聖なる刃と、不思議な本。   作:ほろろぎ

4 / 19
第四章 剣士の力、その由来。

 伊予島家から託されたブレイブドラゴン・ワンダーライドブックの力で、剣司は炎の剣士『仮面ライダーセイバー』へど変身゙した。

 先ほど風に、剣司は勇者ではないので戦う力はない、と言われたばかりだったため、目の前の状況に友奈と東郷は唖然としている。

 セイバーとなった剣司は、二人に声をかける。

 

「この力があれば、風さんと樹ちゃんを助けられる。結城さんと東郷さんは、ここで隠れてて」

 

 友奈の心にはいまだ迷いがあった。

 仲間の命の危機に、なにもしないでいいのかと。

 しかしその、仲間の命を心配し守ろうとしているのは、目の前の剣司も同じ。

 そんな男の決意を、無駄にするような真似はしてはいけない、と少女は決めた。

 

「分かりました。私たちは、ここで先輩たちが帰ってくるのを待ってます。それが、私たちの゙約束゙です」

「絶対に、三人で戻ってくるよ」

 

 セイバーは力強くうなずくと、怪物目指して駆け出した。友を救うために。

 

 一方の風たちは、近距離でヴァルゴの爆弾を受けたため、たまらず地面に叩きつけられてしまっていた。

 二人には、神樹の力の一旦を(さず)けられた精霊が、それぞれにサポートとしてついている。

 その精霊は、敵の攻撃に対してバリアを張ることができるので、風も樹も怪我は負わずにすんでいた。

 

「クソっ……樹、大丈夫……!?」

「う……ぅう……」

 

 近距離で受けた爆風の衝撃で、頭がクラクラする。

 風は上半身を起こし、樹に呼び掛ける。

 樹の方は、まだ衝撃の影響から立ち直れない様子だ。

 

 そんな二人に、ヴァルゴは容赦なく追撃を加える。

 姉妹それぞれに向かって、二発の爆弾が発射された。

 

「やばっ……」

「てやあぁぁぁーっ!!」

 

 突然聞こえてきた、第三者の声。

 飛び込んできたセイバーは、勢いそのままに爆弾に突っ込む。

 そして、すれ違う瞬間に火炎剣を振りぬいて、二発の爆弾を両断した。

 爆弾は姉妹に到達する前に、その脅威を無効化される。

 

 着地したセイバーは、倒れている姉妹のもとへ走り寄った。

 

「風さん! 樹ちゃん! 大丈夫か!?」

「え……その声、剣司!?」

「剣司さん……その姿は……」

 

 セイバーの格好を見た姉妹の目が点になる。

 

「え? え? なにこれ。なんで剣司が……っていうか、その格好なに!?」

「俺もよくはわからない。でも、ご先祖様の本が、力を貸してくれたんだ」

 

 セイバーは姉妹を立たせてやりながら答えを返す。

 

「ってわあああ! 二人とも、また爆弾が」

「はあっ!!」

 

 ヴァルゴは、さらなる追い打ちをかける。

 が、樹の叫びに反応したセイバーが、振り向きざまに剣を振りぬき爆弾を両断した。

 

「もう、なにがなんだかって感じだけど……今はとにかく、あのバーテックスを倒すわよ!」

「分かったよ、お姉ちゃん!」

「剣司も……こうなったら、協力してもらうからね」

「ああ! 俺はそのために変身したんだ」

「行くわよっ!」

 

 風の声を合図に、二人の勇者と一人の剣士は怪物に挑みかかる。

 

 樹は糸状の武器を伸ばし、鞭のようにヴァルゴの体を打ち付けた。

 風は大剣で、セイバーは烈火で斬りかかる。

 しかし……

 

「なんだこれ!? 硬いっ!」

 

 セイバーが驚きの声を上げた。

 三人の攻撃は、ことごとくヴァルゴの体表に弾き返され、ダメージを与えることができない。

 

「この手ごたえ……まるで、大きな岩(・・・・)に剣を叩きつけたようだ。見た目はタコみたいなのに、硬すぎるぞ!?」

「そうなの。この肌のせいで、あたしたちもさっきから苦戦してるのよ」

 

 話しながらも、三人は攻撃を加え続ける。

 しかし一向にその刃が通ることはなかった。

 

「バーテックスっていうのは、こんなに厄介な相手なのかい?」

「あたしが大赦からもらった情報では、ヴァルゴ(こいつ)がこんなに手強いなんて書かれてなかった。もう、分かんないことだらけで、頭がパンクしそうよっ」

 

 その時、樹の頭に事態を打開するための考えが浮かんだ。

 

「お姉ちゃん、剣司さん。バラバラに攻撃するんじゃなくて、一か所に集中すればどうかな!?」

「さすがあたしの妹、ナイスアイディア!」

「いや、それだけじゃダメだ。なにか、さらなるもう一手を……」

 

 剣司の脳裏に、そのもう一手の策が浮かんだ。

 それは、ベルトにセットされているブレイブドラゴン・ワンダーライドブックからの情報だった。

 

「俺が先行する!」

 

 セイバーは、手にする火炎剣烈火をソードライバーに納刀する。

 烈火のトリガーを引き、再び抜刀。

 ブレイブドラゴン・ワンダーライドブックの力が、剣に収束する。

 

『必殺読破』

「火炎十字斬!!」

 

 極限まで高められた炎の斬撃。

 超高温の刀身によって、岩のようだったヴァルゴの体表が、溶けるように切り裂かれる。

 

「まだだ! 続けてくらえ、火龍蹴撃破(ひりゅうしゅうげきは)!!」

『ドラゴン、一冊撃。ファイヤー』

 

 ドライバーに納刀した烈火を、今度は抜かずトリガーを二度引く。

 炎の力を次は右足に集中させ、飛び蹴りを放った。

 

 蹴りの一撃は、先ほど火炎剣で切り裂かれた(あと)に直撃。

 セイバーは傷口を割って、ヴァルゴの体を弾丸のごとく貫通していった。

 

「わぁ~」

「すっご……」

 

 樹も風も、セイバーの必殺技の威力に目を見張った。

 

 ヴァルゴに初めてダメージを与えることに成功したセイバー。

 飛び蹴りののち、重力にひかれて落下したセイバーの近くに、あるものが落ちてきた。

 それ(・・)はヴァルゴの体から体外に排出されたもの。

 一辺が十センチにも満たない、四角形の奇妙な物体……。

 

「これは……?」

 

 セイバーは、ヴァルゴから出てきた物体を手に取る。

 

 ヴァルゴの様子が一変した。

 体表が波打つようにうごめき、これまで宙に浮いていた巨体が、力なく地面の上に下降しはじめる。

 明らかに弱っている。

 風はこの機を逃すまい、と樹に呼びかけた。

 

「樹! こいつを封印するわよ!」

「え? 封印って、聞いてないよ、お姉ちゃん!?」

「バーテックスは手順を踏まないと倒せないのよ。 ダメージから復活する前に、早く!」

 

 風は樹に指示して、スマートフォンに入っている勇者のためのテキストを読ませる。

 慌ててそれを流し見た樹は、まず定位置についた。

 続けて、封印のための特別な祝詞(のりと)を唱え始める。

 

「え、えぇっと……『かくりよのおおかみ、あわれみたまい、めぐみたまい』……?」

「大人しくしろ、こんにゃろーっ!!」

「えぇっ!? それでいいの!?」

「魂がこもってれば、言葉はなんでもいいの!」

 

 律儀に祝詞を唱えていた樹の頑張りもむなしく、風が気合の雄たけびと共に叩きつけた大剣によって、封印の儀式は発動した。

 動きを抑えられたヴァルゴの、頭部と思わしき部位が開口。

 中から、三角錐の物体が露出する。

 

「風さん、あれは……?」

「あれが御霊。言うなれば、バーテックスの心臓よ」

「じゃあ、あれを壊しちゃえば」

「そ、あたしたちの勝ち。ってことでぇーっ!」

 

 風がジャンプし、全力を込めて大剣を振り下ろす。

 

「くあぁーっ!? 御霊まで硬すぎっ!」

 

 ヴァルゴ本体同様に、御霊も頑丈にできているようだ。

 それでも、先の風の一撃で亀裂は生じている。

 

「よし。もう一度、三人で同時に攻撃しよう」

「分かりました、剣司さん」

 

 セイバーと樹も飛び上がり、風も加わって亀裂に攻撃を集中。

 三位一体の攻撃を受けた御霊は、パキンッという音と共に、ガラス細工のように砕け散った。

 続けて、ヴァルゴ・バーテックスの本体も、砂のような粒子状に分解されていく。

 

「……これ、私たち勝ったの……?」

「そうだよ、樹! 私たちの勝ちだ!!」

「よかった……みんな無事で」

 

 三者三様に勝利の喜びをかみしめる中、樹海は大きな光に飲み込まれていった。

 

 「……あ、先輩たち!」

 

 友奈の声がした。見れば、彼女の横には東郷の姿も。

 そして、辺りはすでに樹海ではない。

 少女らは讃州中学の校舎、その屋上に立っていた。

 

「戻ってこれた……のか」

 

 ドライバーからライドブックを抜きとり、セイバーの姿を解いた剣司がつぶやく。

 風は友奈らの元へ歩みより、その身を確かめる。

 

「友奈、東郷も、無事でよかった」

「風先輩たちも。剣司先輩は、約束を守ってくれたんですね」

「ああ。約束も、みんなのことも、この世界のことも……守れてよかった」

 

 眼下に広がる街を見て、一同は胸をなでおろした。

 

「これで終わったんだよね、お姉ちゃん」

「今のところは、ね……」

 

 風の物言いに、四人は引っ掛かりを覚える。

 だが、誰かがそれを口にする前に、風が言葉を続けた。

 

「あたしたちが樹海にいた間、この世界の時間は止まっていたの。だから今はお昼休みで、この後も授業があるんだけど、みんな疲れただろうから、今日はもう早退ってことにして、帰って休みましょう」

 

 早退の理由と、突然教室から五人の姿が消えた状況については、大赦があとでフォローしてくれる、と風。

 揃って屋上をあとにし、校門をくぐろうとしたところで、風のスマートフォンに着信があった。

 

「大赦からだわ。剣司に、今から大赦の方まで来てほしいって」

「俺に用事?」

「あんたが変身した、あの仮面ライダーってやつについて、話が聞きたいんじゃないの? あたしも、あんなの大赦から知らされてなかったんだから」

「わかった。俺の方も、セイバーのことについては知りたいと思ってたんだ」

 

 剣司は少女らと別れ、一人大赦の建物へと向かっていった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 大赦──それは、ウイルスに覆われた四国を守護する存在『神樹』を(たてまつ)る機関であり、その権威は政府をも上回る国の最重要組織である。

 

 その大赦の支部の一つに、剣司はやって来た。

 カバンには聖剣ソードライバー、ブレイブドラゴン・ワンダーライドブック、そして、ヴァルゴの体から排出されたあるもの(・・・・)を入れて。

 

「ようこそ、おいで下さいました。神川剣司様」

 

 建物の入り口をくぐる前に、どうやって彼の来訪を知ったのか、白衣(びゃくえ)を着た神職風のいで立ちの人物が、剣司を迎えた。

 その人物に案内され、剣司は大赦の建物内へ通される。

 

 廊下を突き進み、やがて建物の奥にある部屋の前にきた。

 

「どうぞ、こちらへ」

 

 入室を即され、剣司はそれに従い部屋に入る。

 畳の上に対面する形で座る二人。

 神官は、おもむろに頭を下げた。

 

「えぇっ! いきなり土下座!?」

「この度は……」

 

 驚く剣司に構わず、神官は頭を下げたままの姿勢で言葉を続ける。

 

「勇者様方の戦いにお力添えをいただき、感謝の言葉もございません」

「いえ、そんな……。俺はただ、約束を守りたかっただけです」

「約束?」

「友達を守りたい。その一心があればこそ、俺はあの時戦えたんです」

「……そうですか」

 

 神官は一瞬、笑ったように剣司には感じた。

 

「剣司様がお使いになった力は、かつて三百年もの昔、あなたのご先祖である伊予島杏様がお使いになっていたもの」

「ええ、それはおじから聞きました」

「杏様も、初代の勇者様たちと共に、バーテックスと戦われていたのです」

「ご先祖様もライダーだったんですか!?」

 

 うなずく神官。

 

「そもそも火炎剣烈火とは、この世界が『全知全能の書』と呼ばれる本によって、混沌から今の形に創成された際に、闇と別たれた光の具現化」

「この世界が本から生まれた……!?」

「烈火の炎が知性の(ともしび)となり、その知恵を与えられたものが」

「今の、俺たち人間……」

「そして、三百年前……何者かが全知全能の書の力を使い、世界の理を書き換えたために起きたのが、ウイルスの世界への蔓延とバーテックスの誕生の由来なのです」

「なんですって!?」

「ですが、神樹様は世界全てがウイルスにおおい尽くされてしまう前に、全知全能の書の力を分冊された。それが、剣司様もお持ちになっているワンダーライドブックとなったのです」

 

 剣司はカバンから、一冊の本に似た物体を取りだし、神官に見せた。

 

「これは……」

「俺たちが戦ったバーテックスの体から出てきたものです」

 

 それはワンダーライドブックによく似ているが、表紙は黒く、本に絡みつくように鎖が巻かれている。

 

「これの名は、『アルターライドブック』。ワンダーライドブックの一種であり、我ら大赦が管理していたものです」

 

 神官が答えた。

 

「犬吠埼風様の報告によれば、バーテックスは大赦の予想よりも力を増していた様子。この『岩石王ゴーレム』の本の力によって、体質が頑強に進化していたのでしょう」

「なんでバーテックスがライドブックを……?」

「アルターライドブックは大赦の保管庫に封印されていたものです。ですが、我らが気が付いた時には、そのことごとくが遺失していた」

「え……それって」

「おそらくバーテックスの側に、我々人類に対する裏切り者が存在しています」

 

 感情を一切見せない神官の物言いに対して、度重なる驚愕の情報の連続を受けて、ついに剣司は言葉を失ってしまった。

 

「こちらを、お受け取り下さい。剣司様の戦いの助けとなるはずです」

 

 驚きから抜けきれない剣司を余所に、神官は彼にいくつかのワンダーライドブックを渡してきた。

 言われるがままにそれを受け取ると、用は済んだとばかりに大赦支部の建物から外に、追いやるように出される剣司であった。




烈火の設定は、セイバー本編のものとは少し変えています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。