これが逃げるという事だ   作:福泉

15 / 85
第2シーズン第3話、お待たせいたしました。
ご意見ご感想、お待ちしております。


第2シーズン第3話 波乱の重賞レース(馬)

新馬戦レースから暫くして・・・

 

「スタートしました。一頭好スタート5番のインパクトターボ。他はややバラついたスタートとなりました。先頭を走るのはインパクトターボ早くも5馬身とリードを広げております。早すぎるようにも見えますが鞍上若井騎手折り合いがつかないのでしょうか?いや、追っています。どうやら大逃げを打ちました鞍上若井。若気の至りでなければ良いのですがどうなんでしょうか?後続はインパクトターボに引きずられて上がろうとする馬を抑える様子が見られます。2番手集団先頭はバイトデルトクマですが折り合いがつかない様子。さあインパクトターボただ1頭だけが早くも中間を通過しました。その差は15馬身といったところ。非常に縦長の展開となりました。第三コーナーを回るインパクトターボですが失速する様子はまったくみられません。悠々と・・・いえ全力で走り続けていますインパクトターボは第四コーナーに入ろうかという所。後続はいまやっと上がってきましたがこれは間に合うか分かりません。最終直線に入りましたインパクトターボ。これはセーフティリードだ。完璧な逃げ切り体制に入りましたインパクトターボ。後方一番人気のホワイダニットが前を塞がれてもがいています。後方を一切振り返ることなくゴール板を超えましたインパクトターボゴールイン。1600メートルを完璧に逃げ切りましたインパクトターボ。これで2戦連勝です」

 

「スタートしました。1頭飛び出しました3番インパクトターボ。どうやらターボエンジンは見事に受け継がれた模様。全開で走り出しました早くも3馬身。福島競馬場に再びターボエンジンが帰ってまいりました。追いかけるのは2番人気1番モーニングコート。その後ろスワローテイルと続いています。最後方には出遅れましたイブニングドレス。しかし場内のこの歓声はただ1頭インパクトターボに向けられていると言っても過言ではないでしょう。1番人気インパクトターボ大逃げです。その差はもはや実況席では分からないほど開いています。流石に今日は逃がさないとばかりに後続が早くも上がっていきますがこれはどうなんでしょうか。インパクトターボただ1頭第四コーナーを回っています!まもなく直線です!モーニングコートちょっと疲れたか!スワローテイルが前に出ます!ですがインパクトターボとの差がつまりません!イブニングドレス今ようやく上がってきましたがこれはもう無理だ!唸れインパクトターボ!ターボエンジン全開だ逃げ切った!インパクトターボ逃げ切りです!福島に再びターボエンジンの轟音が響き渡りました!」

 

「スタートです。やはり1頭インパクトターボが飛び出していきました。他にも先行馬が居ますが今日も先頭は譲りません8番のインパクトターボです。その後ろは3馬身離れてサンライズビームが追いかけます。その直後にプラムレインとオータムクラウドこの辺りが先行馬集団です。最後尾はこちらもやはり定位置2番ウェイティングスネーク追い込み馬です。先頭インパクトターボは大きくリードを取りますが今日はやや控えめ10馬身。サンライズビーム早くも疲れたのかプラムレインに前を譲りました。プラムレインとオータムクラウドが懸命に後を追いますがまだその差は8馬身といったところ!インパクトターボ1頭早くも直線!末脚自慢のウェイティングスネークですがこれは届くか!?今一気に先行馬集団を抜きましたがまだ距離があります!インパクトターボはまだ粘っています!追いすがるウェイティングスネーク!待たせすぎたかスネーク!3馬身差まで迫りましたが逃げ切られました!勝ったのはインパクトターボです!」

 

「スタートしました。今日も1頭抜けだしたのはインパクトターボ1番です。ここまで非常に連戦が続いておりますが足色が鈍った様子はありません好スタート。2番手今日は控えめ・・・いえインパクトターボが飛ばしているだけでした2番手はハイスペックジイ。その外にはフルスペックママと続いています。インパクトターボはいつも通り大逃げで早くも中間を通過。この馬の辞書には抑えるという文字は無いのでしょうか。今日も全力で逃げております。ハイスペックジイ追い上げます。ここまで逃げで走ってきた彼が追い上げるというのは珍しい光景です!ですが伸びないか!フルスペックママが追い上げる!届くか!伸びきらないか!インパクトターボの逃げ切りですゴールイン!5連戦をすべて大逃げで勝ちましたインパクトターボ!鋼鉄の足が逃亡者魂と融合して恐ろしい馬が誕生しました!果たしてこの馬はどこまで逃げ続けるのか!」

 

重賞ではないとはいえデビューから続けざまに4戦走らされたんですが!

思った通りスパルタになったよコンチクショウ!

「すごいですなうちのターボは」

「ええ、あれだけの連戦を大逃げしても疲弊する処かどこにも異常一つでないなんて」

本当に頑丈に生んでくれたイクノ母さんには感謝しかないよ!ありがとう!

感心するというよりは、与えられた玩具で遊びたがる子供の様な瞳で僕を見つめる山田調教師と室オーナー。

「ではそろそろ重賞デビューと行きますか」

「お、ついにですな」

そろそろお休みくれてもいいのよ!

「これを勝ったら考えてやろう!」

考えるだけなんですね分かりますん!

 

やってきたのは北海道札幌競馬場。

北海道とは言え9月はまだ涼しいとは言えないほどだった。

それでも残暑厳しい関東に比べればずっとマシだけど。

札幌2歳ステークスGⅢに出場する事になった僕はパドックをグルグル回っている。

「・・・あ・・・あの」

ん?何やらウィスパーボイスが聞こえてきたが・・・?

「は、初めまして。き、今日はよろしくお願いします」

ちょっとオドオドした様子の青毛の馬が声をかけてきた。

ゼッケンは4番、どうやら隣のゲージの馬らしい。

名前はサムシングブルー、今日の二番人気の馬で牝馬の様だ。

「こちらこそよろしく」

「は、はい」

何やら他にも話したそうだったが残念ながらパドックの時間は終了になってしまったのでそれ以上話す事が出来なかった。

しかしなぜだろうか。

何だか妙な悪寒がするのは・・・。

 

「なんだ?今日はちょっと落ち着かないなターボ」

若井騎手が騎乗しても悪寒が消えない僕はちょっとあたりを見回してしまう。

「お前も重賞の空気が気になるのか?大丈夫だ。落ち着けって。いつも通り走れば勝てるさ」

若井騎手はそう言って首筋を触ってなだめてくれるがどうにも落ち着かない。

ええい今更緊張も何もないだろうが!

そう自分を言い聞かせてゲートに入ろうとしたが足が止まってしまう。

その後、少し歩いて気分を落ち着かせた後に若井騎手に尻尾を引かれて何とかゲートインした。

 

「今日はインパクトターボがゲート入りを嫌がりました。今若井騎手に促されて何とか収まりました。体制完了。・・・スタートしました。先ほどの様子から心配されたスタートですが今日も見事に好スタートで先頭に立ちましたインパクトターボ。今日も一人旅・・・いや!今日は後ろに1頭着きました!4番のサムシングブルーです!」

なんですと!?逃げ馬だったのこの子!?

「・・・く・・てく」

ん?何かブツブツと呟いているような・・・?

どうしても後ろが気になってつい後ろを見てしまった。

馬の視界って広いから後ろ見るの便利よね。

ちょっと顔を向けるだけで見れるんだから。

しかし見ない方が良かったと直ぐに後悔した。

「ついてく・・・ついてく・・・」

そこには瞳孔全開でブツブツと喋るサムシングブルーちゃんが居た。

ヒィ!ウィスパーボイスでブツブツと喋られると余計に怖い!

助けてポリスメン!不審者です!

「まさかターボに付いてくるやつがいるなんて!もっと飛ばすぞ!」

言われずともそうします!

「のがしません・・・!」

ヒィィィィ!助けてオカーン!

(自分で何とかしなさい)

心の中のイクノ母さんは冷たかった!

多分現実でも同じ事言うだろうけど!

「ツインターボ産駒唯一の後継者インパクトターボ!ライスシャワー産駒期待の牝馬サムシングブルー!2頭だけが全く別のレースをしているようです!尋常ではない速さで駆け抜けるインパクトターボとサムシングブルー。ほかの馬たちはこの光景にどうしたらよいのか分からない様子!逃げるインパクトターボ!追うサムシングブルー!勝つのは逃亡者の血筋か!それとも追跡者の血筋か!」

え!?あの子ライスシャワーの子供なの!?

ライスシャワーはこの世界だと予後不良になってないのね良かった!

でも今は良くなーい!!

「ついてく・・・!ついてく・・・!」

声がどんどん近づいてくるよぉ!

「さあ2頭だけが早くも最終直線!意地と意地のぶつかり合い!インパクトターボムチが入る!サムシングブルーもムチが入った!」

末脚に自信がない?そんな事言ってられません!

逃げ切れなかったらヤバイと本能が警鐘を鳴らしている!

「捕らえました・・・!」

ヒィィィィィィィィ!いつの間に隣にぃ!

ついさっきまで後ろに居たのにぃ!

まだ完全に抜かれてはいないけどぉ!

目と目が合っちゃったよぉ!

「さあ2頭並んでの叩き合い!逃亡者か!追跡者か!懸命に粘るインパクトターボ!並び立てるサムシングブルー!」

逃げなきゃだめだ!逃げなきゃだめだ!逃げなきゃだめだ!!

足よ動け!動いてよ!ここで動かなきゃ何の意味もなくなっちゃう!

「やりますね・・・!」

嫌だぁ!

この時恐怖で体のリミッターが緩んだ僕は尋常ではない走りで走っていたらしい。

「2頭並んでいる!並んだままゴールイン!これはどちらが勝ったのか!実況席からでは分かりません!逃亡者が逃げ切ったのか!それとも追跡者が差し切ったのか!まったく分かりません!今ようやくほかの馬がゴールしました!」

何とか逃げ切ったか?

まだ審議中のランプがついて1着2着は空いたままだが辛うじて頭半分程度は前に出ていたと思う。

「あ、あの・・・」

ヒュイッ!

レース後で緊張の糸が緩んでいた僕にあのウィスパーボイスが聞こえて思わず奇声を上げてしまった。

「な、何かな?」

「わ、私から逃げ切ったの・・・あ、貴方が初めてです・・・」

レース中とは違いオドオドした様子に戻ったサムシングブルーちゃん。

目も普通に戻っている。

「あ、あはは。それは、光栄だなぁ」

何を言っているんだ自分は。

「あ、あの走り・・・とってもすごかった・・・」

おや?何やらうっとりした目でこちらを見てません?

「わ、私より強い馬・・・い、居なかったから・・・」

どうやらサムシングブルーちゃんは牝馬として頭抜けた才能を持っているようだ。

「だ、だから・・・ま、また一緒に・・・は、走りたいです・・・」

「あー、うん。確実な約束は出来ないけど、また一緒に走ろうね」

走るレースはお互いオーナーと調教師次第だし牡馬と牝馬だからレースが重なるかどうかは運だしね。

とりあえずレース中でなければ怖くない・・・寧ろ可愛い子だし何とか平静を取り繕って答えられた。

「は、はい!またよろしくお願いします!・・・ツギハノガシマセン」

ヒィ!安請け合いしない方が良かったかも!

一瞬暗い影を落としたサムシングブルーちゃんに怯えつつ僕はターフを後にした。

これがこの後長い付き合いになるサムシングブルーちゃんとの初めての出会いであった。

 

インパクトターボ 牡2歳 6戦6勝 主な勝鞍 札幌2歳ステークスGⅢ




次回予告

中央トレセン学園の生活が始まって1週間ほど。
まだまだ慣れない生活になんとか順応し始めた頃に学園内選抜レースが行われるという。
今後のスカウトの方向性を決める選抜レース。
しかし何やら嫌な予感が・・・?

次回 第2シーズン第3話 波乱の選抜レース(ウマ娘)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。