弱くなってニューゲーム   作:桜油

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登場人物を無闇矢鱈に増やしたくない、風呂敷を無駄に広げたくないと考えてて、結果、登場人物が増えがちになる次回作がなかなか筆が進まない

プロットというか、大筋とか書きたいシーンはまとまってるので、あとはそこまで上手く繋ぐだけなんですけどね

主人公視点に戻ってます


そだちdeny②

東京都立伊灯高校。

 

魔術科と普通科に分かれているマンモス校であり、毎年『軍』の推薦を受けて就職活動する人や東京大学魔術研究学部に進学する人などエリートを輩出しているこの高校は、しかし実はそこまで偏差値が高いというわけでも学費が高いというわけでもない。謂わば『凡人がエリートまで成長できる場所』である。

 

それは普通科にも同じことが言える。大企業の幹部は軒並みこの高校の出身であるし、この高校に在籍していた事実だけで二流大卒より箔がつくほど。

 

 

 

ここの高校に行く理由は『出世したい』だが、俺がこの高校に行く理由はそんなものではない。

 

 

 

一つ目は『有住汰絃』に会うためである。有希の話が本当なら『神父』の息子でかつ『教会』に反感を抱いていることになる。『前回』の経験も合わせると、協力関係を築いて、彼が改革した『教会』と同盟を結ぶことも選択肢としてほしい。『院生室』との同盟も成立しているが、規模が大きくて困ることはない。有希の頼みでもあるしな。

 

 

 

二つ目は密談場所の確保である。叔母が急遽帰ってくることによって予定変更を余儀なくされたり情報が漏れたりするのがよくない。現に異能を封じる魔術式の研究内容が一部叔母に漏れたことあるし。……夕映に対する態度や言動の不一致、時折見せる剣吞とした雰囲気など怪しいことが沢山あったのだが、最近有希が、叔母の発言をまとめて報告してくれたことにより、叔母は敵である可能性が一気に跳ね上がった。

 

『否定』のDNA云々はさすがに半信半疑だが、有希の存在や夕映の努力が世界を滅ぼすなどという物言いは事実かどうかにかかわらず到底許せるものではない。

 

まじであの女は何企んでるんだよ。……あの親戚たちの中で一番ましとか思ってた十年前の自分をぶん殴りたい。

 

 

 

ほかにも『軍』の推薦が入るだけあって『軍』の情報を若干入手しやすいとかそんな理由もあったのだが割愛する。ほかの高校と大差ないし。

 

そして、二つ目を達成しつつ一つ目に関してもクリアできる手段こそが『部活動設立』だ。

 

 

 

伊灯高校の校訓は自主性である。部活を設立することができるし、生徒会も部活と同じ扱いになる。必修科目が午前中に詰め込まれ、午後は選択科目になっているためそこで自分の興味ある分野を取捨選択するわけだ。無論部活に集中したい場合は部活の自主練に回してもいい。帰って家で自習するのもありだし、バイトも許可されている。生徒会はさらに権限が大きく、生徒会会員が全員納得した場合、校則を教師の裁定なく自由に定められるのだ。実際、俺の二つ上の学年の生徒会長が一つ校則を決めていたはず。選挙公約に従ったものらしいけど。

 

 

 

しかし、試験で赤点をとったら容赦なく退学処分が下る。問題行動を犯しても同じだ。校則が緩い、つまり自由な分それに責任があるという価値観である。

 

 

 

……しかし、そんな自由を存分に享受できるのは魔術科だけだ。

 

 

 

俺達が所属する普通科はスケジュールこそ魔術科と大差ない。しかし、部活動の結成や生徒会への参加権限、生徒会の投票権など生徒としては当然の権利がない。さらに普通科というだけで差別を受ける場合もある。制服も魔術科より地味にできているし、校則も服装に関してのみ厳しめだ。まあ、そこに不都合はないのだが。

 

 

 

だが、部活の結成禁止はよくない。教室でもいいがほかの生徒にも聞かれたくない話をする気でいるのに、情報管理意識が全くなっていないマジの一般人がいつ盗み聞きするやもしれない空間を使う意味がない。それなら叔母に聞かれるリスクのある自宅のほうが百倍ましだ。

 

よって部活結成の権利を得ないといけない。本当は生徒会所属でもいいのだが、後述の理由によって有住汰絃と敵対しかねず、本末転倒になるから却下。

 

 

 

俺はこれについて、『校則十条』を利用した。

 

校則十条。先ほども話に出した、この代の生徒会が作った校則であり、『決闘する権利』の保証である。生徒は同級生や上級生、教師に対して、教師は生徒に対して、決闘を申し込むことができる。教師は拒否権なしだが、生徒は同級生や教師からの場合拒否権がある。賭けの対象を事前に決めねばならない。敗者は勝者の命令に必ず従うし、勝者は先にかけていた内容を実現させることができる。内容は問われない。決闘の際はタッグバトル、つまり二人対二人までであり、それ以上の人数が関わる場合は代表者を決める。決闘に際して戦っていない人、関わっていない人に攻撃を仕掛けるのはいかなる場合も禁止されている。いかさまも発覚次第敗北である。

 

 

 

これを使って『前回』は生徒会にケンカを売り、有住汰絃と二人きりの生徒会が出来上がったものだ。たぶん、ここにきているなら絶対同じことをする。一人きりかもしれないが、どちらにせよタイミングを見誤るわけにはいかなかった。

 

そして今回も似たような使い方だが、使う相手は校長と生徒会の二つだ。校長に魔術科と同じ待遇になるようにして、生徒会には顧問なしで部活を設立できるようにした。

 

決闘?校長は影縫い、生徒会は魔術を使うこともなく『軍用体術』でいなしてるうちに宥と有希が薙ぎ払っていたので問題ない。宥も有希も最近とても強くなって、そのへんの魔術師くらいなら俺が援護せずとも勝てるし、教会幹部とかも俺が軽く援護すれば問題なくなった。頼もしい限りだ。

 

 

 

そうして作った部活『John』。表向き何でも屋にするので、今のうちに宣伝しようというわけだ。別に毎日依頼が来るでもないが、案外生徒会からもクレームないし、なんなら生徒会がするような仕事がこっちに回ってくることもある。これはもしかしなくても有住がのっとったな。

 

そして秋になったころ。ようやく備品申請が通ってパソコンを設置。これで、ホームページを創設してインターネットで依頼を管理できるようになった。生徒会への申請は割と早く通ってたので部費は潤沢だったのだが、教師陣が一般人差別で頭が固く融通が利かない。多くの生徒を味方につけてなんとか通った形だ。これで依頼の紙の山に埋もれずに済む。

 

 

 

「文明の利器ってやつは素晴らしいな、有希」

 

「……いや、家からパソコン持ってくればよかったんじゃないの」

 

「それをやったら家での作業ができないだろ。あとフリーゲームもできない」

 

「……本命は後半でしょ」

 

「えっと、あれが、こうで、これが、それで」

 

「……宥は何してるの?」

 

「あ、有希。……ホームページの記事ですよ。日報」

 

「……あー。怜が言いだしっぺな割にはまともにやってないやつ。……あれ、風化してなかったんだ」

 

「いや、それは間違ってないんですけどね」

 

「でもパソコン導入してマジでよかった。今までの半年間地獄を見たからなあ、有希」

 

「……僕に絡む意味って?」

 

「え。暇そうじゃん」

 

「それは……依頼がないから商売あがったり?だし……」

 

「馬鹿垂れ、何でも屋が忙しいというのはつまり問題が多く発生しているということじゃないか。いかに何でも屋をしているとはいえ世が平和なのに越したことはない!」

 

「宥……助けて……怜が今日おかしい……」

 

「どうせ誰もみませんし、……手を抜いてもいいですよね」

 

「……よくよく考えたら、おかしいのなんて元からだっけ……ハア」

 

「しかし……こうも暇だと商売あがったりだなあ」

 

「うん、……今怜が自分でブーメランぶっさした……」

 

「暇ならこちらを手伝ってもらえません?」

 

「それ?あー。なんか知らんけど俺機械に嫌われてるからさあ、そういうの触るとノイズ走るんだわ」

 

「……あれ?じゃあ毎回ゲームでノイズ走るのは怜くんのせいなのでは……?」

 

「あ、それは違う。ゲームだけは普通にできるの。なんていうかな、パソコンだけやべえの」

 

「ご都合主義……」

 

「じゃあ有希、お前がやれば」

 

「……僕なんか一番壊すじゃん」

 

「それもそうか」

 

 

 

全く生産性のない会話で貴重な時間を浪費していたら、突然部室の扉が開いて男子生徒が転がり込んできた。

 

 

 

伊灯高校の魔術科の制服をぴっちり着こなし、茶髪、青色の瞳、中性的な顔、ひ弱な体つき。左腕には生徒会の腕章。

 

 

 

『前回』の俺そのものです本当にありがとうございました。

 

 

 

来客に驚いている間にも前回の俺の姿をしているそいつは俺の胸ぐらをつかみ、鬼のような形相でこう言った。

 

 

 

「おい丈凪怜。お前、汐宮を殺人鬼として利用する気か?」

 

 

 

…………はい?どういうこと?

 

 

 

 

 

 

 

「待て、殺人鬼って何のことだ?宥はもう殺人鬼として活動することはないはずだ」

 

 

 

思考停止しつつも何とか反論するが、充喜暁は一歩も引かなかった。

 

 

 

「何言ってるんだ。現に発生してるじゃないか、傷害事件」

 

「はあ?いや、一緒にいても不審な挙動が一切ないんだが」

 

「ふざけるな。夜中に人を襲って、異能者にとって不都合な人間でも殺してるんじゃないのか」

 

「夜中なら尚更ありえないっての。同居してるのに何言ってんだお前」

 

「じゃあ『殺さない殺人鬼』とかいう二つ名はどう言い訳するんだよ、それこそ汐宮しかありえないだろブァーカ!」

 

「はあ???いつ宥が人をやったんだよ、何時何分何秒地球が回った時?てかバカっていったほうがバカなんだぞバーカ!!!」

 

「あ、君もバカっていったから君のほうが馬鹿だね」

 

「俺は馬鹿バリアしてるからセーフ」

 

「僕も無敵だからセーフ」

 

「は???」

 

「はあ???」

 

 

 

俺と充喜がにらみ合いを続ける間に、

 

「……何この低レベルな会話」

 

「仕方ないです。真白さんが戻ってこないことにはどうにも」

 

「咲ちゃん、見ちゃだめだよ」

 

「そうなの?でも、」

 

「そうだよーひなたさん。この光景は目に毒だ」

 

という感じで視線がだんだん冷たくなっていたので、さすがにまともに対応するかーと俺は防音結界を貼った。

 

 

 

「……どういうつもり?」

 

「いや?ここは何でも屋なんでね、そういう込み入った話は周りに配慮してやろうぜって話だ」

 

「ごもっともだね。しかし魔術式展開早いなあ、前々から面白いとか思ってたけど予想以上だ」

 

と有住が違うところに注目しているが、とりあえず話を最後まで聞いてみた。

 

 

 

なんでも、巷で最近『殺さない殺人鬼』の都市伝説が流行っているらしい。

 

そんなニュースとか微塵も興味ないので知らなかった。政治ニュースと論文発表くらいしか見てないな最近。

 

その都市伝説では、夜中に仮面をつけた女が襲撃するんだと。そして襲われた奴は行方不明だったり存在していた形跡を消されたりして証拠がなくなる。本当は警察の出番なのだろうが、その警察は『軍』の息がかかっている。犯人は二つ名からして汐宮の可能性が高いから、軍にあれこれ手を出されるより先に対処しようみたいな思考回路だったんだと。

 

それはごもっともだが、宥が夜中行動する意味がないんだよなあ。

 

そう言うと半ば切れ気味に「じゃあ証拠出せ証拠」とか言っていた。たぶん証拠出しても納得しないよなあ、これ。

 

……仕方ない。

 

 

 

「充喜」

 

「何さ?まだ弁明する気なの」

 

「いや、弁明するにしても話聞かなそうだから、調査する」

 

「はあ?やめてよ、君に関係ないだろ」

 

「いいや、関係あるね。異能者のトラブルだろ?俺が三年半前に言ったことはちゃんとやりきる。てかこの部活も元々そういうものだ」

 

 

 

俺の言葉にまだ充喜が突っかかろうとするが、有住が

 

「まあまあまあまあ。いいんじゃないか?人手増えたほうが助かるし、しかも君の同類なんでしょ」

 

と言うので、渋々「……勝手にしろ」と言っていた。

 

 

 

調べられたら不都合なことがあるのか?というかさっきの話でもそうだが、宥が普通の学校に通えている時点で殺人鬼とか関係ないってわかるだろうに、それをしないってことは真相に気づいて隠そうとする中で宥にそれを擦り付けようとしているのか?なんとも不可解な話だ。

 

真相がわかっても聞かなかったふりをされるのも癪だ。勝手に仲間を殺人鬼扱いしやがった仕返しでもしてやる。

 

 

 

「勝手にしない。俺はあくまで依頼として受ける。見返りは宥に濡れ衣を着せたことを謝るだけでいい。てかそうしろ、さっきからなんかむかつくんだよ」

 

俺が若干イラつきながらそう言うと、後ろで黙っていた日向が、

 

「私は最初からそのつもりでいたから、……はい、依頼書」

 

と既に完成している依頼書を渡してきた。

 

 

 

「お、サンキュー日向。さすが手際がいいな」

 

「……?」

 

日向が首を傾げて、

 

「……あー。いや、たしかにそういうことだよね。うん、うん」

 

と勝手に納得していた。なんだこれ、よくわからん反応するなあ。

 

「いや……首傾げてる場合じゃないよ、怜。咲……名乗ってない」

 

「あ」

 

有希の指摘で日向の反応の理由が何となくわかった。

 

 

 

俺、夕映がいなくなってから結構うかつだなあ……。日向は見た感じ逆行については聞かされてるけど、具体的に誰と入れ替わったのかは今知った感じだな。多分有住、それにもう一人の女子生徒も。……あれ、

 

 

 

「おい、そこの……えー、誰だ。顔色悪くね?さっきからずっと」

 

 

 

黒い髪を一つにまとめて赤の若干混じった黒い瞳が揺れていたその女子生徒は、俺の言葉に肩を揺らして、

 

「……私は、みつ」

 

「育、ストップ。これ以上言うな」

 

と充喜に口をふさがれていた。何か隠しごとがあるな、あれは。

 

 

 

充喜はそのあとその女子生徒をかばうように俺の前に再び立ち、

 

「……育は、最近体調が悪いから。じゃ、失礼するよ」

 

とそそくさと立ち去ってしまった。……あいつ、詳細話し合わないうちに帰りやがった。

 

 

 

仕方ないので、残り二人と向き合う。日向はあたふたしていたが有住は暫く考え込んで、俺に向き直った。

 

 

 

「……まあ、じゃあ『John』の代表さんと話し合いでもさせていただこうか」

 

と依頼人の席に座ろうとし、

 

「やっぱちょっと待って。さっき着信あったの忘れてたしいったん戻る。ああ、ここに戻ってくるからお茶でも用意しといてくんない?ほらいくよひなたさん」

 

「え」

 

「待って、……僕は有住と話したい」

 

「おっけ。じゃあ三人で行ってくるから」

 

と慌ただしく出て行った。さすがにわかる、宥が何か言いたかったんだろう。

 

 

 

「……で。宥は何の用だ」

 

「いえ……私に聞かなくてよかったんです?」

 

「はあ?何をだ」

 

「私が殺人鬼だったかも知れないんですよ?」

 

「あほか。そんなわけないだろ、疑う余地もない」

 

 

 

あっけらかんとそう言い放つ俺に、どこか不安げにしていた宥の表情が和らいだ。

 

 

 

「信じてくれて、ありがとうございます……」

 

「いや、そんなことで礼なんかいらん。信じるなんて当たり前だし、仮に天文学的確率でお前がクロだとしたらお前ぶん殴ってでも止めて翌日誰かに気づかなかった罰でぶん殴ってもらうわ」

 

「いえ。殺人鬼ではありません。……私に赤なんて、似合わないのでしょう?」

 

「まったくだな」

 

 

 

そう息をつくと、宥が続けた。

 

「あの人と入れ替わったんですね」

 

「……まあな」

 

「会ったら戦う羽目になるだろうって言ってませんでしたか」

 

「そうだな。きっと殺し合う羽目になるとも言った」

 

「……あと二年、ですか」

 

「殺し合うメリットって俺にはないけどあいつに理由はあるのかねえ」

 

「どんな理由だったら納得できるんです?」

 

「あー?答え合わせだの復讐だのほざいてたら問答無用で止める。けど、……」

 

「けど?」

 

「……んや。殺し合わないに越したことはないよなって」

 

俺はとっさに嘘をついた。

 

 

 

多分、今のあいつを見るに十中八九、俺は納得して戦うことになりそうだったのだ。やり方はどうあれ、味方をかばうんだ。ちっとは成長したと思う。前の世界の話も混じるけど、でも今の仲間のほうが大事だから前の仲間に突っかかったんだろうなって。それでも濡れ衣着せたのは許さん。

 

 

 

宥が「そうですね」と頷いたところで、三人が戻ってきた。一通り挨拶は済んだようだ。

 

俺と宥、有希が定位置に座り、日向、有住は依頼人席に座る。

 

 

 

こうして濡れ衣を晴らすため、俺の充喜の態度に関する疑念を解消するためのミーティングが始まった。




書き溜めができて無さすぎて新作の投稿頻度と話数的に、なろうでこれ投稿してた時よりめっちゃ落ちそう
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