これが逃げるという事だ   作:福泉

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第2シーズン第14話お待たせしました。
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第2シーズン第14話 run a lot(ウマ娘)

記念が終わり、私たちは短い冬休みに入った。

実家への帰省は新年が少し過ぎてからにする事にした。

折角だから学園での年越しからの初詣をする事にしたのだ。

それにお正月限定の食堂特性お節料理があるのだから。

両親も楽しんでおいでと後押ししてくれた。

他のみんなも大丈夫との事なので私たちは今日だけは許されている大晦日からの2年参りをする事にした。

学園からほど近い神社に出かけると私たちは人混みに揉まれながら参拝する。

私は人混みが苦手なのだが今日ばかりは我慢する。

学園から沢山のウマ娘たちが2年参りに訪れている。

マチカネフクキタル先輩とメイショウドトウ先輩が一緒に巫女さんをやっていた。

普段だったら中々我慢の難しい列に並ぶ行為だが友達と一緒にいる事でなんとか我慢できる。

ようやく私たちの番が来るとお賽銭を投げて願い事をする。

(もっともっと強くなれますように!)

願い事を終えた私たちは屋台を見て回った後寮へと戻った。

 

そして冬休みが明けて初めてのミーティング。

「さて、最後はターボのレースの事だが・・・」

「はい」

先輩たちの予定などを話し終えた山田トレーナーが私の方を向いた。

「1月はトレーニングに集中して2月に京都記念、3月に日経賞を目指すぞ」

「あれ?大阪杯は出ないの?」

3月の末に開かれる大阪杯は春のGⅠとして人気が高い。

「今のお前に必要なのはレースの楽しさを思い出す事だ」

「レースの楽しさ・・・」

「そうだ、今のお前はレースに対して楽しさを忘れている。皐月賞の時も、ダービーの時も負けるという恐怖はあったかもしれないがなによりレースを楽しんでいた。だが菊花賞以降、ジャパンカップの時も有記念の時もお前はレースを楽しんでいなかった。走るのを苦痛に感じるウマ娘は弱くなる。だからまずはお前にレースの楽しさを思い出してほしいんだ」

そう言って山田トレーナーは笑顔を浮かべた。

レースの楽しさ・・・。

そっか、私はレースに勝つ事だけを考えすぎてレースの楽しさをすっかり忘れてしまっていた。

確かに負けるのは怖いし辛い。

でもレースで走るのは確かに楽しかった。

それを思い出させる為に山田トレーナーはあえてGⅡを選んだんだ。

GⅠ恐怖症にならないように・・・。

 

時は進んで早くも2月の京都記念。

久しぶりの標準レース服とシューズによるレースだ。

やっぱりGⅠに比べるとお客さんからの注目度が低い為に参加するウマ娘たちも幾分か落ち着いた様子が見られる。

もちろん中にはピリピリしたウマ娘もいるようだ。

「ちょっとそこの貴女!」

「私?」

そんなちょっとピリピリしたウマ娘に声をかけられた。

「イクノ先輩とターボ先輩に期待されているからって調子にのらない事ですわ!」

「えっと・・・誰・・・?」

少なくとも見知った顔ではない。

「自己紹介が遅れましたわね。私の名前はナイスファイト!ナイスネイチャお姉さまの一番弟子ですわ!」

なるほど、チームカノープスの新人さんは彼女なのか。

そういえばちょうどタイミングの関係で顔を合わせた事は無かったな。

「私はインパクトターボ。今日はよろしくね」

「ふん!ライバルとなれ合う気はありませんわ!」

どうやら気が強いようだ。

結局そのまま彼女は行ってしまった。

チームカノープスはGⅢでも全員でレースを見に来るらしいしイクノ先輩もツイン先輩もいるだろうからレースがんばるぞ。

 

SIDE:実況

 

「スタートしました。1人好スタートはダービーウマ娘インパクトターボ。後続を引き離してどんどん加速していきます。2番手は大きく引き離されてグッドレディ。その後ろにパクパックン。外からビオフェルン。その後ろにナイスファイト。マッハシンディ。少し離れてハローラビット。外にテラリアン内にマイクラン。最後方はポツンと一人シンバシエレジー。先頭インパクトターボは大逃げの体勢。後ろとの差は10バ身以上開いている。さらにさらにその差が広がっていきます。これはセーフティリードになるのでしょうか。それとも後ろの娘達が間に合うのか。インパクトターボ早くも第3コーナーを曲がって第4コーナーへと抜けていく!懸命に後ろの娘たちが追い上げるがこれは届かないか!直線に入ってインパクトターボ一人旅!後続はまったくついてこれません!堂々たる走りで今1着でゴールイン!」

 

SIDE:インパクトターボ

 

「ッシ!」

スタートを上手く決めて私は先頭をひた走る。

いつもと同じ。

でも久しぶりに周りに誰もいないレース。

山田トレーナーも脅威になるウマ娘は出ていないから気楽に走ってこいって言っていた言葉通り、私に追いつけるウマ娘はいなさそうだ。

唯一あのナイスファイトだけが強いようだが私に追い付いてくる気配はない。

ああ、レースってこんなにも楽しいものだっけ。

手を抜いている訳ではないが、勝てるか勝てないか分からないレースばかりしていた今の私には確かにちょうどいいリハビリになりそうだ。

私は余裕をもってレースに勝利することができた。

 

「いい走りでしたねインパクト」

「ナイスな大逃げだったぞ」

レース後の控室にイクノ先輩とツイン先輩が訪ねてきた。

「あ、イクノ先輩、ツイン先輩。ありがとうございます」

二人に褒めてもらって私はまた少しレースの楽しさを思い出した。

「うわーん!すみませんお姉さまー!」

そんな事を思っていると隣の控室・・・ナイスファイトの控室から大きな泣き声が聞こえてきた。

「ふぅ・・・ファイトも悪い娘ではないのですがもう少しネイチャ以外にも心を開いてくれると良いのですが・・・」

「ネイチャもあの娘には妙に甘いもんね」

きっと運命的な何かなんだろう。

イクノ先輩も一見厳しく見えるけど私には結構甘いし、ツイン先輩は誰にでも元気で優しい。

チームリーダーはナイスネイチャ先輩なのだがあまりにナイスファイトを甘やかすのでイクノ先輩が苦言役に徹しているらしい。

「GⅢでは勝てるのにGⅡ以上では2着の常連・・・もう少し根性が欲しいところですね」

「イクノー、また額に皺が出来てるぞー」

イクノ先輩が頭を悩ませている様子をツイン先輩が苦笑しながら見ていた。

 

そして3月日経賞・・・。

「「あ・・・」」

そこにはナイスファイトが居た。

「今日こそ貴女に勝ってお姉さまに褒めていただきますわ!」

「えーっとがんばってね?負けないけど」

まさか再び会うとは思わなかったけどうん、負けるつもりはないぞ。

 

SIDE:実況

 

「スタートしました!1人飛び出しましたインパクトターボ!他のウマ娘達はついていけない様子!悠々と後ろを引き離していきますインパクトターボ!早くもその差は6バ身以上!後方集団先頭にはユニオンディーレが居ますが険しい表情をしています!ちょうど中間にはナイスファイト!最後方はポツンと1人トテトテがいます!早くも第3コーナーを回ったインパクトターボ!有記念の鬱憤を晴らすかのような大逃げです!ユニオンディーレとナイスファイトが懸命に追いかけますがこれは届きません!インパクトターボ逃げ切りましたゴールイン!」

 

SIDE:インパクトターボ

 

「ッシ!」

私は今日も先頭を走る。

後ろはついてこれない。

グッと力を込めて走ればさらに後ろを引き離す。

うん・・・やっぱりこれだ!

後ろから何やら大きな叫び声が聞こえた気がしたけど私は気にすることなくゴールを駆け抜けた。

 

「さすがですね。インパクト」

「これはターボも負けてられないぞ」

今回もイクノ先輩とツイン先輩が控室を訪ねてきてくれた。

「お姉さまぁぁぁぁぁぁ!」

隣からやはり大きな泣き声が聞こえてくる。

「はぁ・・・もう少しあの娘も精神的に成長してくれると良いのですが・・・ヤハリモットレースニ・・・(ボソリ)」

「イクノー、リラックスリラックス~」

何やら不穏な事を言うイクノ先輩にターボ先輩が肩を揉んでリラックスさせようとしていた。

 

4月は新入生のスカウトやクラス替えなどで落ち着かないだろうからとレースは無しになった。

なおクラス替えは行われたが私たち4人は同じクラスだったのでとてもありがたかった。

なおスレッジハンマーは別クラスだった。

 

5月は私は適性外なので出ない天皇賞春が開かれる。

キタちゃん、サトちゃん、ルーちゃんが出場するので私は応援に来ていた。

誰が勝ってもおかしくない。

「キタちゃん、サトちゃん、ルーちゃんがんばれー!」

ターフに出てきた3人を私は応援する。

3人はそれぞれのチームや私に手を振るとゲートへと入っていった。

勢いよく飛び出したのはキタちゃん。

その後ろをルーちゃんがついていく。

中間辺りで様子を伺うサトちゃん。

その光景は私にとってはいつもの私たちのレースによく似ている。

唯一の違いはそこに私が居ない事・・・。

「確かに天皇賞春はお前には無理だ。だが有記念ならお前もあそこに入れる。それまでにレースの楽しさを思い出せ」

「はい!」

私は食い入るようにレースを見る。

キタちゃんと私は並んでいる・・・。

ルーちゃんはずっとついてくる・・・。

サトちゃんは後ろから狙いを定めてくる・・・。

第3コーナーから第4コーナーで二人が上がってくる。

私とキタちゃんはスタミナの限り速度を維持する。

でもゴール直前で私の幻影は失速してしまった。

「うっ!くっ!」

涙を堪える。

頭に山田トレーナーの手が置かれた。

「大丈夫だ・・・お前だってあいつらに引けを取らないウマ娘だ・・・」

「はい・・・!はいっ!」

天皇賞春・・・キタちゃんの逃げ切りで勝負がついた。

大丈夫!きっと!きっと今年の有記念なら!

顔を上げた私の眼は潤んでいたが涙を流してはいなかった。

 

そしてGⅡ目黒記念・・・。

「「・・・」」

またナイスファイトが居た。

「がるるるるる!」

「いや犬じゃないんだから・・・」

敵意剥き出しのナイスファイトに私は何も言えなかった。

 

SIDE:実況

 

「スタートしました!飛び出したのはやはりインパクトターボ!後続も懸命に追いかけますが引き離されていきます!2番手にはオーバーロッド!今日は珍しく前目にいますナイスファイトが3番手!その後ろにサファイヤリング、ゼニガタピッチャーなどがいます!最後方はドカドカ!インパクトターボ我が道を行くとばかりに飛ばしまくります!2番手オーバーロッド懸命に追いますが苦しそうだ!ナイスファイトが2番手に上がります!インパクトターボ先頭!後続はまだもがいている!インパクトターボ直線に入っても速度が落ちません!そのままゴールを駆け抜けましたゴールイン!」

 

SIDE:インパクトターボ

 

「ッシ!」

安定したスタートダッシュ。

私の売りを完璧に生かして私は一気に前に出る。

いつもの景色、いつもの走り。

そうだ・・・これが私の走りなんだ!

何かを思い出した私はそのまま逃げ切ってゴールした。

 

「きぃー!なんで勝てないんですの!」

ナイスファイトが地団太を踏んでいる。

「えっと・・・2着おめでとう!ナイスファイト!」

「貴女嫌いですわぁぁぁぁ!」

ナイスファイトは泣きながら走って行ってしまった。

うん・・・ちょっと悪い事しちゃったなぁ・・・。

 

育成目標:宝塚記念を3着以内に入る 残り2ターン




サポートカード:サムシングブルー(賢さ)

習得可能スキル

徹底マーク
長距離直線〇
長距離コーナー〇
末脚
深呼吸

イベント習得スキル

クールダウン

次回予告

競争馬を引退した俺に待っていたのは種牡馬としての仕事。

まあそれは当然の事だ。

そして血は続いていく。

第2シーズン第15話 まだ血は続いている(馬)
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