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7月、トレセン学園恒例夏季強化合宿がやってきた。
「「海だー!」」「バックソー!」
約一名違う叫びだったような気がするが海へと飛び出していく新人ウマ娘たち。
「お前らー!宿に迷惑かかるから後にしろー!」
今年は山田トレーナーがそう言って声をかけた。
しかし走り出したら止まらないバクソウオーちゃんが既に海に突撃し始めていた。
「バクシンオー!バクソウオーを止めろ!」
「分かりました!バックシーン!」
最高速度に優れるバクシンオー先輩が何とかバクソウオーちゃんに追いつくと抱きかかえて戻ってきた。
「バクソウオーちゃん、嬉しいのは分かるけど遊ぶのは後で、ね?」
やっぱりどうしても放っておけない私がそう言って声をかける。
「はい、すいません」
明らかにショボーンとするバクソウオーちゃん。
素直な子なんだけどなぁ・・・。
スイッチが一度入ってしまうと本人でも抑えられないらしい。
その辺は山田トレーナーも諦めているのでバクシンオー先輩にお目付け役を申し付けた。
少なくとも追い付いて止める事が出来るので暴走被害は最低限に抑えられている。
それでも抑えきれないのだが基本人がいいトレセン学園の生徒たち。
微笑ましいレベルで済んでいるのでお咎めは無いらしい。
まあカワカミプリンセス先輩の件もあるし学園の懐は広い。
「さて、ターボ。お前が次に目指すのは秋3冠になる」
「はい」
私たちはトレーナーさんの部屋でミーティングをする。
「天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念の3つを制したウマ娘は現状ではテイエムオペラオーしか居ない。この意味が分かるか?」
「クラシック3冠は何人か居る・・・それだけ難易度が高いって事ですね」
私の言葉に山田トレーナーは頷いた。
「その通りだ。クラシックは同年代での対決となる。その中で特出した強さがあるウマ娘が制覇する事がある。一方のシニアレースでは熟練から若手までが一堂に会する。当然ながら世代最強が凡人だったという事がありえる。玉石混淆の中で秀でた何かを持っていなければただただ埋没する事になる」
クラシックレースと違い1回きりの勝負ではない反面、同じ相手と戦えるかどうか分からないシニアレースはライバルの強さが分かり辛い。
去年圧倒的な強さだったウマ娘がスランプになっている場合もあれば、今まで芽の出なかったウマ娘が覚醒したかのように強くなる事もありえる。
同級生で言えばシンボリクリスティは後者だろう。
「レースの厳しさ、楽しさはお前は十分に理解している。後はそこに勝てるように努力を重ねるだけだ」
「はい!」
「後すまんがバクソウオーの面倒も見てやってくれ。あいつはお前にもかなり懐いているからな」
「分かりました」
私は山田トレーナーに頷いた。
「バックソー!」
トレーニングでも全力疾走のバクソウオーちゃん。
私も自分のメニューを進めながらバクソウオーちゃんにアドバイスをする。
私が得意ではないスプリントレースの知識はバクシンオー先輩に教わった方が良いのかも知れないと思うが、感覚派で言語化するのが苦手なバクシンオー先輩だと良い助言を貰う事が難しい。
私が出来る事はフォームのアドバイスやスタートのコツ、上手なコーナリングの仕方だ。
バクソウオーちゃんはどこでも全力疾走するのでコーナーを膨らみがちだったが私のアドバイスをしっかりと吸収して大分コーナーが上達した。
これならマイルレースでも十分対応できそうだ。
それに教えるという事は私自身がしっかりと理解していないといけない。
私自身もう一度学びなおす事でより上達できたと思う。
そんな私たちを山田トレーナーは満足そうに見つめていた。
トレーニングメニューを終えた自由時間の時・・・。
遊ぶのも全力のバクソウオーちゃんがバテテしまったので水分補給のドリンクを買いに売店に向かっている時だった。
「待ちやがれシルクヴェール!」
「いやです~!」
ウオッカさんがシルクヴェールちゃんを追いかけていた。
ジャージを着たウオッカさんと学園指定水着姿のシルクヴェールちゃん。
どうやらまたウオッカさんがシルクヴェールちゃんにレースを挑んでいるようだ。
「待ちなさいウオッカ!アンタいっつもシルクに迷惑かけて悪いと思わないの!?」
「なんだとスカーレット!俺はただコイツに負けっぱなしなのが気に入らないだけだ!邪魔すんな!」
「いい加減にしなさい!シルクが嫌がってるでしょ!」
「うぇ~スカーレットさ~ん」
スカーレットさんに止められて憤るウオッカさんとスカーレットさんの背中に隠れるシルクヴェールちゃん。
シルクヴェールちゃんのなつき具合から多分何度もスカーレットさんが庇ってるんだろうなぁ。
何だか放ってはおけないし私もそちらに合流する。
「どうしたんですか?揉め事ですか?」
状況は分かってはいるが矛先をずらす為にあえて質問してみる。
「アンタは確かチームハダルのインパクトターボだったわね。キタちゃんとサトちゃんがいつも世話になってるわね」
「いえ、私こそ二人に良くしてもらってますから。それより何があったんですか?」
「ああ、このアンポンタンがシルクに負けたからってウザ絡みしてるだけよ」
「な!アンポンタンとはなんだアンポンタンとは!」
あ、アンポンタンはなかなか酷い言い方である。
「何でも良いわよ!人様の迷惑を考えなさいっていっつも言ってるでしょ!」
「何だとぉ!」
「何よぉ!」
ああ、学園でもお馴染みの光景になってしまった。
最もシルクヴェールちゃんから矛先をそらすのには成功したようだ。
私はこっそりシルクヴェールちゃんに合図を出して死角に誘導するとそのまま行くように促した。
シルクヴェールちゃんは恐縮しつつもその場から去っていった。
「んぁ!?シルクの奴どこに行きやがった!?」
「さあね!ほら、さっさと戻るわよ!アンタまだノルマ終わってないんだからね!」
私がシルクヴェールちゃんをこっそり逃がした事に気が付いていたスカーレットさんがウィンクするとウオッカさんを引き摺って行った。
「くそー!俺は諦めねぇからなシルクヴェールー!」
私は待ちかねているであろうバクソウオーちゃんの為にドリンクを購入すると急いで戻っていった。
合宿中の夏祭り・・・
今年はサトちゃんが居ないが代わりにバクソウオーちゃんが一緒に夏祭りに参加した。
「キタちゃんは今年もカラオケ大会にでるの?」
「うん!もちろん今年は優勝を狙うよ!」
去年はファル子先輩が優勝してたけど今年は殿堂入りしたので特別ゲスト扱いで歌うらしい。
キタちゃんがカラオケ大会への受付をしている間に私たちは回る屋台の相談をする。
「バクソウオーちゃんはどの屋台に行きたい?」
「綿菓子にりんご飴にお好み焼きに・・・」
「食べ物系ばっかり・・・」
「ま、まあいいんじゃないですかね?」
受付を済ませたキタちゃんと合流して私たちは屋台巡りをした。
食べ物系以外だとルーちゃんが金魚掬いで黒の出目金をゲット。
どうやって持ち帰るのかと聞いたら宿で一時的に水槽で預かってくれるらしい。
合宿中に金魚を飼育するための小型の水槽などを通販しておくそうだ。
ヒシアマ姉さんに確認したところ寮はペット不可ではあるが金魚ならギリギリOKとの事。
流石に大型水槽や熱帯魚は不可らしい。
噂では鳥をこっそり飼っている先輩もいるらしいのだが現行犯逮捕が出来ていないという話だ。
私は去年に引き続き輪投げで景品をゲット。
バクソウオーちゃんは大好きなロボットアニメのお面を発見して購入。
キタちゃんのカラオケ大会は準優勝だった。
優勝はウオッカさんに無理やり参加させられたシルクヴェールちゃんだった。
繊細な歌声で見事に会場を感動の嵐に巻き込んでいた。
その様子をファル子先輩が『恐ろしい娘ッ!』的な表情で見つめていた。
なおウオッカ先輩は3位だった模様。
今度からファル子先輩にも絡まれるんだろうなぁ・・・。
シルクヴェールちゃん頑張れ!
可能な限り逃がしてあげるから!
合宿最終日は今年も花火。
去年の反省を活かして早めに花火をゲットしておいたので今年は大きめのセットを購入済み。
バケツを借りて花火を楽しむ。
「今年の夏ももう終わりだね」
「サトちゃんはフランスで元気にしてるかな?」
まだサトちゃんが旅立って2か月ほどだけど随分と会ってない気分になる。
定期的に連絡はしてるんだけど時差があるからどうしてもメールが主になるから余計にそう思うのだろう。
「来年はきっと皆一緒ですよ」
「その時はボクはお邪魔ですね・・・」
「そんな事ないから安心してバクソウオーちゃん。サトちゃんは優しい子だから」
ちょっと寂しそうにするバクソウオーちゃんにそう言うと嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
最後の花火が終わると私たちはゴミを綺麗に片付けると宿へと戻っていった。
季節は流れ私が出走する天皇賞秋がやってきた。
「さあ、やってまいりました天皇賞秋。歴戦のウマ娘達が集いますこのレースを制しますのはどのウマ娘か。注目のウマ娘はこの2人。前年度覇者のシンボリクリスティと今年の宝塚記念を見事に逃げ切りましたインパクトターボです。得意距離の近いこの2人はまさにライバルと言っても過言ではないでしょう」
パドックの順番が来たので私は舞台に立って衣装を披露する。
「2番人気5枠10番、インパクトターボです。宝塚記念を見事な走りで逃げ切りました。天皇賞秋も逃げきれるでしょうか」
2番人気・・・うーんちょっと悔しい。
そんな事を思いながら舞台裏に戻る。
「6枠11番、アグネスデジタルです。芝、ダートを選ばないオールラウンダーウマ娘です」
お、アグネスデジタル先輩も出るんだ。
「宝塚記念以来ですね。今日も負けませんよ」
「ウヒィ!デデデデデジタンはオワオワオワコンですのでぇ!?」
相変わらずの挙動不審っぷりである。
「そんな事言わないで良い戦いにしましょう」
なんとなく私はアグネスデジタル先輩の手を取った。
「あ・・・尊みが過ぎる・・・」
おっと、どうやら図らずとも限界を迎えさせてしまったようで意識がどこかに行ってしまったようだ。
そういうつもりはなかったんだけどなぁ。
鼻出血は気合で耐えていたので出場停止には多分ならないだろう。
「8枠18番、シンボリクリスティ。1番人気です。去年の天皇賞秋を制した強者。二連覇なるでしょうか」
シンボリクリスティか・・・宝塚記念では勝てたけど今日も勝てるようにがんばらないと。
「やあ、宝塚記念では負けちゃったけど今日は負けないよ。2連覇すれば会長にも怒られないで済むだろうし」
「簡単には負けないよ」
軽くにらみ合った後私たちはターフに移動するために地下道へ向かった。
さぁ!レースの時間だ!
SIDE:実況
「さあ秋のシニア3冠レースの第1戦目、天皇賞秋。秋の栄冠に輝くのはどのウマ娘か。ゲートの準備が終わりましてスターターが旗を振ります。ファンファーレと大観衆に見守られながらウマ娘たちが次々とゲート入りしていきます。体制完了・・・。スタートしました。まず1人抜けだしましたのはインパクトターボ。ローリングリンがその後ろ2バ身後ろ。ゴースタディも抜け出してローリングリンに並びかけます。2人並んだままインパクトターボを追いかけますがインパクトターボはそれを追い付かせまいとドンドン加速していきます。早くも先頭集団は向こう正面に入ります。大きく離れてトーゼンダンディがぽつんと1人。そこからさらに離れてカンフーベスト。少し離れてエイシンプレイテン、テンセイセイザなどがこの位置。その外にシンボリクリスティが追走しています。中団好位にアグネスデジタル。最後方はマルマルボーイ。さあ第3コーナーに向かいます!先頭は譲りませんインパクトターボ!その後ろローリングリンとゴースタディが追いかけています!早くも中間1000メートルを通過!タイムは56秒7とこれは早い!間が大きく空きましてトーゼンダンディ!その後ろ3バ身にエイシンプレイテン、テンセイセイザ、トーホクシデン!その外を回りまして差を詰めてくるシンボリクリスティ!あとは内をついてムーンレイペガサスです!アグネスデジタルはまだ中団で足を溜めています!最後方はまだマルマルボーイです!さあ第4コーナーから直線コースへ!逃げる逃げるインパクトターボ!リードは6バ身はと開いている!ローリングリン懸命に追いかける!ゴースタディは一杯か!400メートルを切りましてようやくシンボリクリスティがやってきました!もの凄い脚だ!アグネスデジタルも上がってきた!しかしインパクトターボも先頭を譲りません!シンボリクリスティ間に合うのか!?アグネスデジタルもあと少しが届かない!シンボリクリスティ並びました!しかし僅かに届かないままゴールイン!ギリギリで逃げ切りましたインパクトターボ!シンボリクリスティ僅かに届きませんでした!1着はインパクトターボです!」
SIDE:インパクトターボ
「ッシ!」
ゲートを勢いよく飛び出して先頭に立つ。
他にも逃げの作戦を取るウマ娘が居たが出足の良さが売りの私には敵わない。
それでも諦めずに追いかけてくるのでいつもより速度を出して逃げ続ける。
シンボリクリスティとアグネスデジタル先輩は中団辺りで狙っている様だ。
「待て~!」
「先頭寄越せ~!」
「断る!」
あっという間に1000メートルを通過し、中間を過ぎ、第3コーナーに入った。
「どいたどいた~!シンボリクリスティのお通りだよ~!」
どうやら早めにシンボリクリスティが上がってきているようだ。
アグネスデジタル先輩はまだ上がってこないか。
コーナーを曲がり切り直線に入る。
「待てぇ!」
シンボリクリスティが物凄い勢いで上がってくる。
「嫌だねぇ!」
私も全力で逃げ続ける。
「ああ!ライバル同士の激戦を前から見たいのに足がついていかないぃ!」
アグネスデジタル先輩も上がってきたが届かないようだ。
「届けぇ!」
「させるかぁ!」
全身全霊で私はゴールを駆け抜けた。
「「どっち!?」」
掲示板には私の番号が表示されていた。
「やったぁ!」
「うわ~!会長に怒られる~!」
やった!このまま秋3冠目指すぞー!
育成目標:天皇賞秋を3着以内に入る CLEAR
????:条件フラグ1取得
バクソウオー 初期能力(☆3時)
スピード:123 スタミナ:78 パワー:120 根性:90 賢さ:70
バ場適性:芝A ダートG
距離適性:短距離A マイルB 中距離D 長距離G
脚質適性:逃げA 先行G 差しG 追い込みG
成長率:速30% 体0% 力0% 根0% 賢0%
スキル:初期所有 大きなリード 短距離のコツ
覚醒:Lv1短距離直線〇 Lv2スプリントターボ Lv3直線加速 Lv4圧倒的リード
短距離のコツ:短距離レースの時スピード上昇
固有スキル:暴走モード!突入! 説明:レース中掛かってしまうと後先考えずにスタミナが尽きるまで全力で走り続ける。(スタミナ消費が非常に大きくなるデメリット有)
育成イベント中獲得スキル:落着き× 説明:レース中に非常に掛かりやすくなる。
メイクデビュー戦前にイベントで確定取得。スキルポイントで解除不可だが評価値には影響を持たない変わったマイナススキル
次回予告
早くも引退して次代に繋ぐ俺の娘。
相変わらず暴走する俺の息子。
そして新しくデビューする息子。
血が続くって・・・いいもんだな親父・・・。
第2シーズン第17話 繋がる血脈(馬)