これが逃げるという事だ   作:福泉

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第2シーズン第15話お待たせいたしました。
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第2シーズン第15話 まだ想いは続いている(ウマ娘)

立て続けのGⅡレースの最中の出来事・・・。

4月下旬頃・・・。

 

「皆さん!バクシンしてますかー!私は今日もバクシンです!」

いつもよりハイテンションのバクシンオー先輩がチームルームにやってきた。

その右腕には何かが抱えられている。

「わはー」

それは小柄なウマ娘だった。

純粋な目を輝かせて楽しそうにしている。

「えっとスマホスマホ・・・」

「ちょわ!待ってください!誘拐ではないのですよ!」

スカイ先輩がボケなのかマジなのか分かり辛いリアクションをバクシンオー先輩が止める。

「トレーナーさんに頼まれて新人さんを連れてきたのですよ!」

そういってバクシンオー先輩は新人ウマ娘を下した。

「初めまして!バクソウオーです!好きな事は走る事と褒めてもらう事です!座右の銘は我武者羅!」

バクシンオー先輩に負けないぐらいの元気っ娘、バクソウオーちゃんがそう言って自己紹介した。

「バクシン的な何かを感じますのできっと素晴らしいバクシンを見せてくれるでしょう!」

そういうバクシンオー先輩だが私も運命的な何かを感じる。

少し認めたくはないが・・・。

「ば・・・ぜえ・・・バクシンオー・・・ぜえはぁ・・・嬉しいのは・・・分かるが・・・少し落ち着け・・・」

恐らくバクシンオー先輩の暴走を見た山田トレーナーさんが大慌てで追いかけてきたのだろう。

ウマ娘を追いかけるのはやはり辛かったらしく肩で息をしている。

「そもそもまだスカウトの了承を得てはいないんだぞ」

「やっぱりバクシンオーちゃんの早とちりなの」

アイネス先輩がそう言ってバクシンオー先輩にメッとやっている。

「でもボクは嬉しかったです!今まで評価してくれる人が少なかったですから!」

うーん何かちょっと困った癖でもあるのかな?私みたいに。

「評価されない・・・か・・・なんか親近感湧いちゃうな~」

「パーマーのいいとこはアタシが全部知ってるから!」

少し思う所があるパーマー先輩をヘリオス先輩が慰めている。

「改めてどうする?バクソウオー」

「はい!今日からお世話になります!」

こうしてバクソウオーが私たちのチームに参加する事になった。

「よろしくねバクソウオーちゃん」

さすがにちょっと突然すぎたので新人歓迎会は翌日にする事にしてチーム恒例の新人歓迎レースをする事になった。

 

「芝の2000メートル、各自好きに走れ。いくぞ。よーい、スタート!」

「ッシ!」

スタートダッシュが得意な私は先頭に出る事に成功した。

「相変わらずスタートが上手なの!」

「くぅ!流石アイネス先輩!」

先輩としての意地か、アイネス先輩が並びかけてくる。

もちろん私も簡単には抜かせない。

「バックシーン!」

そんな私たちを勢いよく抜いていったのがバクシンオー先輩。

流石に最高速度ではバクシンオー先輩が一番だ。

ただやっぱり適正距離が短いので2000メートルは途中で力尽きてしまうのだが・・・。

その時だった。

ゾクリと背後に恐怖を感じた私たちは思わず後ろを振り返ってしまった。

最後方にいるバクソウオーちゃんの様子がおかしい。

そう思った次の瞬間だった。

「ウオオオオオオオオオオ!!!バ!!!ク!!!!ソオオオオオオオオオ!!!」

物凄い咆哮と共にバクソウオーが物凄い速度で走り出した。

後ろにいた他の先輩たちを追い抜いて、あっという間にバクシンオー先輩に並びかけた。

「うっそ!?」

「ちょっとありえないっしょ!?」

「へぇ!?」

「うそー!?」

後ろに居た他の先輩方も驚いている。

何せ明らかにオーバーペースだからだ。

「そのバクシン力は素晴らしいです!ですが負けません!バックシーン!」

「バックソー!」

もはや逃げというよりただただ暴走する二人だったがその速さは実に恐ろしいものだった。

しかし流石に無理があったのか、あるいは適正距離の限界か1400メートルを過ぎた辺りで二人とも失速。

バクシンオー先輩は1600メートルを超える前に抜かれ、バクソウオーちゃんは何とか1600メートルまで頑張っていたけどそこから完全に力尽きて途中でリタイアしてしまった。

 

「はい、スポーツドリンクだよ~」

ファル子先輩がバクソウオーちゃんにスポーツドリンクを手渡す。

「ありがとうございます」

私はまだ疲労でちょっとフラフラしているバクソウオーちゃんをどうしても放っておけず後ろで支えてあげる。

「まだトレーニングも受けてないのにバクシンオーちゃんに追い付くなんてすごいの」

アイネス先輩が言う通り、私たちの中で一番最高速度が速いのはバクシンオー先輩だ。

スプリンターとして最高と言われるほどのバクシンオー先輩に追いつけるのはチームでもアイネス先輩だけだった。

そのアイネス先輩でもかなりの無理をしての走りなのでバクシンオー先輩がいかに優れたスプリンターかが分かる。

そのバクシンオー先輩に追い付いたバクソウオーちゃんがスプリンターとして優れているのは間違いない。

「でもあんな走りしてたら体壊しちゃうよ?」

「確かにアタシらもラスパにはガンダ(ガンガンダッシュ=全力疾走)するけどあれはちょっとやりすぎっしょ」

確かにパーマー先輩やヘリオス先輩の言う通り、スパートは全力を出すけど最初からというのは滅多にしない。

私だって序盤から後ろを引き離す走りをするけど全力を出し続けている訳ではない。

それを最初から最後まで全力疾走を続けたバクソウオーちゃんは異常といっても良い。

「その・・・昔からスイッチが入っちゃいますと手が抜けなくなってしまうんです」

恥ずかしそうに頭をかくバクソウオーちゃん。

そのせいでスカウトも無く諦めかけていたところを山田トレーナーに勧誘されたらしい。

そしてちょうどその時居合わせたバクシンオー先輩が早とちりして抱きかかえてチームルームに連れて来たのが先程の出来事らしい。

バクシンオー先輩も暴走癖があるからなぁ・・・。

あれでレースは本能的にペースメイキングするんだよね。

中距離以上走ろうとすると暴走するけど・・・。

「なるほどねぇ。浪漫癖のある山田トレーナーが気に入る訳だね。私も大逃げ癖でスカウトされた訳だし」

その言葉に先輩方もウンウンと頷く。

「お前らなぁ・・・」

微妙にディスられた山田トレーナーがため息をついた。

 

GⅡ目黒記念から少し後・・・。

 

チームルームに向かっている途中の出来事だった。

「見つけたぞシルクヴェール!」

「ひゃい!?ウオッカさん!?」

大きな声に驚いて向いた方にはスピカのウオッカさんと白い髪のウマ娘、シルクヴェールちゃんがいた。

「この前のリベンジだ!俺と勝負しろ!」

「ええ!?ただ合同練習で並走しただけですけど!?」

「いいから勝負だ!」

そう言ってウオッカさんはシルクヴェールちゃんを捕まえると引き摺っていってしまった。

「うええ~!?私今日ハッピーミークちゃんと白毛ウマ娘のお茶会なのに~!」

シルクヴェールさんの悲痛な叫びは残念ながらウオッカさんには通じないようだ。

なんだろう・・・シルクヴェールちゃんとは運命的な何かを感じるなぁ・・・。

とはいえ無関係の私が静止するわけにもいかず結局そのまま見送るしかなかった。

助けてあげた方が良かったかなぁ?

 

その翌日・・・。

「え!?サトちゃん短期留学に行くの!?」

「はい、お父様とお母様の教育方針で今年の夏から冬にかけてフランスに行く事になりました」

日本のウマ娘が海外のトレセン学園に短期留学する事も良くある。

実際スピカのスズカ先輩はアメリカに留学していたしウオッカさんもドバイに留学した経験がある。

「じ、じゃあ、フランスのレースにも参加するんですか?」

「はい、沖野トレーナーさんとも相談して凱旋門賞に挑戦する予定です」

「頑張ってねサトちゃん。私たちは応援に行けないけど放送はちゃんと見るから」

「はい!」

こうしてサトちゃんは6月にフランスに向かって旅立っていった。

 

そんな日常を過ごしつつ、気が付けば宝塚記念がやってきた。

「さあ今年もやってまいりました宝塚記念。注目ウマ娘はこの5人。前回の皐月賞、ダービーを大逃げで制しました逃亡屋、インパクトターボ!菊花賞を同着で勝利したキタサンブラックとサムシングブルー!天皇賞秋、有記念を見事に勝ちましたシンボリクリスティ!芝、ダート、海外と戦う戦場を選ばないオールラウンダー、アグネスデジタル!この5人の内誰が勝利するのでしょうか!」

なんと!オールラウンダーで有名なアグネスデジタル先輩が参加しているとは!

有名人と戦えるとはありがたい。

そう思っていると何やら息の荒いピンクの髪色のウマ娘が1人。

緊張しているのだろうか?

声をかけようと近寄ると何かブツブツと喋っているのが聞こえる。

「あああ・・・!デジタンは幸せ者です!大逃げの傾奇者インパクトターボちゃんに大逃げ演歌歌手のキタサンブラックちゃんの逃げ対決!そしてそれに挑むサムシングブルーちゃんにシンボリクリスティちゃん!これは心の4K動画に納めなければウマ娘ちゃんファン失格!いやもはや義務レベル!三女神様!デジタンをウマ娘として産んでくださってありがとうございます!」

・・・うん、個性的な方らしい。

「あの~・・・」

「ふぁ!?だ、誰ぇ?あ!・・・モ、モシカシテゼンブキイテマシタカ?」

「はい・・・」

「Oh・・・」

しばらく気まずい沈黙が流れた。

「えっと・・・改めましてインパクトターボです。今日はアグネスデジタル先輩の胸を貸してもらうつもりで全力で挑まさせていただきます」

「ひょわ!そ、そんなデジタンには恐れ多い!」

「いや・・・芝ダート海外問わずに戦って勝利してる先輩がそんな卑屈にならなくても・・・」

「いえ!デジタンは主役ではないのです!主役は輝くウマ娘ちゃん達!デジタンは脇役!勝利は色々と滾っちゃった結果にすぎません!」

な、難儀なお方の様だ・・・。

その後は色々とあふれ出そうなアグネスデジタル先輩と別れてキタちゃんとルーちゃんの元へ行った。

「ターちゃん、アグネスデジタル先輩はどうだった?」

「その・・・個性的だった・・・」

「あ、やっぱり?先輩たちに聞いてた通りだったか~」

どうやらキタちゃんは先輩たちからアグネスデジタル先輩の話を聞いていたらしくそこまで戸惑いは無い様だ。

「わ、私は以前お会いした事があるのですけど・・・なんていうか・・・突然気絶するのでびっくりしました」

色々だなぁウマ娘も・・・。

こうして宝塚記念が始まった。

 

SIDE:実況

 

「さあ間もなく始まります宝塚記念。皆様に選ばれました18人の人気ウマ娘達。果たして勝利するのはどのウマ娘でしょうか。今日走るウマ娘を振り返ってみましょう。1枠1番サイレンスドール。1枠2番アグネスデジタル。2枠3番アスカディベート。2枠4番マイハートソング。3枠5番シンボリクリスティ。3枠6番シンユニヴァース。4枠7番サンライズジャガー。4枠8番ファルコンカフェ。5枠9番サムシングブルー。5枠10番インパクトターボ。6枠11番チェストヨコヤマ。6枠12番ベストオブゲーム。7枠13番タンクフレール。7枠14番メグロランページ。7枠15番キタサンブラック。8枠16番ステップザワールド。8枠17番タップダンスシティ。8枠18番ダイテツバートラム。以上18人フルゲートでのレースです。スターターが今旗を振ってファンファーレです。多くのファンに見守られながらウマ娘たちが次々とゲートインしていきます。今最後の1人が収まりました。・・・スタートしました。まず飛び出したのは2人。インパクトターボとキタサンブラックが先行争い。互いに譲りません。その後ろ3バ身から4バ身の所にサムシングブルーが付けました。その後ろに少し離れましてマイハートソング。少し間が空いてサイレンスドール。外にアグネスデジタル。ダンツフレームがその後ろにつけまして内にシンボリクリスティ。縦長の展開のまま第1コーナーに向かいます。先頭のインパクトターボとキタサンブラック足を緩めないままコーナーを曲がっていきます。サムシングブルーはその後ろ3バ身から4バ身の位置をキープ。そこから3バ身離れてマイハートソング。少し引き離されたか3バ身ほど後ろにベストオブゲームとサイレンスドール。その後ろにタップダンスシティとアグネスデジタル。シンボリクリスティとダンクフレールはやや後方。最後尾はチェストヨコヤマ。早くも第3コーナーに入りましたインパクトターボとキタサンブラック!サムシングブルーがジリジリと上がっていきます!マイハートソング苦しいのかついていけません!タップダンスシティが上がっていきます!シンボリクリスティもそれに続きます!アグネスデジタルもスパートをかけます!第4コーナーを曲がって最後の直線!インパクトターボとキタサンブラックが激しい先頭争い!サムシングブルーも追い上げるが中々差が詰まりません!シンボリクリスティは前が詰まって進めません!アグネスデジタルが上がってきますがこちらも厳しい!先頭はインパクトターボとキタサンブラック!どちらも譲りません!譲らないままゴールイン!果たしてどちらが勝ったのか!僅かにインパクトターボが先にゴールしたように見えましたがどうでしょう!判定は・・・インパクトターボです!インパクトターボが宝塚記念を勝利しました!」

 

SIDE:インパクトターボ

 

「ッシ!」

ゲートが開くと同時に勢いよく飛び出す。

素早く先頭を取るがキタちゃんも並んでくる。

ちらりと横目で見て互いに微笑むとさらに加速する。

「ついてく!ついてく!」

後ろにはやっぱりルーちゃんが居る。

クリスティとアグネスデジタル先輩は中団あたりだろうか。

久しぶりのGⅠレース。

負けたくないと言う思いはあるが怖くはない。

キタちゃんと、ルーちゃんと競い合うのが楽しい。

大丈夫、私は行ける!

足に力を込めて前に進む。

最後のコーナーを曲り、ゴールに向けて全力疾走をする。

「うう!追い付けない!」

ルーちゃんは今日は少し調子が悪いようだ。

「邪魔だよ~!」

シンボリクリスティは前を塞がれているようだ。

「ウヒー!滾りますぅー!でも届かない!それもまたヨシ!」

アグネスデジタル先輩も無理なようだ。

なら残るは隣のキタちゃんだけ!

「負けるかぁ!」

「私だぁ!」

2人でもつれ合うようにゴールを走り抜けた。

「「判定は!?」」

私たちは直ぐに掲示板の方を見た。

そこには私の番号が表示されている。

「やったぁ!私の勝ちだぁ!」

「ちぇ!あとちょっとだったのに!」

久しぶりのGⅠライブセンター頑張るぞ!

私はキタちゃんルーちゃんと健闘を称えあうと控室に向かった。

 

育成目標:宝塚記念を3着以内に入る CLEAR

 




シルクヴェール 初期能力(☆3時)

スピード:90 スタミナ:100 パワー:92 根性:94 賢さ:91
バ場適性:芝A ダートD
距離適性:短距離D マイルA 中距離A 長距離D
脚質適性:逃げG 先行C 差しA 追い込みB
成長率:速5% 体15% 力5% 根0% 賢5%
スキル:初期所有 差しのコツ 直線回復
    覚醒:Lv1直線巧者 Lv2好転一息 Lv3ペースアップ Lv4乗り換え上手
固有スキル:『It's my virgin road』 説明:レースが残り1000メートルを切ったときに後ろの方にいると、ゴールまでいけるだけの体力がある場合ロングスパートをしかける。

次回予告

どうやら俺はまだまだ休めないらしい(震え声)

悪い事ではないんだがある意味レースより辛いぞこれ

そんな俺を他所に俺の血を引く子供たちが次々とデビューしていく

頑張ってほしいものだ

第2シーズン第16話 いざ名種牡馬(馬)
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