某姫条宅
「おとうさんはきっとかえってくるよ!」
少女は微笑みながら言う。昔貰った絵本を読みながら、今はいない父親の帰りを待っている。
「娘さん、記憶を盗られたんですか・・・。」
「えぇ、まぁ・・・。夫は2年前に亡くなったのですが、それ以来娘は完全に塞ぎこんでしまって手の施しようがありませんでした。そんな時、必要のない記憶を引き取ってくれるという嘘のような話が私のもとに飛び込んできました。娘が元気になればと思い、その話に乗ることにしました。」
「それで、父親の死という記憶だけがなくなり、今の状態になったと・・。」
「・・・その結果、娘は絵本を読み続けながら、夫の帰りを・・・・!」
彼女の一人娘である姫条夢佳はME計画に巻き込まれた被験者の一人だ。だがそれを良しとしたのは実の母親だ。だが日常生活に不都合がでたから出来れば記憶を取り戻してほしいと言う了見である。母親は綺麗事を述べているが事実はこれだ。加害者はどっちなのかねぇ。
「そろそろ本題に入らせてください。今回奥様が依頼した内容は娘さんを狙っているストーカーを退治してほしいというので間違いありませんか?」
「・・・はい、そうです。」
「そして、そのストーカーが異形な姿をしていたと。」
「はい。トカゲのような顔と尻尾があって、槍を持っていました。娘を保育園に送るときに襲われて・・・」
「襲われた?え、逃げ切れたんですか?」
「あ、あぁはい何とか。その時に何とか姿だけは見れたんです。」
この人の話には何か引っ掛かりがある。嘘は言っていないが状況を全部話していないように思える。何故だ?何を隠す必要があるって言うんだ!!
「おとうさんがたすけにきてくれたんだよ!」
「ちょっとユメ!何を言って・・・」
「おとうさんがわたしとおかあさんをバケモノからまもってくれたの!」
「・・・逃げるときに庇ってくれた方がいたのですが、それを夫と勘違いして・・・。」
そう母親が言うと娘の夢佳がある絵本を持ってきた。
「これは何だい?」
「これはね、おとうさんからもらったえほんなの!おとうさんがきしになってわたしをたすけてくれるの!」
お店で売っているような普通の絵本ではなく手作りだと思ったのは容易だった。誰から送られてきたのかはわからないのだが、夢佳はこれは父親が送ってきたプレゼントだと言う。根拠など無い。だけど人間の信じるって心は決して真実だけでは表せないものある。これもその類のものだ。母親は娘を部屋に返すとこう頼み込んできた。
「お願いします。どうかそのバケモノを一刻も早く退治してください。お金はいくらでも払います。何でもします!だからどうか!!!」
「わ、わかりましたから!どうか、頭を上げて・・。概ね敵の行動範囲は予測しております。今から行動を開始します。」
そう言って俺は家を出て変身を開始し、速やかに戦闘準備に入る。バイクに跨り、行動範囲の予測ポイント急ぐのであった。
「絵本みたいな物語が・・・・・現実には起こすわけにはいかないのよ。」
バイクが過ぎ去った後、彼女は誰にも理解できない独り言を言った。