「うーーーん…どうしよう…」
僕は自分の部屋の机に向かい、独り言をつぶやく。議題は修学旅行をどうするか、だ。
修学旅行の大きなトラブル、高校生の不良たちによる拉致事件。連れ去られた二人が無傷で助かるとわかっていてもこういうのは減らすべき…だと思う。なので対策を考えているのだ。
今のところアイデアとしては
・拉致しやすそうな場所を片っ端から観光ルートから外す
・場所が知られる原因になったであろう神崎さんのノートを借りておく
・僕が代わりにノートを作って神崎さんに作らせない
・二人が人質にされないように戦う
今思いつく限りのものをノートに書きだす。
とりあえずはルート変更、神崎さんのノートの対策かなぁ…うん、これでいこう。
僕は作戦を立て、ベッドに入る。すると不意になにかを忘れているような気分に襲われる。他になにか修学旅行で不安になる要素なんてあったっけ…でもこの感覚は修学旅行のことじゃないもっと他のこと、そんな気がする…もっとこう…近くにいた………そんなことを考えているうちに僕は襲ってくる睡魔に負けて、夢の世界に落ちてしまった。
次の日になり、学校では修学旅行の班を作ってルートを決める。烏間先生からはやっぱり暗殺向けのルート選びをお願いされた。もちろんこの時点では殺せんせーが殺されるわけないので、他の暗殺者に取られる心配がないという点では僕は安心している。
僕の班は、茅野と杉野が声をかけてきて、杉野が呼んだ神崎さん、念の為に戦えるカルマくん、余りかけていた奥田さんを茅野が拾って…って前と同じじゃないか!まぁ…いいか…。僕らは殺せんせーの過剰しおりを受け取り、それを参考にしながらルートを決める。
「やっぱり京都といったら抹茶!抹茶といったらプリンだよ!そして抹茶プリンはこのお店!」
…茅野のこれも演技なのだろうか。目を輝かせて息を荒くする茅野を見て思う。
「抹茶といえばプリンって…どっちかっつーとこっちの抹茶わらび餅の方がそれっぽいんじゃねーか?」
「どっちでもいいよ!というかどっちも食べよう!」
「じゃあそれに毒を入れるというのはどうでしょう!」
「もったいないよ!」
「茅野ちゃんは毒入っててもプリンなら食べそうな勢いだねー」
「抹茶わらびだと…ほら!祇園に美味い店があるみたいだぜ!」
しおりの殺せんせー特製スイーツマップを開きながら杉野が言う。
「あ、祇園なら行ったことあるけど、観光にも暗殺にもおすすめの場所だよ」
祇園かぁ…抹茶わらびも美味しそうだし、神崎さんもおすすめしてるなら…じゃなくて!これ拉致られルートじゃん!
「ふーん、祇園かー…いいんじゃね?」
「じゃあ決まりだね!」
言うタイミングを完全に失った…こうなったらノート作戦でなんとか…
「行く場所は僕が手帳かなにかにまとめとくよ!殺せんせーのしおりは重すぎて持ち歩けないし」
「いいの?渚くん、なんなら私が…」
「いいよ!僕そういうの好きだからさ!」
「そう?じゃあよろしくね、渚くん」
神崎さんに頼られるのも悪くない。とりあえずこれでなんとかなるだろう。
そして当日を迎える。
新幹線はグリーン車!…ではなくE組なので普通車だ。前回の時に乗り遅れていた殺せんせーは普通に間に合っていて、ビッチ先生も事前に烏間先生から釘を刺されたらしく普通の服装で来ていた。前回との違いに少し違和感を覚えていると、茅野がトランプに誘ってきた。
「ねぇ渚!トランプやろーよ!」
「いいよ、机がないからババ抜きかな?」
「うん!神崎さんたちも誘おっか」
というわけで班のみんなを誘って合計7人でトランプを…7人?
「…ってなんで殺せんせーも混ざってんの?」
「いいじゃないですか〜せんせーもやりたいんですよ〜」
と言うわけで7人で始める。
「じゃあこっち!あがり!」
「にゅやっ!ま、また負けてしまった…」
「せんせー弱すぎだね〜」
「そ、そんなに弱いですか?」
「うん…リアルに顔色に出てるよ」
「ねー、基本ポーカーフェイスだから強そうなのにあんなにコロコロ顔色変えてたらすぐ分かっちゃうよ!」
「こらそこ!あんまりこの作品でコロコロ言わない!」
「…なんで?不破さん」
殺せんせーがババ抜きが弱いことが判明し、しばらくして京都駅に到着する。
バスで移動して旅館に着き、僕は行き先をまとめた手帳があることを確認する。これなら拉致されることもないだろう。そんなことを思っていると、神崎さんがバッグを漁って何かを探している。まさか……
「ねぇ神崎さん、なに探してるの?」
「行き先をまとめた手帳を渚くんが作ってくれるって言ってたじゃない?私も作っておけば、もしはぐれちゃっても安心だと思って私も作ったんだけど」
「…落としちゃったと」
「うん…どこで落としたんだろ…」
神崎さんがそこまで用意周到だったとは…いや、僕が信用されてないだけかな?それはそれで悲しい。結局拉致られルートは順調に進んでしまっているようで僕はまた対策を練らなきゃいけなくなった。とりあえず向かう場所の順番を変えたいと頼んでみる。
「ねぇみんな、明日なんだけど祇園から行ってみない?やっぱり暗殺の場所の確認なら早めにやっておいた方がいいと思うんだけど…」
「渚くん、すまないが事前に決めたルートはしっかりと守ってくれ。そうでないともし何かがあった場合に困ってしまう」
ごもっともです烏間先生。けどこのままじゃ…。結局僕はそれ以上なんの作戦も思いつかず、拉致されることを知りながらなんの対策もできなかった。
拉致られる予定当日、僕らは事前に決めた予定通りのルートを歩いて回り、僕らの班の暗殺予定地兼、拉致られ予定地でもある祇園に向かう。
「へぇー祇園って奥に行くとこんなに人気ないんだー!」
「うん、お店も一見さんお断りの店が多いから、目的もなく来る人も少ないし、見通しがいい必要もない、だからここなら暗殺にピッタリなんじゃないかって」
「よーし!さっさと準備終わらせて抹茶プリン食べに行こー!」
神崎さん…実は暗殺以外にもピッタリなことがあるんです。それは…
「まぁったく、なぁんでこんな拉致りやすい場所歩くかねぇ」
ほら来た。来ちゃいましたよ高校生。
「男には興味ねぇ、女置いてお家に帰」
カルマくんが喋っていた不良を躊躇なく殴りつける。戦隊モノの悪役でも名乗りの最中には殴らないのに。
「ほらね渚くん、目撃者がいないとこなら喧嘩しても問題ないっしょ?」
「てめぇ刺すぞ!」
不良がナイフを出して脅してくる。それにカルマくんは近くにあった布を投げつけて応戦する。カルマくんに前を任せて僕と杉野も後ろの女子2人が捕まらないように、不良たちと応戦を試みる。もちろん体格も喧嘩の経験も大きく劣る僕らが正面戦闘で勝てるはずもないので奥の手のクラップスタナーを放つ。
「なぁっ…!」
殴りかかってきた不良の1人をなんとかスタンさせる。が、一人スタンさせたところで勝てるはずもなく残った相手に杉野は蹴り飛ばされ僕も首を捕まれる。
「渚くん!杉野!」
「お友達の心配してる場合か?」
僕らに注意を向けたカルマくんが不良にバットで殴りつけられ気絶する。残った僕も気を失う。
気がついた頃には全てが終わっていた。茅野と神崎さんは連れていかれ、カルマくんは頭から血を流し杉野もまだ気を失っている。そうだ!奥田さん!辺りを見回すも奥田さんの姿はない。どうやら見つかって連れ去られたようだ。僕はすぐに殺せんせーに連絡する。
『もしもし?』
「殺せんせー…不良に襲われてみんなが連れていかれた…」
『なっ…それで今どこに』
「祇園の奥の方、カルマくんと杉野も重傷なんだ…救急車呼んだ方がいいかな…」
『そうですね、お願いします。せんせーもすぐに向かいます』
僕はすぐに救急車を呼び、そのすぐ後に殺せんせーと烏間先生が駆けつける。
「渚くんも二人と一緒に病院で診察を受けてください。烏間先生、3人をお願いします」
「わかった。お前はどうするつもりだ?」
「生徒を助けに行きます。渚くん、相手の不良の特徴は?」
「高校生だと思う。学ランを着てて訛りはなかったから相手も修学旅行生かな…」
「よく観察していましたね。それだけ分かれば十分です。連れていかれたのは奥田さん、茅野さん、神崎さんの3名ですね?ではいってきます」
静かに怒る殺せんせーはマッハで不良を探しに行く。僕らはその後すぐに来た救急車に乗ってその場を後にする。
「他に痛むところは無いですか?」
「特には…、他の二人はどうでしたか?」
「適切な応急処置もされていましたから治りも早いでしょう。ただ、頭部に強い打撃を受けた赤羽くんは検査のために数日は入院することになるでしょう」
「そうですか…」
「せっかくの修学旅行なのに、災難でしたね。そろそろ二人とも気がついている頃でしょうから会いに行ってあげてください」
僕は診察室から出て、二人がいる病室に向かう。二人はもう目を覚ましていたようで烏間先生に事情を聞かれていた。
「あ、渚くん、怪我はない?」
「それ、一番の怪我人が言うことか?」
「二人よりは傷は浅いよ。烏間先生、連れ去られたみんなは大丈夫でしたか?」
「3人とも奴が助け、もう旅館に戻っている。君も旅館に帰るといい、二人のことは俺が見ていよう」
「お願いします烏間先生。二人ともお大事に」
「じゃーねー渚くん」
「俺も明日には退院できるらしいからまた明日な!」
前回とは少し様子が違う拉致事件。カルマくんや杉野は前回より怪我の具合が重く、隠れていた奥田さんも見つかって連れ去られた。前より状況が悪いのは僕が対策しようと変に動いたからなのかな………。
今回の事件が前回よりも悪化した原因がなんだったのか、明確な答えは見えぬまま僕は病院を後にした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
集会や中間テストは渚くんが興味無いし重要視してないので全カットです。
まだまだ悩みながら書いてるのでなんとも言えないものになってそうですが暖かい目で見守っていただけるとありがたい限りです。
逃げ若の単行本そろそろですから楽しみですね!