ご意見ご感想お待ちしております。
やや納得がいかない決着となったジャパンカップ。
その走りを見ていた山田調教師はこう言った。
「どうやらターボはあまり重馬場は得意ではないみたいだな」
「みたいですね。少し走り辛そうな様子でした」
そう、重い馬場に足を取られて思ったように走れなかったのは事実だ。
「タップダンスシチーがまさか真っ向勝負を挑んでくるとは思わなかったがどうも重馬場が得意だったようだな。これがもし不良だったら負けていたかもしれん」
うーんこればっかりはトレーニングでなんとかなるものでもないし天気は祈るしかない。
「有馬記念、天気が良いのを祈るしかないな」
「今度こそ有馬記念を手にして見せます!なあ、相棒!」
勿論だ相棒!
SIDE:掲示板
>812
ジャパンカップまさかの同着とかどういう事なの
>813
おかげで払い戻し半分になっちゃって赤字だぁ!
>814
タップダンスシチーがまさか喧嘩売るとはなぁ
>815
しかし写真とか映像で判定するとかなんで競馬はこう古臭い判定方法なんだろうな?
>816
最新のセンサーとか導入しないのかね?
>817
それやろうとするなら馬の鼻先にセンサー埋め込む必要があるぞ
>818
それはさすがに問題があるな
>819
カーレースなんかとは違うからどうにもならんな
>820
鼻先がゴールラインに触れた時、って条件だから付ける場所が限定されるからな
>821
それより有馬記念ターボは勝てそうか?
>822
ボリクリがいるからなぁ
>823
戦績はどっこいどっこいだからどうなる事か
>824
問題はターボが長距離苦手なんだよなぁ
>825
有馬は2500だからギリ行けなくない?
>826
2400でも勝ってるし去年も2着だから可能性は十分ある
>827
雨降るとキツイかも。明らかにジャパンカップは遅かった
>828
いうてボリクリも遅かったから雨苦手な馬は多いよね
>829
不良馬場特異な馬の方が少ないわな
>830
今からテルテル坊主作っておこうぜ
>831
あと内枠になるように祈ろうぜ
SIDE:室満男
「今年もやってきましたなぁ。有馬記念の抽選会場に」
「ええ、本当にターボのお陰です」
山田さんと共に今年も有馬記念の抽選会場に向かう。
二度目の抽選会場は一度目の時とは違う緊張があった。
一度目は慣れない状況に対する緊張だったが二度目はより有利な番号を引けるかどうかといった緊張の方が大きい。
自分の運の無さでターボを足を引っ張りたくないという思いがとても強くなっていた。
こんな緊張は子供の授業参観以来かもしれない。
「今年は良い番号を引けるといいですね」
「まあターボの場合大外でも無い限りそれほど不利にはなりませんがそれでも内枠の方がありがたいですな」
山田さんとこう言った話ができるのも後どれぐらいあるだろうか。
競走馬の全盛期は短い。
ターボも走れて後1年といったところだろう。
早い馬なら今年で引退も十分にありえる。
少なくともターボは晩熟ではない。
(少しでもいい。ターボが長く走れますように)
馬に纏わる逸話のある加茂神社のお守りを胸元のポケットに入れて、私はそう祈った。
SIDE:山田調教師
室さんと一緒に抽選会場へと向かう。
二度目となった有馬記念の抽選へ俺は強い願いと共に向かう。
ターボは強い馬だ。
ただ突き抜けた強い馬ではない。
シンボリルドルフ、ナリタブライアン、テイエムオペラオー、シンザン、数々の名馬を思い浮かべるがターボは成績だけで言えば決して見劣りしない成績だ。
だがGⅠでの勝利は接戦ばかりだ。
どれもこれもギリギリの勝利。
ターボの資質と作戦が上手く合致した結果、辛うじて勝利に繋がっている。
もっと俺が優れた調教師だったらターボをもっと勝たせてやれたかもしれない。
だから頼む。
少しでもいいからターボに有利な番号で頼む。
俺の実力の無さがターボに苦労させていると思うと情けなくはあるが運の悪さで足を引っ張る事だけは避けたい。
そう思いながら俺は会場へと入っていった。
SIDE:若井騎手
今回も早めに会場入りして室さんと山田さんを待っている。
去年あれほどの緊張を持っていた有馬記念の抽選会場に今年は少し落ち着いて入る事が出来た。
それでもやはり緊張と興奮から眠りが浅くていつもよりはるかに速い時間に目を覚ましてしまった。
(この緊張になれる時は来るんだろうか)
ベテランの先輩達でもダービーや有馬記念は特別だと言っていた。
まだターボ以外の馬では重賞は殆ど勝てていない。
(今年こそ、今年こそ相棒を勝たせてみせる)
俺は会場にやってきた室さんと山田さんを見つけると立ち上がった。
SIDE:インパクトターボ
俺は頭一つ抜けた強さというものは持っていない。
最後の最後まで速度を落とさない息の長さはあるが、反面最高速度はそれほど早くない。
その結果が粘り勝ちできるか差し切られるかという勝負になってしまう。
俺がもう少し速度に秀でていたら、俺がもう少し何か才能を持っていたらもっと勝てていただろう。
勝っている身からすれば贅沢な悩みと言われるだろう。
実際多くの馬が勝てずに消えていく。
GⅠに勝てる馬は少ない。
その中でも複数勝っている俺は名馬と呼んでも差し支えない馬だろう。
だがこの体の闘争本能はまだ勝ちを求めている。
より強く、より早く。
自分が優れた存在である事を証明するために。
踏みつぶしてきた幾多の同族に誇れるように。
(怖いな・・・。これが血統に染み付いた人間の執念と闘争本能の権化・・・。サラブレッドの呪いとでも呼ぶべきものか・・・)
走れば走るほど、競えば競うほどこの思いは強くなる。
(他の皆もこんな思いなのだろうか・・・)
自分だけなのか、それとも他の馬もなのだろうか。
何となく聞きたいような聞きたくないようなそんな奇妙な気分だった。
こうして2度目の有馬記念を迎えた・・・。
「さあ!第48回有馬記念、今年最後のGⅠレース。果たして今年はどの馬が勝つのか。貴方の夢、私の夢を乗せて走ります本日の14頭。果たしてどの馬が有終の美を飾るのか。中山競馬場に押し掛けた多くの観客が今か今かと待ちかねております」
多くの視線と期待を背中に受けながらパドックを回る。
「3枠4番、3番人気インパクトターボです。ジャパンカップをタップダンスシチーと同着になった事は記憶に新しいでしょう。大逃げだけでここまで走り続けてきましたインパクトターボ。去年は惜しくもシンボリクリスエスに敗れて2着。今年こそ1着が欲しいところです」
3番人気・・・長距離の成績が悪いからしょうがないとは言え少し悔しいな。
「4枠5番、2番人気サムシングブルーです。天皇賞春を制した名牝。長距離では牡馬以上の成績を収めています。長距離とはいえ短めの有馬記念。果たして勝てるでしょうか」
おっと、どうやらサムシングブルーちゃんがいるようだ。
「お久しぶりですターボさん」
「やあ、久しぶりだねブルーちゃん」
夏の宝塚記念以来の勝負だ。
う~ん見ない間にますます綺麗に・・・おっと、馬ッケ出してる場合じゃないな。
「今日は勝たせてもらいますね」
「俺も負けられないからね。いい勝負をしよう」
「フヒヒ・・・やっぱり尊い・・・」」
おっとこの声は・・・。
「7枠11番アグネスデジタルです。真の勇者は戦場を選ばない。ターフで、ダートでと活躍してきたアグネスデジタルですがこの度の有馬記念が引退レースとなってしまいました」
「アグネスデジタルか。天皇賞秋ではやられたが今日は負けないぞ」
「フヒヒ・・・デジタルはオワコンなのでお気になさらずに・・・」
どうやらこの間のやや気持ち悪い躁状態ではないらしい。
「僕も今日で引退なんだよね~」
「クリスエス、もう引退するんだな」
4歳で引退する馬もかなりの数がいる。
全盛期が3~5歳あたりなのだが成績次第では早期引退して種牡馬入りする事も多い。
「7枠12番1番人気シンボリクリスエスです。天皇賞秋連覇いたしました強豪馬。ジャパンカップこそインパクトターボに譲っていますが長距離では負けがありません。今年も有馬記念を制して連覇なるか期待されております。引退レースで勝利する事ができますでしょうか」
「僕はまだまだ行けそうなんだけどね~。まあ僕には決定権無いしね~」
経済動物である以上俺たちの自由になる事は極々僅かだ。
「そうか・・・だが引退レースだからって譲らんぞ」
「あはは~、僕だって負けるつもりはないよ~。全力の君にね・・・」
またライバルが居なくなる。
その理由は様々だが寂しい限りだ。
ふぅ・・・気を入れなおそう。
少し寂しさに襲われたが振り切ると俺は相棒の元へ行く。
いくぞ相棒!レースの時間だ!
SIDE:実況
「さあ今年の閉めのレースであります第48回有馬記念。貴方の夢、私の夢を託す14頭を振り返ってみましょう。1枠1番ツルマルボーイ。鞍上は横山騎手。2枠2番ゼンノロブロイ。ダービー2着、菊花賞4着と好走をしております。鞍上は柴田騎手。3枠3番リンカーン。鞍上は武豊騎手。3枠4番インパクトターボ。ジャパンカップ連覇の強豪馬。鞍上は若井騎手。4枠5番サムシングブルー。天皇賞春を制したステイヤー。鞍上は的場騎手。4枠6番ウィンブレイズ。鞍上は木幡騎手。5枠7番タップダンスシチー。ジャパンカップではインパクトターボと同着優勝。鞍上は佐藤騎手。5枠8番チャクラ。鞍上は後藤騎手。6枠9番ファストタテヤマ。鞍上は安田騎手。6枠10番はダービーレグノ。鞍上は蛯名騎手。7枠11番アグネスデジタル。ライバルたちと同じく有馬が引退レースとなりました。鞍上は四位騎手。7枠12番シンボリクリスエス。天皇賞秋連覇、去年の有馬記念制覇の王者。連覇なるでしょうか。鞍上はペリエ騎手。8枠13番ザッツザプレンティ。今年の菊花賞覇者。鞍上は安藤騎手。8枠14番アクティブバイオ。鞍上は武幸四郎騎手。以上14頭でのレースです。さあまもなくゲートの準備が終わります。スターターが台の上に立って今旗が振られました。ファンファーレと観客の熱い歓声が中山競馬場に響き渡ります。さあ次々とゲートへ入っていきます。今最後の一頭が納まりました。体制完了。・・・スタートしました。好スタートを切りましたのはインパクトターボとアグネスデジタル。しかし先頭を行きますのはやはりインパクトターボでアグネスデジタルは後ろに下がりました。その後ろややスタートは遅れたかタップダンスシチーが追いかけますが今日は並びません。いや、並ばせないようにインパクトターボが飛ばしております。なんというハイペースでしょう。そこから4馬身離れてサムシングブルーがインパクトターボをロックオン。3馬身離れてアクティブバイオも追っています。ザッツザプレンティも同じ位置で前を狙っております。4馬身離れましてゼンノロブロイ。その後ろシンボリクリスエスはここにいました。ウィンブレイズが並んでいます。1週目の4コーナーをカーブしてスタンド前に入りますが先頭は変わらずインパクトターボ。タップダンスシチーは下がりまして2番手にサムシングブルーが上がりました。タップダンスシチーは3番手になりましてアクティブバイオとザッツザプレンティと並んでいます。そこから6馬身ほど離れましてゼンノロブロイとリンカーン。そしてウィンブレイズ。その外シンボリクリスエスは中段グループ。あとは4馬身5馬身離れましてアグネスデジタルにチャクラ、そしてファストタテヤマにダービーレグノ。ぽつんと最後方ツルマルボーイになりましてインパクトターボ早くも1コーナーから2コーナーへと差し掛かります。その後ろ3馬身から4馬身にサムシングブルー。8馬身ほど離れて3番手に上がりましたザッツザプレンティ。その外にアクティブバイオ。やや離れてタップダンスシチー。早くも先頭は向こう正面に入りました。そこから6馬身差にゼンノロブロイとリンカーン。その後ろ2馬身に外シンボリクリスエスに内ウィンブレイズが並んでいます。そこからさらに9馬身程離れまして後方はアグネスデジタルなどが居ます。最後方は変わらずツルマルボーイがポツンと一人。インパクトターボ早くも中間を通過して第3コーナーへ向かいます。非常に縦長でばらけた展開となりました。インパクトターボまだまだ全開で飛ばしております。その後ろ3馬身にサムシングブルー。ザッツザプレンティとアクティブバイオは疲れたのか下がっていきます。タップダンスシチーも下がります。ゼンノロブロイとリンカーンが前に出てきました。第3コーナーにインパクトターボが入ります!シンボリクリスエスが動きました!第4コーナーに入りますインパクトターボ!サムシングブルーがジリジリと差を詰めます!3番手にリンカーン!その後ろにシンボリクリスエス!外から追い込みますゼンノロブロイ!さあ直線コースに入りましたインパクトターボ!サムシングブルーが懸命に追いますがまだ2馬身の差があります!先頭はインパクトターボ!シンボリクリスエス!シンボリクリスエスが一気に上がってきます!サムシングブルーを抜いて今インパクトターボに並ぼうかという所!しかし譲らない!インパクトターボなんと譲りません!先頭はインパクトターボ!シンボリクリスエスも凄い末脚だがインパクトターボ今日は抜かせません!苦しいシンボリクリスエス!頭半分が越えられません!サムシングブルーも必死に差を詰めますが苦しい!インパクトターボまだ粘る!残り100メートル!坂を駆け上がってまだ先頭!インパクトターボだ!インパクトターボが今1着でゴールイン!父ツインターボがあのナリタブライアンを破って勝利したように!インパクトターボが前年度覇者シンボリクリスエスを破って勝利しました!有馬記念親子制覇の偉業を達成しましたインパクトターボ!ツインターボも喜んでいるでしょう!これぞまさに逃亡屋!ターボの名前は伊達じゃない!」
SIDE:インパクトターボ
「ッシ!」
いつもの様に全力で飛び出す。
「フヒヒ・・・竜頭蛇尾だよデジタルは・・・やっぱオワコン・・・」
出足こそ良かったアグネスデジタルだったがあっさり下がっていった。
「今度こそー!」
むしろタップダンスシチーの方が追いかけてきた。
「今日はやらせんぞ!」
乾いた芝は非常に走りやすく、タップダンスシチーに追い付かれずに速度を出し続ける。
「な、なぜだ~!」
「邪魔しないでください!」
サムシングブルーちゃんが前にいるタップダンスシチーに怒る。
「今日は良い調子だ!行けるぞ相棒!」
もちろんだ相棒!
完璧に逃げ切って見せるさ!
コーナーを抜けて1度目の正面スタンド前を走り抜ける。
「ついてく!ついてく!」
どうやらタップダンスシチーは早くもついていけなくなったのか2番手はサムシングブルーちゃんになった様だ。
後ろはさらに遅れてシンボリクリスエスは大分後方にいるようだな。
あいつの末脚は強いが、追い付けないほどに離し切ってやる!
第1コーナー、第2コーナーと素早く抜け、向こう正面へと入る。
サムシングブルーちゃんは変わらず後ろにいるが中段グループとの差はかなり大きく開けた。
これだけの差があっても絶対に勝てるとは言えないが押し切って見せる!
俺はさらに気合を入れると第3コーナーを走り抜けて第4コーナーに入る。
「ここ!」
サムシングブルーちゃんがじりじりと差を詰めてくるのが分かる。
後ろもどんどんと上がってきている。
ここからが正念場だ!
全力で走り切るんだ!
「くっ!追い付けない!」
サムシングブルーちゃんを追い付かせない事には成功した。
しかしヤツは必ず来る!
「どけどけ~!シンボリクリスエスのお通りだよ~!」
「来たな!クリスエス!」
ものすごい末脚でシンボリクリスエスが上がってくる!
しかし序盤に大きく差をつけた成果が出たのかいつもよりその末脚は鈍い!
「抜かせるかぁ!」
「後少しぃ!」
頭半分まで並ばれた!
けど抜かせない!
得意の坂を勢いよく駆け上がる!
「ぬあああああああああああああああああ!」
「ま、負けたぁ!」
頭半分も無かったかもしれないが、俺は何とか先頭を維持して走り切ったのだった。
「やったぞ!父さん!アンタが勝った有馬記念!俺も勝ったぞ!」
「ちっくしょー!連覇で引退したかったのにぃ!」
「はうぅ・・・届きませんでした・・・」
喜ぶ俺、悔しがるシンボリクリスエスとサムシングブルー。
「凄いですね・・・」
そんな俺に声をかけてくる馬が居た。
「ありがとう。君は?」
「初めまして。僕はゼンノロブロイ。貴方に興味が沸きました。もしレースでお会いしたら、その時はよろしくお願いします」
どこか色気のあるしっとりした声のゼンノロブロイはそう言って去っていった。
「おう、全力でかかってきな!」
若干自惚れた発言ではあったが相手の方が年下みたいだしまあいいだろう。
とにかく今日は堪らなく嬉しいんだ!
何度か撮った写真撮影も、皆今日が一番嬉しそうな表情だった。
インパクトターボ 牡4歳 21戦17勝 主な勝鞍:02年GⅠ皐月賞 02年GⅠジャパンカップ 03年GⅠ宝塚記念 03年GⅠジャパンカップ 同着1位 03年有馬記念1着 02年GⅠ日本ダービー2着 02年GⅠ菊花賞2着 02年GⅠ有馬記念2着
次回予告
残念ながら敗れてしまった菊花賞
どうしてもその光景が忘れられない
でも時間は待ってくれない
次のレースはジャパンカップ
世界の強豪相手に頑張るぞ!
第2シーズン第12話 目指せ!ジャパンカップ(ウマ娘)