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もしもゴールドシップが騙馬だったら・・・。
SIDE:馬
マキシマムターボが日本ダービーを終えて牧場に戻ってきた時・・・。
「父さん、ただいま」
「お帰りマキシマム。良く・・・良く頑張った」
再び目頭が熱くなり始めたが息子の前で号泣するのは格好悪いと必死に堪えた。
「皐月賞、ダービーと走ってどう思った?」
「うん、やっぱり中央競馬って凄いなって思ったよ。強い馬が沢山居るし。特にゴールドシップが凄くて、ちょっとでも気を抜いたら負けるかも!って思ったよ。ただ・・・」
「ただ?」
何やら歯切れの悪いマキシマムに俺は訝し気に聞き返す。
「なんか変なんだよねあいつ。時々妙に遠い目をしたり、哀愁漂う感じで無くした何かを探しているみたいな感じがするんだよね」
「あ・・・」
その言葉で俺は察してしまった。
そうか・・・守れなかったんだな・・・。
「・・・マキシマム、俺たち競走馬の中には性格が荒い奴がいるのは知っているよな?」
「え?うん」
「牝馬ならどうしようもないんだがな、俺たち牡馬にはある手術をすると大人しくなるという性質があるんだ」
「牝馬にできなくて牡馬に・・・?あ・・・!?」
どうやらマキシマムも気が付いたらしい。
周りで俺たちの会話を聞いていた牡馬達も遠い目をする。
「・・・憐れむな。ただ強いライバルとしてだけ見てやれ。それがせめてもの情けだ」
「うん・・・」
ゴールドシップ・・・ドンマイ・・・。
SIDE:ウマ娘
「やめろタキオーン!それをアタシに近づけるなぁ!はっ!」
チームルームで寝ていたゴールドシップが大声で叫びながら飛び起きた。
『大丈夫か?』
「あ・・・ああ・・・ちょっと夢見が悪かっただけだ・・・」
明らかに青い顔をしたゴールドシップだったが本当に大丈夫だろうか。
「ゴールドシップさん、寝るのは構いませんが静かにしてくださいまし」
「す、すまねえマックイーン・・・」
本を読んでいたメジロマックイーンが迷惑そうにゴールドシップを睨んでいる。
ゴールドシップは本当に夢見が悪かったらしく冷や汗を何度も拭っている。
タオルでも渡そうと立ち上がった時だった。
ガチャーンッ!
手を引掛けてしまい机の上に置いてあったペン立てをひっくり返してしまった。
「ああもう、トレーナーさんまで何をやっているのですか」
『ご、ごめんなさい』
メジロマックイーンが本を置いて散らばってしまったペンやハサミを拾ってくれる。
「あら・・・?これは・・・メスですの?こんな危険物がなぜここに?」
メジロマックイーンが拾ったのは手術などで使われるメスと呼ばれる小型の刃物だ。
「ひぃ!?な、なんでそんなものが!?」
「ゴールドシップさん?」
何故かメスを見て驚くゴールドシップ。
『それは友人の医者から貰ったメス型ペーパーナイフだよ』
「あら、本当ですわ。刃が引いてありませんわ」
そう言ってメジロマックイーンが刃先を触るがある程度薄くはなっているが丸みのある刃先は当然マックイーンを傷つける事はない。
「ま、マックイーン!そんな物騒なモノ早くどっかにやってくれよぉ!」
「ただのペーパーナイフに危険も何も・・・」
『ゴールドシップ・・・まさかメスが怖いとか?』
「ままままままままさか!このゴールドシップ様がそんな小さな刃物ごときが怖いなんてあるはずか無いだろう!」
明らかに動揺するゴールドシップ。
その挙動不審っぷりはもはや芸術である。
「へぇ・・・」
「ま、マックイーン・・・?」
ゆらりと近寄るメジロマックイーンに後退るゴールドシップ。
「ゴールドシップさん・・・?」
「ま、マックイーンさん・・・?」
ジリッ!ジリッ!
「ま、マックイーンさま!?」
「今までのあれこれ!色々含めてお覚悟なさい!」
「ひぃ~!悪かった!悪かったから許してマックイーンさま!」
追いかけるメジロマックイーンと逃げるゴールドシップ。
いつもなら明らかにからかいの表情を浮かべたゴールドシップが逃げているのだが今日は本気で逃げている。
そんな珍しい光景に俺はただただ見守るしかなかった。
ゴールドシップの体力が20下がった。
ゴールドシップのやる気が下がった。
もしバクソウオーが皐月賞を勝ってしまったら・・・。
SIDE:馬
『先頭バクソウオーは早くも第4コーナーに入っていますが疲れてしまったか足色が鈍くなってまいりました。果たして2000メートルを走り切れるのでしょうか。2番手集団も残り600を切りました!バクソウオー必死に前に進みます残り500メートル!2番手はバーディバーディが辛うじて前にいますがサンディエゴシチーが並びかけてきます。内からはハンソデバンド!バクソウオー直線に入りましたがここでさらにガクっと失速!懸命に若井騎手がムチを入れてなんとか前に進ませています!さあ馬郡がバクソウオーに迫ります!残り200メートルを切りましたバクソウオー届くのか!届いてしまうのか!2番手には内をついてヴィクトワールピサが抜け出してきた!バクソウオーはまだ辛うじて走っている残り100メートル!どんどん差が詰まってこれは追い付かれそうだ!必死に前に進むバクソウオー!ヴィクトワールピサが伸びる!エイシンフラッシュも伸びてきている!バクソウオー届くか!ヴィクトワールピサが差し切るのか!バクソウオー届いたぁ!皐月賞を勝利したのは!何と何とバクソウオー!馬券が宙を舞います!信じられない事が起きました!バクソウオーがまさかの皐月賞馬です!暴走したまま勝利いたしました!』
マジで!?バクソウオーやるじゃないか!?
マイルですら走り切れるかどうか怪しいバクソウオーのまさかの勝利。
当然ながら世間での評価は荒れに荒れた。
バクソウオーに届かなかった他の馬を情けない、期待外れだと言う者も居れば、暴走して他の馬のペースを崩させたバクソウオーを罵る者も居る。
バクソウオーのオーナーはまさか勝つとは思っていなかったので喜んだが、同時に日本ダービーに出してボロボロに終わってしまったら何と言われるかと非常に複雑な表情だったと言う。
いや本当に・・・競馬って何が起こるか分からないね!
俺が考えることでは無いと思考を放棄した。
だがバクソウオーの勝利で翌年の短距離血統牝馬から大量の種付け依頼が殺到し、ついに200の大台に乗ってしまった。
その事を聞いた俺はチベットスナギツネみたいな目をするしかなかった。
SIDE:ウマ娘
バクソウオー育成目標:皐月賞に出走
皐月賞優勝時イベント
イベント名:まさかまさかの大爆走!
『なんとバクソウオーの勝利です!』
「バックソー!」
バクソウオーがどうしても走りたいというから適性外ではあるが参加した皐月賞。
スイッチが入ってしまうと自分でもどうしようもできないバクソウオーがまさか2000メートルを走り切れるとは思ってもいなかった。
トレーナーとして担当ウマ娘を信頼しないなんてトレーナー失格と言われそうだが、適性を見極めるのもトレーナーとして重要なことだ。
短距離適性は抜群なバクソウオーだがマイルでも適性がギリギリであり、中距離以上は完全に適性外だ。
それをまさか覆して勝利してしまうとは・・・。
「トレーナーさんトレーナーさん!ボクの走り見てましたか!褒めて褒めて~!」
『もちろんだバクソウオー!よくやった!最高の走りだった!』
「えへへ~」
本当に嬉しそうにバクソウオーは笑う。
幼い頃から褒めてもらう事が大好きだというバクソウオーはその為に常にどんな事でも全力だ。
それが良い方向に今回は出たのだから素直に褒めてあげるのがいいだろう。
『本当に良く頑張ったな!次のレースも頑張ろうな!』
「うん!次はダービーを爆走だー!」
スピードが20上がった!
スタミナが20上がった!
根性が10上がった!
スキル春ウマ娘のヒントLv1を手に入れた!
次の育成目標レースが日本ダービーに出走になりました。
番外編のリクエストありがとうございます。
全てを書けるとは言い切れませんが少しずつ書いていきますのでお待ち下さい。