これが逃げるという事だ   作:福泉

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長らくお待たせしました。
インパクトターボ(ウマ娘)のお話です。
ご意見ご感想お待ちしております。


第2シーズン第2話 競走人生の始まり(ウマ娘)

時間は遡って中央トレーニングセンター学園面接試験日・・・

 

5人のトレーナーか教師と思わしき大人と中央に一際小柄で前に理事長と書いたプレートが置いてなければとても理事長とは思えない女性、そしてその斜め後ろに立つ緑の服と帽子の女性が私を見つめている。

「それでは貴女のお名前と、中央トレーニングセンター学園に入りたいという気持ちをお聞かせください」

緑の服に帽子を被った、たづなさんと名乗った女性に促されて私は思いを口にした。

「はい、室インパクトターボです。ウマ娘として生れたからには折角のチャンスを活かすためにはやはり中央トレーニングセンター学園に入るのが一番だと思ったからです。私自身どこまで走れるのか、レースで勝てるのかは分かりませんが上を目指す心持は十分にあります。特に質の高いトレーナーが沢山いらっしゃる中央トレーニングセンター学園での指導は、必ず意義あるものとなると確信して受験をしました」

「はい、ありがとうございました」

結局中央にいた小柄な理事長は一言も喋らなかった。

 

「苦痛!せめて一言くらい声をかけたい!」

「理事長が話し出すとただでさえ緊張していて話がまとまらない受験生達がさらに変な方向へ向かってしまうのでダメです」

私が退室した後にそんな言葉が交わされていた。

 

そして翌日、実力試験日・・・

 

「受験番号880番から890番までの人!番号順に内側のスタート位置についてください!」

私の受験番号は881番なので内側から二人目だ。

筆記試験、面接試験、実力試験、この三つをクリアして初めて中央トレセン学園に入学できる。

ちなみに筆記試験は全員同日に行われるが面接試験と実力試験は人数が多いため受験番号ごとに日が異なる。

私の場合は面接試験が先で実力試験が後の日程だった。

「よーい、スタート!」

試験官のトレーナーの声に合わせて受験ウマ娘達が走り出す。

当然私も走り出した。

距離はテストの為に1000メートルと短く直線のみだ。

私は得意のスタートダッシュを駆使して最初から最後まで先頭を譲らずにゴールする事ができた。

このレースは勝ち負けよりタイムの方が重要であるために先頭でゴールする必要はあまりないのだが気持ち的に譲りたくないのと周りに他のウマ娘が走っているのが見えると集中できない為に私は先頭を譲りたくないのだ。

「はい、これで試験は終了です。気を付けて帰ってね」

「はい、ありがとうございました」

トレーナーの助手をしていた先輩ウマ娘さんに声をかけて貰い、私はお礼を言って受験をする為に泊っていたホテルへと帰る事にした。

 

一か月後・・・

 

「ターボちゃん、中央トレセン学園から通知書が来たわよ」

「お母さんありがとう!」

学校から帰ってきた私の元に母が中央トレセン学園の封筒と渡してくれた。

さっそくハサミで封を切って中身を出すと、そこには非常に達筆な字で『合格!!』と大きく書かれた扇が入っていた。

「なんで扇なのかしら?」

「さあ?あ、普通の合格通知も入ってるよ」

『拝啓、室インパクトターボ 様。

貴殿の試験成績、面接を踏まえました結果。

中央トレーニングセンター学園への合格を通知させていただきます。

20××年 中央トレーニングセンター学園 代表理事:秋川やよい』

こちらはごく普通にプリントアウトされたものだった。

兎に角、私はこれでトゥインクルシリーズへの第一歩を踏み出すことに成功したのであった。

 

そして入学式当日・・・

 

「やっぱり大きいなぁ。試験の時と下見の時は最低限しか見れなかったから迷わないといいけど・・・」

本当なら学園見学会にも参加したかったのだが両親の都合で無理だったのだ。

有馬記念の時の下見は寮の下見や制服の合わせなんかが中心で学園の下見は殆どできなかった。

受験の時は勿論教室と面接室、それから実力試験の時の練習コースしか見れていない。

ウマ娘科中等部高等部だけでなく、専攻学科やトレーナー育成学科などなど多くの学部を構える中央トレセン学園は敷地面積だけでも、もはや小さな町といっても過言ではない。

「えーっと講堂は・・・」

「新入生ですね。私が案内しますのでこちらへどうぞ」

事前に貰った簡易の案内図を見ていると凛とした女性の声がかけられた。

「あ、はい、よろしくお願い・・・」

「さあこちらに・・・」

私と声をかけてくれた女性が同時に固まった。

「・・・なんだろう」

「・・・なんでしょう」

「「運命的な何かを感じます」」

そこにいたのはストレートの明るい栗毛をきちっと切りそろえ、後ろ髪だけ長い三つ編みにした大きな丸眼鏡が似合う先輩ウマ娘がいた。

「イクノディクタスと申します」

「インパクトターボです」

自然とほほ笑むイクノディクタスさんに私も笑顔で挨拶をする。

「さあ、入学式までまだ余裕がありますがのんびりしている訳にも行きませんし講堂へ案内しますね」

「はい、よろしくお願いします」

自然と出された手をそっと取り、私は手を引かれるままに案内された。

 

「・・・であるからして!諸君らは勉学、競走何方も粉骨砕身の精神で励み、文武両道を目指し、日々の努力を怠らないようにしてほしい!以上、生徒会長シンボリルドルフからの挨拶とさせていただく」

かなり堅苦しい挨拶ではあったが無敗の三冠ウマ娘にして七冠の頂を手にした皇帝シンボリルドルフ会長の挨拶に大きな拍手が送られた。

彼女に憧れるウマ娘は非常に多いので拍手をしながらどこかウットリした様子のウマ娘達も居る。

私は流石にそこまでファンと言うわけではないが彼女の様に強いウマ娘でありたいとは思っている。

その後、来賓の長い挨拶を聞き流し、教室へと案内され、簡単なレクリエーションの後、寮へと向かう事になった。

 

「よく来たな新入生達!アタシが寮長のヒシアマゾンだ!気軽にヒシアマ姉さんとでも呼んでくれ!」

褐色肌の姉御肌、ヒシアマ姉さんに案内されて私を含む新入生たちは美浦寮を歩いていく。

「よーし次はあんただインパクトターボ・・・ターボ?」

「あの・・・私に何か?」

何だか苦虫を嚙んだような表情をしているヒシアマ姉さんを私は訝し気に見つめる。

「あーすまん、個人的にその名前に苦い記憶があってな。すまん、お前のせいじゃないんだが・・・」

そう言えばあの有馬記念で私によく似た名前の、やはり運命的な何かを感じるツインターボさんが勝ってましたっけ。

たしかヒシアマ姉さんは4位・・・。

「はっはっはっ新入生!人の痛い所は突かない方が身のためだぞ!」

ミシミシミシミシッ!

「い、イエス!マム!」

肩が!肩が砕ける!

「分かればよろしい。それとお前の部屋なんだが少し事情があって少しの間一人になるぞ」

「へ?何でですか?」

寮は確か二人部屋だったはず・・・

「実はお前の同室になる予定だった新入生が個人的な事情で入寮が少し遅れるそうだ。それほど遅くはならないらしいがそれまで一人部屋だからってあまり散らかさないようにな」

「はい、分かりました」

その後諸々の諸注意やシーツなどの備え付け備品類、詳しい規則の書かれた冊子を渡されるとヒシアマ姉さんは他のの新入生を連れて去っていった。

 

「ん~最初は一人部屋か~、気を使わなくていいけどちょっと寂しいかな~。さて、どっちのベットと机を使おうかな~」

部屋は左右対称で作り付けのベットと勉強机、クローゼットや棚が配置されている。

部屋の中央には大きめのテーブルが設置されており、大きめの窓からは日光が差し込んでいる。

また各部屋に一つ共用のテレビも設置してある。

「同室になる子はゲーム好きかなぁ?」

一人で黙々とやるゲームも好きだけど皆でワイワイやるゲームも好きな私は同室の子と遊べるといいな~と妄想しながら手荷物で持ち込んだ携帯もできるゲーム機を設置した。

一応深夜遅くまでのゲーム等は規則として禁止されているがあまり守られていないのが実情であり、持ち込みに関してはあまり煩く言われない。

ただし度を過ぎると反省文などの罰はあるので何事もほどほどが一番だろう。

流石に授業中寝てばかりだと生活指導も入るようである。

「ん~とりあえず右側を使わせて貰おうっと」

私は事前に送ってもらった段ボール箱を開いては中身を取り出していった。

その後、部屋の準備が終わった後、夕食の時間までゲームをして時間を潰すと食堂へと向かった。

 

「うん、すごく美味しい」

「はは、そうだろ?」

まだ友達も相部屋の住人も居ない私を気遣ってヒシアマ姉さんが一緒に食事をしてくれる。

寮の食事は質、量ともに充実しており、恰幅のいいおばちゃんが慣れた様子で大量の食事を作っていた。

「あれ?アマゾンさん珍しいね。新入生と食べてるなんて」

「おう、ライスシャワーか。いやこの子の相部屋の子がまだ来てなくてね」

声をかけたのは黒髪で小柄なウマ娘、ライスシャワーさんだった。

「初めまして、新入生のインパクトターボです。ライスシャワーさんって確か漆黒のステイヤーですよね!」

「あはは、ライス、今そんな風に呼ばれてるんだね」

以前に比べて陰りの無くなったライスシャワーは嬉しそうに笑う。

そんなライスシャワーを見てヒシアマゾンもホッとした様子で笑う。

「えっとライスも一緒に食べていいかな?」

「はい、色々なお話聞かせてください先輩!」

小柄な為にあまり先輩と呼ばれないライスシャワーはちょっと困惑しつつも嬉しそうに自分の事を話し始めた。

 

翌朝・・・

 

「ふぁ・・・えっと・・・あ・・・そうか・・・家じゃないんだっけ・・・」

まだ慣れていないベットで寝たために今一熟睡できなかった私は少し寝ぼけたまま起きると大きく伸びをする。

棚の上に置いてあるメガネをかけるとベットから降りた。

「さて、朝の準備っと」

クローゼットを開けてハンガーにかけてある制服を取り出す。

さっと着替えるとお父さんから貰った緑と白のストライプ模様のお気に入りのリボンを右耳につけ、鏡を見ながら明るい栗毛の髪と尻尾にブラシをかけていく。

「自分の事ながら本当に不思議ですなぁ。なんで私の髪って毛先にいくと青くなるんだろう?」

染めているわけではないのだが私の髪は毛先だけに青いグラデーションが入っている。

散髪した場合は最初のうちは栗毛のままなのだが時間とともに青くなってくる。

現在ウマ娘の中でも最大の不思議とされている髪色の中でもさらに特異といえるだろう。

「額の星と呼ばれる変色も髪の毛が伸びても同じ位置にあり続けるらしいし、私のこれもその一環なのかなぁ?」

前髪を左右に流し、後ろ髪を肩の辺りで一つにまとめると鞄を持って部屋を後にした。




インパクトターボのウマ娘の姿はどんな風?といった感想があったので作者の妄想の姿ですが一部書いておきます。作中にも若干書きましたがより詳しく書いておきます。

髪色:イクノディクタスによく似た明るい栗毛、ただし毛先から数センチほど青いグラデーションになっている。尻尾も同様。
髪型:前髪は左右に分けておでこを出している。癖のないストレートヘアで肩甲骨ぐらいまで伸ばしている長髪で、肩のあたりで一つに縛って纏めている。またもみあげにあたる部分が房のように長く垂れている(肩にあたるぐらいまでの長さ)
顔立ち:イクノディクタスに似てはいるが目つきは柔らかく、キリっとした表情はあまりしない。
目:茶色の普通の目。グルグル目玉のオッドアイではない。
身長:145cm バスト:77 ウェスト:54 ヒップ:78
アクセサリー類:右耳に白と緑のストライプ模様のリボン 青いフレームの眼鏡(フレームは細目、レンズサイズは普通のもの) 後ろの髪を纏めているのは白いリボン


次回予告

予想通り早いペースで走る事になった僕。
気が付けばもう6レース目だ。
初めての重賞レースだ。
だけど何やら嫌な予感が・・・。

第2シーズン第3話 波乱の重賞レース(馬)
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