ご意見ご感想お待ちしております。
また、一部個人的な設定などが登場いたします事を改めてご了承願います。
私が札幌ジュニアステークスを勝利して直ぐの事・・・。
「ターボ、お前も重賞勝利できた事だしGⅠに向けて勝負服を作るぞ」
「はい!」
勝負服はウマ娘にとって非常に大事なものだ。
煌びやかな衣装に身を包んだウマ娘達の走るGⅠはとても人気が高いし、何よりその衣装に身を包めるウマ娘は一握りである。
そして特殊な造り方をする勝負服はその見た目からは想像できないほど動きやすく、かつウマ娘に特別な力を授けてくれる物だ。
勝負服の起源は様々な説が有るが最も有力とされるのが神事に使う神聖な服が時代と共に変化したとされるものだ。
他には元々は戦場でウマ娘が花形だった時代にあえて目立たせる事で敵側の戦意を削ぐためだった等とも言われている。
実際に日本の合戦絵巻に派手な甲冑を身に着けて戦うウマ娘の絵があるなどこの説もまだまだ信憑性が高いと言われているが確定した説ではない。
余談が過ぎたがとにかくウマ娘にとって勝負服は憧れの存在なのだ。
「明後日のトレーニング後にデザイナーが来るから希望の衣装があればちゃんと考えておけよ」
「分かりました!どんな風にしようかな~」
私は自分にはどんな衣装が似合うか考え始めた。
「ゼロからイメージするよりカタログから方向性のイメージを掴んでみるのはどうかな?」
「そだねー。きっちりしたタイプかハデハデなタイプかだけでも色々あるし流石パーマー」
パーマー先輩が大手メーカーが出している勝負服カタログの最新号を手渡してくれた。
「これ、貰ってもいいんですか!?」
「家に送られてきたやつの一冊だから気にしないで。メジロ家ではお抱えデザイナーのオーダーメイドが殆どであんまりカタログから選ぶ事は無いんだけど、私もデザインとかの参考にしたりするし」
「さっすがメジロ家のお嬢様。セレブだねぇ」
スカイ先輩の言葉を聞いて私はふとデザイン料の事が気になった。
「あのー・・・ところで勝負服のお値段って・・・」
「ん?ああ、心配はいらないぞ。メジロ家みたいにお抱えのデザイナーが居たり、個人的にデザイナーに注文するなら別だが、学園指定のデザイナーの勝負服を利用するならトゥインクルシリーズ中は無料だ」
その言葉に私はちょっとホッとした。
お父さんの仕事的に十分余裕はある暮らしをしているけどウマ娘関連は何かとお金がかかる。
私が小学生時代に使っていた子供ウマ娘用スポーツ蹄鉄一対で10万円したのを覚えている。
しかも靴と別売りで、だ。
学園に入ってからは学園指定の蹄鉄であれば格安で手に入るし、有名になれば大手メーカーからのスポンサー契約を結ぶ事で最新の蹄鉄を手に入れる事もできる。
トレーニングシューズ等はチーム備品として購入するので私がお金を払う必要はない。
なので私が自費で購入しているのは蹄鉄とGⅡ以下用の本番用シューズくらいだ。
「ターちゃんは安心してじっくり考えるといいの」
「はい、ありがとうございます」
アイネス先輩に笑顔でそう言われて私は少し照れ笑いをしながら返事をした。
「へ~、勝負服ってメーカー品でもこんなに色々あるんだね~」
キタちゃんが私の貰ったカタログをペラペラと眺めながらそう呟く。
「でもなんでメーカー品なんてあるのでしょうか?ほとんどのウマ娘はオーダー品だと思うのですが」
「さ、サトちゃん、発言がお嬢様だよ」
まあ実際サトちゃんはお嬢様なんだけど・・・。
「中央トレセン学園所属の私たちは殆ど全員オーダーメイドだけど地方はそうじゃないからね」
「ああ、地方トレセン学園の事をすっかり忘れていました」
地方トレセン学園でも勝負服は使われている。
しかしオーダーメイドをするウマ娘はまず居らず、ほとんどがメーカー品だ。
「実際あのオグリ先輩も勝負服はメーカー品にアレンジを加えただけらしいよ。お母さんや地元の人が必死に用意してくれたからって」
「そういえばオグリ先輩は地方からの転入生でしたね」
私たちは雑談をしながら自分たちの衣装に思いを馳せた。
「はぁい、子ウマちゃん。私はデザイナーの木谷利一、ギャリーさんって呼んでね」
「は、はい・・・私はインパクトターボです・・・」
私は派手な格好でオネェ言葉の男性を前に固まってしまった。
「あ~、うん。気持ちは分かるがこれでも学園指定のデザイナーでチームとの付き合いも長い。一見珍妙な奴だが悪い奴ではないしこれで男気もある。まあ色々と説明の難しい奴だが安心して欲しい」
「んもう!褒めるのか貶すのかどっちかにしてほしいわ!」
山田トレーナーの言葉に業とらしく怒った態度を見せるギャリーさん。
「ああ、それと安心してちょうだい。サイズを測ったりするのは助手のイブちゃんとメアリーちゃんがするから。こんな風だけどアタシも男だし子ウマちゃんは気にするでしょ?」
「デザイナー助手の井部優華です」
「同じく助手のメアリー=ゲーテナーです」
若い女性の助手さん二人が頭を下げた。
どうやら本当に良い人そうなので私は体の力を抜いた。
「ギャリーさんは初見のインパクトデカすぎっしょ。あたし的にはアリ寄りのアリだけど普通はビビるって」
「そうねぇ。物怖じせずにハイタッチしてくれたヘリオスちゃんみたいなのは貴重よねぇ」
さすがコミュ強者のヘリオス先輩である。
多分このチームでギャリーさんと波長が合いそうなのはヘリオス先輩とファル子先輩ぐらいではなかろうか。
アイネス先輩は普通に受け入れそうだし、スカイ先輩はその辺は気にしなさそうな気がする。
パーマー先輩は・・・案外大丈夫かも?
「中々面白い子ウマちゃんね」
色々と考え込んでしまった私を見てギャリーさんはそう笑った。
「話がだいぶそれちゃったわね。それでどう言ったデザインが良いとか希望があるかしら?無ければ私の方である程度候補を出させてもらうけど」
「えっとその・・・歌舞伎衣装みたいなのって可能でしょうか?」
「へぇ・・・中々渋い趣味じゃない。悪くないわね。歌舞伎衣装・・・歌舞伎ねぇ・・・」
ギャリーさんはタブレット端末を取り出すと何やら調べたり書き込んだりし始めた。
「歌舞伎が好きなんてターちゃん中々凄い趣味なの」
「お父さんとお母さんがどっちも歌舞伎好きでして、私も何度か見てあの見得を切る演技が何だか格好いいな~って」
主役が一番注目を浴びる瞬間。
それが見得を切る時だ。
緩急付けた歌舞伎特有の演技。
そして観客からの歓声と大常連からの大向こう(掛け声、〇〇屋!といった屋号を叫ぶ事)。
この一連の流れは伝統美であり、歌舞伎がとても長く、多くの人に愛されてきた証だ。
「インパクトターボさん、ギャリーさんがデザインラフを考えている間に採寸しましょうか」
「あ、はい。お願いします」
私は助手の二人に付き添われて更衣室へと移動した。
「ん~、とりあえずこんなところかしら?」
採寸を終えて少しした頃、ギャリーさんがようやくタブレットから顔を上げた。
「歌舞伎衣装を勝負服に、なんて注文中々難しかったけど丁度いいのがあったわ」
そう言ってギャリーさんが手渡してくれたタブレット端末を私は覗き込んだ。
そこにはミニの着物に黒のだんだら羽織の私が書かれていた。
「なんか新選組の衣装みたいだね」
隣から覗き込むスカイ先輩がそう言った。
確かにだんだら羽織は新選組が着ていた衣装で、それが歌舞伎と何の関係が・・・?
「うふふ、貴女達、忠臣蔵って知ってるかしら?」
「赤穂浪士が吉良上野介を仇討ちしたって話ですよね?」
パーマー先輩がそう答えてくれる。
「そう、その忠臣蔵を題材にした歌舞伎があるのだけれど、そこで赤穂浪士が着ているのがこのだんだら模様の羽織なの。新選組のだんだら模様の羽織はそこからマネて作ったのよ」
「ええ!?新選組の方が後なんですか!?」
どちらが有名かと言えばやはり新選組の方が様々な題材にされている事から当然有名だ。
さらに新選組と言えば浅葱のだんだら羽織に誠の文字とそれが決まったユニフォームであると言われている。
「実際は新選組ではだんだら羽織はあまり人気が無かったみたいね。今でこそ新選組のトレードマーク的な扱いを受けているけど、今風で言えばアイドルが着ていた衣装そっくりの制服ってところかしら?しかも警官が、よ?」
「それは・・・すごく不釣り合いですね」
「でしょ?」
アイドルがアイドルとしてその衣装を着るのなら分からないでもないが、警察官がアイドルの様な制服を着ていたらあまりに浮いてしまうだろう。
「襟には逃亡屋衝撃加速でどうかしら?」
無理やり漢字にすると確かにそうなるだろう。
「背中がちょっと寂しいわね。赤穂浪士がモデルだけど襟の文字からして原型は無いし・・・。亀甲紋に逃の文字を入れましょう。兎にも角にも逃げって事ね」
横からギャリーさんが手を伸ばして背中に白抜きで六角形の中に逃の文字を書き加える。
「ベースはミニ着物だけど下は袴スカートにして和ゴス風でフリルは邪魔ね。袖は邪魔にならないように襷で袖まくりにすればいいわね。着物はあえて紺色で地味にするけれど羽織の裏地を赤にして、襷や腰紐に紫を入れて差し色で派手にするわよ。スカートも色と模様を明るくして目立たせる。ほら、歌舞伎衣装っぽくなったでしょ?」
「本当だ・・・」
そこには確かに歌舞伎衣装風の勝負服があった。
「後は靴のデザインね。ぱっと見は足袋に草鞋風でいいかしら。ううん、それじゃあ上に比べて軽いわね。具足風のデザインも追加しましょう」
靴は具足風の意匠が取り入れられたブーツになった。
つま先には黒い足袋と草鞋の鼻緒の様な模様が入っている。
「そうすると腕が袖まくりでちょっと寂しいわね。こっちにも手甲風アクセサリーを追加っと」
腕にも手甲モチーフのアクセサリーが追加された。
「額にはあえて何もなしで。耳につけてるのがリボンだとちょっと浮いちゃうから代わりに緑と白の二色の飾り紐を着けてっと。後ろ髪を縛っているのも飾り紐にしましょうね」
「わぁ!」
段々と出来上がる衣装のデザインに私は思わず声を出した。
「羽織の後ろは切れ目を長めにとって尻尾の邪魔にならないようにしてっと。こんな所かしらね」
「すごい・・・あっという間に・・・」
私はすっかり出来上がったデザインに見惚れていた。
「うふふ、その様子だと気に入ってもらえたみたいね」
こうして私の勝負服が決まった。
「さて、無事に勝負服も決まった事だし目標のGⅠを決めるとするか。ターボ、お前はどのGⅠを目指したい?朝日杯か?ホープフルか?」
「あのそれなんですけど・・・皐月賞でGⅠデビューしたいです」
それはキタちゃん達と話し合った結果だ。
皆でクラシック三冠で戦う。
誰が勝っても恨みっこなしの真剣勝負。
「・・・そうか。ただ一つ、俺はお前に残酷な事を言わなければならない。皐月賞とダービーは問題ない。だが菊花賞。これだけはお前の適正距離からは外れる。他の三人が長距離に強いかどうかは今の時点では分からないが、お前が菊花賞で勝てる見込みは薄い。それだけはお前に、トレーナーとして言わなければならない。どうする?」
「・・・今はまだ何も言えません。皐月賞とダービーを走ってみて・・・・それから考えます」
「・・・そうか。分かった」
山田トレーナーはそれだけ言うと私に練習の指示と皐月賞に向けてのレースの予定を伝えた。
SIDE:キタサンブラック&サトノダイヤモンド
「それで、二人ともクラシックに登録でいいんだな?」
沖野トレーナーが珍しく真剣な表情で二人に問いかける。
「はい、私たち皆で話し合って決めたんです」
「クラシックレースで真剣勝負をするって。勝っても負けても恨みっこ無しだって」
その言葉に沖野トレーナーは渋い表情をする。
キタサンブラック、サトノダイヤモンドは共に優れたウマ娘だ。
おそらくそれぞれが別々にクラシックレースに出れば三冠も不可能ではないと思っている。
それが共に潰しあう。
しかも仲良しの4人組で、だ。
テイオーとマックイーンの時も悩んだ。
しかもたった一戦のレースであれほどに、だ。
しかし二人の決意は固い。
きっと残りの二人もそうなのだろう。
沖野トレーナーはしばらく胃薬の世話になるであろう予感と共に、二人のクラシックレース申請を行った。
「決まっちゃったね。サトちゃん」
「もう後戻りはできませんね。キタちゃん」
ジョギングをしながら二人は語り合う。
「目指すのはやっぱり皆一緒だもんね」
「そうですね。それに、一生に一度のレースで、皆と本気でぶつかり合いたいです。友達だからこそ」
二人の足は自然と早くなる。
「全員で走れるといいね!クラシックレース!私!負けないよ!」
「はい!私だって負けませんよ!」
もはやジョギングではなく併走になった速度で二人はトレーニングコースを走り続けた。
SIDE:サムシングブルー
「もう一度確認するわね、ルーちゃん。ティアラではなくクラシックに出るのね?お友達とぶつかる。それが分かっていても出るのね?」
「はい・・・私は皆と戦いたいんです」
サムシングブルーの強い決意に的場トレーナーは溜息をついた。
大人しそうに見えるライスシャワーも勝負事では譲らない頑固な面があった。
サムシングブルーもまさかここまで頑固だとは思わなかった。
札幌ジュニアステークスに出たいと言っていた時から何かが変だとは思っていたが、気弱な割に負けん気は強いようだ。
「そう、貴女が決めたのなら反対はしないわルーちゃん。でもね、これだけは言っておくわ。勝っても負けても、私は貴女のトレーナーとして、全力で応援して、誉めて、慰めてあげるからね」
「・・・はい!」
あの時のライスシャワーに出来なかった事を、今はしてあげたい。
(二度とあんな事あってたまるものですか!勝者が称賛されないなんて事!)
あの時の自分はただどうして良いか分からずに狼狽えるだけだった。
自分が教え導いたライスシャワーが勝ったのになぜ批判されなければならないのか。
悲痛な笑顔でライブに向かうライスシャワーになんて声をかければ良かったのか。
二度目の時はミホノブルボンが居てくれた為にそこまでではなかった。
でも、その役目は本来自分がしなければならない事だ。
(だからこそ今度は間違えない。あの子が笑って居られるように)
強い決意と共に的場トレーナーはクラシックレースへの登録届を作成する。
そして季節は流れ、私たちはついに皐月賞に出る事になった。
「ついに本番だね・・・」
「それにしても、衣装もお互い秘密にしてたけどまさかキタちゃんと和風で被るとは・・・」
「私のはお父さんの演歌がモチーフだけどね」
ターフに続く地下道を私たちはゆっくりと歩く。
「ルーちゃんはドレスにしたのですね」
「は、はい。その、実家にあるお人形さんが着ていたドレスがすっごく可愛くて好きだったので」
青をベースに、耳飾りのブーケのデザインに合わせた意匠のドレスに身を包んだルーちゃんはちょっと恥ずかしそうにそう答えた。
一つ気になるのはなぜ腰にガンホルダーっぽいものがついているのでしょうか?
ちょっと怖くて聞けない。
サトちゃんも袖の長い緑のドレスに身を包んでいる。
ゆっくりと歩いてきたけど、長かった地下道はもうすぐ終わりを迎える。
「さあ・・・全力で戦おう」
「そうだね。全力で逃げ切ってみせるよ」
「はい、全力で追い上げます」
「ぜ、全力で付いてきます」
そう言うが誰も出口を出ようとしない。
「キタちゃん、お先にどうぞ」
「いやいやターちゃん、先頭を切るのはターちゃんでしょ?」
「ルーちゃん、たまには先頭はどうですか?」
「さ、サトちゃんこそ・・・」
私たちは無言で向き合うと右手を前に出した。
「「「「最初はグー!ジャン!ケン!ポン!」」」」
「さあ、!今年もやってきました皐月賞!生涯一度しか走れないクラシックレース第一戦が間もなく始まろうとしております!本日走る18人のウマ娘達!まず最初にターフに現れたのは大外18番になってしまいましたバイトアルヒクマ!苦難の道のりを乗り越えて皐月賞へとやってきました!続いて出てきたのは8番オータムマウンテン!さらに9番のサマーシーも居ます!おっと、11番スレッジハンマーは何やら機嫌が悪いのか他のウマ娘達を睨みつけています!12番ウィンタードリームが怯えているぞ!場外乱闘はダメですよー!3番リョコウバードはいい笑顔!5番メグロサーマンは緊張気味か?14番シャランラも落ち着かない様子!16番レッツラゴーはレースが待ち遠しい!17番スイーツラブ、大胆不敵な笑顔!4番イシムラシップ、神に祈るのはまだ早いぞ!6番ガルウィング、元気一杯です!13番ソーラールル、太陽をお拝んでいる!15番スプリングフェスタ、やる気満々です!7番キタサンブラック、何やら様子が変ですが大丈夫でしょうか?10番サトノダイヤモンド、彼女も少し不満そうな表情です!2番サムシングブルー、ちょっとおっかなびっくりですが落ち着いてレースに挑めるでしょうか?最後にやってきました1番インパクトターボ、ここまで9戦9勝無敗の大逃げウマ娘!今日も逃げ切れるか期待されています!以上18人です!」
実況の声が中山競馬場に響き渡る。
準備運動を始める私たちの横で着々とゲートの準備が整えられていく。
やがて最終確認が終わるとスターターが旗を振り、ファンファーレが鳴り響く。
観客の歓声がまるで地鳴りの様に空気を振動させる。
私たちは係員に誘導されて一人、また一人とゲートに入っていく。
そしてゲートが開かれた!
SIDE:実況
「スタートしました!まず一人好スタートで飛び出しましたのはやはりインパクトターボです!その後ろにこれまたやはりサムシングブルーが追走しております!おっと今日はどうやら追いかけるメンバーが沢山いる模様!サムシングブルーに並びかける位置にキタサンブラック!その後方にこれは珍しいスレッジハンマーが居ます!後方集団を引っ張る形で走っております!後方集団にはリョコウバード!メグロサーマン!外にレッツラゴー!その後ろにスイーツラブ!内にウィンタードリーム!スプリングフェスタは横を塞がれたか!その後ろのガルウィングちょっと窮屈そうだ!サトノダイヤモンドは集団を避けて外に抜け出ました!最後尾はシャランラは間に合うでしょうか!?先頭は変わらずインパクトターボが飛ばしております!早くも1000メートルを通過!タイムは58秒と尋常ではない速さです!三バ身ほど離れてサムシングブルー!その後ろにキタサンブラック!大きく離れて珍しい位置にスレッジハンマー!末脚は炸裂するでしょうか!?その後ろリョコウバードとメグロサーマンがポジション争い!スイーツラブ少し下がりましてウィンタードリームが前に出ます!スプリングフェスタなんとか外に出たい所!ガルウィング一旦後ろに下がりました!サトノダイヤモンドが外から前に上がっていきます!最後尾はシャランラのままだ!さあインパクトターボが早くも第4コーナーに入ります!サムシングブルーがジリジリと上がっていく!キタサンブラックもそれに続く!スレッジハンマーここまでハイペースだが大丈夫か!?サトノダイヤモンドが後方集団を抜いて一気に上がってきました!残りは300メートルの短い直線と強烈な坂!サムシングブルーとキタサンブラックがインパクトターボに並びかける!スレッジハンマーとサトノダイヤモンドも上がってきます!残り僅か!しかし坂がある!なんと完全に追い付かれたと思ったはずのインパクトターボがまた伸びる!きつい坂を駆け上がり!その差を僅かにだが広げていく!やりましたインパクトターボゴールイン!稀代の逃亡屋襲名披露の檜舞台!それに選ばれたのはこの皐月賞でした!見事に逃げ切りましたインパクトターボ!一度は追い付かれたかと思いましたが!渾身の走りで見事に先頭を守り抜きました!今、笑顔で手を振っています!おや?掲示板には写真の文字。どうやら3着から5着の判別に時間がかかっている模様です。1着はインパクトターボ、2着はサムシングブルーです。3、4、5着が現在写真判定中。どうやら判定が終わったようです。なんと!これは珍しい3着が3人同着です!キタサンブラック、サトノダイヤモンド、スレッジハンマーが見事3着同着となりました!」
SIDE:インパクトターボ
「ッシ!」
私はゲートが開くと同時に全力で飛び出すと先頭を取りに行く。
不器用な私が取れる唯一の作戦であり、最も得意で強力な武器だ。
「ついてく!ついてく!」
後ろにはやっぱりルーちゃんが追走してくる。
「前よりもずっと早い!やるねターちゃん!」
今日はキタちゃんも居るようだ。
「待てやゴォラァァァアァァァァ!」
スレッジハンマーがやはり怒声と共に追いかけてくる。
サトちゃんは後ろに控えているらしく今は様子が分からない。
落ち着け私、今は前に進む事だけを考えよう。
最後は必ず皆来るんだから!
SIDE:サムシングブルー
「ついてく!ついてく!」
私は今日もターちゃんについていく。
元々一人で走るのが苦手な私はどうしてもほかの人のペースを当てにしないと走れない。
そんな私を否定せず、色んな走りに合わせられるように教えてくれたトレーナーさんには感謝しかない。
ターちゃんについていくのはとても大変だ。
スタミナには自信がある私だけれどスピードにはちょっと自信が無い。
それでも私は必死にターちゃんについていく。
だって、ターちゃんを一人にするととっても強いから!
SIDE:キタサンブラック
「すごいなぁターちゃんは!私もスタートには自信があったのに!」
私も逃げや先行は得意だ。
スタートだって自信があった。
でもターちゃんはそんな私を上回る速さで先頭に立つとドンドンと先へ進んでいく。
でもハイペースなレースは私だって得意だ。
今は追いかけるだけだけど、最後の直線は譲らないからね!
SIDE:サトノダイヤモンド
「一緒に走ってみて改めてターちゃんのすごさが分かりますね」
内に抑え込まれる事を避けるために私は外に出て前を追いかける。
四人の中では私だけが後ろからのレースをするのでどうしても離されてしまうけれどもレースはまだ始まったばかり。
「大丈夫です。レースは最後に先頭を取ればいいんです」
私は自分にそう言い聞かせると絶好のポジションを探して移動を始めた。
SIDE:インパクトターボ
「行ける!私なら逃げ切れる!だから諦めるなターボ!」
これがGⅠ!
これが皐月賞!
プレッシャーが!
皆の想いが!
そんな見えない何かによって私の体力はドンドン削られていく!
いつもより足を速めて逃げるがルーちゃんもキタちゃんもきっちりついてくる!
あのスレッジハンマーもサトちゃんも上がってきているようだ!
もうすぐ最終直線!
「今日は!勝ちます!」
「テイオーさんの様になる為に!負けられない!」
「マックイーンさんに恥ずかしくない様に!負けられません!」
「どけぇ!勝つのはスレッジハンマー様だぁ!」
上がってきた皆が私に並びかける!
「ターちゃん頑張るのー!」
「バクシンバクシーン!」
「あと少しだよ!がんばって!」
「バクニゲゴーゴー!」
「あと少し、気を抜かないでねー!」
「ターちゃんファイトー!」
「後ろなんか気にするな!ゴールだけ見ていろ!」
チームの皆の応援が聞こえてくる!
「行きなさい!ターボ!」
「インパクトならやれるぞー!」
イクノ先輩!ツイン先輩!
「インパクトターボ行けー!」
観客達の応援の声!
「うわああああああああああああああああ!」
「嘘!?」
「すごい!」
「そんな!?」
「なんだとぉ!?」
多くの声に背中を押されて私は最後の気力で前に出ると先頭のままゴール板を走り抜けた。
「やった!やったやったやった!やったぞぉ!」
私は勝利を噛み締めるように何度も叫ぶと、応援してくれた皆に笑顔で手を振った。
「また・・・逃げられちゃいましたね」
「凄かったよターちゃん」
「はい、今日は完敗です」
「「「おめでとうターちゃん、次は逃がさないからね!」」」
三人は笑顔で拍手をくれた。
「ありがとう皆!でも次だって逃げきってみせるからね!」
他の出場選手達も拍手を送ってくれた。
ただ一人を除いて。
「チックショォ!何やってんだスレッジハンマー!こんなのが俺様の走りだとぉ!」
全力で地団駄を踏んでいるスレッジハンマーが自分に叱咤している。
「インパクトターボ!てめぇダービーまで覚えてやがれ!絶対にダービーで負かしてやるからな!」
それだけ言うとスレッジハンマーはターフを立ち去って行った。
一方的に捲し立てられて若干私たちは置いてけぼりだった。
「えーっと・・・うん!ライブも頑張るぞ!」
「「「お、お~!!!」」」
気を取り直して私たちは右手を高く上げた。
育成目標:皐月賞を5着以内に入る CLEAR
固有二つ名獲得条件:9個以上のレースを全て逃げで勝利し、皐月賞を無敗のまま勝利する CLEAR
親密度ランク1
身長 145cm
体重 微増(成長期)
誕生日 4月2日
親密度ランク2
特異なこと スタートダッシュ
苦手なこと 人込みに揉まれる事
親密度ランク3
耳のこと 後ろに気配があると敏感に察知する
尻尾のこと 母親に念入りに言われたのでお手入れば万全
次回予告
残念ながら有馬記念は勝てなかった
それでも悔やんでいる暇はない
行くぞ、相棒!レースの時間だ!
第2シーズン第9話 レース、レース、またレース