これが逃げるという事だ   作:福泉

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第2シーズン第17話お待たせいたしました。
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第2シーズン第17話 繋がる血脈(馬)

時は遡って2010年春・・・。

室オーナーが牧場を訪ねてきた。

「いや~お待ちしてましたよ室さん」

「いえいえ、いつもわがままを聞いてもらってありがとうございます」

室オーナーを出迎える牧場長。

その傍らには去年生まれた俺の息子が居た。

「この子がスズカミラーの2009です」

スズカミラーは確かサイレンススズカの全弟の娘だったな。

どっちの娘だったかは忘れたが。

見た目がサイレンススズカの生き写しかと思う程に似ているらしいのだが牝馬である。

性格が大人し過ぎて競走馬に向かなかったとの事で競走馬登録こそされたものの未出走のまま繁殖牝馬になったが目立った産駒がなく、良血統だが格安でこの牧場に譲られてきた。

そうして俺が種付けをして生まれたのがこの息子だ。

俺は少し離れた場所からその様子を心配そうに見つめている。

息子は初めて見る室オーナーに興味津々の様子で興奮している。

「おーよしよし、お前もターボに似て人懐っこいな」

「この子をお買い上げいただきありがとうございます」

「いえいえ、そちらこそ私の為にセリに出さずにおいてくれてありがとうございます」

牧場長も期待する良い体躯をした息子。

セリに出せばいい値段が付いたかもしれないが室オーナーの為に取っておいてくれたらしい。

「それでこの子の名前はどうしましょうか?」

「ええ、仲間たちと相談してターボの息子ですからターボの名前を使うか車関係の名前にするかで少しもめましてね。最終投票でマキシマムターボに決まりました」

マキシマムターボ、最大のターボ・・・か。

名前に負けずに頑張ってこいよ。

こうして室オーナーの新しい馬、マキシマムターボが登録された。

 

その後2010年は、皐月賞ではバクソウオーがあわや勝利という走りを見せた後、圧倒的速さでスプリンターズステークスを勝利し、白毛馬のシルクヴェールはドバイデューティフリー2着、凱旋門賞5着入着という成績で無事に日本に戻るとそのまま引退して繁殖牝馬となった。

 

そして2011年・・・。

 

今年の種付け数に戦々恐々としている俺は何とか気持ちを落ち着けようとラジオを聞いていた。

『さあ間も無く出走となります東関東大震災被災地支援競馬、第41回高松宮記念GⅠ。芝1200メートル馬場は良馬場です。今年は阪神競馬場で行われる高松宮記念です。1番人気はスプリンターズステークスを暴走しきりましたバクソウオーです。短距離に置いてはもはや敵なしと言われているバクソウオー。暴走ばかりしているせいで最初は人気がありませんでしたがあわや1着の皐月賞以降人気が出て去年のスプリンターズステークスからは短距離ならば間違いなしと言われるほどになりました。さあゲートの準備が終わりましてスターターが旗を振ります。ファンファーレが響き渡ります。各馬が次々とゲートインしていきます。今係員が外に出ました。・・・スタートしました。ハナを切ったのはやはりバクソウオー。しかしヘッドライナーも続いています。レッドスパーダ、ダッシャーゴーゴーがその後ろにつけるか。キンシャサノキセキ、ジョーカプチーノが前へ。さらにはワンカラット、ウエスタンビーナス先行グループ集団のまま3コーナーへ。直後中団がビービーガルダン、内側にアーバニティ、外がサマーウインド。あとはサンカルロ、エーシンフォワード。内側2番のショウナンアルバ。後方から3番手がスプリングソング、おっとウェスタンヴィーナス故障発生かズルズルッと後退。後方3番手になりましたシンボリグラン。最後方サンダルフォンで4コーナーカーブに向かいます。先頭はバクソウオー譲りません!ダッシャーゴーゴーとキンシャサノキセキが追い上げる!ビービーガルダンも追い込んでくる!まもなく残り200メーター!バクソウオー先頭!これにダッシャーゴーゴーとキンシャサノキセキが追い抜こうと必死です!バクソウオー懸命に逃げる!キンシャサノキセキが並ぶか!しかしバクソウオー逃げ切ったゴールイン!キンサシャノキセキの連覇を阻みましたバクソウオー若井武志!掲示板には赤いレコードの文字!タイムはなんと1分6秒3!99年アグネスワールドが出した1200メートルのレコードを0.2秒更新しました!』

やるじゃない・・・(吐血)

また種付け依頼が増えそうな予感がヒシヒシとしていた。

その事を今年で3回目の種付けとなったサムシングブルーちゃんに言ったら『牡として認められてるからすごい事ですよね』と言われて『そうなんだけどさぁ・・・』と落ち込んでいたら慰めてくれたのでまあ良しとしよう。

マキシマムターボは9月にデビュー。

デビュー戦こそ騎手との折り合いが悪くて負けてしまったが、騎手を変えて順調に未勝利戦に勝利し、皐月賞を目指して若葉ステークスに出る様だ。

さて、2012年か・・・あの葦毛の奇行種が居るが果たして勝てるのかねぇ我が息子は。

 

年が明けて2012年。

俺も14歳と馬として中年になってきた。

今年も命を絞り出す時間が始まる(震え声)

そんな事を思いながら若葉ステークスに出走するマキシマムターボのレースに耳を傾ける。

『さあ、皐月賞トライアルレース若葉ステークス。芝2000メートルを走ります16頭。果たしてどの馬が皐月賞へと進むことが出来るでしょうか。各馬が次々とゲートインしてまいります。最後の1頭が無事に収まりまして係員が退きます。・・・スタートしました。ややバラついたスタート。先行争いですがマキシマムターボとメイショウカドマツが狙います。ハナに立ったのはマキシマムターボその後ろにメイショウカドマツが付きました。外からグランプリブラッドがやってきて3番手につきました先頭集団を形成します。4番手はアドマイヤレイ外側にショウナンタケルが居ます。その後ろにオソレイユ。1コーナーに差し掛かります。ケイワイツヨシが中団前の方、ドリームトレイン、グラーネと続いています。ワールドエースは後ろから4、5頭目にいます。2コーナーに入りまして先頭変わらずマキシマムターボリードを広げています。その差が3馬身から4馬身になりましたでしょうか。2番手にはメイショウカドマツ、グランプリブラッドは3番手にいます。その内にアドマイヤレイ。外からショウナンタケル。オソレイユが先行集団の一番後ろにいます。向こう正面に入ります。4馬身ほど間が空いてケイワイツヨシが後ろを引っ張っています。外にグラーネ、その後ろにドリームトレイン。 ディアデラバンデラ、ミルドリームと続いています。少し間が空きましてメイショウブシドウがいましてその後ろにワールドエース。先頭まで16馬身ぐらいの所を走っています。内からラフィングインメイが上がっていって後方にアルキメデスとククイナッツレイ。最後方にローゼンケーニッヒという展開です。まもなく第3コーナーに入ります。先頭マキシマムターボ間は3馬身から4馬身を保っています。残り800メートルを切りまして2番手は変わらずメイショウカドマツ、3番手にグランプリブラッドという隊列のままレースは進んでいきます。3、4コーナー中間を抜けましてショウナンタケルとアドマイヤレイが並びました。そしてオソレイユが先頭集団を形成しています。さあ4コーナーに入りまして後方集団も前へ前へと差を詰めていきます。ワールドエースは先頭からまだ10馬身ほどの位置に居ます。4コーナーから直線に入りました!先頭はマキシマムターボ!ここに来て後ろを引き離す勢いで走っています!ワールドエースが大外から一気に追い上げてきますが届きますでしょうか!ワールドエースが2番手まで上がってきました残り200メートル!マキシマムターボ逃げる!一度詰まったはずの差が開いていく!3馬身4馬身開いた所でゴールイン!見事に逃げ切りましたマキシマムターボ!父インパクトターボも走った皐月賞へ大きな一歩を踏み出しました!』

ふう、危なげない勝利だったなマキシマム。

流石に俺に誓いを立てて旅立っていっただけはあるな。

俺はマキシマムがトレセンへと移る日の事を思い出した。

『父さん。俺、父さんの忘れ物、持って帰ってくるからね!』

『そうか・・・苦しい道だが頑張れよ。応援してるぞ』

その言葉と共に旅立っていったマキシマム。

きっとその誓いを達成してくれると信じて、俺はその日を楽しみにしながら日々ノルマをこなしていくのであった。

 

そして皐月賞を迎えた・・・。

馬房内で多くの馬達がラジオに耳を傾けている。

厩務員も作業をしながらではあるがマキシマムターボの様子が気になっているのか時々ラジオに意識を向けている。

『さあ、間もなく始まります第72回皐月賞。選び抜かれた18頭が競い合うクラシックレース第1戦目。果たしてどの馬が勝つのか。出走馬を振り返ってみましょう。1枠1番モンストール。1枠2番アダムスピーク。2枠3番トリップ。2枠4番マキシマムターボ。3枠5番アーデント。3枠6番ディープブリランテ。4枠7番ベールドインパクト。4枠8番サトノギャラント。5枠9番ワールドエース。5枠10番スノードン。6枠11番マイネルロブスト。6枠12番フジマサエンペラー。7枠13番シルバーウエイブ。7枠14番ゴールドシップ。7枠15番コスモオオゾラ。8枠16番ゼロス。8枠17番ロジメジャー。8枠18番グランデッツァです。以上18頭フルゲートでのレースです。ゲートの準備が終わり、今スターターが旗を振りました。ファンファーレが中山競馬場に響き渡ります。各馬が次々とゲートに収まって行きますが1頭ゴールドシップが中々ゲート入りしません。係員に押し込まれるようにして漸く収まりました。体制完了。・・・スタートしました!内から押して押して上がっていきますマキシマムターボ!父インパクトターボがそうであったように息子マキシマムターボも皐月賞を逃げ切ろうとハナを切ります!負けじと並びかけるのはゼロス!やはりこの2頭の逃げ争い!僅かに先頭はマキシマムターボですがゼロスも外から並んでいきます!その後ろ3馬身4馬身抑えてディープブリランテが集団を形成します。コスモオオゾラ、アダムスピークと続いてその後トリップ、ロジメジャーにベールドインパクト、モンストールが中団を形成!その後サトノギャラント行きました!さらに内はアーデント最内に取ったスノードン!グランデッツァ後方その後ろにワールドエースです!1、2コーナー中間点マキシマムターボ行きました2馬身半のリード!ゼロス2番手になりました!その後が7馬身8馬身開いてディープブリランテがかなり抑えて3番手!モンストール、アダムスティーク2頭が続きました!向こう正面に入りまして1馬身半差コスモオオゾラ、トリップ!その後2馬身さスノードンとロジメジャー!その後ろにベールドインパクト、アーデント、サトノギャラントが行きました!ここは縦1列マイネルロブスト、フジマサエンペラーの追走で1000メーター58秒5!58秒5と早いペースで行っています!あと後方はシルバーーウエイブ追走グランデッツァ後方から3、4番手で3コーナー!2馬身空いてワールドエースが構えて!最後方からゴールドシップ!3コーナーを回りましてマキシマムターボが依然先頭4馬身5馬身のリード!ゼロスが2番手4コーナーカーブ!その後は4馬身空いてアダムスティーク3番手!ディープブリランテ4番手!その後ろコスモオオゾラ!さらにロジメジャーが動いて!まだグランデッツァとワールドエースは差がある後方大外に出していく!第4コーナーから直線!内ラチ沿いマキシマムターボが先頭!マキシマムターボが逃げる!ゼロスも差を詰めるが苦しいか!その内からゴールドシップが上がってきた!200を切ってゴールドシップがマキシマムターボに迫る!マキシマムターボ懸命に粘る!ゴールドシップを抜かせない!大外からワールドエースとグランデッツァが追い込んでくるが3着争い!マキシマムターボとゴールドシップが引き離す!並んだままゴールイン!ですが勝ったのは僅かに内のマキシマムターボでした!マキシマムターボ1冠目!父と同じく見事に皐月賞を逃げ切りました!』

いよっし!見事だ息子よ!

先ほどまでラジオに意識が行きがちだった厩務員も大声を出さないように喜んでいる。

他の馬達からも息子を褒める声が聞こえる。

血が続くってのは良いもんだな・・・親父・・・。

あんたにもそう思わせてやりたかったよ・・・。

 

インパクトターボ代表産駒:シルクヴェール、バクソウオー、マキシマムターボ




JRACM風

2002年 菊花賞

その馬にマイルは短すぎる
そう言われて敢てクラシック3冠に挑んだ牝馬が居た
踏み躙られた父の栄冠を追い求めて、その馬は並みいる強豪を打ち破ってついに59年ぶりの牝馬による菊の栄冠を手に入れた
菊花賞親娘制覇
その馬の名は『サムシングブルー!』
「サムシングブルーだ!サムシングブルーだ!やはりこの馬は強いのか!ライスシャワーも応援しているぞ!サムシングブルーが今完全に抜け出した!そしてゴールイン!やりましたサムシングブルー!牝馬による菊花賞優勝です!」
逆境になど負けるな
菊花賞

次回予告

秋3冠の一つ目を制した私

次に目指すはジャパンカップ

雨の中のレースだけれど、連覇目指して頑張るぞ!

第2シーズン第17話 繋がる想い(ウマ娘)
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