これが逃げるという事だ   作:福泉

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第2シーズン第5話お待たせしました。ご意見ご感想お待ちしております。


第2シーズン第5話 夢に抱く日本ダービー(ウマ娘)

私がチームハダルに入る事を決めた日の寮での夕食・・・。

「そっか、ターちゃんハダルに決めたんだね」

すっかり仲良くなったライス先輩とロブロイ先輩(本人から呼び辛い名前だからと提案された)と一緒に食事を取りながら今日あった事を話す。

「それで、ルーちゃんはリギルに入るの?」

「そ、それなんですけど・・・」

ルーちゃん曰くあのメンバーの中では自分など埋没してしまうし、何よりあの雰囲気では身が竦んでしまってきっといい成果が出せないだろう、という事だった。

ルーちゃんは決して凡才ではないと思うのだが本人が決めた事を周りが無理強いするのは違うだろうと思い、私は反対はしなかった。

「でも早く決めないとデビューは遅くなっちゃうし何より毎日勧誘が来るよ?」

「う・・・」

今朝の事を思い出してルーちゃんが青くなる。

元々人見知りが強くて恥ずかしがりやなルーちゃんが毎日あれだけの人に押しかけられるのは苦痛だろう。

「あの、それだったらライスの元トレーナーのチームはどうかな?お姉さまはダメダメのライスの事ずっと支えてくれたしチームメンバーもまだ少ないから」

現在ライス先輩は元居たチームからミホノブルボン先輩のチームに移籍している。

どうやらドリームトロフィーリーグに所属するウマ娘を指導するには一定以上のG1ウマ娘を出したトレーナーでないと指導できないらしい。

ライス先輩の元トレーナーさんはライス先輩しかG1ウマ娘を出せていない新人さんらしくまだまだドリームトロフィーリーグの指導はできなかったらしい。

「えっと、一度お話してからでもいいですか?」

「うん、勿論。お姉さまにお話ししておくね」

こうして楽しい夕食は過ぎていった。

 

そして翌日。

「それで結局ライス先輩の元トレーナーさんのチームに入る事にしたんだね」

「う、うん。優しそうな人だったし、私の事も分かってくれたから」

今朝、時間があると言うことから早速ライス先輩の元トレーナーさんが寮を訪ねてきた。

「初めまして。チームアンタレスのトレーナー、的場瞳と言います」

「は、初めまして。サムシングブルーです」

「お姉さま!ルーちゃんきっと強いウマ娘になると思うの!」

この後色々話し合ったルーちゃんはトレーナーさんの雰囲気などを気に入り、トレーナーさんもルーちゃんを気に入ったらしい。

こうしてルーちゃんはアンタレスに入る事になった。

「それで二人はやっぱりスピカに?」

「うん、やっぱりテイオーさんと一緒に走りたいから諦めきれなくてね」

「私もマックイーンさんと一緒に走りたいんです」

キタちゃんとサトちゃんはやっぱり憧れを追う事に決めたらしい。

「でも、あのトレーナーさんはちょっと心配だなぁ。指導力は確かなんだろうけれども・・・」

「「あ、あはは・・・」」

さすがの二人も言葉を濁していた。

 

そして授業後・・・。

私はチームハダルの練習に参加する為にチームルームを訪ねた。

「失礼しまーす!」

チームルームのドアを開けて挨拶をしながら中にはいると・・・。

「「「「「「新人さんいらっしゃ~い!!!!!」」」」」」

パンパンパンパンパンパンッ!

沢山のクラッカーと共に出迎えられた。

「あ、ありがとうございます!今日からお世話になるインパクトターボです!よろしくお願いします!」

ここまで歓迎してくれるとは思わず胸が熱くなる。

「おう、チームハダルにようこそ。改めて自己紹介させてもらう。チームハダルトレーナーの山田武志だ。皆順番に自己紹介をしてくれ」

山田トレーナーに促されて先輩ウマ娘たちが自己紹介をしてくれる。

「はーい!チームハダルチームリーダーのアイネスフウジンなの!よろしくなの!」

特徴的な口調のアイネスフウジン先輩が自己紹介をしてくれた。

「アイネスフウジン先輩ってダービーウマ娘の!」

「私の事知っててくれて嬉しいの!」

アイネスフウジン先輩が笑顔で握手してくれた。

「さすがアイネス先輩ですね。あ、あたしはメジロパーマー。それでこっちが」

「ハロハロ~♪あたしはダイタクヘリオスで~す!パーマーとはズッ友なんでしくよろ~♪」

親しみやすさの中にどこか育ちの良さを感じるメジロパーマー先輩とギャル全開のダイタクヘリオス先輩。

意外に見えるコンビだがどうやら非常に仲が良いみたい。

「はい!次は私ですね!初めまして!サクラバクシンオーです!是非バクシンしましょう!」

圧がすごいサクラバクシンオー先輩がいい笑顔で謎の勧誘をしてくる。

意味は分からないが何とも気になるワードである。

「初めまして~!私はスマートファルコンで~す!あなた!ウマドルに興味ない!?」

こちらもウマドルなる謎の勧誘をしてくるスマートファルコン先輩。

「どもども~セイウンスカイだよ~。ま、適度によろしくね」

暢気な感じでセイウンスカイ先輩が自己紹介してくれる。

ん?ちょっと待てよ・・・?

「山田トレーナー」

「なんだ?」

「浪漫に生きてますね!」

「おう!」

私のサムズアップにいい笑顔で山田トレーナーがサムズアップを返してくれた。

「さて、恒例の新人歓迎レースをやるぞ!」

え?新人歓迎レース?

「「「「「「オー!」」」」」」

何やら訳の分からぬまま私は体操服に着替えさせられてコースへと連れていかれた。

なして?

 

「それじゃあ準備はいいな!」

詳しい説明もないままストレッチをやるように言われ、先輩たちとウォームアップを済ませるとそのままレースになった。

「芝2000で各自好きなように走れ!いくぞ!よーい!スタート!」

結局そのままレースが始まってしまった。

私は半ば条件反射でスタートを切った。

スタートの良さは自信がある。

完璧なスタートダッシュで私は何とか先輩たちより前に出る事に成功した。

「意外とやるのね新人ちゃん!でも先頭は譲らないの!」

「は、早い!」

私が先頭で居られたのはスタートして僅かの時間だけだった。

あっという間にアイネスフウジン先輩に抜かれてしまう。

「やるねぇ!でもあたしだって負けないよ!」

「いぇ~い!パーマーと一緒にアゲポヨでゴ~!」

メジロパーマー先輩とダイタクヘリオス先輩が仲良く抜いていく。

「例え2000メートルでもバクシンバクシーン!」

「やれやれ、相変わらず暑苦しいなぁ」

サクラバクシンオー先輩が鼻息を荒くしながら抜いていき、それを少しあきれた様子で見ながらセイウンスカイ先輩が追いかけていく。

「ふふふ!ファル子はターフでも負けないんだから!」

どうやら芝よりダートが得意らしいスマートファルコン先輩にも抜かれてしまった。

「うう・・・みんな早い・・・」

結局私が他の先輩たちを抜き返すことはできず・・・いや、途中で適正距離の関係で力尽きてしまったサクラバクシンオー先輩を除いて私は抜くことができなかった。

「どうだ?お前が目指す背中は」

「強い・・・ですね・・・私なんかがたどり着けるかどうか・・」

当然だが先輩たちの様に走れるビジョンが浮かんでこない。

「今はそうだ。あいつらも嘗てはそうだった。だがお前もいつかあちら側になる。全力を出さなかった・・・いやバクシンオーは別だな。まあ新人に大人げない真似はしていないあいつらにスタートだけとは言え先頭を走れたんだ。お前のそのスタートの良さは最大の武器だ。逃げとして最高のポテンシャルを秘めていると言ってもいい。後はその才能を俺が引き出してやるだけだ」

山田トレーナーはそう言って私を真剣な表情で見つめる。

「だからお前は前を向いて走り続けろ。そうすれば勝てる」

「・・・はい!」

何時か到る景色。

その明確な姿を私は今日はっきりと見せられた。

トレーナーと一緒にあの憧れを超えていける。

私はこの時、そう強く思った。

 

「せ~の!」「「「「「「「「かんぱ~い」」」」」」」」

新人歓迎レースが終わった後、チームルームで本当の新人歓迎会を開いてくれた。

ジュースやお菓子、フライドチキンやポテトなどが用意されていた。

「改めましてインパクトターボです!よろしくお願いします!皆からはターちゃんと呼ばれてます」

私は先輩達に頭を下げた。

「こちらこそよろしくなの」

アイネス先輩が代表して歓迎の言葉をくれる。

「それでターちゃんはどんなレースに出たいの?何か目標とかある?」

パーマー先輩が私に目標を聞いてくる。

「えっと・・・大それた目標でも・・・いいですか?」

非常に恥ずかしいのだが全員が笑顔で促してくれる。

「ダービーを大逃げで逃げ切りたいんです」

私は恥ずかしくて熱を冷ますためにジュースをゴクリと飲み込んだ。

顔が赤くなっているのが分かる。

「あはは、大丈夫大丈夫。皆だって大きな夢を抱いてこの学園に入ってきたんだよ。夢は必ず叶う、なんてとても言えないけれど、夢を追いかけるのを貶す人は誰もいないよ。勿論私たちだって大きな夢を持ってこの学園に入ったんだしね」

「そうそう♪パーマーの言う通り♪」

「ええ!夢は誰もが抱くものです!私だっていつか必ず長距離をバクシンして見せますとも!」

決して先輩たちは私の夢を笑う事なく肯定してくれた。

「ところでターちゃん!ウマドルに興味は無いかな!?きっとターちゃんなら個性的なウマドルになれると思うの!」

話を聞くとファルコン先輩はどうやら逃げ切りシスターズというウマドルグループを作っているらしい。

ウマドルとはウマ娘アイドルの略称らしくファルコン先輩はこのウマドルでもトップになりたいとのことだった。

なお後でパーマー先輩が教えてくれたがウマドルを自称しているのはファルコン先輩だけらしく、そこでライバルが欲しくてファルコン先輩がピンと来たウマ娘に声をかけているのだとか・・・。

「ま、何事も程々が一番さ。夢に向かって全力疾走ばかりしているとバクシンオーみたいに息が続かないよ」

「ちょわ!?」

スカイ先輩がそう言って空になった私のグラスに新しいジュースを注いでくれた。

「安心しろ。お前の夢に向かって俺が導いてみせる」

「はい、ありがとうございます」

私はこのチームハダルで仲良くやっていけそうだと嬉しくなった。




次回予告

ダービー馬になれなかった俺

しかし全てが終わってしまった訳ではない

まだまだレースはあるのだから

次に目指すレースは・・・

次回 第2シーズン第6話 次のレースは・・・(馬)
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