弱くなってニューゲーム   作:桜油

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おはこんばんちわ。

ここから二章です。
二人目のヒロイン…ヒロイン?がいよいよ登場します


中学一年
なだめchange①


小学校卒業から一か月。

 

 

 

中学校に入学して一週間が経過したが、夕映が案外まともに中学校に通っているということ以外、授業内容がつまらないのも一般人差別で俺にまともに友人ができないのも変化がない。

 

 

 

夕映と俺は違うクラスだが、夕映にはある程度魔力があるのでいじめとかはないらしい。純粋にうらやましい。そんな夕映にも友人がいないのだが、十中八九。授業をさぼっているからだろうが。

 

ちなみにテストの成績もひどい。社会の歴史、魔術関連科目、理科の物理、英語だけはまともな成績だが、これは繰り返しているのと彼女の戦闘スタイルの問題だろう。

 

 

 

そう、彼女の戦闘スタイル。小学校六年の頃に異能を封じる魔術を開発し始め、魔術での異能の再現、魔術を封じる魔術、魔力なしで魔術を再現する方法なども実践テストを入れて検証していたのだが、その中で彼女の戦闘スタイルを知る機会もあった。

 

 

 

夕映は『操作』、異能リビドーは『フェティッシュ』。執着心とはいうが、彼女の場合それは『知的好奇心』が強く出るらしい。ベクトル操作、確立操作もできるので、異能を接近戦、魔術を中遠距離戦に用いる俺と戦闘スタイルは似ているようだ。違うのは、俺が常に魔術を使用している場合がある(異能リビドーで『感情の噴出』している場合、魔術の効果や異能の内容が若干変化するから)のと、『精神操作』もできる以上、夕映が心理戦にも強く出られるということ。

 

 

 

充喜暁の言っていた『入れ替えは夕映がやった』については言及していない。そもそも俺に何かしらの期待はしていたのは最初から分かっている。その時に夕映が言っていた『失敗』『成功』の内容こそ、彼の言っていたことなのだろう。彼は夕映の入れ替えた意図を理解していないようだが。

 

 

 

まあ、そんなこんなで友人がまともにいない俺達の生活にさほど大きな変化があるはずもなく、昼休みに決まって屋上に集まっては学食の弁当をつついて雑談や魔術実践理論を駄弁るのだが、今日に関しては違った。

 

 

 

途中まではいつも通りだったが、完食して最初の一言からこの件は始まった。

 

 

 

「あ、そうそう。そろそろ一人目と出会うはずだよ」

 

 

 

なんでもないように夕映がそういった。

 

俺は充喜暁との一件でこの時期に何か起こるのは知っていたので、そうかと相槌を打ち、

 

「何かあったか?」

 

と尋ねた。

 

 

 

「うん、……ちょっとした異常が既にあるけど、間違いなく『彼女』だよ」

 

 

 

夕映が少し考え込む。ちょっとした異常はともかく、俺は『彼女』で誰がくるのかが分かった。三人の仲間に女など一人しかいない。

 

 

 

「汐宮か」

 

「うん。……本来は君と同じクラスになるはずだし、一目でわかるんだけど。なんで私と同じクラスかなあ……同じ中学に行ったからかな?」

 

そういう夕映は少し面白そうだ。

 

「そんなにわかりやすいのか」

 

「うん。時々透明になるし、平凡な成績のはずなのにごまかしてるし、ハサミ持ってるから」

 

と語る夕映。

 

そういうことができる異能者なのはわかったが、このころから鋏を携帯してるのか。いや、ただの文房具かもしれないが。

 

 

 

そして、本来は俺と同じクラスのはずだが今は違う、と。それが夕映の気にする『ちょっとした異常』だろうか。

 

 

 

「『前回』は違ったのか」

 

「うん。いや、私の問題だけどね?私が本来隣町の中学に行ってたのをここにしたから」

 

「……些細な行動の変化で、周囲に影響が結構出るんだな」

 

「そういうもんだからほかの逆行者の連中は本来の歴史をなぞりつつ歴史改変を試みるんだ」

 

「本来の歴史をなぞってたら歴史改変なんてできないだろ」

 

「そこだけはほら、バタフライエフェクトを利用する感じ。そして自分の目的の邪魔なものを消していくけど、消したところで代わりは出てくるからそこも結構厄介だったりする」

 

「なるほどなあ」

 

 

 

話を聞いていると別の疑問も浮かんだので、序に聞いた。

 

 

 

「歴史改変したんだとして、そしたら逆行する意味なんかなくなるから逆行者は消えるのか?それとも記憶だけ消えるのか?」

 

「ああ、それは気にしなくていいよ」

 

と俺の疑問に夕映はあっさり答える。

 

 

 

「逆行って言っても同じ世界の過去に戻るんじゃないの。違う世界……並行世界?の過去に行く感じ。別の世界が平和になっても、元の世界は平和になるわけじゃないんだ」

 

「つまり逆行した時点で未来が確定しているから存在は揺らがないってことか。だが、元の世界に帰るとかは無理なのか?」

 

「人生は選択の連続。何千通りもあるのに狙ってそこに行くのは無理だし、仮にできたとしてもすでに滅んでいるのに戻る意味はないかなあ」

 

「へえ」

 

「同様に、この世界からさらに逆行しても、同じ過去に戻れるわけじゃない、つまり同じ人を幸せにできるわけじゃない。できたとして、その人は姿形がそっくりな別の人物だからね」

 

という言葉で締めくくられた。

 

 

 

そういわれると、やっぱり逆行っていいものではないんだろうと思う。

 

 

 

「……あ、これはあくまで私の逆行のやり方の場合だよ。別の理屈を使って戻す場合もあるけど、存在が揺らぐことは、その手段を使う人の性質上ないと思う」

 

とも続いたが、その別の理屈を語る気はないようなので、あえて聞き流すことにした。

 

 

 

夕映の性格もほぼほぼわかってきていた。重大なことで詳細を話す気があれば割と自分から打ち明けるのだが、重大でない場合は概要だけで詳細は聞かないと教えてくれない。重大でかつ詳細を話せない場合、概要をサラッと付け足すように言う上にその概要にすらぼかしが入るのだ。真白夕映とはそういう人である。ただ、そうやって言われた内容を念頭に置いておくと後で詰みを防げるのもあるので、やはり重大なことに変わりはない。

 

 

 

「それと、これはさっきの話の応用ね。違う時間軸の人間がその世界で死んだ場合、ほかの人物が逆行を試みた時、どうなるでしょう」

 

と夕映の話は続く。

 

 

 

さっきの話の応用。つまり、逆行してもそこは同じ世界ではなく並行世界であるという話を転換すればわかる。

 

 

 

「……死んだ奴は生きている。でも、その人物は逆行によって得た知識、記憶などすべて失っている。……いや、持っていないというべきか」

 

「ご名答。じゃあさらに発展問題。仮にこの世界で特殊な現象を引き起こし、その結果世界が、人類が滅んだとしようか。無論、その時は逆行者すら死んだものとする」

 

「スケールが一気に大きくなったな」

 

「もとからスケールが大きい話をしてるから今更だよ。それで、ヒーローみたいな人が何らかの手段で崩壊した世界を元に戻したとする」

 

「何らかの手段って……どうやるんだよ、逆行も結局別の世界軸に入るだけだろ?」

 

「いや。ここは同じ時間軸に戻す方法があって、そのヒーローはその手段を採用したという前提でいてほしいんだよね。……逆行者はどうなると思う?」

 

「……同じ時間軸なら、ちゃんと生き返るんじゃないのか」

 

「不正解。知識とか記憶とかそんな話じゃなくて、本当に死んだままってのが正解なんだよね」

 

「はあ?」

 

 

 

話がよくわからなくなってきた。というか混乱してきた。

 

 

 

俺の表情を見て、夕映が「まあ、整理というかまとめをするね。これさえわかってたらいいよ」と苦笑いをしていた。

 

 

 

「別の世界軸、つまり並行世界に干渉することは原則できない。逆行は砲台みたいなもので、同じ世界軸の異なる時間軸に行けるわけじゃない。だから、並行世界の人間、もしくは並行世界の人間の知識を得ている人間が何らかの理由で死んだ場合、違う世界軸に行っても逆行したその人格はいない。その発想の逆で、同じ世界軸で巻き戻した場合、同じ世界軸の人間は蘇生できるけれど、違う世界軸の人間に干渉はできないから復活しないってこと。これをひっくり返す方法はなくはないけど、そういうのはやめておいたが賢明だよ。どんな代償があるかわかったもんじゃない」

 

「……そういうものだと覚えておけばいいんだな?」

 

「うん。今理解してる必要はないし、こんな知識を必要とする場面なんかこないほうがいい」

 

「逆になんでお前は知ってるんだよ」

 

「知的好奇心の賜物……と言えば信じてくれる?」

 

「いやウソかよ」

 

「まあ、それは置いておこうよ。せっかくの昼休みだから頭休めないと」

 

「アッこれ話す気ねえな」

 

 

 

俺がそう言ってにらむと、夕映はけたけた笑っていた。

 

 

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

「しかし、汐宮かあ……あいつ、いつから殺人鬼なんだろうな」

 

 

 

それによって俺のやり方がだいぶ変わる。大マジで。

 

 

 

「夕映、なんかそれっぽい噂ってこの時期あったか?」

 

「それ聞かれてもねえ。毎回微妙に違うから断言できないかな」

 

「じゃあ汐宮が仲間にならないルートもあるのか」

 

「いや、それは確定事項。まあどっちにしろ助けるんだろうけど」

 

「確定事項とかあんのかよ……どの世界軸でも共通で起こるってもはや運命じゃないか。ランダム要素もあるみたいだが」

 

「その運命に抗いたいからここにいるんだよ、逆行者が。まあこの運命は利用するけど」

 

 

 

夕映の返しに俺が頭をかいていると、夕映が、

 

「でも、そうだね。ちなみに怜はどっちだとやりやすいの?」

 

と聞いてくるので、「そりゃあ殺人鬼になる前であってほしいが、」といったん言葉が止まる。

 

 

 

「……なんか不都合あるの?」

 

「いや、別のクラスだから。コンタクトの取り方が迷うよなあって」

 

「あー」

 

 

 

俺の続けた言葉に夕映が「確かにねえ」と微妙な表情を浮かべていた。

 

 

 

「そんなの気にしたためしなかったなあ。極力関わらず必要な時は『操作』でごり押してたもん」

 

「いやそこは気にしろよ」

 

「だって気にしようとしまいとあれじゃん、どうせやり直すってなるじゃん」

 

「あーそれもそうか。あれ?俺にはそうしてなくない」

 

「そりゃ、成功した時点で最後の周になるって思ったし、そもそも君は『同類』だから」

 

「そうか」

 

と相槌を打つと、夕映が冗談半分に口を開いた。

 

「一応預言者ムーブかませば多少不自然でも行けるよ」

 

「やるかっての。普通にしたいんだよ、俺は」

 

といなし、話を続けた。

 

 

 

「その点、殺人鬼だったほうが楽なんだよな。コンタクトは取れるし、噂や実際の様子で殺人鬼になり果てた原因がわかる」

 

「原因がわかれば対処できるもんね」

 

「でもなー……殺人鬼にしたくないし、万が一なってたら揉み消し苦労しそうなんだよなー」

 

と悩んでいたが、「いや、揉み消しには苦労しないよ」と反論された。

 

 

 

「なんでまたそう言い切れるんだ」

 

「ん、私が『記憶操作』してあげる」

 

「……お前、何でもできるよな」

 

「何でもはできないよ。できることだけ」

 

フフフと微笑んだ夕映は、そのまま続けた。

 

「それにね。怜は覚えてるかな、『殺さない殺人鬼』って単語」

 

「ああ、たしか『丈凪怜』の仲間三人の誰かの二つ名だよな」

 

「『殺さない殺人鬼』ってあれ、汐宮宥のことだよ」

 

「そうなのか」

 

 

 

汐宮宥は殺すときの一回しか会えていないが、確かに人を殺せなさそうなくらい甘い性格だった記憶がある。自分から殺されに行く人などそうそういないだろう。

 

そう思い勝手に納得していたが、

 

 

 

「なんでも、明らかに即死しているような負傷をしている人が、それでも生命活動を続けてるんだって。だから、殺してるけど殺してない」

 

と言われてげんなりした。殺すよりえげつない。

 

 

 

「リビドーと理性か感情の呵責といろいろ絡んだんじゃないかな、と予想するね」

 

「お、おう。そうだったらいいな……」

 

「反応が鈍いなあ、ちゃんと意味わかってる?詳しく説明しようか。ええとね、頭を鋭利な物で貫かれてるの。骨を見事に貫通しててさ、そこから脳みそが飛び出してるんだけど、それと全く同じことが腹部の腸にも起きててね。あと破裂して跡形もなかったり肉塊になってたり」

 

「食後にそれはやめろ!聞いてるだけで気持ち悪い、もうわかったから一旦黙れ。な?」

 

「ええ?」

 

 

 

平然と……いや、嬉々として人の死体について熱く語っていた夕映は、俺の制止に心底いやそうにそう声を漏らし、しかし黙った。

 

 

 

その話はさておき。

 

 

 

「うーん、汐宮宥ちゃんねえ。……ぱっと見、殺人鬼には見えなかったけど。こればかりは近くで見ないとどうしようもないね」

 

と夕映がうんうんと頷きながら腕を組む。

 

 

 

尚も相談は続く。

 

 

 

「同じクラスじゃないから接点がマジでない……あ、夕映は無理なのか?」

 

「無理無理。あの子、休み時間はいつもどっか消えてるし、尾行しようにも消えるから。神出鬼没だよ、そうでなきゃ殺人鬼かどうかの判断すでにできてるって」

 

 

 

「そっか……」

 

 

 

マジで詰んだかなあ、と頭を抱えていたが、夕映が手でポンと槌をついた。

 

 

 

「あ、いいこと思いついた」

 

「マジで?」

 

「接点さえあればいいんだよね?様子見してても問題なさそうな位置で、頻繫に会える感じ」

 

「おう、まさにそれだ。そんな理想的な案があるのか」

 

 

 

流石俺の腐れ縁にして『逆行者』の大先輩!

 

俺は女神を見たような気分で夕映にずいっと迫る。

 

 

 

「大げさだな、そんな大した案じゃないよ。たぶん誰でも思いつくことだから」

 

と夕映は前置きし、こう続けた。

 

 

 

「ねえ、図書委員になることはできないかな?」

 

 

 

 

 

夕映の提案は確かにありきたりなのだが、しかし盲点でもあった。

 

 

 

学校に通うなら学校の制度を利用したほうが確かに合理的なのだが、如何せん、学校と言えば授業のイメージしかなかったので、委員会活動や部活動は意識していなかった。伊達に『前回』魔術の勉強の虫と呼ばれていない、委員会活動などほかのだれかに任せる気であったのだ。

 

 

 

夕映曰く、汐宮宥は夕映のクラスの図書委員らしい。男女一名ずつなので夕映には不可能な話だが、まだ委員会を決めていなければワンチャンスと思い提案したんだと。

 

無論部活でもいいのだが、さすがに一人の様子見をするためだけにやる気のない部活動をする気はない。かといって辞めたら角が立つ。

 

 

 

その点、委員会活動なら短期間で様子見をやめればいいし、委員会活動の時以外は研究に専念できるというわけだ。

 

 

 

さらに運のいいことに、俺の図書委員の当番は汐宮と丸々かぶっている。

 

 

 

……因みに、委員会作戦が無理だったら図書室に通えば問題ないのだが、その分自由時間が消える。それもそれで困るので、委員会に入れたのは理想的な展開だ。

 

 

 

というわけで俺は早速図書室に行ったのだが、汐宮の姿が見当たらなかった。

 

もう仕事が始まっているような時間。常駐するのは司書さんと図書委員二名だけだが、司書はやる気がないのか出てきていない。利用者はいないのだが、いてもいなくても本の整理や清掃などやることはたくさんあるし、そもそもこの学校がかなり気合を入れたのか、少々入り組んだ、雰囲気あるつくりになっている。利用者を見かけていないからと言って、利用者がいないとは限らないわけで。

 

 

 

こんな状況で探しに行くわけにもいかず夕映に連絡を入れたが、

 

『え?教室に汐宮さんいないよ?仕事に行くって鞄も教室におきっぱだし、靴も昇降口に残ってるから、そっちにいるはずなんだけど』

 

と言われ、学内にいるということ以外大した情報がなかった。

 

 

 

Q.この状況から導き出せる結論は何でしょう?

 

答えは簡単。

 

 

 

……汐宮のやつ、さぼりやがった……!




オクトラ楽しすぎて小説が進まないので失踪





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