王宮に入るとハジメの死を罵る奴で多く溢れていた
正直なところ予想はしていたが想定以上の数に少しだけイライラする
今暴れた場合全てがめちゃくちゃになるので俺は黙り込んでいるし、白崎も黙り込んでいる
意外にも一番暴れそうだったのは八重樫だ
八重樫自身あれから感情が出ているって白崎が言っていた。いつもポーカーフェイスであまり感情を面に出さなかった反動が出ているのだろう
「はぁ。もうやってられねぇ」
帰ってからすぐに俺は自分の部屋のベットにダイブする
柔らかな感触が俺を包みその感触を全身で感じる
これで正解だったのだろうか?
同級生を馬鹿にされた俺はさすがにイライラが止まらない俺はベッドでぐったりとしていた
天幕付きのベットはふわふわして気持ちはいい
同時に疲れが押し寄せる
「……クソ」
どうすればよかったのかそんなこと分かることはないだろう
でもたった一つだけ言えることがある
この世界のほとんどが信用できない
ハジメの残した痕跡はかなり大きいものだった。多くの人にトラウマを与え、俺たちを救った
ヒーローなんてとんでもない。英雄って言葉がよく似合う
……地球に帰るか
どうやったら地球に帰れるのか俺も未だに分からない。でもとりあえずこの世界について詳しい仲間を、裏切らない仲間を加えることが先決であろう
とりあえず遺言を伝えにいこうか
俺は重たい体を引きづり部屋からでようとしたところだった
コンコン
ノックが二回なりそこから声が聞こえる
「……千川くん、ちょっといいかな?」
と声が聞こえる。俺は少しだけ驚くが少しだけため息を吐く
嫌な予感がするのは俺だけだろうか
「ん。空いているから勝手に入っていいぞ」
「……うん」
部屋の中に入ってくるのは当然のように白崎である
少しだけ戸惑ったような白崎に俺は少しだけ首を傾げる
俺は入れたこともない紅茶擬きを俺は煎れるとテーブルに二人ぶん出す
元々園部が少しくるくらいだったのであまり美味しくはないだろうがそれでも話合いをするのには違いがない
「どうした?」
「あのね。千川くんはこの後どうするの?」
「俺?」
「うん。雫ちゃんも言っていたんだけど……これから三人でパーティー組まないかな?」
その言葉に俺は少しだけ驚く。それは勇者パーティーを抜けることを意味している
でも、少しだけ予想はついていた言葉の一つだった
「いいぞ」
「…えっ?いいの?」
「あぁ。その代わりといって迷宮に潜るのは少しの間やめよう。……少しだけこの世界でお金を稼ぐ方法を探さないと。俺たちもずっと王宮にお世話になるわけにはいけないし。それに、少しこの世界のことについて知らないと」
「知る?」
「そう。知る。魔物がどんなものがいるのか、獣人族がどのような種族なのかとか色々。はぐらかしてきたことを受け入れることができるようにしないとな……まぁ南雲がやっていたことを俺がやろうってこと。当分は訓練も休んでこの世界の常識とかを自分で学ばないとな。それに錬成もハジメから受け継いだわけだし、それに俺は二人よりも弱いからその分の努力だってしないといけない……まぁ八重樫みたいに剣の才能は技能でしかないからどちらかといえば盾役になるだろうけど」
俺は今後の展望について話し始めると白崎も真面目に聞いている
そしてある程度話終えようとするとクスっと少しだけ白崎は笑っていた
「どうした?」
「ううん。ちゃんと私たちのこと考えてくれているんだなって。でも結局南雲くんのことは?」
「今は何もしない。ただ……一つだけ問題があるんだよ」
「問題?」
「……白崎、今お前がこの世界で絶対に信用できる人物は何人いる?俺はまぁ白崎と八重樫を除いて二人いるけど」
「……」
その言葉は白崎を困らせることになる。でも聞かないといけない
恐らくこの返答によっては白崎も強くないことが分かってしまい、どうにかして生き残らせるようにしないといけないからだ
「なんでそんなこと?」
「……正直俺自身あまり言いたくはないけど、これからは結構辛いこともあると思っているんだ。……でも、今後守れる人間って俺たちでも結構限られると思う。だから優先順位を決めなければならないと思うんだよ」
「……ついでに千川くんは?」
「園部と愛子先生。……二人は部活で付き合いがあるし俺のことをちゃんと理解してくれたからな」
「……私は、雫ちゃんと……千川くんくらいかな」
といったところで口を閉じる。俺は少しだけ不思議に思ってしまった
「天之河と坂上は?」
「……分からない。でも二人は友達だけど……それでも千川くんみたいに私たちのことを心配するってことはほとんどなかったし、それに光輝くんは火の魔法は使えるから」
「……それに関しては省いていい。一応俺も八重樫もハジメを殺した犯人については予想できているから」
すると白崎は驚きの表情を見せる
「知っているの?」
「証拠はないけどな。でも…ほぼ黒だろって言えるかな」
「……」
「……殺すなよ」
「えっ?」
俺が忠告すると白崎はさっきとは違いなんでと言いたげな顔をしている
……やっぱり白崎も気づいていて殺すつもりだったのかと俺は小さくため息をつく
「……言っとくけど利用価値があるのと、殺す価値がないから言っているんだ。ぶっちゃけ帝国でそいつを奴隷送りにしようって八重樫と話しているからな」
「えっ?奴隷?」
「あぁ。勇者パーティーとはいえ犯罪奴隷になるから価格は下がるだろうけど……それでも白崎が殺す選択をするよりはだいぶマシだろ。八重樫には伝えてないけど…白崎がそいつを殺した後にお前がどうするかは大体予想はつくからな」
「……予想がつくって」
「死ぬ気だろ?お前」
白崎の顔が無表情になる。やっぱりと言うべきだろうか。白崎自身既に壊れかけていたのだ
強いとは俺は八重樫に伝えた。でも、それが全てに絶望して自棄を含んでいる可能性を八重樫には伝えないでいたのだ
「つーか今から殺そうとしてたんだろ?だから俺のところに来た。八重樫の今後を頼むためにな。八重樫から聞いたとき少しだけ嫌な予感はしてたけど……」
「…本当にエスパーかなんかじゃないよね?」
「……言ったろ、俺はハジメの記憶を引き継いでいるって。…生憎俺も最初は気づいてなかったよ。いや、多分気づかなかった。たださ、ハジメが見たアニメの記憶にヒロインが主人公の後を追うって奴が何故か思い浮かんで、頭から離れないんだよ」
「……南雲くんの記憶が?」
「あぁ。……というよりもハジメと白崎の馴れ初めも知っている。スーパーでハジメが土下座をしながら子供とお婆さんを大学生ぽい人から助けたのが馴れ初めだろ?オルクスの大迷宮に潜る前に夜中に二人で部屋で話したんだろ」
その言葉に白崎は明らかに動揺を見せる
……なんとなくだけどハジメの気持ちがわかったような気がする
ハジメは白崎のことが遠からず好意的に思っていて、いや多分だけど好きだったのだろう
迷惑だとも思っていたのも多分本音だろう。でも、ハジメは本心を押さえ込んだのだ
もう叶わないから、……好きって言葉を押さえ込んで朽ちていったのだ
『白崎さんのことお願いしてもいいかな?』
分かっていたんだ。あいつが白崎がこれからどうするかも
不器用すぎるだろ
八重樫も、白崎も、ハジメも。元は優しいのだ。俺みたいに欲の塊みたいではなく素で優しい
「…別に生きろなんて言わないけど、ハジメの想いは白崎が思っているよりもずっと強いぞ?俺たちがハジメの思いを背負うのであれば……ハジメの両親に、ハジメの遺言を伝えること」
「遺言?」
「あぁ約束守れなくてごめんねって。……それとお礼だって言わないといけない。ハジメのおかげで俺たちは命を救われたんだからな……どれだけ批判されても嫌われようがそのお礼をハジメたちの両親に伝えること。それが白崎と俺がしないといけないんだ」
「……私がしないといけないこと」
ポツリと呟く
「あぁ。俺はそのほかにも園部と愛ちゃんにハジメからの遺言を預かっている。でも、あいつはお礼とたった一つの願いをいや、俺の分と合わせたら二つか、その願いを託したんだ。生憎死ねないんだよ。……絶対に生き抜いて地球に帰る。それが俺ができるハジメへの恩返しなんだ」
「……私には頼まれてないけど」
「俺への遺言は白崎のことをよろしくって言われたとしてもか?」
「……えっ?」
その言葉に白崎はどういうことと言いたげしている
本当は言うつもりはなかったんだが…それでもここは言わないといけないような気がした
「それに思い出せ、あいつはこの世界の最後に白崎といることを選んだんだ。あいつにとって白崎は特別なんだよ。まぁ白崎の本当の気持ちにも、ハジメの気持ちも全く理解してなかった鈍感な二人だけどな。……あいつは自分を消してまで白崎を助けたんだ。お前が生きなければハジメはただ自分が死んだだけになるんだよ」
「……」
「まぁ、俺が言えるのはこれくらいだけ。……復讐するにしろ俺には止める権利はないからな」
「…ずるいよね。千川くん。そういわれると絶対に私ができないってことを知っているのに」
「生憎、俺は友達を死なせることはしたくないからな……例え嫌われても構わない」
「……本当にずるいね。でも……私はなんのために生きたらいいのか分からないよ」
白崎のショックだってわかる。実際一番傷を負っているのは明らかに白崎だろう
好きな人を亡くしたのだから。でもハジメが願っていることは多分一つだ
「幸せになればいい」
「えっ?」
「人間として幸せで生きればいいんだ。恋をして結婚して、子供をそだてて、人として普通であり、当たり前のように幸せであればいい。ハジメもことは忘れるなとはいえない。でも生きていてよかったって思えるときはある。苦しいことも悲しいこともあるのが人生だ。だから、俺が言えることではないけど、白崎は誰よりも幸せにならないといけない。ハジメがあっちで助けた意味があったっておもえるくらいにな。それが当然の権利だから」
俺が答えると白崎は少しだけ考えている
生きることについて、幸せについて考えているのだろうか
でも、さっきとは違い目の色が少しだけ上向いている
現実は厳しい。でもその中でどうやって幸せになるのかが俺たちの人生がよかったのか悪かったを判断することになる
「……ねぇ、私幸せになれるのかな?」
「幸せになれるかは白崎次第だろ」
「うん。そうだね。……でも、私は恋をできるのかな?南雲くんよりも好きな人ができるのかな?」
「…いや、ハジメより好きになる必要はないだろ」
「どういうこと?」
「ハジメを忘れる必要だってない。例えばこの人と一緒にいたいとか、好きの形だって色々あるだろ?俺は白崎がハジメの好きがどんな好きだったのか分からないけど……想いの強さなんて関係ない。自分が相手のことをどう思うのかが大切なんだよ」
実際好きってどういうことなのかは分かっているし、俺だって好きになったことがある人だっている
特に俺は憧れた人を好きになる傾向が多いけどもっと知りたいとか一緒にいたいと思ったことだってある
「ハジメのことを好きなら好きでいいじゃないのか?でも、ちゃんと白崎がその人を好きになったって自覚ができたら、そのときは積極的にいけばいい。相手を逃さないように捕まえてしまって、好きにさせれば白崎の勝ちだ」
「……好きにさせたら」
「もう後悔なんてしないっていうくらいにな。あの世に着いたときにハジメに自慢できるようにな」
既に白崎の頭には自殺とか復讐とかそんなことは考えてなさそうだった
目の光が点り既に少しだけ笑顔が見られる
「千川くんは?」
「ん?」
「千川くんはどうなの?そう言う人はいる?」
「大切な人たちはいる。守りたいと思う人も、応援したい人だっている。……まぁ、俺は弱いから強くなってからだな。せめて八重樫と白崎の前で二人を守るくらいには強くならないとな」
「……私たち?……もしかして南雲くんにお願いされたから私たちのことを?」
「白崎。それは失礼だぞ」
俺にとっても、八重樫にとっても失礼に当たる
そんな軽い気持ちで二人と付き合うくらいなら最初からハジメに断っている
「……俺は自分の意思でやりたいんだ。正直俺は今まで受け入れてくれる人は少なかったからな。軽く依存しているかもしれないけど、それでも捻くれ者の俺を受け入れてくれた人を、失いたくないから。俺は全員は救えないし、全員を救おうとは思わない。檜山には絶対に報いは受けてもらうし許す気なんてさらさらないからな」
殺した檜山は絶対に許してはいけないし死にたいと思うくらいには絶望を与える
私怨かもしれないけど……教会が相手だろうともはや関係ない
「俺はもう流されない。生きて地球に帰る。大切な人たちと一緒にな」
俺は少しだけ力が篭る。もう道を間違えない
油断もしない。味方なら守る
そして敵であれば、例えクラスメイトでも容赦はしない
「うん。……それじゃあ私も手伝う。雫ちゃんも同じことをいうと思うから」
「まぁ、八重樫もある程度はやるつもりでいるらしいからな。まぁ、俺は指示とかは向いてないから。とっさの判断もうまくはないし」
「…そうなの?千川くんそういうの得意だと思ってた」
「苦手。状況整理や解決方法を考えるのは得意だけど、それでも結構考察時間がいるからな。咄嗟の判断はできない」
結構考えることが多いのですぐに結論にたどり着くのは苦手なのだ
「それじゃあ。雫ちゃんにも話すことがあるから戻るね」
「あぁ。おやすみ」
「うん。また明日」
といい部屋から出ている白崎を見送って俺は苦笑してしまう
そして俺は必要な道具を取りに外に向かうのであった