弱くなってニューゲーム   作:桜油

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おはこんばんちわです。

これは一章の幕間のようなものですが、
本編には絡みます。

日常回はできるだけ挟もうと思いますが、
職業訓練と車校で忙しいので後で纏めて投稿という形になるかと。

本編そのものは完結まで書き上げてるので失踪の心配はありません。
ヨシッ!


とおるloop

人を殺したい。

 

久々にそう思った。

 

 

 

唐突だが、僕『充喜暁』は逆行者だ。

 

 

 

前世は『丈凪怜』だった。今と同年代の彼の中も、前世が『充喜暁』の人だろう。

 

僕が狙って、入れ替わった状態で逆行するように仕向けた。

 

 

 

動機は単純だった。異能者という社会的身分最低な僕が、魔術師として将来を期待され、実際に『軍』に推薦されてエリートコースまっしぐらな彼と入れ替わったら、どんなに愉快だろうと。周りに蔑み疎まれ恐れ嫌われた僕が、周りに敬い慕われ崇め愛された彼と入れ替わればどんなに素晴らしいだろうと、そう思ったから。

 

要するに嫉妬だ。当時の僕はそう結論付けないだろうけど、今は隣の芝が青かったのだと思っている。

 

 

 

ただ純粋に魔術師を憎んでいただけの僕は、僕がやっとの思いで作った居場所を壊そうとしていた彼に憎悪を向けた結果、先述のようなことを計画したが、問題があった。

 

 

 

僕にはおおよそ、時間を巻き戻す手段は兎も角、人格を入れ替える手段がなかったのだ。

 

時間だけを巻き戻したって、微塵も面白くなくむしろ胸糞悪い僕の人生を再放送するようなもので、人格だけを入れ替えても同様、僕は死ぬほど嫌いな魔術師と一生関わらないといけない。

 

 

 

それだけは嫌だ。そう思っていたある日、仲間を喪った僕に招かざる客が来た。

 

 

 

青い髪を腰のあたりまで伸ばし、フードのついたボロボロのコートを身にまとってフードを深くかぶって、青い瞳がそのフードから覗いていた。

 

そんな女性、否、僕と同い年くらいの女は僕を見て、にやにやとしていた。

 

気味が悪くて追い返そうと考えていた僕は、しかし女の次の一言に愕然とした。

 

 

 

「『丈凪怜』君。『充喜暁』と入れ替わりたい、そう願ったことはあるかな?」

 

 

 

なんでそんなピンポイントで僕の願いを言い当てたのかさっぱりだったが、その質問に即答した僕は女の話を聞いた。

 

 

 

曰く、「明日が君の命日だ。君は充喜暁と戦い、このままだと敗北して死ぬ」。

 

曰く、「死因は崖からの落下。だから、君は彼を道連れにして、その君の力を使え」。

 

曰く、「君が時間の循環で逆行をするとき、私が君と彼を入れ替えよう。そうすれば君の願いは叶う」。

 

 

 

何者かに追われているのか終始落ち着かない様子の彼女だが、僕はそんなリスクがかけらもない提案は受ける価値があると思った。

 

 

 

だって、どうせ僕は彼にかなわないのだ。成功したら念願の強くなってニューゲーム、失敗しても道連れにできる。彼女の力だけが不安要素だったが、それも直接力見せてもらえたので信用に値した。

 

要求、見返りも尋ねたが、特になく好きに過ごしていいと。

 

僕はその提案に乗った。

 

 

 

翌日の朝も、彼と殺し合う最中も、崖から落下する瞬間も、死ぬほどの不安とは裏腹に、とても気分が高揚していた。崖から落下する際に彼の手をすかさず取り、一緒に墜ちる。彼の驚愕した表情、解決策を考えている絶望も若干混じった表情が途轍もなく愉快だ。

 

 

 

だが、僕の夢は終わらない。計画通り、僕は時間逆行をした。

 

……そして、見事に僕は『充喜暁』になった。

 

 

 

魔力は充分。魔術師は嫌いだが魔術そのものは嫌いじゃないのだ、小さい頃はあこがれたくらいだ。

 

 

 

両親も死んでない。兄妹はいないが別にいてもいなくても変わらない。兄妹と言えば前世は一応いたが、前世で五歳の時に姿を消した双子の妹などどうでもいい。姿など全く覚えていないのだから。

 

 

 

強くなってニューゲームが始まると将来に期待した。協力者、否、共犯者の彼女、真白夕映が彼の経歴を教えてくれていたから、彼の人生さえなぞれば僕もエリート街道まっしぐら。彼の人生をできる限り再現することにした。僕のやりたいことはただ一つ、僕が幸せになって不幸な彼を見下すことだ。

 

 

 

そんな思いで生きていたが……人生はそう甘くなかった。

 

 

 

両親は心優しいと思っていたが、根っからの教育ママと事なかれ主義な父親。

 

 

 

魔術師の才能があるとか普通教育に関しても天才だとか、そんな勝手な期待をして、たくさんの習い事をさせられた。

 

 

 

魔術師の才能とか魔力で決まるものと僕も思っていたが、そんなことは関係なかった。

 

 

 

本当に必要なのは戦闘センスと動体視力、魔術式や魔術理論の理解力、それ全部がそろって尚も求められる、超高度な読み合いに勝てるような心理戦の才能だ。

 

 

 

親はそれを全く理解しないし、僕は一流になれても超一流にはなれない、非凡だが非凡の中では平凡、そんな人だから、親の期待に応えられなかった。

 

 

 

真白は彼は家庭環境が円満だと話していたが、それは彼が魔術が心底好きでまじめだったから期待に応えきることができたのではないか。彼はただの才能マンではなく、才能を驕らず努力できる秀才だったわけだ。

 

 

 

人間関係がうまくいっているのもウソ。彼は極力人と関わっていなかったのではないか?魔術志望者は才能ある人をほめたたえるどころか嫉み嫌がらせで相手を貶めようとするから。一回僕もそれをやられた。

 

 

 

魔術師だけでなく魔術も嫌いになった。

 

 

 

けれど教育ママのせいでやめられない。

 

教育ママの話に、「このまま頑張ればあなたはエリートなんだから!」とあるが、それは真実であり、実例がかの憎き『充喜暁』、つまりある意味僕本人だ。否定できなかった。

 

 

 

……そんなわけで憂鬱になっていた僕は、小学校の卒業式の日、思い至った。

 

 

 

「そうだ、今の僕はどうしてるかな」

 

そういえば、成功したなら『充喜暁』が『丈凪怜』として生活しているはずじゃないか。

 

 

 

そう思い至って、まずは真白とコンタクトをとる。意外と簡単に見つかったのは驚いた。

 

すでに廃墟となっているはずである『丈凪怜』の家がまだ健在で、その隣に立派な家があってさらに渡り廊下まであって、その渡り廊下を、えっちらほっちらと、男物が多少混じった洗濯物を運んでいた真白の姿がそこにあった。

 

 

 

……何がどうなっている?

 

 

 

僕が慌てて問い詰めたが、彼女は「ああ、充喜じゃん。久しぶり」と笑顔であいさつし、

 

「成功おめでと。おかげで私の目的も達成に大きく近づいたよ、ありがとう。ところで今日はどうしたの?強くなってニューゲームなんだから私に用なんかないはずだけど」

 

と尋ねた。

 

……確信犯か?と疑わしく思いつつ、僕は彼の話を聞いた。

 

 

 

曰く、「彼は確かに両親を亡くした、妹も行方不明だね。けど、まともな保護者を見つけた。おかげで異能者と知られることも異能者差別を受けることもなく、いたって普通の生活をしている」。

 

曰く、「異能?発現してるよ。してなかったら私が殺してたけど。彼って面白くってさあ、それを応用してポンポン魔術使ってるし、魔術開発もしてるね。私が相手してるからはかどってるよ」。

 

曰く、「え、関係?さあ?幼馴染というか腐れ縁というか……まあ、彼は私の目的を手伝ってくれるっていうしそれなら私も彼の夢を応援しようと思うから、共犯者?うーんこれも違うなあ。取り敢えず、芳しく思っているとだけ」。

 

 

 

……ここで僕はようやく理解した。

 

 

 

頑張るだけ損だとか、生まれたときに配られていた手札が弱かったら終わりだとか、先なんて知れてるだとか、覆せやしないって、そんなの言い訳でしかなかった。

 

 

 

わかっていたはずだった。

 

 

 

手札なんて自分次第で、どんなに手札が弱くても組み合わせや自分の努力でいくらでも覆せるって。

 

 

 

けど、それを認めたくなかっただけだ。そして逃げていただけだ。自分のどうしようもない劣等感で何の関係もない魔術師を殺していただけだ。

 

 

 

馬鹿だなあ、僕は。

 

 

 

得た情報をもとに彼の通う小学校での様子を見ると、彼は学校ではひどく退屈そうにしていたが、それでも魔術理論の研究をしていたし、目標があって楽しいと言わんばかりの表情だ。僕の空虚な人生とは真逆を歩んでいる。

 

卒業式にもその隙を伺って彼にちょっかいかけに行ったけど、彼に図星を言われただけだ。噓ついて見栄張っていたけど、

 

 

 

「つらいのが自分だけとか香ばしい勘違いをするな」

 

 

 

だの、

 

 

 

「俺の過ごした十八年間なんて大した重みも価値もない」

 

 

 

だの、好き勝手言われる。当の本人は仲間三人を救うときれいごとを言っていたし、たぶん彼はそれを実現してしまうのだろう。三人って言葉が少し引っかかったけど。

 

 

 

だからだろう、つい、漏らすつもりのなかった本音を口走ったのは。

 

 

 

「なんでそんな平気なのか」と。

 

 

 

「自分のしてきた努力を水の泡にされたくせに」と。

 

 

 

「なんで僕の人生を普通に生きてるんだよ」と。

 

 

 

でも彼は強かった。なにも動じない。返答すら持ち合わせている。

 

返事なんか聞きたくなかった。だから、六年後殺すことにした。

 

 

 

……返事を聞いたら、「僕の人生を返せ」なんて言ってしまいそうだったから。

 

 

 

 

 

「人を殺す」動機にはいろいろあるけれど、憤懣や報復が一番多いのではないかと思っている。

 

 

 

かつての僕も、『大した努力もなく、ただ生まれつき魔力を持っていて異能を持っていなかっただけでエリート街道を突き進んで甘い汁を吸っている』魔術師が許せなくて、報復として魔術師を駆逐していた。もう少し器用に立ち回れば『軍』に目を付けられず異能者狩りの犠牲に遭うこともなかったのだろう、しかしそれはたらればの話であり、たぶん同じ人生を繰り返しても僕は同じように生き、同じように死ぬ運命だったかも知れない。

 

 

 

結局は何をするかによるのだろう、人生での成功とかなんて。

 

 

 

だから、今の「人を殺したい」というのはあくまでも憂さ晴らしである。そしてその欲望に忠実に従ったとて、僕の心や人生は満たされるどころか余計空虚になるばかりだ。

 

 

 

……僕は何がしたかったんだっけ。

 

 

 

そうだ、運命を変えようと思った。異能者は不当な扱いを受けるとか、魔術師ばかり優遇されるとか、そういう気持ち悪い何かを変えたかった。

 

 

 

じゃあ、どうしてその運命を受け入れることが、諦めることができなかったんだっけ。

 

 

 

わからない。

 

考えても、思い出そうとしても、思いつこうとしても、意識しても、瞑想しても、想像しても、記憶を掘り返しても、推測しても、考察しても、わからない。

 

 

 

六年後に死合う約束をしたけど、それすら意味があるかどうか。

 

 

 

足取りは重く、大した距離があるわけでもないのに家がひどく遠く感じた。

 

いや、家に帰りたいわけでもなかったのだけど。帰ったところでまた僕の成績の話をされて終わるから。

 

 

 

なんとなく、そんなわけで帰りたくなくて、すぐそこにあった公園に足を運んだ。

 

そこには一人少女がいて、ブランコを優雅にこいでいた。

 

 

 

一つにゆるくまとめられた黒く長い髪に赤の若干混じった黒い瞳、なんとなく前世の僕に似てるけれどしかし確かに別人とわかるくらいに整った顔立ち、流した前髪、そこはかとなく裕福な家庭であることが想像できる、大人しいデザインの、ちょっとしたブランドのシャツとスカートで大人らしく見えるが、実際は僕と同年齢。

 

 

 

僕も知っている。これまで、そしてこれから三年間僕と同じ学校の、深月育。

 

 

 

座学はいつもトップ、教師陣からの覚えもいいし、人見知りというわけでもない彼女。普通なら『軍』に推薦される可能性が現時点で一番高い人。

 

 

 

しかし、僕がそれでも彼女に嫉妬を覚えなかったのは、彼女も落ちこぼれだからである。

 

 

 

実技、それも人が傷つく可能性のある戦闘面において、彼女は全くと言っていいほどセンスがないしやる気もない。時々いる、『人を傷つける』ことに躊躇を感じる、その筆頭だった。

 

心優しいといえばそれまでだけど、魔術師業界では『戦えないでくの坊』『意気地なし』『覚悟がなってない』と嘲笑の的である。魔術師を嫌いである理由の一つだ。

 

それでも戦闘員を志望しているなら僕も嘲笑しただろうが、彼女は自覚しているのだろう、前線に出ない職業を希望している。そしてその方面に関しては優れている。なら、馬鹿にすることはできない。

 

さらに、いつも陥れることしか考えていない魔術師の中ではひどくまとも、むしろ浮いてしまうような人で、陥れられた人のサポートまでしてくれる。正直、僕も彼女がいたから最終的にやめることも落ちこぼれることもなかった。みんなの恩人なのだ。相談相手に選ぶなら、と聞けば彼女の名前が確実に出るくらい。

 

 

 

僕に友人などいない。彼女はそんな僕にも好意的でいてくれるけど、「人を殺したくなった」なんて言ったら流石に引かれる。

 

 

 

そう思い、でも彼女に見つかれば彼女に絶対声を掛けられる、そのくらいの関係である自負もあって、僕は公園に背を向けようとしたのだが、一歩遅かった。

 

 

 

「あ、充喜くんだ。やっほー」

 

 

 

と気の抜けた挨拶をしながら、彼女は僕のもとへ向かってきた。

 

 

 

「お、おはよう」

 

 

 

と若干どもる僕の顔をじっくり見ていた彼女は、いつものように微笑んで

 

「ねえ、話そう。一緒の中学に通うよしみってことで」

 

 

 

とブランコを指さす。……僕が彼女と会うのを避けたのは、この無駄な察しの良さである。

 

 

 

 

 

「いい天気だね」

 

 

 

と隣でブランコを適当に前後に揺らしながら、深月は空を眺める。

 

 

 

「空は青くて、桜が満開で、小鳥たちが囀って、とても素敵。こんな日は笑って花見でもしたかったんだけど、私の周りって皆忙しいみたい。私立って大変なんだね」

 

「受験とか合否とかいろいろあるからね」

 

 

 

僕と深月は四月から公立中学校に行く。僕は親が『私立は落ちこぼれの集団』とか思考を固定しているからだけど、ある意味好都合だった。彼がどちらに行ったかは知らないが、エリート街道などもうなぞりたくなかった。

 

 

 

「だから、君が来てくれないかなあって思ってたんだけど、まさか本当にかなうなんてね」

 

 

 

とけたけた笑っていた彼女は、ふと、

 

 

 

「でも、君が暗い顔してるのは想定外だったかな」

 

 

 

と少し悲しそうな顔を見せた。……なんで深月がそんな顔をするのかよくわからない。

 

 

 

「ねえ、聞かせてよ」

 

「いや、これは僕の問題だから」

 

「それで君がそんな暗い顔をするなら、私にとっても問題だよ」

 

「なんで、また。関係ないだろ」

 

 

 

と、やはりお人好しな彼女は僕に悩みがあるのを察して相談相手になろうとしていた。僕は断り続けた。人を殺したいとか言えない。

 

 

 

けど、

 

「ううん。君と私はなんというか、似た者同士だから。君が暗い顔してると、私も暗い顔しちゃいそう」

 

という言葉で、困惑が深まった。

 

 

 

「いや、全然似てない。僕なんかよりずっと頭いいし、みんなに好かれてるし、逆じゃないか」

 

「それ言い出したら、私より君のほうが戦えるし、勉強もすごいじゃん。前に聞かせてくれたよね、魔術が嫌いになりそうだけどやめられなくて続けてるって」

 

「はあ?」

 

「そういうところが似た者同士なんだよ」

 

 

 

その言葉を否定したかった。

 

違う。僕にそう言わないでほしい。僕なんてしょせん、最初から諦めて周りを責めるだけだっただけの殺人志願者でしかないのだから。

 

その言葉を紡ぐ前に、彼女は自分語りをし始めた。

 

 

 

「私って、両親と双子のお兄ちゃんがいたの」

 

「でも、五歳の時、事故で両親とお兄ちゃんが目の前で死んだ」

 

「私は家族が好きでね、目の前で死んだのを認めたくなかったから、助けたんだ。お兄ちゃん以外駄目だったんだけどね」

 

「蘇生魔術?使ってないよ。そもそも魔術を大して勉強できてなかった。お兄ちゃんは魔術師にあこがれていたのに魔力を大して持っていなくて、私だけ魔術を使うのはいやだなって」

 

「……察しがいいね。そう、私は異能者なんだ。叔母さんからは使うなって言われてるけど」

 

「話しちゃダメだって?うん、でも君には話してもいいって直感かな」

 

「あはは、だめなら仕方ないよ」

 

「話を戻すね。お兄ちゃんを助けたのはいいんだけど、怪しい女の人が来て、私はさらわれた」

 

「誘拐?いや、むしろ保護じゃないかな?その人が来なかったら、そのおばさんの後からついてきてた白いローブの人……教会の人かな?その人にさらわれてたっぽい。教会に言ったらどうなるかなんて、ゾッとするよね」

 

「その女の人、つまり今の叔母さんは、私の使った力はあまり使わないようにして魔術を使えっていうけど。戦う気もないし、魔術も私のこの力も、お兄ちゃんを助けたこと以外は嫌い」

 

「でも魔術師にならないと、それはそれで叔母さんが何を思って私を保護したのかわからないから、続けてる」

 

「ほら、私、戦う才能はないじゃん?物分かりいいほうでもないんだ、そういうふりしてるだけっていうか。だから叔母さんに襲われても反応できない、叔母さんが襲う理由を理解できない。困ったもんだよねえ。せめて本名さえ思い出せばお兄ちゃんに助けを求めるとかできるけど」

 

 

 

そこまで語ると、深月はこう締めくくった。

 

 

 

「不幸自慢とかじゃないよ。だって、不幸とは思ってないんだ。結局、今までのことがあっての自分だし。まあ私は自分が嫌いで、生きたい理由もないけど、死ぬほどの不幸でもないじゃん。全然うまくいかなくても、生きて、幸せな時の妄想できるだけずっといいよ」

 

「まあ、結論は簡単」

 

「私は君のこと、案外いいように思っているよ」

 

 

 

そんな自分語りを聞かされ、僕は、

 

「……なんで自分語りしたの?僕がそれを聞いて敵になるかもとか考えないの」

 

と意図をつかめなかった。

 

 

 

深月はやはりあっさりと答える。

 

「いや?君が相談しづらそうだったから、私が先に秘密を言えば言いやすくなるかなって。まあ聞いてほしかったのもあるかもね」

 

「だから、僕が周りに言いふらすとか考えなかったの?」

 

「それは、別に言いふらされてもよかったかな。嫌でも魔術を学ばなきゃいけない日常からはさよならできるし、君のせいで人生が終わるならそれは仕方ないねって」

 

 

 

その言葉に何も言えなくなった僕に、彼女はとどめを刺した。

 

 

 

「ほら、話しなよ。……お互いくずで愚かなんだから、それでいいじゃん」

 

 

 

そこから僕は色々話した。

 

繰り返しのことは伏せたけど、世界の気持ち悪さも、魔術師の気持ち悪さや憎しみも、僕の本来の居場所で、僕が輝けなかった場所でまぶしく輝く彼の話も、何もかも。

 

静かに聞いて、ドン引きなどせず、時には一緒に涙した。

 

どうして彼女が泣くのかわからなかった。彼女は笑っていった。

 

 

 

「だって、なんかお兄ちゃんっぽい気がしたから」

 

 

 

僕の妹かも知れない彼女は、僕の話の最後に、僕を抱きしめ、まるで姉が弟をあやすようにつぶやいた。

 

「いたいの、いたいの、とんでいけ」

 

偶然か必然か、それは僕が妹をあやすときにかけた言葉そのままだった。

 

 

 

 

 

自分だけが不幸なんだと思っていた。

 

周りの人ばかり幸せそうに見えた。

 

だけど、ある日から、僕の気は少し楽になった。

 

僕はやっと、繰り返した、運命を超えたかった理由を分かった。

 

 

 

六年後、僕はやっぱり彼と殺し合うのだろう。

 

でも目的は、復讐でも、人生の答え合わせでも、ましてや僕の憂さ晴らしでもない。

 

僕自身が、僕の価値を示すためだ。

 

そして今日、僕と、僕の『前回』の妹によく似た育は、そろって学校の校門をくぐる。




充喜暁(たかしきとおる)
…なんか色々拗らせてそうなライバルポジ。でも敢えて言おう、私は主人公よりこの子が好きだ。
深月育(みつきそだち)
…両親死亡、兄蘇生、部分的な記憶喪失、人体実験するヤベー奴らに誘拐未遂、誘拐、優秀だが才能皆無……ハードモードすぎて草。この子曇らせるの性癖になりかけました。

それはともかく、
気に入って頂けたらお気に入り、感想、高評価などよろしくお願いします。
次から二章です。
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