これが逃げるという事だ   作:福泉

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第2シーズン第6話お待たせしました。
作者の個人的な設定などがあります事を改めてご了承ください。
ご意見ご感想お待ちしております。


第2シーズン第6話 次のデビューレースは・・・(ウマ娘)

歓迎会からしばらく、私はまずフォームの練習から入った。

一応小学生時代にこどもウマ娘塾で引退したウマ娘や元トレーナーさんから指導は受けていたがやっぱりしっかりとした指導を受けていない為どうしてもフォームが定まっていなかったらしい。

改めてフォームの修正を受けるとやっぱり色々と無駄にしてしまっている部分があった。

実際数回の練習しかまだ受けていないがその時点でタイムが変わってきているという事実から、如何に一流トレーナーの指導が大事かという事が分かる。

地元の元トレーナーさんも引退ウマ娘さんも地方トレセン出身だったし毎日塾があったわけではないのでどうしても指導は手が行き届いていなかった。

しかも私は先頭を走らないと気が済まない性格だったのでどうしても逃げや大逃げが基本になる。

元トレーナーさんは逃げはあまり指導した事がなかったみたいだし引退ウマ娘さんも追い込み型だったので余計にどの様に指導したら良いのか分からなかったと言うのもあったのだろう。

「いいぞ、さらに良いフォームになってきたぞ」

「はい!」

山田トレーナーにそう褒められて嬉しくなった。

 

「そっか、ターちゃんも順調なんだね」

お昼休み中に食堂でいつもの4人でお互いの近況報告をしていた。

「うん、やっぱり中央トレセン学園のトレーナーさんはすごいね。地元で受けてた塾と全然違うよ」

「わ、私も本格的なトレーニングは初めてです」

私とルーちゃんは元々一般家庭の出身でトレーナーが付いての指導は初めてだ。

お父さんが有名な演歌歌手さんで資産家出身のキタちゃん、良家出身のサトちゃんの二人はそれぞれ子供時代からしっかりとした指導を受けていた為にフォーム矯正はそこまででは無いらしい。

「早くデビューしたいね」

「ですね」

とはいえメイクデビュー戦が始まるのはダービーが終わってからだ。

「わ、私はそんなに早くは・・・」

「ルーちゃんはまずその人見知りを何とかしないとライブが厳しいね」

恥ずかしいからとライブ拒否、なんてのは流石に問題があるだろう。

「ライブと言えば、キタちゃん、サトちゃん。二人ともちゃんとライブの指導受けれてる?以前チームスピカでスペシャルウィーク先輩がデビューの時のライブがボロボロだったって聞いたけど」

「流石に大丈夫だよ。その件でルドルフ会長や理事長からキツイお説教を貰ったんだって」

「ちゃんとマックイーンさんとテイオーさんから指導受けてますから大丈夫ですよ」

色々と抜けている事の多い沖野トレーナーはルドルフ会長や理事長、たづなさんから注意される事も多いのだとか。

指導力は確かなんだろうけど人としてはダメ人間っぽいのが沖野トレーナーなんだろう。

「ターちゃんはライブの方はどうなの?」

「ウマドルを自称してるファル子先輩がその辺りはばっちりと教えてくれるから大丈夫だよ」

個性派ウマドル候補としてスカウトを受けている事は黙っておく。

新入生にはライブレッスンの授業もあるがあくまで基礎を教えるだけで個々のレッスンはトレーナーに一任されている。

トレーナーが直にライブのレッスンをする場合もあるがチームハダルの場合はライブレッスンは主にファル子先輩が行っている。

勿論ライブレッスン専属トレーナーも学園には居るのでファル子先輩が忙しい時はそちらの指導を受けている。

「とにかく皆順調みたいだしデビューに向けて頑張ろうね」

「「「「おー」」」」

他の人の邪魔にならない程度に私たちは声を上げた。

 

目まぐるしく毎日は過ぎてゆく。

授業、レースのトレーニング、ライブのレッスン、そして日々の生活。

「ルーちゃん来てる!来てるよ!」

「ヒィィ!出口!出口はどこですかぁ!?」

「さっき左にあったんじゃ!?」

「あそこは閉まってましたよ!」

休日、私の部屋で4人で一緒にゲームで遊んでいる。

鬼ごっこ式のホラーゲームで協力プレイ中の私たちは必死に出口を探している。

「ルーちゃんまっすぐ!あの光ってる場所!」

「あとちょっとです!」

「あわわわわわ!」

「大丈夫!鬼は私が引き付けてるから!」

ルーちゃんは命からがら、私は鬼を何とか振り切って脱出に成功した。

「ふぅ・・・危なかったぁ」

「何とか脱出成功しましたね」

無事にゲームをクリア出来て私たちは持ち寄ってきたジュースやお菓子に手を付ける。

そんな時だった。

私のスマートフォンが鳴った。

「あ、お母さんからだ。ちょっとごめんね」

私は三人に断ると部屋を出て電話に出た。

「もしもし?」

『もしもし、ターボちゃん元気だった?』

「うん、元気でやってるよ。急に電話してきてどうしたの?」

もちろん私の方から電話する事は何度もあったがお母さんの方から電話をかけてくるのは珍しい。

『来週のお休みなんだけれどもターボちゃん時間ある?』

「来週ならトレーニングもお休みだしまだ予定いれてないけどどうかしたの?」

まだデビューも決まっていないのでそこまで突き詰めた練習はしていない。

『実はね、来週の日曜日にお父さんの仕事の都合でそっちに行く用事があるの。それでもし良ければ一緒にご飯食べたりちょっと遊んだりできないかなって』

寮の門限は厳しいがそれは若いウマ娘達に何か悪い事が起きない様に監督責任として厳しくなっている。

当然両親から申請があれば外泊も許される。

ただし両親のどちらかが同伴する必要はあるが。

「えっと私の都合は問題無いけれど事前に両親からの同意が書かれた外出届が無いと門限があるよ。外出届出してもあんまり遅くまでは駄目だけど」

『門限は何時までなの?』

「門限は夏の時期は午後6時半まで、冬は午後5時半までだよ。外出届を出した場合は午後9時までに寮まで送ってくれれば大丈夫だよ」

『じゃあ外出届が必要ね。折角だし晩御飯も一緒に食べましょ。ね?』

「うん。じゃあ外出届の書類を送るからそれにサインして送り返してね」

私は電話を切ると部屋に戻った。

「ただいま~」

「おかえりなさい。お話どうでしたか?」

「うん、来週お父さんの仕事ついでにこっちに来るから一緒に出掛けようって電話だった」

「ターちゃんのご両親か~。どんな感じ?」

私の両親の話題になった。

「えっとお父さんは輸入車ディーラーのオーナーだよ。お母さんは普通の主婦だね。ちょっと変わってる所って言うか二人の趣味はちょっと珍しいかもね」

「ど、どんな趣味なんですか?」

「二人とも歌舞伎鑑賞が趣味なんだって。私も何度か連れて行って貰った事あるよ」

日本の伝統芸能に興味があったお父さんと話題になったイケメン歌舞伎俳優を見ようと劇場に通う内に歌舞伎ファンになったお母さんという入りの違う二人だったが今でも歌舞伎鑑賞は趣味だ。

「中々渋い趣味だね」

「キタちゃんもかなり渋い趣味してるじゃないですか」

カラオケの十八番がお父さんの演歌なキタちゃんは多分人の事言えないと思います。

その後、色んな話をしたりまたゲームをやったりして休日は過ぎていった。

 

そして私が中央トレセン学園に入学してから早くも3ケ月が経過した。

 

「・・・という訳でメイクデビューの予定が決まったよ」

「私も決まりました」

ある日のお昼休憩中、キタちゃんとサトちゃんが嬉しそうに報告してくれた。

「おめでとう二人とも」

中央トレセン学園のデビューシーズンは凡そ6~9月に纏まっている。

時々トレーナーさんが見つからなかったりなどで遅くなる娘もいるけれど基本的にトレーナーさんがいる子はほぼ全員夏ごろにデビューする。

「わ、私も近いうちにレースを決めるってトレーナーさんが言ってました」

どうやらルーちゃんもデビューが近いようだ。

「そうなると私もそろそろかなぁ?山田トレーナーからまだ聞いてないけど」

流石にあまり遅くなる事はないだろうと思っているが・・・。

 

「喜べインパクトターボ、来週のレースでデビューが決まったぞ」

「ええ!?急じゃないですか!?」

突然の報告に私は驚いた。

「いやもうデビューさせても良いと思っていたんだがちょっと個人的な事情が重なってレースに登録申請ができてなくてな。申請しようとレースを調べていたら来週のレースにまだ空きがあって、ダメ元で電話してみたらOKが出てな。お前にはちょっと悪いと思ったが滑り込ませてもらった」

「それにしても突然なの。ターちゃんがかわいそうなの」

トレーニングの為のストレッチを手伝ってくれているアイネス先輩がトレーナーさんを叱る。

「それについては正直に謝る。だがなインパクトターボ。今デビューしておけば9月の札幌ジュニアステークスに出られるぞ」

札幌ジュニアステークスとはデビューしたばかりのウマ娘が走れるGⅢの事だ。

「でもデビューから直接は無理じゃなかった?」

「パーマーの言う通りっしょ。確かデビュー戦以外でも2回は勝ってないとダメじゃん」

デビューは6月からとはいえ9月後半までに2回勝利は中々ハードスケジュールである。

「問題ない。インパクトターボの頑丈っぷりなら毎週でも走れるだろう」

「う~ん確かにそうかもね~」

いや、そこは止めてくださいスカイ先輩。

「ターちゃん!大丈夫です」

お、バクシンオー先輩何か妙案が?

「すべてバクシンすれば大丈夫です!」

あるわけなかった。

「じゃあトレーニングも大事だけどライブの練習もしっかりやろうね」

ファル子先輩も止めてはくれないんですね。

結局私はデビューからハードスケジュールになる事が確定したようである。

 

翌日・・・。

 

「・・・と言うわけで、なぜか来週デビューする事になりました」

「ええ!?」

「それはまた急ですね」

「え、えっとがんばってね」

三者三様のリアクションを返してくれた。

「しかも9月の札幌ジュニアレースにも出走するらしいから結構ハードスケジュールになりそうなんだよね」

「えっとGⅢって確か最低でも2勝してないと出れないんだっけ?」

キタちゃんが授業内容を思い出しながら聞いてくる。

「正確にはデビュー戦を除いて2勝が最低条件ですね。レース毎に細かい違いはありますけど」

サトちゃんがそれを訂正する。

「そ、それは大変ですね。・・・札幌ジュニアレース・・・出れるかな?」

「ルーちゃん?」

「な、なんでもないよ!」

何やら若干挙動不審なルーちゃんだったが残念ながら追及する前に始業の鐘が鳴ってしまったので結局聞けずじまいだった。

 

そして翌週、レース当日・・・。

 

「中山競馬場でデビューか。何だか運命を感じちゃうな・・・」

パドック披露が終わり、ターフに足を進める。

「おーいターちゃーん!」

「ここなのー!」

「アイネス先輩!それに皆も!」

チームハダルのメンバーと一緒にキタちゃん達も居た。

「デビュー戦だが落ち着いてお前のいつもの走りをすれば勝てるから安心しろ」

「はい!がんばります!」

山田トレーナーからアドバイス兼激励を受けて私はゲートに向かった。

「大丈夫。いつも通り」

大きく深呼吸をして私は係員の案内でゲートに入っていった。

 

SIDE:実況

 

「さあ本日デビューいたします6名のウマ娘たち、その胸に抱くのはどんな夢なのでしょうか。メイクデビュー戦1800メートル、芝のレースです。1番オータムマウンテン。2番ジャラジャラ。3番バイトアルヒクマ。4番インパクトターボ。5番サイドカー。6番ハイグレードレディ。以上6名のレースです。各ウマ娘たちのゲート入りが間もなく完了します。体制完了。・・・スタートしました。1人好スタート。4番のインパクトターボです。勢いをつけて早くもリードを広げていきます。2番手にはハイグレードレディが付きましたが早くも4バ身の差がついています。インパクトターボかなりペースが速いみたいですが焦っているのでしょうか?いや、笑顔です!なんとインパクトターボ、デビュー戦でまさかの大逃げを打ちました!何とも大胆な作戦!果たして最後まで走りきる事は出来るのでしょうか!?ハイグレードレディ慌てて追いかけますが加速力が違います!インパクトターボどんどんと後続を引き離していきます!会場は大盛り上がり!その差はなんと20バ身はありますでしょうか!早くも第4コーナーを回って最終直線!中山の短い直線では後続の娘達は間に合いそうにありません!完全なセーフティリード!インパクトターボ、今圧倒的な速さでゴールイン!まさに衝撃的なデビュー!今後が楽しみなウマ娘の登場です!」

 

SIDE:インパクトターボ

 

「今!」

何度も練習したスタート。

元々上手だったそれはさらに磨きがかかり、強力な武器となった。

あっという間に抜け出し、さらに足の回転を速める。

最高速度に絶対の自信は無いが、加速の良さには自信がある。

「ええ!?むり~!」

後ろで狼狽える声が聞こえるがそんなものは無視だ。

私は私の走りをするだけなんだから!

「逃げる阿呆に追う阿呆!同じ阿呆なら逃げなきゃ損々!な~んてね!」

なんとなく浮かんだフレーズを口にして、私は全力で走り続ける。

あっという間に大きな差が生まれ、後ろの気配は全く感じられなくなった。

そのままの勢いでコーナーを曲り、最終直線へと入る。

「「「いっけ~ターちゃーん!!!」」」

「いい調子なの~!」

「あとちょっとだよ!」

「ウェ~イ!バクニゲでゴー!」

「素晴らしいバクシンです!」

「やれやれ、張り切ってるねぇ」

「ライブもその調子でがんばってね~☆」

「いいぞターボ!」

皆の声援を受けながら、私はそのままゴール板を駆け抜けた。

そして皆の方を振り向くと笑顔で手を振った。




次回予告

菊花賞が終わり、次に目指すはジャパンカップ。

日本だけではなく海外からの強豪も参加するレース。

海外勢相手だって大逃げで逃げ切ってやるさ!

第2シーズン第7話 激闘!ジャパンカップ!(馬)
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