これが逃げるという事だ   作:福泉

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第2シーズン第11話お待たせいたしました。
ご意見ご感想お待ちしております。


第2シーズン第11話 ジャパンカップ大逃走!(馬)

インパクトターボ絶不調!?

そんな見出しの記事が競馬新聞に書かれている。

天皇賞秋で負けてしまった俺に対してメディアの無責任な記事を見た山田調教師の手が僅かに震えている。

「ちっ!今まで散々持ち上げておいて負けたらあっさり手のひら返しか!」

必ず勝ってきた訳ではないがそれでもいくつものレースを勝利してきた俺はメディアにとっていい客寄せだったのだろう。

本人にとって少し調子が悪かったという話をまるで不治の病の様に書き上げるその脚色技術だけはすごい。

決して誇れる技術ではないが・・・。

「いいかターボ!お前はまだまだいけるって事を皆に見せてやれ!」

勿論だとも!

 

SIDE:掲示板

 

>672

秋天は惜しかったな

 

>673

あそこでまさかアグデジ来るとは思わなかったよな

 

>674

悲報:インパクトターボ連帯記録途絶える

 

>675

後1勝で1位タイだったのにな

 

>676

シンザンの壁が厚すぎるんよ

 

>677

そもそも勝つ馬はあんまりレースに出さないしなぁ

 

>678

そう考えるとビワハヤヒデってすごい馬だったんだな

 

>679

最後の天皇賞以外必ず連帯に入ってるからな

 

>680

ターボの場合デビューからの連戦が異常だもんな

 

>681

今でもかなりの頻度で出走してるもんな

 

>682

無事之名馬とは言うけどターボの頑丈さはあの走りではありえないよね

 

>683

普通ならどっかで怪我してもおかしくないよね

 

>684

その前に普通はガレて勝負にならなくなる

 

>685

ターボは全然ガレないもんな

 

>686

ジャパンカップ連覇してくれるかなぁ

 

>687

ボリクリ以外ライバルになる馬がいないからボリクリがこなけりゃいける

 

>688

海外馬は正直良くわからんしな

 

SIDE:若井騎手

 

相棒に関してのメディアの憶測記事がいくつも目に入る。

その中には騎手である俺について書かれたものも少なくはない。

その内容は大体が名馬に跨る駄目騎手という内容だ。

碌な戦績の無かった俺がGⅠを勝てているのは相棒のお陰で寧ろ足手まといである。

名騎手が乗ればもっと勝てていただろう。

そんな事は俺自身が一番思っている。

ベテラン騎手は沢山いるし武さんの様に誰からも知られるほどの名騎手だっている。

降りたくない。

相棒を一番知っているのは俺なんだ。

先輩からも意地でもお前から降りるなんて言うなと言われている。

騎手が一度折れてしまったら、二度と専属なんて貰えないと思えと言われている。

そうでなくても降りるつもりはない。

次のチャンスは必ずモノにするんだ!

相棒が勝つまでしばらく断酒する。

俺はそう誓った。

 

SIDE:インパクトターボ

 

いつもより真剣に調教を受ける。

よりスピードを、よりスタミナを求めてトレーニングを積む。

末脚に期待はできない。

元々弱いモノを鍛えるより長所を生かす為にスタミナとスピードを鍛え続ける。

最終で追い抜かれてしまわないように圧倒的なリードを作れるように。

相棒は俺を良く分かってくれている。

俺が走りやすい様に、俺が余計な意識をしなくていいように誘導してくれる。

アグネスデジタルに気を取られたのは俺の油断が招いた結果だ。

追い付かれない速度を手に入れるんだ!

こうして二度目のジャパンカップを迎えた。

 

「第23回ジャパンカップ!先日からの悪天候の影響を受けまして馬場は重馬場、コンディションの良くないレースとなりました。今年も9頭の海外馬が集いました東京競馬場。去年はインパクトターボの独壇場でした。連覇なるか期待がかかります」

実況の声に多くの観客の歓声。

あの天皇賞秋の結果を受けてもなお2番人気の俺への期待。

負けるわけにはいかない。

そんな思いを胸にパドックを回る。

「やあ、この間はどうも」

「シンボリクリスエスか。この間はやられたが今日は負けるわけにはいかない。連覇がかかってるんでね」

「3枠5番シンボリクリスエス。1番人気です。前走の天皇賞秋ではインパクトターボを破り見事2連覇を達成しております」

今日もシンボリクリスエスと静かに睨みあう。

「6枠12番インパクトターボ。2番人気です。天皇賞秋では3着と連続連帯記録が途絶えましたがそれでもまだまだ人気の1頭。ジャパンカップ連覇が期待されています」

「あ~んらまたあんた達なのね」

ん?このオカマ声は・・・。

「ヤンキーオカマか」

「サラファンよ!オカマなのはワタシのせいじゃないわよ!」

まあそうなんだが・・・。

「前回はあんたの作戦にしてやられたけど今度はそうはいかないわよん」

「はん!オカマに負けてたまるか!」

「オカマオカマうるさいわね!覚えてらっしゃい!」

苛立ちながらヤンキーオカマは去っていった。

「やや落ち着かない様子が見られます8枠16番サラファン。本番までに落ち着いてくれると良いのですが」

大丈夫、今日はやれる。

いくぞ相棒!レースの時間だ!

 

SIDE:実況

 

「第23回ジャパンカップ。前日からの雨の影響で非常に馬場が悪くなっております。この重たい馬場がどういった影響を及ぼすかといったところであります。今日の出走馬を振り返ってみましょう。1枠1番タップダンスシチー。京都大賞典を勝利しております。1枠2番デノン。どういった走りを見せてくれるでしょうか。2枠3番サクラプレジデント。鞍上は武豊騎手。2枠4番はフォールズオブオマー。日本の馬場に適応できるでしょうか。3枠5番は1番人気、シンボリクリスエス。天皇賞秋を連覇したまさに強豪馬。3枠6番アナマリー。エリザベス女王杯にも参戦した牝馬です。4枠7番ツルマルボーイ。鞍上は横山騎手。4枠8番ネオユニヴァース。今年のダービー馬です。5枠9番アンジュガブリエル。今年のフォワ賞優勝馬です。5枠10番ザッツプレンティ。今年の菊花賞を制したステイヤーです。6枠11番アクティブバイオ。アルゼンチン共和国杯を勝利しております。6枠12番インパクトターボ。2番人気です。去年のジャパンカップを見事に逃げ切った日本が誇る逃亡屋。果たして連覇なるか。7枠13番ジョハー。アメリカのブリーダーズカップを制しております。7枠14番イズリントン。イギリス、ヨークシャーオークスを制した名牝です。7枠15番スルーヴァレイ。アメリカからの参戦です。8枠16番サラファン。去年に引き続きジャパンカップに挑戦です。8枠17番タイガーテイル。エリザベス女王杯に引き続き参戦です。8枠18番サンライズペガサス。天皇賞秋の逆襲はなるか。以上18頭フルゲートでのレースとなります。ゲートの準備が終わりスターターが旗を振りました。ファンファーレが鳴り響きます。さあゲートインが無事完了しました。体制完了。・・・スタートしました。やはり飛び出しました1頭・・・いや!もう1頭います!インパクトターボとタップダンスシチーです!なんとタップダンスシチーがインパクトターボに真っ向勝負を挑みました!先頭はインパクトターボですがその横にタップダンスシチーがいます!その後ろには大きく離れてザッツプレンティ!また少し離れてアクティブアイオ!フォールズオブオマー!アンジュガブリエルと続いております!その後ろにイズリントン、そしてジョハー!そして中団固まってシンボリクリスエス、サラファンがその後ろでマークしております!アナマリーがそれを追走!3コーナーへ向かいます!ネオユニヴァースはやや後ろの集団を走っております!後ろの方にはサンライズペガサス、ツルマルボーイ、サクラプレジデントが足を溜めています!果たして間に合いますでしょうか!さあ各馬第3コーナーへ向かいますが先頭2頭が飛ばしまくっておりますその差はなんと13馬身!2番手にザッツプレンティがつけていますが4番手にアクティブバイオ!7枠の2頭の外を回ってイズリントンが上がっていきます!スルーヴァレイがいまして押していますフォールズオブオマー!3、4コーナー中間です!アンジュガブリエルとシンボリクリスエスも外から上がっていきますがまだ中団です!さあ先頭インパクトターボとタップダンスシチーまったく譲らないまま直線に入ります!譲りません!どちらも先頭を譲りません!後ろとの差は7馬身ほどまで縮まりました!しかしどちらもまだ足色は衰えていません!三番手はアクティブバイオ!デノンデノン!シンボリクリスエスはまだ中団にいます!先頭はインパクトターボとタップダンスシチー並んでいます!激しいにらみ合いでまだ先頭争いを続けています!リードはまだ4馬身から5馬身!アクティブバイオ疲れたか追い上げが悪い!ネオユニヴァースか!ザッツプレンティか!シンボリクリスエスちょっと伸びが悪い!残り200メートルを切りました!先頭はインパクトターボとタップダンスシチー!リードは3馬身!必死に追い上げるザッツプレンティ!シンボリクリスエス漸く上がってきましたがこれは厳しい!先頭はインパクトターボとタップダンスシチー!インパクトターボか!タップダンスシチーか!どっちだ!どっちだ!並んだままゴールイン!勝ったのはインパクトターボかタップダンスシチーか!3番には必死に上がってきましたシンボリクリスエスが入りました。しかし何とも恐ろしい大逃走を見せたインパクトターボとタップダンスシチー。果たして勝ったのはどちらか。写真判定を待ちましょう」

 

SIDE:インパクトターボ

 

「ッシ!」

今日も完ぺきなスタートを切れた。

そのまま勢いに乗って後ろを引き離し・・・。

「おりゃああああああああ!」

誰だコイツ!?

なんと隣にもう1頭いるではないか。

「僕だってGⅠ欲しいんだ!いつも勝ってるじゃないか!1個ぐらいくれよ!」

「嫌なこった!連覇が掛かってるんだ!それに1個だって多く勝ちたいんだ!譲るもんか!」

「なんだとケチ!」

「なんだと負け馬!」

「やるか!」

「なめるなよ!」

売られた喧嘩だ!

買わないなら男じゃない!

「相棒!負けるなよ!」

「タップ!男をみせてみろ!」

鞍上の騎手たちも必死に追う。

「負けるかぁ!」

「邪魔するなよぉ!」

後ろの事など一切無視して隣の馬、タップダンスシチーと競り合い続ける。

「どけよぉ!」

「嫌だねぇ!」

他の馬など知ったことか!

今は隣のこいつしか眼中にない!

今どこを走っているのかすら分からない!

だが相棒がきっちりと導いてくれる!

「ぬおおおおおおおお!」

「うりゃああああああ!」

必死に前を目指して走り続ける!

譲るわけがない!

譲りたくない!

「だああああああああ!」

「がああああああああ!」

互いの全身全霊を出し切って最後の直線を走り切った。

どっちが勝ったのか、自分たちですら分からなかった。

 

SIDE:実況

 

「さあとても長い審議が続いています。すでにレース終了から15分が経過しています。会場が騒めいております。あ、今審議が終わったようです!結果はなんと同着!1着が2頭!日本中央競馬会史上初のGⅠ同着優勝です!ありえないと言われていた事が起きました!写真でも、映像でも差を確認できないとの事です!なんという決着!史上初!ジャパンカップ同着優勝です!」

 

SIDE:インパクトターボ

 

「同・・・着・・・?」

「勝て・・・た・・・?ない・・・?」

中々理解が及ばずにただただ茫然とする。

相棒達も予想外の結果に困惑しているようだ。

その後、それぞれに優勝の表彰と撮影が行われるなどなんだか異様な雰囲気のままジャパンカップは終わりを迎えた。

う~ん、なんかスッキリしないなぁ・・・。

 

インパクトターボ 牡4歳 20戦16勝 主な勝鞍:02年GⅠ皐月賞 02年GⅠジャパンカップ 03年GⅠ宝塚記念 03年GⅠジャパンカップ 同着1位 02年GⅠ日本ダービー2着 02年GⅠ菊花賞2着 02年GⅠ有馬記念2着

 




次回予告

ついに迎えた菊花賞

私の適性では厳しいけれど、逃げずに立ち向かいます!

・・・まあレースは逃げるんですけどね

第2シーズン第11話 菊花賞大闘争!(ウマ娘)
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