これが逃げるという事だ   作:福泉

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第2シーズン第7話お待たせしました。
ご意見ご感想お待ちしております。

念の為に記載しておきます。2002年のジャパンカップは東京競馬場2400メートルではなく中山競馬場2200メートルで開催されております。


第2シーズン第7話 激闘!ジャパンカップ!(馬)

惜しまれながらもタニノギムレットが引退し、サムシングブルーちゃんが制覇した菊花賞が終わって直ぐ・・・。

「次のレースはジャパンカップを目指すぞ」

国際招待レースのジャパンカップにはあの有名な凱旋門賞にも参加した馬が参戦するなど非常にレベルの高いレースだ。

国内は勿論海外からも注目度の高いレースであり国産馬が勝つか、海外馬が勝つかで毎年論争が起きる。

菊花賞からあまり時間は無いが距離は得意の2200メートルであるので調整には苦労しないだろう。

「海外にもお前のように大逃げする馬は少ない。やつらの度肝を抜いてやれ」

海外の馬がどんなレースをしてるのか分からないけど頑張ります。

 

「さあ、今日は世間から注目を集めていますインパクトターボ号の厩舎にやってきました」

厩舎には似つかわしくない女性がカメラマンを引き連れてやってきた。

どうやら今日はテレビの取材のようだ。

気になるのか他の馬達もなんだなんだ、と顔を出している。

「インパクトターボ号の調教師をされています山田調教師にお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

どうやらテレビ取材は初めてなのか若干の緊張が見られる山田調教師だった。

「山田さん、インパクトターボ号が世間から非常に注目されていますがどうですか?」

「そうですね。一人のホースマンとして誇らしい事ですね。近年は競馬人気も落ちてきていますから少しでも私が助けになっていると思うとこれほどうれしい事はないですね」

「インパクトターボ号と言えば大逃げが有名ですがなぜ大逃げを選んだのですか?」

「大逃げを選んだと言いますか選ばざるをえなかったと言いますか、インパクトターボは周りに他の馬が居るとレースに集中できないんですよ。負けん気が強すぎるせいですね。常に先頭を走っていないと気が済まない。だから大逃げをするんです」

「そうなんですね!こんなに大人しそうな雰囲気をしているのに意外です」

「見た目通り人懐っこくて大人しい馬ですよ。たまに遊んで欲しくてちょっとした悪戯はしますが他の馬から見たら可愛いレベルです。ただレースになるととことん先頭に拘りますね。最後の最後まで先頭を譲りたくないのはレースを見ていれば分かりますよね?」

「はい、ダービーでも本当にギリギリまで先頭を譲りませんでしたもんね」

「ダービーは本当にあと少し運が向いていれば勝てていました。それほどのレースだったと自負しています」

「菊花賞ではサムシングブルーに引き離されてしまいましたね」

「流石は漆黒のステイヤー、ライスシャワーの血を強く引く馬ですね。完全に適正距離の差で負けてしまいました」

「次のレースの予定を伺ってもよろしいですか?」

「次はジャパンカップを予定しています。そして有馬記念も当然目指していきます」

「ありがとうございました。インパクトターボ号と山田調教師でした」

取材はスムーズに終わった様で、山田調教師は安心して大きく息をついた。

 

「山田さん、テレビ見ましたよ」

「室さん、見られてましたか」

恥ずかしそうに山田調教師が頭を押さえた。

「いえいえ、いい映りでしたよ。ターボ、お前も男前に映ってたぞ」

室オーナーがそう言って顔を撫でてくれる。

「お前にプレゼントだ。新しいメンコだぞ」

そういって室オーナーが取り出したメンコは今までのメンコと同じ配色に加えて目の周りに赤と黒のライン、隈取模様を模した模様が入れられたメンコだった。

「気持ちも新たに、これからも逃亡屋としてがんばってこい」

室オーナーの気持ちに応えるべく俺は気合を入れなおした。

 

そして、ジャパンカップ当日を迎えた。

 

「今年もやってきました第22回ジャパンカップ。世界各国から強豪馬がこの中山競馬場に集います。天候は曇ですが馬場に影響はありません。日本の馬が勝つのか、それとも海外の馬が勝つのか。観客たちの熱い視線が送られております。それではパドックを見てみましょう」

パドックをクルクル回りながら他の馬達を見ていく。

外国の馬と言っても見た目だけじゃ良く分からないな。

そりゃまあ基本同じサラブレッドだし無理もないか。

そんな事を思いながらパドックを歩く。

「4枠7番、2番人気シンボリクリスエス、牡の3歳です。ダービーではあまり良い成績を残せませんでしたが天皇賞秋に出走。そこでは古馬を差し置いての優勝と今一番調子の良い馬と言えるでしょう」

むむ、どうやら上がり調子の馬のようだ。

確かダービーは4着だったな。

「やあどうもこんにちは。それとも久しぶりの方かな?ダービーの時は全然敵わなかったけど今日は負けないよ」

「こっちだって負ける訳にはいかないさ」

シンボリクリスエスは少しのんびりしたタイプの馬のようだ。

とはいえ天皇賞秋を勝っているのだから実力は確かだろう。

「ところで僕の後ろの馬がなんか変なんだけどなんでかな?」

「後ろっていうと・・・」

「4枠8番、サラファン、アメリカからの参戦です」

「あ~んらワタ~シに何か?」

奇妙な口調で話す馬がそこにいた。

「いや・・・その・・・なんでそんな喋り方?」

「別にいいじゃな~い、どんな喋り方したって~」

「ね?変でしょ?(ヒソヒソ)」

「お、おう(ヒソヒソ)」

ヒソヒソと話をしていると別の馬が近寄ってきた。

「そいつはcazzoを取られてしまっておかしくなってしまったのデス」

「君は?」

「初めまして、イタリアーのファルブラヴデス」

イタリア馬のファルブラヴが少し格好つけて話しかけてきた。

「カツオがどうかしたの?」

「カツーオじゃなくてcazzoデス。イングリッシュで言うとペニースデス」

「あ、セン馬なのねこいつ」

「なによ!オカマが悪いってーの!?」

オカマは別に悪くはない。

だが元は野太い声だったであろう声を無理やり裏声にして奇妙な口調で喋るから変なのである。

「貴方達に分かるの!?他の牡には笑われ!牝にはがっかりされる気持ちが!?ワタシの!ワタシのワタシを返してぇ!」

他にも2頭程深く頷いているのでどうやら彼らもセン馬らしい。

「悲しいけど俺たち経済動物なのよね・・・」

「なんか・・・ごめん・・・」

微妙に牡馬達のやる気が下がった。

なお牝馬達は呆れた様子でこちらを見ていた。

「5枠9番、1番人気、我らが逃亡屋インパクトターボです。皐月賞1着、ダービー2着、菊花賞2着と全て大逃げ。世界にその大逃げは通用するのでしょうか。メンコも新たに今日も気合十分です」

うん、気合を入れなおそう。

 

SIDE:実況

 

「さあ間もなく始まります第22回ジャパンカップ。日本競馬は世界に通ずるのか。はたまた世界が日本を阻むのか。ここ中山競馬場に7頭の招待馬と9頭の日本馬による全16頭でのレースが行われようとしております。改めて各馬を見ていきましょう。1枠1番ファルブラヴ。凱旋門賞に出走しております。1枠2番インディジェナス。香港のクイーンエリザベスカップで3着です。2枠3番ゴーラン。去年に引き続きジャパンカップに参戦です。2枠4番イリジスティブルジュエル。アイルランドから参戦です。3枠5番アメリカンボス。毎日王冠では3着に入っております。3枠6番アグネスフライト。天皇賞秋ではシンボリクリスエスに敗北、果たして逆襲はなるのでしょうか。4枠7番2番人気ですシンボリクリスエス。天皇賞秋1着の実力馬です。4枠8番サラファン。先ほどパドックで落ち着かない様子を見せていました。5枠9番1番人気インパクトターボ。今日も逃亡屋として大逃げを見せてくれるでしょう。5枠10番ジャングルポケット。去年のダービー馬にしてジャパンカップの覇者。天皇賞春以来のレースです。6枠11番テイエムオーシャン。去年の桜花賞と秋華賞を制覇しました。6枠12番ブライトスカイ。フランスG1ディアヌ賞の勝者です。7枠13番ナリタトップロード。天皇賞秋では2着と悔しい思い。7枠14番ストーミングホーム。マクトゥーム殿下が今年も日本にやってきました。8枠15番マグナーテン。毎日王冠1着です。8枠16番エアシャカール。騎手の乗り変わりがどう響くか。以上16頭です。さあゲートの準備が完了してスターターが旗を振ります。ファンファーレです。多くの観客に見守られながら各馬が今順番にゲートインしてまいります。さあ、最後の1頭が今入りました。・・・スタートしました。先行争いはここまで負けなしインパクトターボがやはり飛び出しました。他の馬はまだそれほどペースを上げていません並んでいます。今日は一人旅になりましたインパクトターボが大きくリードを開いていきます。後方集団先頭はマグナーテンが取りました。ナリタトップロードにアメリカンボスなどこの辺りごった返しています後方集団です。シンボリクリスエスは中団前よりでしょうか。インパクトターボは我関せずと後続から早くも10馬身以上差を広げました。後続集団はまだポジション争いが熾烈です。各馬中々落ち着きません。2番手は変わらずマグナーテンですがその後ろでは各馬が様々な動きを見せております。早くもインパクトターボが残り1000メートルを切りました。後方マグナーテンが上がっていきます。シンボリクリスエス馬群に飲まれてちょっと苦しそうか。インパクトターボ早くも第3コーナーに入ります。後続集団が差を詰め始めました。ここでサラファンが内側から前に出ます!第4コーナーを回り切ってインパクトターボ直線に入ります!2番手にサラファン!懸命に差を詰めます!シンボリクリスエスもようやく外から上がってきました!ファルブラヴがここで一気に前に出る!インパクトターボ懸命に逃げる!ファルブラヴが追い付くのか!インパクトターボが逃げ切るのか!残り100メートル!ファルブラヴ懸命に追い上げるが僅かに届きません!インパクトターボ見事に逃げ切りました!世界よ!これが日本の逃亡屋だ!鞍上若井騎手が右手を高く上げました!」

 

SIDE:インパクトターボ

 

「ッシ!」

ゲートが開くと同時に足の回転を速める。

海外の馬達は馬場の違うレース場を確かめるようにゆっくりと、他の馬達は海外の馬を警戒してやはり抑え気味にスタートした為に完全に俺1頭だけ抜け出ることに成功した。

そもそも作戦も何も逃げ切れたら勝ち、逃げ切れなかったら負けという単純明快な勝負しかしていないのだ。

他の馬の事など考えず、自分の走りをするだけだ。

「行け!相棒!海外がなんだってんだ!」

若井騎手と共に、ただひたすらにゴールを目指して走り続けた。

「何よあの子!レースの定石を知らないのかしら!」

黙れヤンキーオカマ!定石なんて知った事か!

「面白いデス。貴方の走りが勝つか、私の走りが勝つか勝負デス」

イタリアの伊達男は話が分かるらしい。

「ちょっとどけよー。邪魔するなよー」

シンボリクリスエスはどうやらマークされてしまって自分の走りが出来ていない様だ。

悪いが先に行かせてもらう!

「くそ!このまま逃がすのも拙いが無茶したら俺までつぶれちまう!」

2番手の馬はどうするべきか迷っているようだ。

サムシングブルーちゃんが後ろに居ないのはちょっと寂しいが久しぶりの一人旅を満喫させてもらうぞ!

後続を引き離し、久しぶりに大きなリードを作る。

同世代だと大逃げを警戒されていた為に大きなリードを作るのは久しぶりだ。

この走りなら行ける!

最後の直線に向けて勢いよくコーナーを曲がっていく。

「待ちなさーい!貴方の勝手なんかにはさせないわよ!」

来たかヤンキーオカマ!

「オカマオカマ言うんじゃないわよ!オカマの底力見せてやるわ!」

「どけどけー!シンボリクリスエスのお通りだよー!」

「んが!邪魔するんじゃないわよ!」

後ろでシンボリクリスエスとヤンキーオカマが競り合っているが怖いのはそいつじゃない!

「待たせマシタ!勝負デス!」

「来たな伊達男!」

ファルブラヴが後方から一気に迫ってくる。

「悪いが!粘るのは得意なんだ!」

「ナント!追い付けないデス!?」

最後まで俺は先頭を譲る事なくゴール板を駆け抜けた。

その差は半馬身だったが完璧に俺は逃げ切って見せた。

「おう、見事にやられマシタ。悔しいデス。でも見事な走りデシタ」

「はは、逃げ足だけは自信があるんだ。勝たせてもらったよ」

ファルブラヴと健闘を称えあう。

「冗談じゃないわ!ワタシがあんなのに負けるなんて!」

「ふい~、何とか3着だ~」

納得がいっていないヤンキーオカマとやっぱりどこかのんびりしたままのシンボリクリスエス。

何とも変わったレースだったが久々の勝利だ!

 

インパクトターボ 牡3歳 13戦11勝 主な勝鞍:GⅠ皐月賞 GⅠジャパンカップ GⅠ日本ダービー2着 GⅠ菊花賞2着




次回予告

順調にデビューレースを終えて、やっぱりスパルタになったスケジュール。

友達のデビューをお祝いしつつ、自分のレースも走ります。

そして迎えた札幌ジュニアステークス・・・。

第2シーズン第7話 激闘!札幌ジュニアステークス!(ウマ娘)
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