ご意見ご感想お待ちしております。
また当小説の世界ではウマ娘アプリの内容、世界情勢が異なる事をご理解願います。
2014年・・・。
日本競馬が初めて凱旋門賞を制したその年末・・・。
日本国内の競馬ファンの間ではゴールドシップとマキシマムターボの格付けは済んだ。
そんな風に言われていた。
そして迎えた有馬記念。
当然の如く長距離が得意なゴールドシップが勝つだろうと言われていた。
『これはどうした事だ凱旋門賞馬のゴールドシップ!マキシマムターボに全く歯が立ちません!3馬身の差を詰められないままゴールイン!1着はマキシマムターボです!凱旋門賞の雪辱を晴らす余裕の3馬身!』
あの凱旋門賞は何だったんだと言わんばかりの光景に思わずゴールドシップファンはズコーっとこけたのであった。
当然ながら競馬新聞では『ゴールドシップ慢心!』などと大々的に書かれたのであった。
そのせいなのかは分からないが2015年も燃え尽きる事なくマキシマムターボに食って掛かるゴールドシップが見られた。
2015年の凱旋門賞にも参加したが残念ながらどちらも入着に終わっている。
2頭はその年の有馬記念を最後に引退。
最後はどちらが勝つかと期待されていたがまさかのゴールドアクターが勝利するという大番狂わせで幕を閉じた。
2頭揃っての引退式は終始落ち着いたマキシマムターボと暴れまくるゴールドシップという2頭らしい引退式となったのであった。
2016年・・・。
残念ながらこの年は俺の産駒で目立った成績を残す馬は居なかった。
高額種牡馬入りしたマキシマムは初年度から多くの種付けをする事になった。
「父さんって・・・偉大だったんだね・・・」
と、死んだ目で話すマキシマムに俺も死んだ目で乾いた笑いを返す事しかできなかった。
2017年・・・。
「・・・でかいな」
「・・・でかいね」
俺とマキシマムがそろってそう言う理由は去年生まれた俺の産駒である。
まだ1歳だと言うのに既に馬体重が500キロを遥かに超えている。
隣に並んでいる同い年の馬がまるで子供の様だ。
室オーナーが新しく買ったお前の息子だぞと態々見せに来てくれたのだ。
「母親は・・・?」
「確かシンボリルドルフ産駒の牝馬の娘・・・だったかな?」
「まだ残ってたんだね。シンボリルドルフの血統の牝馬・・・」
「残ってたんだよ。競走馬登録はされて無かったらしいけどな」
体つきこそ大柄で頑丈そうで走るかもと思われたのだが、蹄に問題があったらしく裂蹄を良く起こすのでそのまま繁殖に回されたそうだ。
当初は処分予定だったが古くからの競馬ファンがシンボリルドルフの血を絶やさないで欲しいと強く願い、基金を募って繁殖牝馬として残されたらしい。
そんな牝馬と一昨年種付けをして生まれたのがこの馬だ。
「あれか?俺の血筋は親より息子の方がデカくならなきゃならないっていう意思でもあるのか?」
「父さん・・・それ笑えないから・・・」
親父より俺の方が、俺よりマキシマムの方が体がでかい。
もちろん偶然だろうが今の所俺より小柄で活躍したのはバクソウオーくらいだしなぁ・・・。
そんな事を思いながらモリモリと草を食べる息子の映像を見つめるのだった。
「まあ頑張ってくれよ。ターボエンペラー」
名前負けしないか非常に心配である。
2018年・・・。
順調にマキシマムの子供たちがセリに出されていく。
中には非常に高額で取引される子も居た。
果たしてこの中でどれだけの子が大成できるのか・・・。
ゴールドシップの産駒も次々と出てくるから因縁はまだまだ続きそうである。
そして迎えた10月の新馬戦。
体が大きいせいでゲートが苦手なターボエンペラーがようやくデビューするのである。
『さあ、間もなく始まります京都競馬場第4レース、2歳新馬戦。何とも非常に珍しい光景になりました。6枠11番メロディーレーンと6枠12番ターボエンペラーの2頭、JRA2歳馬最軽量馬体重336キロでのデビューのメロディーレーンとなんと600キロにも迫ろうかという巨漢のターボエンペラー。親子ではありません。同い年です。遠くから見ると遠近感がおかしくなった様な錯覚に陥ります』
いきなりとんでもない注目を浴びることになったターボエンペラー。
果たして大丈夫なのだろうか。
『さあ各馬がゲートに収まりました。・・・スタートしました。1頭ターボエンペラーやや出遅れたか。しかし強引な走りで先頭に立ちました。その巨体からは想像できない様な加速で先頭リードは3馬身。小さな馬体メロディーレーンですが・・・いました集団中央、ちょうど真ん中に囲まれるように走っています。中間を通過しまして先頭は変わらずターボエンペラー。注目のメロディーレーンは完全に周りを囲まれてしまって動けそうにありません。さあ第4コーナーを曲がって直線に入ります。先頭ターボエンペラーその巨体が生み出すパワーで後ろを引き離す!後ろは全くついてこれない!5馬身!6馬身開いたところでゴールイン!見事な走りでしたターボエンペラー!』
いやはやとりあえず勝利おめでとうエンペラー。
名前負けせずに頑張ってくれよ。
2019年・・・。
年越しした辺りからイクノ母さんの調子が悪くなった。
既に32歳という高齢のイクノ母さんが体調を崩すのは嫌な予感しかしない。
「御袋・・・大丈夫か?」
「ふふ・・・私もそろそろお迎えが来るようですね・・・」
以前の様な弱さを見せないイクノ母さんは其処には居らず、弱り切った牝馬がそこに居た。
「インパクト・・・私が産んだ子供たちの中でも格別に活躍した子・・・」
イクノ母さんの子供はその殆どが大成しなかった。
「貴方なら大丈夫・・・貴方は強い子です・・・」
イクノ母さん・・・。
「ああ・・・メジロマックイーンさん・・・ツインターボさん・・・迎えに・・・」
その日、鋼鉄の女は馬房で静かに息を引き取った。
息子とその孫たちに見送られて、イクノディクタスは天へと昇っていった。
その表情はとても穏やかで幸せに満ちた表情だった。
その年、祖母に捧げると言わんばかりにターボエンペラーはクラシック3冠を達成したのである。
2020年・・・。
穏やかな日光を浴びながらモシャモシャと放牧地で草を食べていると室オーナーが誰かを連れてやってきた。
「わー・・・本物だー・・・」
それは若い女性だった。
室オーナーの子供では無いし・・・まさか浮気!?・・・な訳ないか・・・。
誰だろう?
「しかしこいつがこんな美少女にねえ?ほら、これがお前らしいぞ」
そう言って室オーナーが何やらイラストを見せてくれる。
そこには黒に白の三角模様が入った羽織を着た馬の耳としっぽが生えた少女が描かれている。
傾奇者逃亡屋インパクトターボと文字が書いてあるからどうやら俺らしい。
そういえば相棒の勝負服も黒に白の三角模様だったっけ。
懐かしいなぁ。
「初めまして、私がインパクトターボ役をやらせてもらいます悠木碧です」
初めまして、インパクトターボです。
「一応サイゲームスさんからも話は聞いているけどどんな感じのキャラなんだい?」
「そうですねー・・・基本は真面目なんですけど、どこかちょっとズレている感じですかね?レースは負けず嫌いで負けると拗ねちゃうんです」
「ほうほう、確かにターボっぽいな。ちょっとセリフを言ってみてくれないかい?」
「それでは決め台詞的なのをやりますね。ンンッ・・・逃げる阿呆に追う阿呆、同じ阿呆なら逃げなきゃ損々!なんてね。こんな感じですね」
「はははは、それはいいなぁ。私もプレイしてこいつを育てるのを楽しみにしてますね」
「はい、今日はありがとうございました」
その後、イクノ母さんの墓参りをしていたらしいイクノ母さん役の声優さんとマキシマム役の声優さん達と合流し、写真撮影をした。
馬生何が起こるか分かりませんなぁ。
残りの馬生、何があるか楽しみだ・・・。
そして2021年・・・。
SIDE:室満男
「だ~またダメか~!このマルゼンスキー強すぎるだろ」
「あら、またゲームなの?」
スマホを持ったまま天を仰いだ俺に妻の卓子がそう言った。
「ああ、例の競馬擬人化ゲームだよ。インパクトとマキシマムが出てるから育ててるんだけどな。このイベントがクリア出来なくてな~」
それは条件指定ミッションと言うイベントである。
殿堂入りウマ娘の中で指定された条件を満たしたウマ娘を出場させてレースに勝つと各種報酬が貰えると言うものである。
「逃げウマ娘限定ミッションの韋駄天杯っていうのがあるんだけどいい感じに育成できたインパクトで挑戦したんだけど全然ダメでな~」
「そうなのね」
妻はゲームには全く興味が無いので返事も御座なりである。
まあ俺が個人的に遊んでいる分には小言も言わないし競走馬購入だって認めてくれた妻だからその程度で怒ったりはしない。
「それより明日はフランスに出発するから早めに寝ましょうよ」
「おっと、もうこんな時間か。いつも俺の趣味につき合わせちゃって悪いな」
今度の凱旋門賞にターボエンペラーが出走する。
マキシマムの時はどうしても仕事の都合がつけられずに行けなかったフランスに応援に行く事に決めていた。
もちろんただ応援の為だけにフランスに行くのは勿体ないので新婚旅行以来の妻との海外旅行でもある。
「いいのよ。私もあの子たちが走るのを見るのは好きだもの。それに色々と観光もするんだから楽しまなくっちゃね」
本当に良い妻だ。
「ああ、久しぶりの海外旅行なんだ。沢山楽しもう」
俺はスマホを置くと妻と一緒に寝室に向かった。
これからも浪漫は続いていく。
それが楽しみで仕方がない。
END
ここまでお付き合いいただき誠にありがとうございました。
この話をもって第2シーズンを終了とさせて頂きます。
今後番外編などをいくつか投稿する予定ですのでそちらもご覧いただければ幸いです。