ご意見、ご感想お待ちしております。
また、当小説のURAファイナルの設定はオリジナルです。
アプリ版とは異なりますのでご注意下さい。
有馬記念を制し、秋3冠を達成した私にとある招待状が届いた。
「インパクト、お前にURAファイナルへの招待状が来ている」
「本当ですか!?」
URAファイナルとは人気に陰りの出始めたレースを盛り上げようと中央トレセン学園が主体となって企画、URAと共同で運営されている特殊なレースである。
予選、本選、決勝戦の計3回全てをGⅠレースと同等に扱い、さらにはトゥインクルシリーズ、ドリームトロフィーリーグ、ローカルリーグの垣根を超えた一大レースに日本中は愚か世界からも注目を集めている。
しかし他のレースとの兼ね合いもある為、非常に限られた期間に連戦を強いられる事になる為、様々な事情で辞退してしまうウマ娘も居る。
「どうする?今年は辞退するという方向でも問題は無いが」
「いえ、出ます!私の走りがどこまで通用するか知りたいんです!」
そもそもURAファイナルに呼ばれる事だけでも非常に名誉なのだ。
「分かった。ではまずはURAファイナル予選レースに向けてのトレーニングを開始するぞ!芝2200メートルだ」
「はい!」
私は元気よく返事をした。
そして予選レースの日を迎えた。
「まさか早速お前と当たる事になるとはな。インパクト」
「それはこっちの台詞だよスレッジ」
足への負担を考えて、今年でドリームトロフィーへの移行を表明したスレッジと最初の予選で勝負する事になってしまった。
「足は?」
「アイツが心配しまくるから医者に見せてるよ。保証は貰った」
ウマ娘特有の病気、屈腱炎。
スレッジは一度発症している。
完治は難しく、仮に治ったとしても再発する可能性の高い病気の為、競走に復帰するのを諦めなければならないウマ娘も多い。
スレッジの足は常に見えない爆弾を抱えてしまったのだ。
「手ぇ抜くなんて真似はすんじゃねえぞ」
「分かってるよ」
私たちは拳を軽くぶつけた。
本選への出場権はたった一枠。
譲るわけにはいかない。
「さあ!間もなく始まりますURAファイナル予選第5レース!芝2200メートルです!このレースの1番人気はこのウマ娘!秋3冠を達成いたしました2枠4番、インパクトターボです!実力は引けを取りません2番人気!ドリームトロフィーリーグへの移行を表明した4枠7番、スレッジハンマーです!この評価は少し不満か!3番人気は8枠16番ハッピーミークです!各ウマ娘がゲートに収まりました。・・・スタートしました!4番インパクトターボが好スタートを切りました!同じく好スタートを切ったハッピーミークは少し下がりまして中団に控えました!先頭はインパクトターボリードを広げていきます!」
「ッシ!」
いつも通りゲートが開くと同時に飛び出す。
「わぁ・・・すごい・・・」
外枠の白毛ウマ娘、ハッピーミークも好スタートだったがそれを上回る勢いで私は先頭を取る。
ハッピーミークは差しを選んだのか慌てて私を追いかける他のウマ娘達にあえて先に行かせて下がっていった。
スレッジはいつも通り最初から中団に居る。
さて・・・逃げ切らせて貰うよ!
「インパクトターボは今日も大逃げです!2番手につけましたヨコヨコとは間10バ身と大きなリード!3番手には今日は先行策かマイモルホウホウ!その外にゴーゴーマイク!さらに外からジョニーザジョニーが上がってきます!その後ろでキラキラフォースがちょっと落ち着かない様子!左をダークベンダー、右をマスターヨーガに囲まれて走りづらそうだ!その後ろ内ハッピーミーク、外スレッジハンマーと末脚自慢の2人!少し間が空きまして後方集団を引っ張りますのはブラウンシュガー!出遅れが響いているかシルバーウィーク!展開を伺いつつ足を溜めているのはチャージバスター、マッチーガイル、レッドサイクロンの3人!最後方はポツンと1人オサカベプリンセスです!非常に縦長の展開となりました!」
安定したレース運びで私はどんどんと前に進む。
しかしやはりURAファイナルに招待されるウマ娘達だけあってまったく油断できない。
これだけ引き離していても必ず誰かが追い付いてくる。
そんな予感が消えないまま私は第4コーナーを曲り、直線に入った。
「最終直線にインパクトターボが入りました!後ろから集団を抜け出してスレッジハンマーとハッピーミークが追い上げてくる!最後方を走っていたオサカベプリンセスもいつの間にか4番手まで来ているぞ!逃げるインパクトターボリードは3バ身まで縮まっている!スレッジハンマーとハッピーミークが物凄い追い上げだ!しかし残りは200メートル!インパクトターボ逃げ切れるか!それともスレッジハンマーとハッピミークが差し切るのか!オサカベプリンセスはちょっと苦しいか!インパクトターボが懸命に粘る!スレッジハンマーとハッピーミークが必死に追い上げる!並ぶか!しかし僅かに届かないままゴールイン!インパクトターボが勝ちました!URAファイナル本選への切符を手に入れました!」
「やったぁ!」
「チックショー!負けたらしょうちしねぇからな!」
「・・・負けた・・・悔しい・・・トレーナー・・・がっかりする・・・」
何とか逃げ切った私にスレッジが怒りながらそう言った。
ハッピーミークは・・・うん、物静かな子なんだな。
育成目標:URAファイナル予選で1着 CLEAR
そして次のレース、URAファイナル本戦・・・。
「皆と戦うのは決勝戦だと思ってたんだけど・・・」
「確かに18レースもあるのに全員が同じレースに振り分けられるのはかなり奇跡的だよね」
「確かにそうですね。運が良いのか悪いのか分かりませんね」
「ざ、残念です・・・」
まさか決勝戦を前にキタちゃん、サトちゃん、ルーちゃんと戦う事になるとは思わなかった。
「なんか締まらないけど、決勝戦に行けるのはただ一人・・・」
「負けないよ」
「私だって負けたくありません」
「が、頑張ろうね」
私たちはいつもの様に笑いあうとターフに出た。
「さあ!まもなく始まりますURAファイナル本戦第3レース!芝2400メートルです!このレースの1番人気は秋3冠ウマ娘、3枠6番インパクトターボ!2番人気はこの娘!お祭りウマ娘5枠10番キタサンブラック!3番人気はまさかの同票!2枠4番サトノダイヤモンドと4枠7番サムシングブルー!さあ各ウマ娘やる気十分でゲートに収まります!体制完了!・・・スタートしました!綺麗に揃ったスタートになりました!ハナを切るのはインパクトターボとキタサンブラック!逃げを得意とする2人のウマ娘が激しい先頭争い!間3バ身開いて3番手に着きましたのはサムシングブルー!この3人が先行集団です!そこから間が7バ身ほど開きまして4番手にはテイテンカンソク!その外にアブラトリペーパー!その後ろ集団に囲まれてオーレガシュヤク!外から押さえつけるサイドバック!その後ろにサトノダイヤモンドが外に抜け出してきました隊列真ん中辺り!」
「ッシ!」
「行くよターちゃん!」
キタちゃんに負けないように勢いよく前に飛び出す。
逃げが得意な私たちはこうして競り合うのはもうお馴染みだ。
そして私たちの後ろにはしっかりと私たちを追いかけてくるルーちゃんが居る。
唯一サトちゃんだけが後ろからになるけれども当然ながら末脚は私たちの中では一番だ。
後ろにいるからと言って決して油断はできない。
私は足に力を込めて加速していく。
「さあ先頭集団は早くも1000メートルを通過いたしました!真ん中より後ろに内マイティーボム、外デンジャーデンシャー!その後ろにサトウシュガー!マインクラフターもここに居ます!ハルハアケボノはちょっと落ち着かないか?ピクシースキーとアリスラバーは後方で足を貯めて居ます!後ろから3番目はサルンパース!最後方の2人はストームアラシとトキオシゲル!さあ先頭が第3コーナーを曲り第4コーナーへと向かいます!各ウマ娘の動きが激しくなってきました!」
「ここ!」
ジワリジワリとルーちゃんが上がってくる。
キタちゃんはまだ隣に並んでいる。
サトちゃんも外に抜け出して上がってきている。
残るは直線のみ。
後は根性で走り切るのみ!
「第4コーナーを抜けて直線に入ります!先頭はインパクトターボとキタサンブラック!サムシングブルーがジワジワと差を詰めて追い付きます!外に持ち出したサトノダイヤモンドも末脚を炸裂させる!ピクシースキーとアリスラバーも溜めた足を使って上がってくるが届くでしょうか!インパクトターボ懸命に粘る!キタサンブラックが必死に追いすがる!サムシングブルーとサトノダイヤモンドも並んでくる!しかしインパクトターボ決して先頭は譲らない!体半分を抜かせない!渾身の走り!辛うじて先頭を維持したままゴールイン!」
「ッハァ!あっぶなぁ!」
「むうー!あと少しなのにぃ!」
「やっぱり強いです」
「け、決勝戦頑張ってください」
「うん、ありがとう!いい勝負だったね!」
私たちは握手をした。
育成目標:URAファイナル本選で1着 CLEAR
そして迎えたURAファイナル決勝・・・。
「やっぱりここまで来たね。クリスティ」
「・・・出ないと会長に実家に報告するって言われたからね」
相変わらずやる気が見えないクリスティ。
「会長の苦労が忍ばれますね・・・」
ロブロイ先輩もそう言って目を伏せた。
今回会長はクリスティのお目付け役としてURAファイナルには出場していない。
その代わり、と言うわけではないが生徒会のナリタブライアン先輩が参加している。
以前負った怪我の影響で全盛期より速度は落ちていると言われているがそれでも怪物の異名を与えられるほどの実力者だ。
トゥインクルシリーズは引退してドリームトロフィーリーグに移行し、足への負担を減らしてまだレースを続けている。
そんなナリタブライアン先輩と戦える。
あの時の背中を追い越したい私にとってはまたとない機会だ。
「いつも通り走るだけ・・・逃げ切って見せる・・・!」
私はそう小さく呟くとターフに出た。
「さあ!URAファイナル決勝は東京競馬場、芝2000メートルで行われます!各レースを勝ち残った18人のウマ娘達!今年のURAファイナルを制するのは誰か!1番人気はこのウマ娘!怪物ウマ娘、4枠8番ナリタブライアン!2番人気はこのウマ娘!大逃げばかりの歌舞伎者!6枠11番インパクトターボ!3番人気だからと言って実力不足ではありません!大人しい外見からは想像できない末脚を持つ1枠1番ゼンノロブロイ!他のウマ娘たちも決して引けを取りません!泣いても笑ってもこれが最後のレースです!各ウマ娘ゲートイン完了!・・・スタートしました!1人出遅れましたが後は綺麗にそろったスタートです!先頭争いはインパクトターボが抜け出ました!その後ろは2バ身離れてビービーダッシュ!そこから間が開きまして集団を形成しています!3番手には今日は先行策、ダーンプレミア!その後ろに怪物ウマ娘ナリタブライアン!そして珍しい事にゼンノロブロイが5番手に居ます!その後ろにマークエックス!その外にムーンラビット!シンボリクリスティ今日は中団前目にいます!」
「ッシ!」
今回も完璧なスタートができた。
ナリタブライアン先輩もロブロイ先輩も今日は先行策で勝負するようだ。
クリスティは中団につけたようだがひそかにやる気なのか前目にいる様だ。
私の後ろに居る逃げウマ娘は私に先頭を取られてしまったせいで苦戦しているようだ。
行ける!
いや、行ってみせる!
戦ってきた皆の為に!
私の為に!
「隊列真ん中辺りで争うのはハシルゼミテロとアメリカンバイク!その後ろ内リーダーテン、外マリアリア!間が開きまして後方集団メーテルナイン、ブラックゼロ、スカイドロップ!後ろから3番手オジョウサン!その後ろにトムキャット!最後方は出遅れたパースです!さあ先頭インパクトターボがビービーダッシュを引き離しに掛ります!中間を過ぎて第3コーナーに入ります!インパクトターボリードは5バ身!ビービーダッシュも慌てて速度を上げますが追い付きません!3番手はナリタブライアンが上がりゼンノロブロイもそれを追走!ダーンプレミアは下がっていきます!まもなくインパクトターボが3、4コーナー中間を通過!中団ではシンボリクリスティが前に進もうと外へ抜け出そうとしています!後方集団も上がっていきます!」
「フッ!彼女と走るのは初めてだが何やら妙な懐かしさを覚えるな!私の全身全霊!打ち破って見せろ!」
「私だって!負けたままでは居られません!」
後ろから物凄いプレッシャーが迫ってくる!
今までに感じたどのプレッシャーよりも強烈だ!
このプレッシャーとあの小さな背中は戦っていたのか!
私だって!勝ってみせる!
「さあ直線に入ります!先頭はインパクトターボリードは3バ身!2番手に上がりましたナリタブライアン!ゼンノロブロイも上がってきました!シンボリクリスティも集団を抜け出して4番手まで上がっています!各ウマ娘が坂を駆け上がりゴールに向かいます!インパクトターボ懸命に粘る!ナリタブライアン、ゼンノロブロイが追い上げる!シンボリクリスティも驚異的な末脚!残り200メートル!インパクトターボがまだ先頭!ナリタブライアンとゼンノロブロイ、シンボリクリスティが並びかけます!インパクトターボ届くか!抜かせません!ナリタブライアンもゼンノロブロイもシンボリクリスティも抜けません!インパクトターボ渾身の走り!限界を超えよと吠える!届くか!届くか!届いたゴールイン!インパクトターボURAファイナルを逃げ切りで勝利しました!」
届け!届け!届け!
「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
限界を超えた走り。
恐らくもう2度と出来ないかもしれない走り。
あの時見た背中の幻を追い抜いて、その走りでもって私は辛うじて先頭のままゴールを走り抜けた。
しかし精魂尽き果てた私は呼吸をするのに必死で掲示板を見る余裕も周りの様子を伺う余裕もなかった。
そんな私に手が差し伸べられた。
「インパクトターボ」
「ナリタ・・・ブライアン先輩・・・」
「おめでとう。お前の勝ちだ」
一瞬言われた事を理解するのに時間が掛かったけれど、直ぐに私はナリタブライアン先輩の手を取った。
「ありがとうございますナリタブライアン先輩!強かったです!」
「お前もな!」
私はついにあの憧れに追いついたのだ。
育成目標:URAファイナル決勝で1着 CLEAR
インパクトターボ エンディング
URAファイナルが終わって少ししてから・・・
『話ってなんだい?』
「その・・・改まってお礼が言いたくて」
インパクトターボは改まった表情でそう言った。
『お礼だなんて・・・』
「いえ、私みたいな変わり者をここまで導いてくれてありがとうございます」
そう言ってインパクトターボは深々と頭を下げた。
「大逃げに拘る・・・いいえ、固執する私を指導してくれたのはトレーナーさんだけです」
『そんな事は・・・』
「いいえ、誰もが私の走りを止めさせようとしました。そんな走りは勝てないウマ娘のする事だ。つまらない拘りで勝負を捨てるのを止めろ、と」
『そんな事は!』
「ですからトレーナーさんにお礼を言いたいんです。ありがとうございます。私を認めてくれて。私を受け入れてくれて。私を止めないでくれて」
『・・・』
「トレーナーさんとなら、きっともっともっと凄い大逃げが出来ると信じてます!だからこれからも私を止めないでくださいね!」
そう言って笑うインパクトターボはとても魅力的だった。
次回予告
時は流れていく。
それは時に優しく、時に厳しく。
そして時に奇妙な縁を運んでくる。
第2シーズン第20話 韋駄天(馬)