「……ふぁ〜」
「あら?眠そうじゃない」
「……眠いに決まってるだろ?二人が寝てから俺はハジメの遺品整理してたんだし」
翌朝、俺はあくびをして馬車に乗っていた、同席しているのは幼馴染パーティーの馬車に乗ると思っていた白崎と八重樫の二人だ
ついでに俺たちが三人なのは遺品回収したハジメの道具が正式に俺に引き継ぐことが決まったことであり、あまり思い出したくないのかクラスメイトはすんなりと俺に譲渡を許してくれたのだ
「……南雲くんの遺品?」
「あぁ。知識通りに必要最低限だけ持ってきた……まぁ、スマホと王都の図書館の本かな。さすがに返却しないと不味そうだし……つーかあんなに怒らせたのにお前あっさりと俺が乗っている馬車に乗ってきたな」
「えぇ、結局昨日はいい逃げされたから雫ちゃんが話したいことがあるって」
すると八重樫が俺の方を見る
「…なんて言えばいいのか分からないけど。千川くんって相談部をやっていたのよね?」
「あぁ。元々中学のときに俺の両親の影響で少しだけやってみたいって思って。まぁ、軌道に乗るのは時間かかったけどな」
「……本当にありがとう。昨日香織と夜遅くまで話して、香織に私の気持ちを吐いたらスッキリしたわ」
「まぁ、白崎も八重樫も昨日は辛い思いをしたわけだし仕方ないさ。まぁ俺も結構キツい言い方してたけどそうしないと八重樫はどうせ本心を隠すだろ?」
まぁ憶測だったが結果的に成功したようで何よりだ
「…あら?それならあなたは?」
「相談を受ける側が基本的に嘘をつくことはない。遠慮とかしてたら相談をしてくれた人に失礼だから基本的には本音で話すようにしてる」
「……失礼なのかしら?」
「相談を受ける側には罪はないって言うけど、それは全くの嘘なんだ。相談を受けるのならその人がどうやってその問題を解決するのかを一緒に考えないといけない。答えを伝えて相手の願いを叶える、もしくは相談を受けてその内容には自分では答えられないと拒否することが相手にとって一番ためになることなんだよ」
「……拒否する?」
「そう。例えば、恋愛相談なんかは俺は断ってる。単純に振られたからとかデートに失敗したからとか言われたって責任を取ることはできないし、勉強もな。テストで百点とりたいって言われてもその人の努力次第だから俺は力になれない。大半は俺は断ってるんだよ。なんでもは助けられない。だからこそ助けられる人には全力を尽くすようにしてるんだ」
すると八重樫も白崎が俺を見てくる
「なんだよ?」
「…いえ、私たちはそんな事考えたことなかったから」
「…うん」
「俺の父さんがよく言ってるんだよ。自分が誰でも助けられると思うなって。まぁ実際身をもって感じたよ」
そんな簡単なことも忘れてたと、悔しくてしょうがない
それでも前に進むしかないんだと実感するのだ
「俺は誰も救えない。命は救うことはできない。でも、無くさないように事前に手は打つことはできる。危険になったから助けるじゃなくて、危険になる前に助けたいんだ」
「…そうね。私たちはもしかしたらあなたに救われたのかもしれないわね」
「そんなことは分からないだろ?元々あった確率を潰していくだけなんだからな」
実際俺が助けたとは言い切れない。いや八重樫に関しては俺の自己満足でしかならない
……勝手に同情して、そして話術を使って一度ボロボロにしたのだから
すると睡魔が襲いかかってしまう
「……ふぁ〜」
「……大丈夫?さっきからあくび多いけど」
「徹夜明けなんだから仕方ないだろ……話しているところ悪い。少し王国まで寝かせて」
「寝るっていったってここじゃ首痛くなるわよ」
「……男子だから気にしない……から。…おやすみ」
と俺は目を閉じるとすぐに眠気が襲い
何か柔らかい感触とともに眠りに落ちた
……「……ん?」
俺は元々目覚めがかなりよくすぐに覚醒するタイプなのでしばらくたち目をこすったあと、大きな膨らみの上に昨日から交流のある少女が俺の目の前にいる
「あら、起きたかしら?」
「……!」
声が出ないとはこういうことだろう。八重樫は学校どころか他校でもかなり人気のある女子である。凛々しい性格の綺麗な顔立ちから男女問わず人気の少女につい見とれてしまう
……元々女子慣れしていないのもそうだけど無防備すぎるだろ
どうすればいいのか分からない
頭には太もも特有の弾力のある感触とやけに優しく気持ちのよく撫でられている感触がやけにくすぐったい
おそらく膝枕されているだろう。八重樫の綺麗な顔が直視でき、反対に見られていることが妙に照れ臭い
「……あの、そんなに見られると恥ずかしいのだけど」
「それはこっちのセリフなんだけど、えっと?八重樫?頭撫でるのやめてくれないと立てないんだけど」
「えっ?あっ。ごめんなさい」
すると手を引く八重樫に少しだけ惜しい気持ちが残ってしまう。だけどもおそらく無意識的に俺の頭の中八重樫の赤く染まった照れた顔に俺は理性を必死に抑え込む
……何この可愛い反応
俺はなんとか八重樫から体を起き上がると少しだけ顔を背ける
なんで膝枕をされていたのかどうかなんて分からない。でも心拍数が上がり顔に血が上がる
周囲を見るが白崎はいないらしく、八重樫と二人きりの環境がやけに恥ずかしく感じ無理やりその白崎に話を帰る
「…そういや?白崎は?」
「えっ?香織はメルド団長に呼ばれたのよ。王国についたから」
「王国まで戻れたんだな。これからはおそらく犯人探しになりそうだけど」
「犯人?」
「あぁ。ハジメに魔法を当てた奴の特定。……正直白崎の気持ち的にやりたくはないんだけど……」
「……いえ。あの子も理解しているわよ。南雲くんが香織のせいで殺されたって」
八重樫の言葉に俺は少しだけ驚く。意外な言葉に俺は聞き直した
「どういうことだ?」
「香織が見ていたのよ。火の魔法が南雲くんの方向に変化したらしいの。あなた本当に入れ替わっていたのね」
「信じてなかったのか?」
「半々ってところね。あなたが南雲くんの振りをしている可能性は十分にあったから。あなた名前で南雲くんのことを呼んでいるから」
まぁ、普通なら信じられないからしょうがないけど。最後の最後で関係が変わったというわけにもいかないし
「入れ替わっていた時に南雲くんに謝ってたのよ。守るって言っときながら自分のせいで南雲くんが殺されたって。南雲くんも気づいていたんでしょうけど……香織を責めなかったわ」
「…ハジメなら責めるはずがないだろうな。白崎は完全な善意でハジメを見てたはずだし、ハジメもそれには気づいていたはず。それに最初にハジメを助けようとしたのは白崎だ……責められるはずがない」
思っていたよりは大分楽だし、それにやりやすくなった
でも、昨日から思っていたけど
「…あいつ、スゲェな。辛いはずなのに自分で受け入れようとしているって」
「えぇ。私の自慢の親友だから」
「まぁ、殺されたと判断すれば基本犯人は一人だけだろ。ちょうど火の魔法も使える風属性前衛がいたはずだしな」
「檜山ね」
「あぁ。犯行理由はほぼ白崎の嫉妬だろうな」
すぐに答えがでるし、八重樫も既に檜山については呼び捨てにしている
でも。白崎がどう動くかが分からない
檜山に仇討ちをするのか、それとも檜山をちゃんと裁くのか
どちらにしろ、俺はその犯人を絶対に許さないし八重樫も、白崎も同じことが言える
絶対に許してはいけないのだ
「あなたはどうするのかしら?檜山のことも香織のことも」
「ん?……俺は白崎が殺そうとするなら止めるぞ。殺す価値のない奴を殺して友達が苦しむなんて嫌だろ?生憎敵には容赦はしないけど友達を傷つけてまで仇討ちをするのは違うだろ」
「私としては、香織の気持ちを考えると複雑だと思うわ。……多分殺しはしないと思うわ。ただ自分を責め続けるんじゃないかしら。あの子は優しいから」
「……はぁ、面倒な性格ばっかりだな」
俺は少しだけ頰を緩む。八重樫もその言葉が悪口ではなく、褒め言葉だと理解していたらしい。でも、だからこそ
「……絶対に殺さずに仇は取る」
「当然よ。香織を傷つけた報いはちゃんと受けてもらうわ」
二本のつるぎに火が灯る。それは仇討ちでもあり、最善策でもあるからだ