なんだよこれ
俺は目の前で壮絶な血生臭い匂いと血塊が広がっている
紛れもない確実な死が俺の目の前に広がっていた
こんな状況になったのは二週間前、教室で昼食を食べながらぼんやりしていたら魔法陣に巻き込まれ異世界トータスに転移した
俺自身異世界と聞いて天職は騎士で少しだけ浮かれていた
とある事情から魔法は使えなかったものの
異世界転移は周辺
だからこそ今回の事件は起こったのだろう
クラスメイトの一人が団長の言葉を聞かずトラップに巻き込まれた
そしてRPGでいうモンスターハウスに巻き込まれ、俺達は混乱状態に陥った
俺達のパーティーはリーダーである園部優花の回復が早く、すぐに体制を整えたが……他は混乱状態で壊滅もあったであろう
しかしながら転移時のチート能力とそして、園部の指示で俺達はクラスを守るように戦っていた
そして勇者パーティーが復帰するまでかなり時間稼いだ
勇者パーティーが復帰するまでに時間がかかったのは恐竜に例えるならトリケラトプスみたいな魔物が反対側にいて王国の騎士団でも太刀打ちできないらしい
俺が騎士であるため防具が固く片手剣と盾を装備しているためにかなりの時間を稼いだ
本来なら騎乗技能があるので動物に乗って戦うのが基本なのだか
そして前線を結局階段への道が開くまで前線を維持し続けた俺は階段を開けた時に地上に戻る時の戦力として治療を受けるようになった
回復魔法待ちで天職が治療士でクラスで人気のある白崎さんから回復魔法をもらおうとした時だった
火の魔法が何故か南雲の方に変化し南雲に直撃したのだ
当然の如く魔物が獲物を逃すわけがない。トリケラが突進し、南雲の胸を貫いた
二代美人と呼ばれる白崎香織と八重樫雫と交流があることからやたらとやっかみを受けることが多かった。オタク文化に精通しているクラスメイトとしての印象しかなかった俺は呆然としてしまった
血の塊が飛び散り
見てるだけで気持ち悪くなりそうでそして吐き気で口を押さえるがその瞬間俺は急激に何かに後ろから押されたと同時に浮遊感が生まれ、気づけば自分の姿がなぜか見えていた
「皆!いいから逃げよう!!」
「えっ!」
「これ以上ここにいても被害が増える一方だから急いでここから抜けよう……」
「ちょっと待って、南雲くんは?ねぇ?」
「白崎さん!!」
俺が見てる俺が白崎の手を掴む
普段だったらクラスの嫉妬を買われても仕方ないが……皆怯んで怯えてしまってる
「……これ以上ここに止まれば八重樫さんや天之河くんたちもあぁなる可能性があるんだ。南雲が助けた命を無駄にするわけにはいかないんだよ。……恨まれたっていい。でも……ここは引かないと犠牲者が増える一方なんだ!!」
「……っ!でも、守るって。昨日約束したのに」
「……白崎さん!!」
ガイコツみたいな魔物も多いしもうそろそろ限界なのが外からでも分かる
俺の肉体を使った何かが白崎を肩を強く掴む。少しだけ痛いし後もつくかもしれないけど仕方がないのだ
白崎さんもすると一瞬だけ戸惑っていたが少しだけ自分でも南雲が助からないってことを理解しているのだろう
「……ごめん」
「謝らなくていいよ。白崎さん。むしろ謝るのはボクの方だから……行こう」
「……」
チート並みの能力を持っているのに何もできなかった俺たちが悪いのにその自分はまるで自分が悪いみたいな声で白崎に向ける声
そしてようやく俺の肉体を使っている人物を俺はここで知ることになった
無言で手を掴む白崎に俺?は何も言わずに階段へと向かう
「……」
グズグスと嗚咽が聞こえてくる
そして階段まで戻ってくる八重樫がで俺と白崎さんに近づいてくる
少しだけ涙の跡が見え、体が震えている。八重樫さんは剣道で負けなしで皆の頼りになることが多いのだけど
「……千川くん」
「……言いたいことは地上に出てからで聞くからとりあえず白崎さんのこと八重樫さん頼めない?ボクは回復終わったから最後列に行って魔物が階段を登ってこないか見張っておくから。八重樫さんと白崎さんは中央に。二人とも多分戦える状態じゃないだろ?」
「……えぇ。香織」
「…」
「白崎さん?」
登りながら、呼びかけてもずっと離すどころか強く握り返してくる白崎さんに俺はどうしたらいいのかわからそうにしていたのだ
「……千川くん地上まで香織をお願いしていいかしら?私が変わるから」
「八重樫さんも下がった方がいいから言ってるんだよ。体が震えてるし涙の跡だって見える。怖いんでしょ?……頼むから今は気を使わないで。八重樫さんに何かあったら白崎さんがどうなるのか分からないんだ」
「……っ!でもそれなら千川くんも香織と居てもらっていいかしら」
「でもそれなら後ろは?」
「……騎士団の人に任せましょう。千川くんも顔が青ざめているし、疲れだって見えてるでしょ?」
…疲れは確かに残っているだろうが、俺ははたから見ると少しだけ苦笑いをしている
辛い気持ちは誰も同じだろう
「……了解。とりあえず地上を目指そう」
「えぇ」
と俺と八重樫さん、そして白崎さん一歩ずつだが前へと向かっていく
しかし、白崎さんの動きが次第に遅くなっている。泣きながら走っているので疲労が他の人よりも困憊し、疲労がピークになっているのだ
「八重樫さん。後から説明よろしく」
「えっ?」
南雲は手首に掴まれていた手を外すと白崎さんを無理やり持ち上げる
さすがの白崎さんもその行為にはギョッとした表情になったので南雲は説明を続ける
「白崎さんのペースが落ちてきてたから。ステータス筋力より僕が持って移動する。魔力も回復剤飲んだから身体強化も当分持つし。だから恥ずかしいかもしれないけど背負う暇はないから我慢して」
と言いながら足を動かす
先が暗闇で見えない程ずっと上方へ続いており、感覚では既に三十階以上、上っている。魔法による身体強化をしていても、そろそろ疲労を感じる頃なのか疲れの色が見え始めてきている。それは隣を走る八重樫に同じことがいえる
流石に休憩が欲しいころだが前方の足が止まる。ふと前を見ると上方に魔法陣が描かれた大きな壁がある
メルド団長は魔法陣を調べた後、刻まれた式通りに一言の詠唱をして魔力を流し込む。すると、まるで忍者屋敷の隠し扉のように扉がクルリと回転し奥の部屋へと道を開くと見慣れた風景が広がっていた
20層の景色にとりあえず一つ落ち着きをいれ、白崎を下ろして軽く休憩したいところだった
「お前達!座り込むな!ここで気が抜けたら帰れなくなるぞ!魔物との戦闘はなるべく避けて最短距離で脱出する!ほら、もう少しだ、踏ん張れ!」
そんなことを言われ俺は少しだけ歯を食いしばっている。安全とは言い切れないからのことだろうけど……それでも八重樫さんが既に限界に近い
元々戦闘を休まず参加し、体も既にボロボロだ
「八重樫さんもう少し踏ん張って」
「え、えぇ」
励まさないと俺も折れてしまうくらいに地上への道が遠く感じる。俺も足を動かし、さっきから妙に静かな白崎さんを運びながら地上に向かう
遠目から見ていると寝ているらしくが涙を流している
そして遂に、一階の正面門となんだか懐かしい気さえする受付が見えた。迷宮に入って一日も経っていないはずなのに、ここを通ったのがもう随分昔のような気がする
気がつくと俺の目の前には白崎の顔とどこか疲れのある八重樫の二人の姿があり、俺にどっと疲れが押し寄せてくる
もう。その中の人はいない。でも心のなかで俺は一言お礼をいうのであった
……ありがとうな。南雲
そして俺達は地獄からの生還を果たしたのだった