ホルアドの町に戻った俺以外のクラスメイトは何かする元気もなく宿屋の部屋に入った。幾人かの生徒は生徒同士で話し合ったりしているようだが、ほとんどの生徒は真っ直ぐベッドにダイブし、そのまま深い眠りに落ちているだろう
八重樫は今日は疲れたのか白崎とともに自分の部屋に戻っていった。反対に白崎は少しだけ落ち着いたのか八重樫を支えながら戻っていった
俺は反対に部屋にはいない街の誰も通らないところで全てのものを吐き出していた
胃酸の酸っぱいものが周囲に広がり溝の中には嘔吐物が広がっているが全く気にならなかった
全てを吐き出した後少しだけ俺はぐったりとしミネラルウォーターで口をゆすぐ
人の死ってこんなに簡単に訪れるのか
俺はあまりにも唐突な出来事に戸惑いを隠せなかった
そして落ち着いた後とある言葉を俺はその物体に話しかけた
「……いるんだろ?南雲」
俺がそう答えるとすると一つのふわふわとしたものが俺に話しかける
『あはは。ごめんね。体貸してもらっちゃって』
「……お前な。強制的に俺を乗っ取る奴がいるかよ。いや。こっちこそ助かった。俺じゃあの状況をどうにもできなかったからな」
『そっか。……あまり時間がないから。手短に話そう』
「あぁ。……とりあえず俺の技能の魂魄魔法って死者と話したり、体を共有できるってことか?」
俺は真っ先に答える。俺の唯一でありながら身体強化以外に使える魔法
魂魄魔法
それは未だに誰も見たことのない魔法であり、王国の人もわからないということだ
『それはボクにはわからないから?でも少しだけ白崎さんと八重樫さんに使ったよ。無詠唱だけど気持ちを落ち着ける効果もあるみたい』
「……すなわち人の魂魄に干渉する魔法ってことか?」
『うん。死んだボクと話せたりするからそういうことなんじゃないかな?』
……なんじゃそりゃ?それが本当なら他の奴との魔法よりも馬鹿げてるぞ?
そういえば
「時間がないって言っていたよな?それってどういうことだ?」
『無理やり千川くんの魂に入ったから後一時間も経たないうちにボクの魂が消滅するんだ』
「……」
俺は小さくため息を吐く。無理やり精神体に入り込んだ場合どうなるのかは俺には理解できない
でも恐らくこの世でみる最後の英雄の姿に俺は少しだけ笑顔を、いや魂であるから顔も何も見えないが
「まったくボッチとボッチは引き寄せるもんかね。それでどうするんだ?」
『それでってどういうこと?』
「一時間くらいしかないんだろ?俺の体貸してやるって言っているんだよ」
『……』
「遠慮するなよ?元々お前のおかげで助かったようだからな。それに、白崎の気持ち気づいていただろ?」
『……うん。でもいいの?もし交換にうまくいかなかったら消滅するかも』
「いいって。俺では救えなかった命を救った英雄なんだ。最後くらい大事な人話してこい。まぁ時間はないからある程度は遺言になると思うけど」
『……聞きたい事とかはないの?』
「あることはある。でも大体予測もつくし南雲が時間がないのならできればそっち側を優先したいから。それよりもお前が俺に何かやってほしいことはないのかよ?」
南雲は少しだけ悩んでいるとするとあって声を出す
『それならお父さんとお母さんに約束守れないでごめんねって言ってくれないかな?それと園部さんにクラスの皆を守ってくれてありがとうって。他には畑山先生にボクの両親が迷惑かけてごめんなさい。でも冗談抜きで先生のことは先生として好きでした。これからも生徒の味方でいてくださいって』
「最初の言葉は正直伝えられるか微妙だけど、園部と愛ちゃんには伝えておくよ」
『それくらいかな?』
「…俺も友達少ない方だけど、…お前流石にその人脈は引くぞ?」
多分だけど苦笑いしているだろうなぁと思いつつも俺は精神を統一する
『それと、白崎さんのことお願いしていいかな?』
「……白崎だけじゃなくて八重樫もだけど。やれるだけやってみる」
『…そっか。それなら少しだけ貸して貰えるかな?』
「おう、俺は二人の部屋の前にいるから、ノックを3回したら俺も中に入るな」
そして魔法を発動させると俺は少しだけ呟いた
「……じゃあなハジメ」
急な言葉に俺の体に入ったハジメは少しだけ苦笑したあと、膝をつきそして涙を流し始める
「うん。またね。タイガ」
そうしてハジメは走り始める
…最後の言葉を伝えに白崎に会いにいくのだろう
『……俺も行くか』
ふわふわと浮かびながら俺は自分の影を追うのであった
そして、それがハジメと最後に話した言葉になった
そして、その丁度三十分後
南雲ハジメはこの世から消滅したのだったった