「ああ…なんとかな…」
そんな感じです。どうぞ。
「ここは引いてやるさ……だが我々がメンテナンスをしなければその子の命ももって二日程度、せいぜい最期の時を楽しく過ごすんだね」
一周目と同じようにシロに連れられてイトナ君が転校生としてE組に来た。シロへの妨害や、クラスの皆と殺せんせーの協力もあってなんとかシロとイトナ君を引き離すことに成功した。だが残された少ない時間の間にイトナ君から触手を切り離さなければならない。しかもイトナ君に関する情報はなにも知らない前提で。
「二日って…なんとかなんないのせんせー!」
「生命力を吸い取っているのはこの触手です。イトナ君から触手を抜くことが出来れば…」
「じゃあさっさと抜いちゃってよ!せんせーならやり方わかるでしょ?」
「残念ながら…彼の力や勝利への病的な執着がある限り触手は強く癒着して離れません。なので、なんとかして彼から執着を消さなければ…」
「執着を消すって……こいつと会ってまだ数時間だぜ?まだなんの事情も知らない俺たちでか…?」
「そうだよ……喋ったことだってないんだよ?私たちより殺せんせーがやった方が…」
「暗殺のターゲットである先生がいくら説得したところで、彼の殺意を煽るだけです……幸いまだ時間あります。ですので!皆さんで彼の──」
「そんなことする必要ある?」
殺せんせーの言葉を遮ったのはビッチ先生だった。これまで静観していた彼女が突如口を挟んできたのだ。
「ねぇタコ。この子から一瞬でも勝利とか力とかを忘れさせればその間に触手を抜けるんでしょ?」
「え、えぇ…ですがまだ彼に関する情報が……」
「そんなもん必要ないわよ。ほら、起きなさい」
「…ん……誰だ……お前……んぐ!?」
「え!?」
「はぁ!?」
「なにぃぃぃぃぃ!!!!?」
彼女は何を思ったかイトナ君を揺さぶり、目を覚ましたイトナ君の後頭部を支えると髪をかきあげ、見ているだけでも気絶しそうになるほどの濃厚なキスをはじめた。最初は本人も抵抗する素振りを見せていたし触手もうぞうぞと動いていたが、三秒かそこらでぐったりとし始め、十秒、二十秒といつもの強制ディープキスの倍以上の時間キスをし続けた。三十秒ほど経った位でやっとビッチ先生の唇が糸を引きながらイトナ君の唇を離れる。イトナ君はというと目を回してさっきよりも一層気絶している気がする。
「はいおしまい。これならどう?…って何ボーッとしてんのよ」
「……………え!?は、はい!これなら完璧です!今なら抜ける!」
「ふふっ…本物の殺し屋舐めんじゃないわよ?」
普段の言動で忘れがちだけどこの人一応ハニートラップの達人だった……それにしても…ここでビッチ先生が…ねぇ…
「ビッチ先生!なんでイトナ君の事助けてくれたの?」
「なんでって…私はこの教室の先生よ?このタコも言ってたけど生徒が困ってたら助けてあげるのが先生ってもんでしょ?先生に扮しての潜入任務なんだからこういうことも仕事のうちよ…」
彼女はらしくない言葉をほんの少し顔を赤らめながら口からこぼす。
「ビッチ先生が照れてるなんて珍しいー」
「照れるビッチ…ギャップ萌えというやつか……」
「竹林!?お前初セリフこんなんでいいのか!?」
そうこうしているうちに殺せんせーはイトナ君の触手を抜き終わったらしくどこから持ってきたのか敷布団に掛け布団、枕まで用意してそこにイトナ君を寝かせていた。しばらく見ているとイトナ君の眉がピクリとうごいた。
「ん……なんで…布団で…?」
「おお!イトナ君!目が覚めましたか!?」
「…兄さん!?殺す!」
イトナ君は殺せんせーを見た途端飛び起きて距離を取り触手で攻撃しようとする。そして触手が出ないことに気づいた。
「なんで…俺に何をした!」
「触手なら切り離しました。あんな危ない物、君には似合わない」
それを聞いたイトナ君の表情は暗くなった。床に膝と手を付き、喉が壊れるんじゃないかと言うほどに叫び出す。
「せっかく…せっかく手に入れた力なんだぞ!力が無ければなんも出来ない…なにも手に入れらない…なにも……取り戻せないんだ……俺は……これからどうしたらいいんだ…」
イトナ君の問いには誰も返せない。当然だ。イトナ君と出会って数時間、事情も何も知らないし、まともに言葉を交わしたことさえない。だから事情を知っている僕がやらなきゃいけない。
声をかけようとした直前、僕より先を口を開いたのは磯貝君だった。
「俺らはさ、成功したことなんてほとんどないよ」
「……なんの話だ…」
「そんな俺らだから…殺せんせーを三月までに殺れるか正直分からない。だからさ、力を貸してほしい」
「なんだと…」
「もしこれからやることがないなら…この教室で一緒に勉強して、一緒に遊んで、一緒に殺せんせーを暗殺して欲しい。イトナ君がなんでここに来たのかとか、ここに来る前は何してたとか全然知らないけどさ…でもいい奴だってのは何となくわかる。ま、感覚だけどさ」
「………」
「さっき寺坂の奴も言ってたけどさ、仲間は少しでも多い方がいい。それに、悩んだり困ったりしてるクラスメイトを放っておくなんてクラス委員として出来ないよ」
「…………」
「それで…どう……かな?」
「………少し……考えさせてくれ…」
磯貝君の言葉で落ち着いたイトナ君は、E組に入って欲しいという磯貝君の願いにその場で頷くことは無かった。でも時間をかければ説得は出来そうな様子で良かった。
イトナ君の件が一旦区切りがついたということでその日はそれで解散ということになった。荷物をまとめてさっさと帰る人、帰りにファミレスに寄ろうと話す人、そんな中僕はイトナ君に近づく。
「えーっと、あのさイトナ君…?」
「…なんだ」
うーん…なんか敵視されてる気がする…触手切ったからかな…?
「イトナ君はこれからどうするの?ああ、E組に来る来ないの話じゃなくって今日の話」
「…そうだな……とりあえずシロに会う前にいた倉庫に帰る」
「倉庫?そこに住んでるの?」
「ああ……色々あってな」
「そう…よかったらなんだけどさ、僕の家に来ない?」
イトナ君の親が蒸発してから工場の倉庫に住んでいたのは知っている。そこに帰すのも可哀想だし、話したいことや聞きたいこともあるしせっかくだから家に招待しようという訳だ。でもさっきの感じからいい返答は期待できないけど……
「いいぞ」
「そっか…やっぱりダメだよね……え!?」
「いいと言った」
「本当に!?」
「…ああ。戻ったところで金もないし飯もないからな。よろしく頼む」
───────
僕は具材とルーを入れたシチューの鍋をかき回す。今日のメニューは鶏肉のシチュー、アボカドと卵のサラダだ。卵とアボカドを切り終えたので合えるためのマヨネーズを…ってそういえば切れてるじゃん……もう外暗いんだけど買いに行くしかないかなぁ……。
僕は鍋の火を止めてエプロンを外す。
「イトナ君!マヨネーズ買ってくるからちょっとまっててー!」
「分かった」
財布持った、鍵持った、携帯持った……スーパーまでは面倒だしコンビニでいいか。
僕は靴を履いて玄関のドアを開ける。しかし、ドアを開けたはずなのに目の前には壁がある。正確には目の前に見知らぬ男が立っていた。
白装束にガスマスク…?……まさかシロの!?──
気づいた時にはもう遅かった。油断しきっていた僕は男が浴びせかけてきた煙を吸ってしまい、声を出す間もなく意識を手放さざるを得なかった。
───────
「君を捕まえる予定はなかったのだがね……まぁいいか。イトナと彼を縛って車に積め。研究所へ戻るぞ」
シロは部下に指示を出し、イトナの首を確認する。
「見張りの報告通り…か。まぁいい…抜いたならまたつけ直せばいい。君の力への執着は一朝一夕で無くなるものじゃない…だろう?イトナ」
シロは勝利を確信していた。なぜならすべてが作戦通りだったからだ。作戦完遂に五分と経たない迅速さに加え、周囲に一切気づかれず対象を捕獲し、あとは研究所に戻るだけなのだから。ただしかし、縛られた渚のポケットに入った携帯の中で想定外の目撃者が慌ただしくしているのをシロは知る由もなかった。
「クラスメイトを助けるのも律のお役目…!お二人共…絶対に助けてみせます!」
あのですね…えっと…大変遅くなりました。そして長期間失踪してしまい申し訳ありませんでした。いやまだ生きてるんですよ。ええ。モチベゴリゴリ削られてたのもありますけど時間が取れないのもありましてね…。
タコピーとかヒロアカとか読んでたら私の書きたいものが書かれてたものですから「あれ?これ私が書かなくてよくね?」ってなっちゃいまして…。
でもまぁ今なら時間が取れるのでなら書いちゃおう、と。今後もこんなことだらけだと思いますが、暖かい目で見ていただけると励みになります。あと、前回の皆様のコメント吐くほど嬉しかったです。