だから今回はウマ娘回、ちなみに弦太郎がよく出てきますよ( ˆᴗˆ )
「クソッ…!!」
「…」「…」
悔しそうに顔を歪めながら壁に拳を叩きつけるウマ娘。その名前はナリタタイシン。
それを遠目から、声をかけてやりたいがそっとしてやりたい、そんな気持ちが入り乱れて動けない2人のウマ娘、ウイニングチケットとビワハヤヒデ。
今日は模擬レースがあった。中距離の芝2400。身体が他のウマ娘より小さかったタイシンには少し厳しい距離だったが心配されるのを嫌うのは2人が1番よくわかってる。
「ねぇ、ハヤヒデ…」
「どうすれば…いいんだろうな」
「なんで…!」
一緒に走るメンツには、いつも遠回しに馬鹿にするヤツらがいた。今日で見返してやろうと思った。
身体を大きくしたいから吐くくらいまで沢山食べた
トレーニングだって日が暮れるまでやった
どんな事も耐えてやってきた。なのに______
「なんで…勝てないんだよ…!」
いつもそうだ、小さい時からずっと…、こんな小さな身体のせいでバカにされ続けてきた。ウマ娘に生まれたことによりそれはさらに欠点になってしまった。他の奴が羨ましいと思う。こんな小さな身体に生まれたことを憎みさえする。
「このっ___!!」
悔しさ、腹立たしさにもう一度壁を殴りつけようとした時だった。
「いい走りじゃんか!お前!」
「…?」
最初は自分じゃないと思っていた。だが周りにウマ娘はタイシンしかいなかった。
自分に言われたのか?と拳が止まって、そのまま下に落ちる。
バッジを付けてるからトレーナーだと一瞬でわかった。
タイシンの口から出るのはいつもの言葉。
「何の用、慰めにでも来たつもり?」
いつもなら大抵はここで言葉がつまり、たじろぐ。
(どうせ慰めだ…)
と思ってその場を去ろうとする……
「俺は本気でいってるぞー!!今日のレースも惜しかった!」
惜しかったって…12着中7着、入着すらしてないのに惜しいって…
「俺、如月弦太朗!訳あってトレーナーやってる!お前は?」
「は?」
いきなりすぎる自己紹介に、タイシンが固まる。名前は聞いたことがある、最近入ってきたトレーナーで、確か仮面ライダー…とかなんとか…
「……」
「あっ…!ちょ…!」
関わるのは面倒くさそうなので、無視してそのまま歩く。見た目のヤンキーさとは裏腹に、追っては来なかった。
(なんだあのトレーナー…)
タイシンは疑問に思いながらもすぐ忘れるとおもって帰った。
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〜4日後〜
「なぁおい!!名前くらい教えてくれたっていいじゃんか!!」
「………!」
なんだコイツは、あまりにもウザすぎる。これじゃあ忘れることが出来ないじゃないか。
もう4日だ。その間ずっとコイツは自分にまとわりついて離れない。登校時も休み時間も帰宅時間もゲーセンでも、昼寝の屋上まで来られた時は気が狂いそうになった。今もそうだ。やっと横になれると寝転んだらまさかのその横にいたのだ。
「あぁもう!しつこい!」
「やっと口聞いた!」
(ウザイ…!!チケットよりしつこい…!!)
またどこかへ逃げようと立ち上がるが…
「おい待てって!」
「っ!?」
腕をガシッと掴まれて逃げれなかった。相手は所詮人間、ちょっと力を込めれば振り払えるのだが_____何故か振り払えなかった。
まるで自分が止めて欲しかったみたいに…
「なんなのアンタ…一体アタシに何の用…」
「何の用って…なんだっけな…____あ!お前をスカウトしにきた!」
「…は?」
今まで自分をスカウトしにきた奴はそれなりにいた。でも自ら切った。こんな奴らと練習しても強くなれない。そうわかったからだ。
「前のレース、悔しかったんだろ?だったら俺がお前を強くする!お前が身体が小さくても勝てるって証明を_____」
「うるさい!!!」
「…!?」
瞬間、無意識的にタイシンは叫んだ。拒絶するように
「全員そうだ!身体が小さくても勝てる勝てるって言って1回も勝てたことがない!!___自分で努力しても、全然ダメだった!!」
「…」
「アンタにアタシの何が分かるっていうの!?___はぁ…はぁ…」
息をすることすら忘れ叫び続けたタイシン。とうとう息切れを起こしてしまった。そこで弦太郎がやっと口を開いた。
「お前のことは何もわかんねぇ、話したこともねぇしな…」
座った体勢で空を見上げながら言う弦太郎。
「でもな、夢を全力で追う奴を俺は見捨てたくねぇんだ」
綺麗事だと思って切り捨てたい、なのにコイツの言葉はタイシンの冷えた心にスっと入ってきて溶かしていく。そしてとうとう、タイシンは耐えきれなくなってしまった。
自分の胸の内にある感情を全てぶつけた。だが弦太郎はずっと聴いてくれてていた。否定もせず、肯定もせずただずっと、優しく…
「午後の授業、サボったな…アタシ」
話し終わって、少し落ち着いたタイシンと弦太郎。微妙な距離感で座る2人を風が撫でた。
「大丈夫なのかよ…」
「別に、なんとでもなるし…てかアンタは怒らないんだね、授業に行かないこと…他のトレーナーなら怒ってきたよ?」
「別に、誰だってあるよ。ぜーんぶめんどくさくなるやつ。俺だってめちゃくちゃ授業サボったしな!」
まるで自慢するかのように語る弦太郎に、思わずタイシンが吹き出した。
「なにそれ…」
「あ、それでだ!」
弦太郎が思い出したかのように懐から紙を取り出す______
「分かってる。アンタの担当になってやるよ___アタシを強くして」
「おう!」
そう言いながら立ち上がり、タイシンが拳を弦太郎に向ける。弦太郎も立ち上がり、迷うことなくその拳に自分の拳をあわせた。
「だけどお前だけじゃない!」
「え?___」
一瞬だが2人のウマ娘の顔が思いつくが、すぐさま違うと否定する。だってまだ出会ってすらないだろうし______
「おーーーーい!!!タイシィィィンッ!!」
2人だけの雰囲気をぶち壊したのは、学園中に響き渡りそうなくらいの声。タイシンが嫌いで___でも嫌いになりきれない声だった
「…。」
「やあ、タイシン」
「3人は特に仲が良さそうに見えた!!だからみんなまとめめて面倒を見る!!!」
「タイシン!!嬉しいでしょ!?アタシ達一緒だよ!!!」
「……最悪」
ウイニングチケットに抱き抱えられぶんぶんと振り回されるナリタタイシン。だがその言葉とは裏腹に、顔は笑みを浮かべていた。
「弦太郎くん」
「ん?」
それを遠目から見守っていたビワハヤヒデが弦太郎に声をかけた。
「ありがとう」
「__ああ!これも教師の役目ってもんよ!!」
「チケット!降ろして!!!」
「えーー!!まだやりたい!!!!」
ここで今、また新しい物語が動こうとしていた。
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〜メジロ家・治療室〜
「なんか今…主役の座とられかけそうになってねぇか…」
前の戦いでとんでもない戦法をした不破は、今はゆっくり治療中だった。
ゴルシが不破の呟きを見逃さず、聴き直す。
「あー?なんだって?」
「…いや、なんでもねぇ…」
「ま” た ” い” な” い” ! ! !」
「フクキタルさん…」
フクキタルのレースがガン無視され、控え室でマックイーンが慰めたのはまた別の話…