Mission.1 クロノ=ケイ
黒乃京。それが僕の名前だ。
僕はこれから死ぬ。
駅のホームから線路に落ちた酔っぱらいを助けて、避難が間に合わずに。
クロノ・ケイ。それが俺の名前だ。
俺は別の世界に生まれた。
覚えているのは名前と好きだった漫画GANTZだけだ。
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クロノ・ケイは紛争地帯の貧困の家庭に生まれた。そして2歳になったある日、天災がやってくる。
村に敵国の軍隊が攻め込んできた。
「ケイ! 逃げるわよ!!」
母に抱きあげられる。軍人は銃口を無抵抗の村人に向けて引き金を引いた。火薬の弾ける音と命が砕け散る音が幼い耳を突き刺す。
母に抱かれるケイはその瞳に火のせいか血のせいかわからないが赤く光り輝く村を見た。
それから出稼ぎに出ていた父親と合流する。しかし今まで以上に生活が苦しくなった両親は苦渋の決断をするしかなかった。
ケイは父に連れられ口減らしに鉱山地帯に放り出された。
ケイは3歳だった。こんな場所で生きていくことができるわけない。普通なら食い物も飲み物もなく野垂れ死ぬか、野犬に食い殺されるかだ。
だがケイは死ななかった。ここで生きようともがき続けた結果、ケイは特別な力に目覚める。後で知ったことだが、これは念というらしい。
それを使いやってきた軍人を襲ったり、動物を狩ったり、盗みを働いたりして生き延びた。
そして5歳。運命の出会いが訪れる。
そいつはケイを見てこう言った。
「希少な宝石があるって聞いたのだけど、酷い有様だわねえ。……でも磨けば良い子になりそうだわさ」
その女は会話よりも人殺しを先に覚えた畜生のように生きるケイを抱きあげ連れ帰った。
大きく優しい手だった。
女の名はビスケット・クルーガー。宝石ハンターである。ケイは彼女のことを師匠と敬い、母と慕い育った。
そして15になったその日。
「アンタの発も形になったんだし、ハンター試験を受けてきなさいな」
「ハンター試験ですか?」
「そう。今のアンタなら死ぬことないだろうし、これから仕事で使うだろうからとってきなさい。というかとってくるまで帰ってくるな。わかったわね」
「わかったよ母さん」
「師匠と言いなさい」
ビスケは呆れたように首を振る。
別にビスケは息子にするつもりで育てたわけでない、いやまあ母性の一端も無かったかと言われればそうではないのだが。それでも自分が母を名乗るのはなにか違うと考えていた。
そして2日後、船をチャーターしてケイは飛び出した。
「じゃあ行ってきます!」
「気をつけといで」
船に乗って水平線の向こうに消えゆくケイをビスケは見送った。
「…………やぁねぇ」
親子の情はないと思っていても5歳から10年育てたのだ。行ってしまうことを少し寂しいと思ってしまう。
ビスケは自分の弟子であるウイングに言われた言葉を思い出した。
『まるで本当の親子みたいですね。実際そう考えているんじゃないですか?』
「私は親失格だわよ。あの子の捻じれは結局直せやしなかったわさ」
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船には同じようにハンター試験を目指しているのであろう屈強な男たちが乗っていた。
ケイはキョロキョロしていると突然後ろから声をかけられる。
「やあ♤ 君もハンター試験を受けるのかい?」
話しかけてきたのは頬にトランプのマークのある奇術師のような男。ケイはそいつを見た瞬間、後ろに飛び距離をとった。
「冷たいなあ」
直感的にケイはこの男は危険だと理解した。幼少期、獣のように暮らした経験から人の雰囲気を見抜くことに長けたケイの直感がこの男は快楽殺人者だと告げる。
「君、知ってる人間だろう。珍しいからさ、知り合いたいと思って。僕はヒソカ。よろしく♡」
「……ケイ、クロノ・ケイだ」
ヒソカが握手を求めて手を出してきたので、クロノもそれに応じた。
そうしているとまた別の男が現れる。それは奇妙奇天烈な外見をしていた。頭全体に針を突き刺していて、カタカタ揺れている。
「ヒソカ。友達?」
「いや。今知り合ったところ。クロノ・ケイだって」
「そう。僕はギラタクル……あー偽名なんだこれ。本名はイルミ・ゾルディック、よろしく」
「暗殺一家の?」
「そう」
ケイは船に乗って数刻でとんでもない連中と知り合いになってしまい困惑する。
(こんな付き合いが母さんに知れたら殺されてるぞ)
「君も知ってる側なんだ。珍しいなあ」
「試験受験者は知らないみたいだからね♧」
知ってる側というのは念の存在を知って習得している人間のことを指している。
(89点……まだ若いし、もっと伸びそうだなあ)
「その君の悪い目線はやめてくれるかヒソカ」
「ん。君具現化系だろ」
「!! よくわかったな」
ヒソカは嫌な薄ら笑いを浮かべる。
「駄目だなあ簡単に人に言っちゃあ。性格診断だよ。具現化系は神経質なやつが多いんだよね」
「あー確かにそうだね。君、上から下まで服装かなりピシッとしてるし」
ケイの服装は上から下まで色合いや組み合わせともにしっかり決まっていて、襟も整っている。またフードから伸びる調節用の紐も左右同じ長さになるように寸分狂いなく調節されていた。
「ま。せっかくできた縁だし仲良くしようよ」
ギラタクル……イルミは感情を一切感じさせない坦々とした声色でそういった。針が刺さりまくっている顔も同じである。
「ああ、そうだな。よろしく」
異質な三人が乗り込む船はハンター試験の会場に向かう。その間、めちゃくちゃな嵐にあって船が揺れまくり、何人か海に投げ出されたり船酔いでダウンしてしまった。が、この三人は平然と船旅をこなしていた。