弱くなってニューゲーム   作:桜油

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最終話です

間違えて投稿してましたが完璧な作者は間違いなど起こしません(矛盾)


エピローグ

世界を救う、その目的のためだけに私は繰り返し、検証し、実践して、なかなかうまくいかなかった。

 

人知れず涙を流し、悔しくて夜も眠れず、……そういう時、私はよく夢想に耽っていた。

 

時を戻し続けて幾億年。

 

そんな私を助けに『彼』が現れて、二人で世界を救う決意を固めるのだ。

 

その世界軸では色んな困難、イレギュラーもあるけど、

 

二人は力を合わせて立ち向かい、

 

困難を乗り越え、いつしか世界は誰も理不尽に苦しまず、時も戻らなくなる。

 

やがて『彼』は『決して嫌われることのない正義』、『ヒーロー』になり、

 

私は―――――。

 

 

 

そんな他愛ない、少女の夢物語を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、れんれん。どした?こんなとこに来て」

 

「そうだよ、丈凪君。君、やるべきことがあるんじゃないの」

 

「「……え?真白さんがいない?」」

 

「うーん……見てないかなあ。汰絃は?」

 

「いや……おれも見てない。ごめんな?」

 

「あー、これ?おれたち、『教会』の改革を進めようと思ってるんだ」

 

「それなら育を間接的に助けられるし、汰絃を手伝えるかなって。異能者差別の発祥の地だから、ここがどうにかなれば、ね」

 

「ま、仲間だろ?一般人になったんだし、苦労は絶えないだろ。いつでも頼れよ。……ひなたさん、深月に言われたのもあるだろ」

 

「もう。……『自分はもう幸せだから、咲も自分のために生きて』だって。私、十分自分のために生きてるのにねえ」

 

「噓つけ。今もお前のためには生きてないようなもんだろ」

 

「えー。私のためじゃん」

 

「じゃあ質問。お前、好きな人はいんの?」

 

「育」

 

「恋愛的な意味?」

 

「あるかも」

 

「告白は?そうでなくても相談は?」

 

「勝手に好きになってる分には迷惑じゃないよ」

 

「ハイダウト。今から告って来い。急ぎで」

 

「いやだ、既に相手いるじゃん!」

 

「知らね。さっさと当たって砕けてスッキリしてイタリアで馬車馬のごとく働いてるうちに本気で好きな奴見つけてそいつと幸せになれ」

 

「酷い!……ひどくない?めっちゃいいこと言ってる。あれぇ……?」

 

「ひなたさんはともかく。れんれん、ゆうきあたりにでも聞けば?図書室にいたと思うんだ。んじゃ、グッドラック!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、怜。どうしたの」

 

「……真白さんは今日は見てない、かな」

 

「僕?……ああ、この福祉の本なんか読んでどうするのかってことね」

 

「世界には……衣食住がままならない人がいる。昔の僕のように」

 

「背景は人それぞれだけど、……悪循環になりやすいんだ。学力がなくて稼げる仕事に就けず、その人の子供も勉強できなくて、稼げなくて」

 

「……だから、平和になった今、僕はそういう人の助けになりたい」

 

「……炊き出し、生活指導、無料で受けられる教育の提供。……資金源は僕が裏で稼ぐだけだよ。幸い、『東京事変』解決の立役者って意味ですでに有名だ」

 

「汰絃や咲は……今後も仲良くやっていって、時々仲間の力になれたらいいと思う」

 

「……これは僕の持論だけれど」

 

「世界征服、と聞くと武力のイメージが強いけれど、……武力なんか使わなくても世界征服はできると思うんだ」

 

「自分の考えを世界に広めて……世界に浸透させる。それが正しい『世界征服』の方法。『衣食住すら確保できない人でも、普通じゃなくても、自分なりに幸せになれる』……そんな考えが世界中で『普通』になれば、きっとそれは、『John』が世界征服したことになるよね」

 

「……宥も似たようなことをするって言ってた。二人で『世界征服』してみせるよ」

 

「……そうだ。宥なら真白さんのこと知ってそうじゃない?」

 

「屋上……たぶんそこに宥はいるよ」

 

「『John』は続けるよ?……いつでも力になるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怜くん。どうかしましたか?」

 

「夕映ちゃん?見てないですね……どうしたんでしょう」

 

「……黄昏てるわけじゃないですよ?だって、今日は卒業式。素晴らしい日じゃないですか」

 

「有希と『世界征服』しに行く?後で言おうと思ったのに……有希から聞きましたか?」

 

「異能リビドーで苦しんでいる人、異能差別に苦しむ人がたくさんいますから。私は二度と理不尽に苦しむ人がいないように、異能の正しい使い方、付き合い方を教えようと思うんです」

 

「私や育ちゃんみたいに、やりたくもないことを暴走状態でやって、罪悪感にさいなまれる人なんて……もういなくていいんです」

 

「……寂しくなる、なんて言わないでください。私は私なりに『決して嫌われることのない正義』でいたいから、頑張るんです」

 

「永遠なんてない。去年の夏、そう思いました」

 

「あれから、たくさん遊びましたね。……まさか私が前に作った人生ゲームを持ち出して、みんなでやろうと言い出すとは思いませんでしたけど。結構不評でしたから」

 

「そして、沢山笑い合ったし、いろんな後始末にも追われました」

 

「そんな思い出たちを深く胸に刻み付け……だからこそ、私たちは、ほかの誰でもない、誰にも負けないくらいとびっきりの、『わたし』を生きていくんです。一人、一つ、道を選ぶのです」

 

「……どうか、お願いです」

 

「怜くんはこれまで、沢山の人を……世界を助けました。自分の魔術師になる進路を閉ざしてまで」

 

「散々、人のために生きました。……だから」

 

「どうか、これからは自分のために生きて、誰よりも幸せになってください。今度、『世界征服』を終えて私が帰ってきたときには、貴方にしかできない『丈凪怜』を生きて、貴方の大切な人と笑っていてください」

 

「……今からそれをしに行くつもり?」

 

「……ふふふ。そうでしたね。余計なおせっかいでした」

 

「でも、これこそみんなの本音でしょうから。……応援、しています」

 

「そうそう。育ちゃんか充喜くんなら知ってそうですよ?生徒会室にいってみてはどうでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、じょ……兄さん」

 

「用事は終わらせてないんでしょ、なんでここに来たの?」

 

「え?教室にいないから探しに?で、見つかってないから人に聞いている?」

 

「あー……ごめん。私も知らないや」

 

「暁をよぼっか?まだいい?……そっか」

 

「……ねえ、知ってる?命さんの名前の由来」

 

「……命さんじゃなくてイクさん?いいよ、私にとっては命さんなんだ」

 

「兄さんも、私の本名は『丈凪育』だけど、『深月』って呼ぶじゃん?最近は『ソダチ』だけど、それも読み方ちがうし……そういうことだよ」

 

「『前回』とか『ほかの世界軸』なんて知ったこっちゃないから、私は私の『今回』を生きる。兄さんが三年前に言ってくれたことだよ」

 

「……えー。何の話だっけ」

 

「そうそう、命さんの名前の由来。手記を見つけたからね」

 

「深月、は充喜の読み方を変えたんだって。で、命は彼が名前を付けたんだって」

 

「ほかの世界軸でも暁とくっついてるなんて、私たちも運命じゃないかな」

 

「……うん?ほかの世界軸なんかどうでもいいって話?」

 

「私は私の信じたいことだけを信じる。戦いの場合はそうもいってらんないけど、世界は平和だから。私は私の不都合を一切信じないのだよ」

 

「……命さんの分も、ほかの世界軸で幸せになれなかった全自分の分も、たくさん幸せになって、みんなに自慢する。それが私の夢」

 

「そうだ、兄さんにこれ言っとかなきゃ。……私と暁、明日結婚するから」

 

「暁が言ったんだ、兄さんには伏せろって。……でも私にとっては唯一の肉親だから、一応ね」

 

「そんな訳で、私は暁を呼んでくるから。じゃ、バイビ」

 

「……何かな」

 

「今?」

 

「幸せだよ。私を好きでいてくれる人がいて、私もみんなが好きだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怜、何の用事?……真白の場所?」

 

「あー。校庭で見たよ。なんか考え事みたいだったし、今もそこにいると思うよ」

 

「……ごめん。僕から少し話してもいいかな」

 

「大丈夫。五分以内で終わるよ。真白も早々そこからは離れないだろうから」

 

「……ありがとう」

 

「えー。小学校卒業式で、僕が君に言ったことを覚えているかな」

 

「―――そう、クソゲー」

 

「一応、僕のその考えって実は変わってなくてさ」

 

「だってそうでしょ?入れ替わり、周回プレイしてないとトゥルーエンドに到達できないとか、神様が実在するならバカじゃないかな」

 

「人生とか分が悪い博打だよ。正解はわからない、その先でもわかることはない。どっちも不正解なんてあり得るし、正解を選んでも幸せになれるとは限らない。人生は選択の連続なんじゃなくて、博打の連続さ。できることなら、燃えるゴミの日に捨てちゃいたいね」

 

「人生イージーモードとかない。人生はいつだってルナティックだ。無難に、周りを理解しながら、みっともなく足掻くしかない」

 

「でも、同時に思うんだ。『前回』、僕がどうしようもないバッドエンドを迎えようとしていたから真白に計画に利用されることができた。そして、気に入らないこととかたくさんあったけど、そんな不幸が積み重なって今がある」

 

「君は僕に言ったね、『俺の過ごした十八年間なんて、大した重みも価値もない空っぽなもの』だって」

 

「僕は君の人生をうまくなぞれていたかなど知らない。けれど、僕の過ごしたこの十三年間は、重くて、価値があって、有意義で、充実したものだったよ。お前なんかよりもずっと上手に『充喜暁』を生きられたし、これからも生きるよ」

 

「ここから先は、僕も、怜も、真白も知らない、神のみぞ知る未知の時間軸。僕はそこでも、ヒイヒイと、クソゲーだなんだとぼやきながら、今を全力で生きていくんだ」

 

「……怜が一番苦労が絶えないだろうけど。余裕だろ?『丈凪怜』を全力で『主人公』にして、『ハッピーエンド』にしてみせた君なら、これから先も、君の人生をうまく乗りこなせるさ」

 

「僕は『軍』提督。君は『軍』の門外顧問組織『John』の代表」

 

「……そして、明日からは義理の兄弟だ。不服だけど」

 

「まあ、困ったら……力を貸すくらい、してやらなくもない」

 

「話はそれだけ。……いってこい、『相棒』。お前のハッピーエンドを、僕に見せろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……怜?」

 

「どうしたの?そんなに慌てて」

 

「……えっ。もう卒業式が始まる?」

 

「あちゃー……ぼんやりしすぎたかなあ」

 

「あはは、大丈夫。もう消えたりしないよ。少し一人になりたかっただけ」

 

「考えてたこと?」

 

「……実はね。本当の世界の破滅する日って、昨日だったんだ」

 

「いろいろあって早まったけど、昨日が終わるまですごく不安だった」

 

「怜は『決意』を使えない。充喜も魔術師でしかない。すごく幸せだけど、次の日に世界が突然消えてたら?そうでなくても胡蝶の夢なんだとしたら?……それが怖かったんだ」

 

「でも、君は必ず『また明日』って、朝を迎えれば真っ先に私のところに来て、おはようって言ってくれる。……明日が怖いのに、君がいたから明日が怖くなくなる。寧ろ楽しみになる。そんな毎日だった」

 

「昨日を超えた今日、……朝日を見て、やっと実感できた。本当に世界は消えないんだって。私は皆と一緒に生きられるんだって」

 

「そう思うと、さ。今迄世界を救うことだけ考えて生きてたから。なんだか胸に穴が開いたようで」

 

「……怜はこれから大変なのにね。なんで弱音言ってるんだろ」

 

「……怜」

 

「私は……世界の命運を君に託さざるを得なかった。人に頼っていい、そう思えた私は重荷が取れたようだけど、君は代わりに重いものを背負ってしまったね」

 

「更に……良かれと思っての行動とはいえ、考えなしに行動してしまったから、世界のタイムリミットを速めてしまって。その後もあまり役に立てなくて……ついには君の魔術師としての道すら閉ざしてしまった」

 

「こんなこと、面と向かって言う資格なんてない」

 

「でも……言わせてほしいんだ」

 

「私に『人に頼る』選択肢をくれて、道を照らして、広げてくれてありがとう」

 

「私の言葉を、願いを、想いを、信じてくれてありがとう」

 

「世界を、みんなを救ってくれてありがとう」

 

「沢山怜に助けられた。感謝してるよ。……言葉にできないくらい」

 

「……だから。『John』代表代行としても、長年の相棒としても。これからは、私が君のことを支え―――――」

 

 

 

「俺は無力で、頼りないやつだ」

 

 

 

俺は夕映の言葉をさえぎって、話し始める。

 

 

 

「魔術も使えない。異能も使えない。肝心なところであきらめる。いろんな人に助けられてここまでこれたが、これから先は更にいろんな人に助けられると思う」

 

 

 

夕映はポカンとして俺に見入っている。俺は言葉を続ける。

 

 

 

「弱くなってニューゲームとはまさにこのことだな。しかも知識すらもう役に立たないからな」

 

「だが」

 

「それでも、俺には夢がある。異能者も、一般人も、魔術師も、みんなが同じ空の下で、笑い合って、手を取りあえる世界にしたい」

 

「頑張って、俺はそれを形にしてみせるから」

 

「夕映には……俺の一番近くで、笑っていてほしい」

 

 

 

「俺の……彼女になってください」

 

 

 

瞬間、風が強く吹く。

 

中途半端に咲いた桜の花びらが舞い、色とりどりの春の花が音を立てて揺れた。

 

夕映は俺の告白に顔を赤らめ、俯き、やがて顔を上げる。

 

 

 

「怜は……あの頃の夢まで、全部叶えてくれるんだね」

 

 

 

夕映は、微笑んでいた。目元に涙が見えた。

 

 

 

「幸せにしてね……私の彼氏さん」

 

 

 

俺は無言で頷き、夕映の手を取って卒業式に臨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕月が真っ白に映えることになるこの日、丈凪怜の『弱くなってニューゲーム』は幕を閉じるが、彼らの『人生』は続いていく。

 

奇しくも、当初に本人が嘆いたよりさらに弱くなって未知の時間軸へと進んでいくことになるのだが、課題は山積みである。

 

そんな訳で、彼はこれから、周りが敵だらけで、だまされ、裏切られ、傷つき、敗れ、病に倒れ、非難され、誤解され、とまあ、ありとあらゆるひどい目に遭うことになる……かもしれない。これまでの世界破滅回避よりもハードモードな人生になるかどうかは、読者の想像次第だ。

 

しかし、一つだけ言っておくとするならば。

 

 

 

そんな彼らの人生が、バッドエンドのはずがない。




明日、解説、後書き、次回予告、初期プロを上げます

※仮免検定と学科、他色々の影響で無理でした
時間に余裕が出来たら投稿します
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