いつか、きっとどこかで   作:ディニクティス提督(旧紅椿の芽)

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第5話「はい、榛名はここにおります」

「ただいま戻りました」

「ああ、模擬戦ご苦労だった」

 

ピットに戻ると千冬姉さんが出迎えてくれていた。ブースターの出力を調整し、静かに降り立つ。ピットの床に接した事を確認してから蒼龍の展開を解除した。蒼龍は他のISと違ってかなり人に近い形をしているけど、それでも少しは高さがある。解除とともにやってくるわずかな浮遊感。その直後にローファーの底が金属製の床に触れる音がした。解除されたら専用の蒼いラインの入った白いISスーツになっているかなと思ったけど、さっきまで着ていた制服だったよ。

 

「どうだった、山田君と模擬戦をした感想は?」

 

機体を解除するなり、千冬姉さんはそんな事を聞いてきた。こっちの山田先生と模擬戦をしたのは初めてだし、向こうでも山田先生とは模擬戦した事ないからなんとも言えないけど——

 

「——とても、強かったです……私じゃ勝つのは厳しいと思いました」

「ほう。そういう割には十分すぎるほどの動きをしていたと思うが? 実際お前は山田君に勝っているんだぞ」

 

山田先生に買ったのは確かに事実ではあるけど、それは蒼龍の力があったから。私自身にそんな力はない。蒼龍に乗ってなかったらきっと私は山田先生にボロ負けしていたと思う。私はいつも大事なところで失敗しちゃうし……それに、どうせ私には才能なんてないし。善戦してたなんて言われたところであんまり信じられないくらいだ。

 

「いえ……そんなことないですよ。勝てたのもきっと偶然でしょうから……」

「謙遜のしすぎは良くないぞ」

「……私はいつも助けられてばかりでしたから……私にできることなんてたかが知れてますよ……」

 

実際のところそうなんだよ……私はいつも悠助に助けられてばかりで、自分一人じゃ何にもできなかった。誰かを傷つけたくない、誰も傷ついて欲しくない……そうは思ってもそれを叶えるだけの力がない、そんな弱い私が嫌だった。悠助といる時はこんなことあんまり考えなかったのに、一人になった途端これだ。本当、嫌になっちゃうよね……。

 

「——ただいま戻りました、織斑先生」

 

そんな時、山田先生がピットに戻ってきた。纏っているラファールはシールドバインダーが破壊され、各所の装甲も焼けたり傷だらけになっている。……よくよく考えればこれ、私が全部やったことなんだよね。勝てたのは確かに嬉しかったけど、いざこういうのを見るのはなんとなく心が痛くなる。

 

「山田先生もご苦労だった。どうだ、紅城と戦ってみた感想は?」

「はい……機体性能の差もそうですが、それ以上に紅城さんのセンスも非常に高いと感じました。だって普通じゃないですよ!? 身の丈もある大剣を、それも二刀流であんなに自由自在に振れる人初めて見ました!」

「私も同意見だ。山田先生はこう見えて、かつて日本代表のあと一歩手前まで上り詰めた実力者。そんな彼女の射撃を潜り抜け、剰え勝利を収めるとは……大したものだ。それにだ、機体性能に振り回されるどころかそれを意のままに操作する技術の高さもある。代表候補生にも引けを取らない腕だ……お前が思っているより、評価は悪くないぞ?」

 

山田先生と千冬姉さんは私をベタ褒めしてくれる。そ、そんな風に言われたって……大剣の二刀流だって我流だし、動きだって悠助がバスターソードを使っている時のを見様見真似でしてるだけだし、それに蒼龍だから戦えただけだし……

 

(あ、あれ……?)

 

そう考えてたら急に目尻が熱くなってきて、頬を温かい何かが伝うのがわかった。なんで……なんで涙が……こんな褒めてもらって嬉しいはずなのに……

 

(——そっか……こんなに褒めてもらったからか……)

 

悠助にも束さんにもいろんな人から褒めてもらったことはあるけど、私は貶されてきたことの方が多かったから……それも、向こうの千冬姉さんからは特によく言われてたからね……だからなのかな……別人だけど、千冬姉さんから褒められたってのが嬉しく感じたのは……

 

「お、おい、どうした急に泣き出して!?」

「も、もしかして、紅城さんの事傷つけてしまったんじゃ——」

「ち、違うんです……! ただ、こんなに褒めてもらって、嬉しくてつい……!!」

 

私が泣き出してしまった事に対して慌てふためく二人。山田先生はイメージ通りだけど、千冬姉さんが慌てふためく事なんて想像できなかったから、それがなんだかどこかおかしくて、思わず笑みが溢れてしまった。でも、褒めて貰えることがこんなに嬉しいなんて……ずっと張り詰めていた気持ちも、ずっといじけていた気持ちも、いとも簡単に吹き飛ばしてくれた。……なんだか自分のことを認めてもらえた、それがとても嬉しくて仕方なかった。

 

「そ、そうなんですか? それならいいんですけど……」

「泣いて喜ぶほどとはな……」

「す、すみません……」

「いや、気にしなくて構わん。それよりも、お前の扱いをどうするべきかだな」

 

泣き止んだ私に千冬姉さんはそう告げてきた。そっか……ここは違う世界なんだもんね……私の事をどう扱う事になるのか、聞く前からドキドキしてくる。一番はここにいさせてもらうことだけど、それもどういう形になるのか……。

 

「最善の案としてはやはりIS学園に置いておくのがいいだろう。その機体、確か蒼龍とか言ったな? 明らかに技術水準が現代と比べても、どの世代にカテゴリすればいいのかわからん」

「見た目こそ、非固定浮遊部位を持たず全身装甲という事から第1世代機にも思えますが、機動力や運動性能、そして第3世代機の代名詞でもあるイメージ・インターフェースを利用した装備であるビットの搭載、なにより未だ実現化されていない小型ビーム兵器の搭載……すでに時代遅れとなった技術と各国が喉から手が出るほど欲しい最新技術が混ざり合っているという、ある種のキメラですね」

「迂闊に外部に出せば、下手すれば戦争の火種になりかねんな」

 

やはり、一番の問題は蒼龍だったみたいだ。確かにそうだよね。向こうにいた時だってオーバーテクノロジーの代物って悠助が言ってたくらいのものなわけだし、蒼龍を巡って争いが起きてもおかしくない。それに、蒼龍は悠助から託された大切な機体だし、なにより大事な仲間である榛名がいるから……そう簡単に外には出せない。

 

「ひとまず、お前にはここの生徒として通ってもらうが、同時に私の補佐を頼もうと思う」

「監視、みたいなものですか……?」

「そういうわけではない。だが、近くにいてもらえれば万が一の事態を避けられるだろうからな」

 

確かに千冬姉さんが近くにいたら誰もそう簡単に近づけそうにないからね。それに、また生徒としてここにいる事になるのかぁ……悪いことではないだろうし、何もなく外に放り出されるよりは全然いいよ。

 

「なるほど……あと、織斑先生の補佐とは……?」

「なに、ちょっと授業の準備を手伝ってもらう程度の事だ。資料の事前配布や実習での手本役を主にしてもらう。正直山田先生だけじゃ不安なところがな……」

「ちょ、ちょっと先輩!? さっきは私の事褒めてたのに、今さらっとディスりましたよね!?」

「そういう事だ。頼んだぞ、紅城」

「先輩聞いてます!?」

 

あ、そういう事ですか……それなら良かったような……って、どう考えても雑用じゃないですか。そう考えても、なんだか嫌な気はしない。ちょっと頼られているって感じはしたけどね。抗議してる山田先生のことは一旦スルーしておこう。なんかそのほうがいい気がする。

 

「わかりました。私としては何も口を出せない立場なので、文句はないです」

「それならいい。山田先生もいいな?」

「……もう決定事項ですよねこれ。私としても非常に助かりますのでいいですが、紅城さんは本当にいいんですか?」

「私は大丈夫です。まだこれくらいならなんともないですから」

 

雑用、というよりはいいように使われたりしてた頃と比べたらこの程度なんともないし、理不尽な事もないからきっと問題ないと思う。悠助に出会う前の時と比べたら……うん、全然頑張れるよ。

 

「紅城の扱いは学園長に話してから正式に決めるとしよう。それまでは仮という扱いだ」

「あはは……いい結果になるといいんですけどね」

「となると、残るはやはりその機体になりますね……」

 

山田先生は私の胸元に改めて視線を合わせてきた。そこにあるのは蒼龍の待機形態。まぁ、これが一番の難題だよね……正直、渡せと言われても絶対に渡すつもりはない。これだけは絶対に離したくない。離したら最後、榛名とも会えなくなるし、悠助との繋がりすら消えてしまいそうだから……。

 

「……一応はデータは取れたがな。並の第3世代機を遥かに凌駕する性能だ。使うなとは言わないが、使用は最小限に留めて欲しいとは思う」

 

蒼龍のオーバースペックっぷりには慣れてきたつもりだけど、何も知らない人からしたらとんでもない超高性能機って感じだからね。悠助は「シールドバリアなんて簡単に叩き割れる」って言いながらバスターソード振ってたし、同じように大剣を有している蒼龍でも同じような事ができてしまうかもしれない。というか、模擬戦でシールドバリアを切り裂く感覚あったし。最小限の使用に留めるという判断は正しいかなぁと思う。

 

〔——一夏、聞こえますか?〕

 

そんな時、しばらく沈黙を続けていた榛名が話しかけてきた。一体何があったんだろう。いつになく声は落ち着いているよ。

 

(うん、聞こえてる。どうかしたの?)

〔はい。蒼龍に関しまして、お伝えしなければならない事があります。一度具現化してからお伝えしますので、ご了承ください〕

 

榛名から告げられた言葉に私は驚いてしまった。いや、だって具現化するって、榛名がここに姿を現すってわけで、つまり千冬姉さんと山田先生にも姿を見せるって事になるし、コア人格という存在を外に出すって事になるよね!? 大丈夫なのそれ!? いろいろあってバレたら研究所送り間違いないって!!

 

「紅城、どうかしたか?」

「いえ……それよりもこれから起きる事については他言無用でお願いできますか?」

「一体何が起きるんです?」

 

山田先生の疑問はすぐに解決する事だろう。私の胸元にあるペンダントから粒子が溢れ出し、近くに人型のシルエットを作っていく。その形がさらにぼんやりし、楕円系の球体になってさらに輝きを増した瞬間、粒子が弾けた。そして、粒子が弾けた中心にいたのは——

 

「——榛名」

「はい、榛名はここにおります」

 

私と似た容姿をし、改造したような巫女服と赤いミニスカートが特徴的な蒼龍のコア人格、榛名だった。登場の仕方が今回は派手だ。いつもならなんの気配もなく姿を現していると言うのに。

 

「——って、どこから出てきた貴様!? 一体何者だ!?」

「ま、まままさか幽霊!? いや、というよりいつからそこに!?」

「……あのー、実は榛名は蒼龍のコア人格なんですよ。具現化とかもよくしますし」

「……多分説明しても、パニックになっているので聞いてませんよ、きっと」

 

まぁ、そんな気はしてたけどね、と榛名に返す。突然姿を現すからびっくりするときはするよね。

とりあえずは、千冬姉さんと山田先生には一度その辺を詳しく説明しておこうと思ったのだった。

 

「えーっと、お二人とも落ち着いてください。こちらは榛名、蒼龍のコア人格です。気付かないのも仕方ないですよ、具現化と言って何もないところから肉体を持って突然現れますから」

「人じゃないですけど、人を幽霊とか妖怪みたいに言うのはどうなんですか一夏!?」

 

え? でも、実際出てくる時はそんな感じでしょ? そう思ったのはきっと私だけじゃないと思う。いつの間にか出てきていたと思ったら、消える時はフェードアウトして消えていくんだから。

 

「……まさか、本当にコア人格などというものが存在しているとは」

「機体の操縦や武器の使用から日常生活でもサポートしてくれる大切な存在です」

「その代わり、私達コア人格がある限り、単一仕様能力の発現はないですけどね」

 

単一仕様能力が発現するのはコア人格が自らの存在を消した瞬間。そう、前に別のコア人格(CN305 アイオワ)から聞いてる。確かに単一仕様能力なんてものは誰だって喉から手が出るほど欲しいものだろうし、圧倒的な力を持っている事だって知ってる。だから、ほとんどの人は単一仕様能力の方を大事にするんだろうけど……私には榛名が必要だからね。やっぱり一緒に頑張ってくれる仲間が一番だよ。それに、単一仕様能力が無くたって榛名が一緒なら十分。

 

「コア人格が消失すれば単一仕様能力が発現するのか……なんとも辛い選択になるな」

「きっとそうだと思います……それと、先に言っていた事ですが」

「わかっている。こんな事、迂闊に口外などできん」

 

……とりあえずは榛名について秘密にしておいてもらえることにはなりそう。私は思わず安心のため息をついてしまった。でも、榛名が研究所送りにとかにならずに済んでよかった。

 

「——この場に混乱を招いてしまった事はお詫び申し上げます。ですが、蒼龍に関してお伝えしなければならない事があります」

 

榛名は軽く頭を下げてからこちらを見て話を進めてきた。その表情はいつもの穏やかなものではなく、キリッとしたどこか凛々しさを感じさせるもの。思わず緊張してしまう。榛名は一呼吸置いた後、言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

「単刀直入に申し上げます。現時刻を以ってRATX4-01 蒼龍は現在の装備並びに一部機密部品を非常時以外において解除及び封印、代替武装へ大規模換装します」

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

榛名から告げられた事。私は最初、何かの冗談かと思った。だって、蒼龍はいわば榛名の肉体にも等しい存在。それを自らでやめて、別の装備を取り付けるなんて……一体何を考えているの?

 

「——どういうつもりだ?」

 

榛名の言葉にいち早く疑問を投げかけたのは千冬姉さんだった。

 

「どういうつもり、とは?」

「そのままの意味だ。何故そのような事を行う必要がある。確かに特殊な機体ではあるが、それだけだ。特に大した問題ではないだろう?」

 

まぁ、私は蒼龍に慣れ親しんでいるからってのもあるけど、別にそんな事を行う必要があるのかな……確かに特殊すぎる機体だし、機密の多い機体でもあるよ。でも、向こうでは普通に使っていたからね……やっぱり榛名には何か考えがあるのかな。

 

「……確かに、蒼龍が『こちらのテクノロジー』でクローン作成が容易に可能ならば問題ないです。ですが、それが不可能であるからこその措置なのです」

 

榛名は千冬姉さんにも臆する事なく言葉を続ける。

 

「第一にコアを除いた動力源に関してです。動力源として蒼龍を含むRATナンバーにはコアの他に特殊なリアクターエンジンが搭載されています。」

「特殊なリアクターエンジン? どういう事だ?」

「詳細を話す事はできません。両方とも名称以外はブラックボックス化されている為、私達コア人格のみが修復に備えてその機構と製造法を知っているだけです」

 

そういえば、普段何気なく言ってたけど、蒼龍って確か『重力子エンジン』積んでるんだもんね……仕組みとかは私も知らないからアレだけど、とりあえずうかつに知られるわけにはいかないって事は確かだね。

 

「つまり動力源がこちらでは未知の技術の塊であるため、ということですか?」

「それだけではなく、先程も申し上げた通り『クローン作成が不可能』であるという点があります。すなわち、情報収集ではなく最悪の場合強奪される危険性もあります。私は一夏を守る責任がありますので、そのような不安要素は取り除いておきたいのです」

 

榛名の言う通り、もし蒼龍と同じような機体を作るとして重力子エンジンの製作が出来なかった場合、一番手っ取り早いのは蒼龍を奪うことだからね。向こうではそんな事はなかったけど、だからといってここじゃどうなるかわからない。それに……強奪って聞いた瞬間、少しだけ怖くなってしまった。私も用心しておくに越したことはなさそうだ。

 

「同様の理由で武装類と装甲材もそうなります。蒼龍に搭載されたビット兵器には操縦者に殆ど負担をかけない仕様となっています。また装甲材は特殊な複合装甲を使用しており高い防御性能を誇りますが、再現はおそらく不可能であると考えています。動力源ほどではありませんが、これだけでも十分世界に混乱を引き起こす火種となりかねません。これが二つ目です」

「なるほどな……聞けば聞くほど危険な存在だ。第三世代機開発でしのぎを削っている各国が喉から手が出るほど欲しい技術がこれでもかと詰め込まれている。火種になりかねないのは間違いないな」

「ご理解していただけたようで何よりです」

 

改めて榛名の話を聞くと、私が今まで普通に扱ってきていた蒼龍がとんでもないテクノロジーの塊であることを教えられる。確かにブレードビットを扱っている時は考えることが増えたなぁって思うことがあったりしたけど、榛名が補助してくれたり榛名がメインで使ってくれたりしてたから特に苦しかった事はないしね。それに、装甲も被弾する時はするけど、大きく破壊された事なんてあんまりない気がする。やっぱり色々規格外すぎるよ。

 

「——了解した。機体の扱いに関してはそちらの判断に任せよう。やはり我々には少々手に余る代物だったようだ」

「本当ですね、織斑先生……でも、そんな機体を扱う紅城さんが敵でなくてよかったです」

「それには私も同感だな……」

 

とりあえず、蒼龍に関することは私達、というか主に榛名に一任することが決まった。千冬姉さんはどこかやれやれといった感じだし、山田先生に至っては私が敵じゃなくて良かったとか言ってるし……なんというか複雑だ。

 

「お二方、その心配は必要ないですよ」

「どういう事だ?」

「だって、一夏はとても優しいですから。よほどのことがない限り敵になんてなりませんよ。榛名が保証します!」

 

あと結構弱気なところが多いのと嘘が下手なので余計ありえないですね!と本当に余計な事を言ってくれる榛名。信じてくれるのは嬉しいけど、流石にその言い方はないでしょ!

 

「この……榛名ぁぁぁぁぁ!!」

「わっ!? ちょ、い、いひか(一夏)!? にゃ、にゃにをひゅるんでひゅか(な、何をするんですか)!?」

「何をじゃないよ、何をじゃ! 余計な事を言って!! この口、この口なのか! 余計な事を言うのは!!」

「い、いひゃいでひゅ(痛いです)!! ひょ、ひよっへはひゅねらはいへ(ほ、ほっぺたつねらないで)〜!!」

 

流石の私もああいう風に言われたら怒るよ。お仕置き代わりに榛名の頬っぺたを引っ張ったりして反省を促したいと思う。これが一番効果的だと思う。実際榛名の言ったことは間違いはないよ。間違いはないんだけど……流石にやっぱり言われるのはなんかむかつく。とりあえず榛名の頬っぺたで遊ぼう。お返しだ。

 

「ぷっ……あはは!!」

 

そうしていたら突然千冬姉さんが笑い出した。一体何がおかしかったのだろうか? 私は榛名の頬っぺたで遊ぶ手を止め、千冬姉さんの方を向いた。

 

「いやぁ、すまない。しかし、なんというか仲のいい姉妹の喧嘩みたいに見えてな。微笑ましいのだが、さっきまで真剣な話をしていた雰囲気が全てぶち壊しになったと思ったらつい、な」

「織斑先生、流石にそれは失礼ですって……でも、私も織斑先生と同じように感じてましたけどね」

 

確かに二人の言う通り、さっきまであった真剣な雰囲気はもうどっかに行っちゃったよ。とりあえず、榛名を解放してあげることにしよう。途中から榛名の頬っぺたで遊ぶの楽しくなっちゃってたんだけどね。また今度遊んでみようかな。

 

「うぅ〜……やっと解放されましたぁ……」

「これに懲りたら余計なことは言わないこと。いい?」

「はぁい……肝に銘じておきます……」

 

リスさんみたいに頬っぺた伸びてないですよね?と言ってる榛名は私から見ても可愛いと思う。まぁ、一度戦闘になったらすぐに凛々しいいつもの頼りがいのある榛名になるんだけどね。

 

「よし、とりあえずこの場はこれにて解散だ。紅城とそこのコア人格は私の部屋で過ごしてもらう事にしよう。山田先生も問題ないな?」

「はい。おそらくそれが一番の策かと。アリーナの後処理はこちらでしておきます。織斑先生はお二人の方を」

「いつも面倒事をすまないな。では、二人とも行くとしようか。ついて来い」

 

そう言われて私は千冬姉さんの後をついていくことにした。勿論榛名も一緒である。それにしても、千冬姉さんと同じ部屋で過ごすことになるのかぁ……こっちの千冬姉さんは全然いい人だから問題ないとは思うけど、私の方がどうなるかわかんないから不安だなぁ……。

 

「まぁ、きっとなんとかなりますよ。今までもそうやって乗り切ってきたじゃないですか」

「そうは言ってもね……今までは悠助がいてくれたからだし、これからはどうなることか……その時は頼りにさせてもらうね、榛名」

「はい! 榛名にお任せください!」

 

本当頼りになる存在だよ。でも、私はさっきから気になってた事があるんだよね……いや、気にしてないんなら大丈夫なんだと思うけどさ、

 

「ところで榛名」

「なんでしょう?」

「今日は後ずっと具現化したままなの?」

「……戻るタイミング、完全に見失ってしまいました」

 

……まさかのポンコツやらかしてたよ、コア人格。人気もそんなにないようだし、出たままでも大丈夫だとは思うけどね。とりあえず、そのままで千冬姉さんの部屋へと向かう私達なのであった。






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次回も生暖かい目でよろしくお願いします。
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