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残念ながら有馬記念も二着に終わってしまった後・・・。
「惜しかったなターボ。大丈夫、お前はまだまだ成長できる。来年の有馬記念は必ず取るぞ」
落ち込んで戻ってきた俺に山田調教師がそう言って慰めてくれた。
「すみません山田さん、室さん。勝てませんでした」
「気にするな若井君。あの時ファインモーションが前に来なければきっと体力を使いすぎないで、逃げ切れただろう。勝負は時の運だ。今日は我々に運が無かっただけの事だ」
室オーナーがそう言って若井騎手を諭す。
「ターボはまだ若い。来年は必ず有馬記念を取るんだ」
「はい!」
こうして俺の3歳は終わりを迎えた。
そして年が明けて2003年1月・・・。
「やあ山田さん、あけましておめでとうございます」
「室さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
年明けから少し経った頃に室オーナーが訪ねてきた。
「ほら、ターボにお年玉だ」
そういって室オーナーは沢山のリンゴが入った段ボールを見せてくれた。
リンゴだヤッター!
「ありがとうございます室さん。それで、ターボのレース計画を考えたのですがご相談よろしいですか?」
「ええ、構いませんよ」
ああん、リンゴお預けなのね。
「本当なら若井君にも参加して欲しかったのですが、皐月賞以降少しずつ声がかかるようになってきたらしくて、今日はあいにく関西に行ってます」
どうやら若井騎手も徐々に指名される事が増えてきたらしい。
「それで、どういった計画なのですか?」
「はい、今後なのですがターボは定期的にレースに出してやった方が調子が良いので、過密スケジュールにならない程度にレースに出してやろうかと思うのですがよろしいですか?」
「ほう、そうなのですか?」
「ええ、以前休みを取らせたり、レースに向けて調教を重視する為に長期間レースに出さなかった時期があったじゃないですか。あの時なんですがどうもフラストレーションが溜まるようで、悪戯の回数が目に見えて増えましてね。調教はまじめにやってくれるのですが明らかに物足りなさそうな雰囲気を出しては悪戯してましたね。幸いにも脱走したり放馬したりなんて事はなかったので良かったのですが・・・」
調教はまじめにやりますとも。
でも実際レースに比べると疲れるけど物足りないんだよね。
血が滾らないし、ただただ練習するってのは。
「唯一楽しそうなのは併せ馬の時なのですが、ターボは大逃げするので併せ馬の人気が悪くて・・・」
変な癖を覚えられたら堪らないからとあんまり併せ馬してもらえないんだよね。
「なるほど、ならいっそレースに出してフラストレーションを解消してやりながら調教をしていこうと言うわけですな」
「その通りです。もちろん疲労や怪我などには十分注意して、獣医の健康診断も頻繁に行う予定です」
「山田さんに全てお任せしますよ。ターボ、大変だろうが頑張るんだぞ」
おっし、今年も頑張ってGⅠ取るぞー!
1月 調教に専念の為レース無し
2月 GⅡ京都記念
「インパクトターボ一人旅!後続はまったくついてこれません!堂々たる走りで今1着でゴールイン!」
3月 GⅡ日経賞
「インパクトターボが有馬記念の鬱憤を晴らすかのような大逃げです!イングランディーレが必死に追いかけますが届きません!インパクトターボ逃げ切りましたゴールイン!」
4月 今月は休ませる為にレース無し
5月 天皇賞春は適性外なので回避、GⅡ目黒記念
「インパクトターボ先頭!後続はまだもがいている!インパクトターボ直線に入っても速度が落ちません!そのままゴールを駆け抜けましたゴールイン!」
そして6月 GⅠ宝塚記念
「さあ!今年の宝塚記念は18頭フルゲートでのレースとなりました!注目馬が揃いました今年の宝塚記念!特に注目なのが大逃げで連戦連勝のインパクトターボでしょう!ハイペースになる事が決まった今年の宝塚記念!はたして勝つのはどの馬なのでしょうか!」
蒸し暑い阪神競馬場のパドックをグルグルと回る。
「やあ、久しぶり。また会ったね」
「シンボリクリスエスか。有馬記念以来だな。今日は負けないぞ」
久しぶりに見たシンボリクリスエスと火花を散らす。
「お久しぶりです。インパクトターボさん」
「サムシングブルーちゃん。天皇賞春はおめでとう」
「はい!」
嬉しそうに笑うサムシングブルーちゃんだが今日はライバルなので負けるわけにはいかない。
「フヒヒ・・・尊い・・・尊くて溶けそう・・・」
「うわ!?どっから現れた!?」
「き、君は?」
「フヒヒ・・・アグネスデジタルだよ・・・」
アグネスデジタルって確か・・・。
「1枠2番、アグネスデジタル。日本芝、海外芝、ダートの全てを制したまさに適性問わずの傑作馬です!前走の安田記念も見事に1着です」
な、何という変態適性!
「フヒヒ・・・恥ずかしい・・・やばい恥ずか死しそう・・・」
ぶ、不気味な奴だ・・・。
「フヒヒ・・・君の走り・・・楽しみだなぁ・・・」
何とも言えない視線でこちらを見た後アグネスデジタルは去っていった。
妙な気分になったが気を取り直すと相棒の元へ向かう。
行くぞ相棒!レースの時間だ!
SIDE:実況
「さあ、ファン投票によって選ばれた18頭の人気馬達。果たして今年の宝塚記念を制するのはどの馬なのか。まもなく各馬のゲートインが完了します。今、最後の1頭が収まりました。・・・スタートしました。1頭飛び出しました逃亡屋インパクトターボ今日も大逃げです。その後ろ3馬身から4馬身を女ハンターサムシングブルーが追走します。この2頭のお決まりと言った体制です。その後ろ2馬身の位置にマイソールサウンドが居ます。やや離れてサイレントディール、アグネスデジタル、ダンツフレームがこの位置。その後ろにシンボリクリスエスなどがいます。大きくばらけたまま第1コーナーへと各馬が向かいます。先頭のインパクトターボ足を緩める事なくコーナーを曲がっていきます。サムシングブルーとの差は変わらず4馬身といったところ。その後ろマイソールサウンドが詰めています。少し離れて3馬身ほど後ろにバランスオブゲーム、サイレントディールなどがいます。その後ろにタップダンスシチーとアグネスデジタル。シンボリクリスエスにダンツフレームはやや後ろ。最後尾はファストタテヤマです。早くも第3コーナーを回っていきますインパクトターボ。サムシングブルーがじりじりと差を詰め始めました!マイソールサウンド苦しいかついていけません!タップダンスシチーが上がっていきます!シンボリクリスエスもそれに続きます!第4コーナーを回って最後の直線!インパクトターボまだ先頭!サムシングブルーも追い上げますが今日は差が中々詰まりません!インパクトターボ逃げる!インパクトターボ逃げる!今日はまだ余裕がある!これは見事に逃げ切りましたゴールイン!舞台の主役は譲らない!インパクトターボ見事な大逃げで勝利いたしました!」
SIDE:インパクトターボ
「ッシ」
いつも通り、ゲートが開くと同時に全力で飛び出す。
「ついてく!ついてく!」
今日はサムシングブルーちゃんがすぐ後ろにいるから警戒を外す事ができない。
「大丈夫だ相棒!後ろは俺が気にする!」
相棒の声に警戒を止めて走る事だけに集中する。
「せ、先頭を取られるとは不覚!」
どうやらもう1頭逃げ馬が居た様だが悪いが先頭は譲らんぞ!
俺はそのままの勢いでコーナーを曲り、向こう正面へと駆け抜けていく。
「フヒヒ・・・これは・・・まずいねぇ・・・」
あの不気味な声が遠くから微かに聞こえてくる。
シンボリクリスエスの声はまだ聞こえてこない。
「相棒!まだ行けるな!」
もちろんだ相棒!
向こう正面を抜けて第3コーナーを内側一杯に走り抜ける。
そのまま第4コーナーに入ると後ろのプレッシャーが強くなってくる。
「今日も!捕えて見せます!」
じりじりと、しかし確実に距離を詰めてくるサムシングブルーちゃん。
しかし今日は俺の距離だ!
言葉はもう要らない!
相棒の鞭が全身の力を引き出す!
「うう!追い付けない!」
必死に追いかけるサムシングブルーちゃんだが今日は2馬身ほどリードを残したまま俺はゴール板を駆け抜けた!
「やったな相棒!やっぱりお前は最高の馬だ!」
相棒が首筋を叩いて褒めてくれる。
「やっぱり強いですターボさん。悔しいなぁ・・・」
「今日は勝たせて貰ったよサムシングブルーちゃん」
落ち込むサムシングブルーちゃんを騎手さんが宥めている。
「やられた~完全に前をふさがれた~」
「フヒヒ・・・見事に負けました・・・鬱だ・・・」
思ったように走れなかったらしいシンボリクリスエスと暗い空気を漂わせるアグネスデジタル。
「くそー!天皇賞秋でリベンジしてやるからなー!絶対出ろよー!」
「ああ!次も逃げきってやるさ!」
口調はのんびりしているが負けん気は十分なシンボリクスエスにそう宣言する。
「フヒヒ・・・やっぱりデジタルはもうオワコンなんだ・・・」
「あー・・・うん・・・がんばれ?」
尋常じゃないくらい落ち込むアグネスデジタルになんて声を掛けたらよいのか分からず、取り合えず励ましておいた。
「次は負けません!」
「ああ、楽しみにしてるよ」
サムシングブルーちゃんはそう言って去っていった。
さて、次に目指すはどのレースかな?
インパクトターボ 牡4歳 18戦15勝 主な勝鞍:02年GⅠ皐月賞 02年GⅠジャパンカップ 03年GⅠ宝塚記念 02年GⅠ日本ダービー2着 02年GⅠ菊花賞2着 02年GⅠ有馬記念2着
次回予告
クラシックレース2番目、日本ダービー
最も重く、至高と言われる日本ダービー
誰もかれもダービー
第2シーズン第9話 ダービー、ダービー、いざダービー(ウマ娘)