これが逃げるという事だ   作:福泉

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お待たせしました。第2シーズン第3話お待たせしました。
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第2シーズン第3話 波乱の選抜レース(ウマ娘)

トレセン学園での生活が始まって早1週間。

「おはよ~」

「おはよ~」

とりあえずクラスメイトに挨拶をする程度にはなってきた。

相部屋の同居人は今日入学、入寮する予定だとヒシアマ姉さんから伝えられたので部屋は軽く掃除しておいた。

友人を作るにあたって大体は隣の席の人と会話をするのがベターだと思うのだが・・・。

ギロッ!

はい、右隣は全力で睨みつける目付き最悪の不良ウマ娘なので下手に話しかけるのは得策ではない。

そもそも小市民な私には不良に声をかける勇気は無い。

そして左隣はと言うとまだ空席である。

今日来る予定の私の相部屋の住人である。

なので私は必然的にボッチになる・・・かと思われたが救世主が居た。

「おはようターちゃん」

「おはようキタちゃん」

私の前の席に座ったのはキタサンブラックちゃん。

黒いショートヘアの元気ウマ娘。

「おはようターちゃん」

「おはようサトちゃん」

その左隣に座ったのが淡い茶色の長髪なお嬢様ウマ娘、サトノダイヤモンドちゃん。

そんな仲のいい2人に必死に話しかけた甲斐あってなんとか2人の友人になれた。

2人ともとてもええ娘やぁ・・・。

勇気を出して良かった!

ちなみに2人とも長い名前だから愛称で呼び合っていたので私にも愛称を付けてくれた。

なんかちょっとジャングルに居そうな名前だけどターボちゃんだと紛らわしい気がしたのでそう呼んでもらう事にした。

「そう言えば今日ターちゃんのペアが来るんだっけ?」

「うん、昨日ヒシアマ姉さんから教えて貰ったから間違いは無いと思うよ。だから昨日の夜にちょっとだけお掃除しておいたんだ」

「まだ1週間だけど埃って結構溜まりやすいもんね」

1人暮らし(実際には寮生活で本来は2人部屋なんだけど)して思ったのはいかに埃が溜まり易いかという事だった。

お母さんには感謝しないとなぁ。

「どんな娘なんだろうね」

「一緒にゲームしてくれるかなぁ?」

ゲーム好きな私としては折角なので一緒に楽しみたい。

「ターちゃん色んなゲーム持ってるもんね」

「私の住んでいた所ってちょっと田舎だったから同年代のウマ娘が少なかったんだよね~」

なので人間のお友達と遊んでいたのだがどうしても体を使った遊びだと差がありすぎてしまう為にゲームで遊ぶ事が殆どだった。

あまり身体能力に関係のないかくれんぼくらいなら外でもやったけどね。

「全員席につけー、朝のホームルームを始めるぞー」

担任の先生が入ってきたので全員が席に着いた。

「さて、以前にも話したが家庭の事情で入学が遅れていたクラスメイトが今日から仲間入りする。さ、入りなさい」

「は、はい」

ちょっとオドオドした様子のウマ娘が先生に促されて入ってきた。

「は、初めまして。サムシングブルーといいます。み、皆さん仲良くしてください」

ペコリと頭を下げるサムシングブルーちゃん。

黒い前髪が長く伸ばされていて目が隠れてしまっている。

あれで前が見えているのだろうかちょっと気になる。

「サムシングブルーの席はあそこの空いている場所だ。さ、座りなさい」

「は、はい」

サムシングブルーちゃんは相変わらずどこかおっかなびっくりと言った感じでこちらにやってきて席に座る。

「初めましてサムシングブルーちゃん。私はインパクトターボ。貴女と同じ寮の部屋なんだ。これからよろしくね」

「は、はい。サムシングブルーと言います。こ、こちらこそよろしくお願いします」

頑張って笑顔3割増し(当社比)で自己紹介してみたけど彼女の警戒を完全に解くには至らなかったらしい。

まあ人見知りの強そうな娘だしゆっくりと時間をかけて仲良くなっていこう。

「私はキタサンブラック。これからよろしくね」

「私はサトノダイヤモンドです。私もよろしくお願いします」

「は、はい。お2人ともよろしくおねがいします」

流石私よりはるかに優れたコミュ力を持つ2人は見事に自然な笑顔で僅かに彼女の警戒を緩めたらしい。

むぅ・・・ちょっと悔しいがそこは性格の差だから仕方がない。

「ンンッ!新しいクラスメイトと仲良くするのは良い事だが今はホームルームの時間だ」

「「「「すいません」」」」

軽い注意を受けてしまったが先生も怒っている訳ではないので素直に私たちは謝った。

「さて、今日は午後に選抜レースがある。選抜レースは今後チームやトレーナーからのスカウトを受ける為に必要なレースだ。今回成績が悪かったからと言ってもまだまだ何度もあるからそこまで恐れる必要は無いが体調不良などの事情が無い限りは原則全員参加だ。昼休みまでに教室の前に設置してある箱に今から配るプリントに自分の名前と走りたい距離を書いて入れておくように」

そう言って先生は小さなプリントを全員に配った。

「それじゃあホームルームはこれで終了だ。日直」

「きりーつ、礼」

日直の合図に従って全員が頭を下げると担任の先生は教室から出て行った。

「改めてサムシングブルーちゃん、私はキタサンブラック、キタちゃんって呼んでね」

「私はサトちゃんと呼んでください」

「私はターちゃんで」

「は、はい。これからよろしくお願いします。き、キタちゃん、さ、サトちゃん、た、ターちゃん」

どうやらサムシングブルーちゃんは私たちを受け入れてくれたらしい。

「それでサムシングブルーちゃんはなんて呼ぼうか?」

「サムちゃん・・・だとサトちゃんと紛らわしいよね?」

「ではルーちゃんはどうですか?」

サトちゃんがそう言ってサムシングブルーちゃんを見る。

「え、えっと、皆さんが呼びやすいならルーちゃんでいいです」

「それじゃあルーちゃんに決定!」

キタちゃんがそう言ってルーちゃんの愛称が決まった。

それと同時に1時間目の先生が入ってきた。

「また後で色々話そうね」

「ルーちゃん教科書はありますか?」

「え、えっと、まだ無いです」

「じゃあ私の席をくっ付けるから一緒に見ようね」

私は席を動かしてルーちゃんの机と引っ付けた。

「はわわ・・・すいませんよろしくお願いします」

「どういたしまして」

まだちょっと距離を感じるが何とか仲良くなれそうだ。

 

「それで、皆は選抜レースはどの距離を走るの?」

1時間目が終わった後、キタちゃんがそう話を切り出した。

「最低は1000メートルから、最高は2000メートルまでと幅がありますね」

「それに芝とダートも選べるから多分メイクデビューを意識してるよね?」

「そ、そうなんですね」

朝渡されたプリントには名前を書く欄と走る距離が書かれている。

「一応最低でも1回は走らないといけないみたいだね。体力が持つなら全部走ってもいいみたいだけど」

「流石にそれは無理だよ~」

私がプリントに書かれた補足説明を見ながら言うとキタちゃんがそう言って苦笑していた。

「2回くらいに抑えておくのが無難でしょうか?」

「た、多分それぐらいが多いかと・・・」

「だとすると余計に悩むよね。芝だけにするのかダートも走るのか」

大抵のウマ娘は芝の方が得意だ。

だからといってダートが不得意とは限らない。

自分では分からない才能があるかもしれないのだから最初からダートを切り捨ててしまうのはいかがなものかとも思う。

「う~ん、私はダートは走らないで芝の1800と2000にしておこうかな~」

「私もキタちゃんと同じで芝の1800と2000ですね」

どうやらキタちゃんとサトちゃんは長い距離の方が得意なようだ。

私もあまり短距離は得意ではないのでどうしようか悩んだが・・・

「じゃあ私は芝の1600と1800と2000にするよ」

「さ、3回も走るんですか?」

「うん、なんか行けそうな気がするから」

驚くルーちゃんに私はそう答える。

「無茶だけはしないでね」

「大丈夫大丈夫!・・・タブン」

最後の小さなつぶやきは誰にも聞こえなかったらしい。

「それでルーちゃんはどうするの?」

「わ、私も芝の1800と2000の2回にしておきます」

どうやら私たちは全員長い距離の方が得意らしい。

私たちは決めた内容をプリントに書き込むと教室の前に置かれた箱に入れた。

 

「それでは名前を呼ばれたら返事をしてゲートに入りなさい!」

体操服に着替えて練習用コースに整列する私たちに試験官のトレーナーが声をかける。

今年の新入生は全員で60人ほど。

中央トレセン学園は定員に満たずとも実力がないウマ娘は入学させないという非常に厳しい試験制度を取っている為、今年は例年より少ないようだ。

「まずは1000メートルは・・・志望者がいないので飛ばすとしよう。1200から始める!待機中の生徒は各自準備運動などをしていても良いが呼ばれても返事が無い場合無条件で失格となるから注意するように!」

試験官さんからの注意を聞いた後私たち4人は互いにストレッチを手伝ったりしながら自分たちが申請したレースまで待機する。

「よし、次は1600メートルだ!まずインパクトターボ!」

「呼ばれたから行ってくるね」

「がんばれターちゃん」

「がんばってくださいね」

「え、えっと、がんばって、ね?」

3人からの激励を受けて私は試験官の指示したゲートへと入っていく。

「よーい、スタート!」

「ッシ!」

勢いよく飛び出した私に他のウマ娘たちは戸惑いを隠せない。

逃げ、それも大逃げをするウマ娘は非常に少ない。

ましてデビュー前のウマ娘で大逃げを体験したことのあるウマ娘は居ない。

慌てた所ですでに遅く、私は完ぺきに逃げ切って見せた。

「ふぅ・・・ありがとうございました!」

「おめでとう、1番ね」

お手伝いの先輩ウマ娘さんに褒めてもらった私はルーちゃんたちの所に戻っていく。

「すごい走りだったねターちゃん!」

「ありがとうキタちゃん」

「でもあんなに早く走ってターちゃん疲れてないの?」

「うん、まだまだ走れるよ」

「す、すごいです」

「それほどでもないよ」

3人にそれぞれ褒めてもらい私は嬉しくなった。

「次は1800メートルだ!」

1600メートルも終わり、次のレースが始まった。

「・・・よし次!キタサンブラック!サトノダイヤモンド!」

「キタちゃんサトちゃんがんばってね」

「が、がんばってください」

ゲートに入っていく2人を応援する。

「よーい、スタート!」

前の方で走るキタちゃんと違い、サトちゃんはやや後ろで走っている。

先行型のキタちゃんと差し型のサトちゃんといった感じだ。

第3コーナーの途中で先頭に立ったキタちゃんを大外からサトちゃんが追い上げる。

最終的に2人並んだ状態でゴールを通過した。

辛うじてキタちゃんのが先にゴールしたらしくサトちゃんはちょっと不満そうだ。

「2人ともお疲れ様。すごい走りだったね」

「お、お2人ともすごいです」

「次!インパクトターボ!サムシングブルー!」

「おっと、ルーちゃん行こ!」

「は、はい」

ルーちゃんと隣同士のゲートに入る。

ちなみにルーちゃんは普段は他人の視線が気になってしまうので目を隠しているがレースの時は流石に危ないのでヘアピンを使って髪の毛を避けている。

んん?何やら妙な寒気が?

「よーい、スタート!」

少し気にはなったが何とか走り出す事には成功した。

「・・・・く・・・・てく」

ん?この声はルーちゃん?

思わず気になって後ろを振り向いて見てしまった。

「ついてく・・・ついてく・・・」

ヒィ!ルーちゃんさん!?

そこには瞳孔全開で無表情のまま私を追いかけるルーちゃんが居た。

ちょ、ちょっと怖いよ!

思いもよらない光景に驚いた私は必死に走って逃げた。

「のがしません・・・」

る、ルーちゃんのウィスパーボイスは綺麗だなぁ!

若干の現実逃避をしながら私は必死に走り続けた。

完全に私たち2人だけでレースをしている状況に周りのトレーナーや生徒達からざわついた声が聞こえてくる。

「捕らえました・・・!」

ルーちゃん!

いつの間にかルーちゃんが隣に並んでいた。

「勝ちは譲らないよ!」

「やりますね・・・!」

最後の最後まで競り合ったがなんとかルーちゃんより先にゴールする事ができた。

「ふぅ・・・ルーちゃん強いね」

「お、同い年の子に初めて負けました・・・」

さっきまでの気配は霧散して、恥ずかしいのか直ぐに目を隠してしまったルーちゃんが興奮した様子でこちらを見つめてくる。

「あはは、スタートと粘り強さだけは自信があるからね。もうちょっと長かったら負けてたかも」

「つ、次は逃しません!」

早くもライバル兼友人が出来た事に私は嬉しくて堪らなかった。

 

「次、インパクトターボ!」

1800メートルが終わり2000メートルのレースが始まった。

今回は全員バラバラになってしまい私が一番最後に走る事になった。

ギロッ!

おっと、どうやら隣のゲートは私の隣の席でしょっちゅう睨みつけてくる不良ウマ娘じゃあないか。

自己紹介すらままならない相手だが実力はどうなのだろうか。

「よーい、スタート!」

スタートの良さには自信を持つ私は全力で後ろを引き離しにかかる。

デビュー前の私たちが走る長さとしては最長を誇る2000メートルだが実際には最も標準的な長さのレースと言える。

クラシック重賞を目指す身としては避けて通れない距離だ。

いつも通り他を無視して飛ばす私に1頭ついてきてはいるがルーちゃんほどの恐怖は無い。

他の娘たちはまだ様子をうかがっているようだ。

中間点を過ぎ、あと半分と気合を入れなおす私。

流石にあれだけ大逃げする姿を見せてきた為か後続のウマ娘達も早めに仕掛けてくる。

ギロリッ!

後方から非常に強いプレッシャーを感じる。

後ろを見るとあの不良ウマ娘が強烈な睨みをきかせてくる。

これはやっかいかもしれないな!

私は懸命に足を前へと進める。

「待てやゴォラァァァアァァァァ!」

ものすごい怒声を上げながら不良ウマ娘が追い上げてくる。

恐ろしいほどの末脚だ。

「逃げ切ってみせる!」

「ざけんじゃねえぞぉ!」

逃げる私、追い上げる不良ウマ娘。

「「「がんばれターちゃん!」」」

皆の応援を受けて私は必死に走って何とか逃げ切る事に成功した。

ふぅ・・・流石に3連戦はちょっときつかったか。

「チッ!覚えてやがれ!」

不良ウマ娘にめちゃくちゃ睨まれたあと私は嬉しそうに出迎えてくれる友人たちの所へ歩いて行った。

 




サムシングブルーちゃんの見た目
身長:145センチ バスト:76 ウェスト:53 ヒップ:77
髪の色と髪型:綺麗な濡れ羽色(黒)をショートボブにしているが前髪が非常に長く両目が完全に隠れている。(レース時にはちゃんとヘアピンで止めている。
目の色:こちらも黒、隠している時偶にちらりと見える感じは極々普通。ただしレース中は瞳孔全開(ハイライトオフ)
顔立ち:顔立ちはライスシャワーによく似ている。ただし常に恥ずかしそうな表情をしている。レース中は完全に無表情。
アクセサリー類:牝馬なので左耳に青いブーケの様な花飾りをつけている。
備考:前髪で目を隠しているのは恥ずかしい為。ある種の視線恐怖症。レース中はレースに集中(追いかける相手だけを見ている)為にあまり気にならないらしい。
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