでしか使ったことないけど。
「こ、今度はビット兵器!? まだイギリスの第3世代機ですら試験途中だというのに……!?」
再び驚く山田先生。無理もないかぁ。私だって同じようにビットを使えるのはセシリアくらいしか知らないし、物珍しいものだとは思う。……まぁ、何故か悠助はセシリアのビット全部投げナイフとか頭部近接防御機関砲で落としてたけど。戦闘に関して悠助は本当他とは別格の強さだったよ。
何はともあれ、再びチャンスが巡ってきた。ブレードビットを周囲に展開したまま、私は瞬時加速を使用、一気に距離を詰める。
「てやぁぁぁぁぁっ!!」
ブレードライフルを振るう勢いでトンファーブレードも振り抜く。二度、切り裂く手ごたえがあった。残されたシールドバインダーは真っ二つに切り裂かれており、その裏にはパイルバンカーが破壊された姿を覗かせていた。……待って、確かまだ中途半端に切り裂いてたシールドバインダーがあったはず——
「まだ一つ、手札は残ってますよ——ッ!!」
「!?」
残っていたシールドバインダーに隠されていたパイルバンカー。その穂先は完全に私を捉えている。またもや避けられない状況に追い込まれた私。でも、やらなきゃこっちがやられる……!
「させません——ッ!!」
体勢を一気に低くしてギリギリのところで穂先をかわした。装甲の表面を少し掠めたかもしれないけど、大きい一撃が入らなかったからまだ大丈夫! そのままの勢いで山田先生に向かって体当たりをする。いくらパワーが低いって言われたって蒼龍も黒龍と同じような機体だ。それに……心のどこかで負けたくないって思ったんだ。
「なんて無茶なッ!?」
「無茶でもなんでもやりますよ!」
昔の泣いてばかりいた自分に、一人じゃほとんど何にもできない自分に、臆病で心の弱い自分にも勝ちたい。不思議とどこからかそう思えるようになっていた。
私はトンファーブレードを畳み、ブレードライフルを正面に構える。左手は右手に添える。……きっと、悠助はこの世界にはいない。もう会えるかどうかもわからない。でも、それでも私の想いが届いていて欲しい。いつかきっと会えるその日のために。だから私は——
「全力で、行きます——ッ!!」
ウイングブースターを最大推力に引き上げたと同時に瞬時加速を行う。強烈な加速が襲ってくるがこの際気にしない。ブレードライフルの切っ先は山田先生を確実に捉えた。もうあとはただ突き進むのみだ。
「む、無理!? 避けられな——」
直後、重々しい斬撃音が響いた。同時にやってくる静寂。何秒、何分か、いや何十分と経ったのかわからない。きっと長くはないはずなんだけど、私にはそれがひどく長く感じた。
『そこまでだ。勝者——紅城一夏』
千冬姉さんの声に現実へと一気に戻される。そっか……勝ったんだ、勝てたんだ私。いつも悠助が一緒に戦ってくれたからってのもあるけど、1人で勝てたんだ私……それがちょっと嬉しかった。
『これにて模擬戦を終了する。各員はピットに戻るように』
私はブレードライフルを畳み、一度地上に降りた。同時に張り詰めていた緊張感が解れたのか、思わずふらついてしまう。
「紅城さん、お疲れ様でした。最後のはちょっと怖かったですが、ここまで動かせるなんて、とても優秀だったんですね」
どこか満足そうな顔でそういってくる山田先生。多分そこに悪気とかそういうのは無いと思うんだけど……なんだろうか、私が少しそういうところに敏感になってしまっているからなのか、暗にできるとは思ってなかったと言われているような気がしてしまった。いや、きっとそんなことはないと思うよ。でも……今までそう言われ続けていたから……自分に対する自信なんてほとんどない。だからこそ、山田先生の言葉が少し心に刺さった。
「紅城さん……?」
「……いえ、何でもないです。先に戻っていますね」
「あ、ちょっと——」
この時ばかりは全身装甲だった事を嬉しく思った。きっと今の私は少し酷い顔をしてると思うから……フルフェイスバイザーの下が見られなくてよかった。私はそのままピットに向かって跳躍、千冬姉さんの元へと戻った。
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