もしサイレンススズカが生存していてその子供がスズカミラーだったら・・・
「こいつがスズカミラーですか。あのサイレンススズカの娘の」
「ああ、大人し過ぎて競争馬に向かないって事でそのまま繁殖牝馬に回されたらしい」
ほうほう、どうやら新入りさんが来たらしい。
しかもサイレンススズカと言えば大逃げの先輩じゃあないですか。
これは中々の大物さんの娘さんが来ましたなぁ。
そんな事を思っていると厩務員がそのスズカミラーを連れてやってきた。
「ほら、お前の旦那さんだよ」
おおっと、私のお相手さんでしたか。
「やあ、始めまして。俺はインパクトターボ。親父はツインターボ。親子そろって大逃げ一筋の変わり者さ」
「初めまして、スズカミラーです。父はサイレンススズカでお父さんも大逃げは得意でした」
うん、確かに大人しいが美しい体付きのいいお嬢さんじゃあないか。
こうして俺とスズカミラーは出会い、そして子作りをした。
そして生まれたのがスズカミラーの2009、マキシマムターボである。
逃げ馬×逃げ馬血統なんていう浪漫溢れた配合の馬を希望するのは当然浪漫大好き室オーナーだ。
こうしてマキシマムはデビューした。
鞍上を武騎手で・・・。
そしてマキシマムはデビュー戦から逃げに逃げ続けた。
懸念されていた足も俺の血・・・イクノ母さんの血のお陰か頑丈で問題無く、優れたスタミナに優れたスピード、あのサイレンススズカを彷彿とさせる逃げて差すというまさに至高の逃げ馬として君臨する事になった。
サイレンススズカも俺も長距離は苦手だった為にマキシマムもあまり得意では無い様だがそれでも事前に作り上げたリードで押し切ってしまう。
国内にもはや敵無しと言われて海外のレースに次々と参戦。
特に得意な左回りコースの多いアメリカのGⅠを次々と制覇、蹂躙してきた。
あまりの強さに元々勝てるレース以外を避ける傾向の強いアメリカ競馬で出走辞退が頻発して危うくレース不成立になるという珍事まで発生した。
ちょっと我が息子強すぎません?
そのままアメリカ競馬界から恐ろしい程の金額を積まれてマキシマムターボはアメリカに永住する事になった。
それと同時に親父の俺も種牡馬現役の内にアメリカに!と言われたらしいが室オーナーはこいつだけは、と言って首を縦には振らなかったらしい。
その代りと言っては何だがその後の俺とスズカミラーとの子供がアメリカの富豪馬主に日本セリ史上最高価格で落札されるという事態までになった。
そうして多くの俺の血統がアメリカに渡っていったらしい。
勿論全ての俺の子供が活躍できた訳ではないが、それでもそれなりの数の子供がアメリカで活躍していったらしい。
元々親父はアメリカ種牡馬の血統だし故郷に返り咲いたって事なのかなぁ?
そんな事を俺は思いながらアメリカに高く売れるからとやたらと増えた種付け数にただただ恐怖するだけだった。
もしウマ娘達が前世の記憶を持っていたら・・・
春・・・。
それは出会いの季節・・・。
そしてこれは初めての再会・・・。
「ねえイクノ~・・・全然前が見えないよぉ」
「もう少しだけ我慢してください」
前世からの知り合いであるイクノディクタスに目隠しをされてツインターボはどこかへと連れていかれる。
イクノとはかつて子を成す仲ではあったが自分もウマ娘である以上は流石に恋をするという事は無かったが、元は牡であった自分が牝・・・ウマ娘になった為に妙に小恥ずかしい。
それはマックイーンも同様の様で、同室という事もあってか時々色々と大変らしい。
最も前世の記憶全てを覚えている訳ではなく、時折夢のように思い出すウマ娘が殆どなので特に何も思わないウマ娘も居る。
例えばオグリキャップなんかは「ご飯が美味しければそれで・・・」とどうでも良さそうである。
一方でシンボリルドルフとトウカイテイオーは最初かなりギクシャクしていたが今は普通にトウカイテイオーが甘えている。
ダイワスカーレットに至っては「・・・聞かないで」とどうやらアグネスタキオンに対して思うところがある様である。
ゴールドシップは・・・良く分からないが少なくとも嫌ってはいないだろう。
いつもと違ってやや強引な・・・いや、そうでもないかも?と思いつつツインターボはイクノディクタスに手を引かれてどこかの教室へと入っていく。
「さあターボ、目隠しを取っても良いですよ」
「やっとかぁ~」
イクノディクタスに言われてツインターボはようやく目隠しを外す事ができた。
「一体なんなのさぁ・・・こんな事し・・・て・・・・」
「初めまして、インパクトターボです。ようやく会えましたね。お父さん」
初めて見るその顔には嬉しさがあふれ出ている。
自分より少し背が高い、イクノディクタスによく似た髪色に青のグラデーション。
少なくとも自分は知らない。
それでも何かが訴える。
「・・・始めまして・・・ターボは・・・ツインターボだぞ」
なぜか涙が溢れて止まらない。
ゆっくりと近寄ってくるインパクトターボをツインターボはそのまま受け入れた。
「良く・・・良く頑張った・・・お前はターボの自慢の息子だぞ・・・」
「うん・・・うん・・・!」
抱きついて、同じように涙を流すインパクトの頭をそっと撫でてあげる。
その様子を見ていたイクノディクタスも涙を流しながらそっと二人を抱きしめた。
春は出会いの季節・・・。
奇跡とも呼べる出会いを、桜の花が穏やかに見つめていた。
もしスズカミラーがウマ娘として登場していたら・・・
ある日の事・・・。
「た、ターちゃん、久しぶりに二人だけですね」
「そうだね~・・・」
いつもの授業後の時間。
今日はスピカでの特別トレーニングがあるとかでキタちゃんもサトちゃんも居ない。
どうしてもチームが異なる為に予定が合わなくて別々になってしまう事も珍しくは無いが確かにルーちゃんと二人なのは久しぶりだ。
「あれ?門前に車が・・・」
「本当だ・・・週末じゃないのに珍しいね」
通常門前に車を付ける人は少なく、週末は自宅で過ごすメジロ家御一行など名家出身者を除くと滅多に居ない。
今日は週末では無いから恐らく生徒の誰かの出迎えでは無いと思うんだけど・・・。
そんな風に思っているとドアが開くと一人のウマ娘が降りてきた。
「お久しぶりです。ターボさん」
「ミーちゃん!久しぶり!」
車から降りてきたのはミーちゃん、スズカミラーちゃん。
「お、お知り合いですか?」
「うん。スズカミラーちゃんって言って私の幼馴染なんだ」
「初めまして、スズカミラーと申します」
「は、初めまして。サムシングブルーです」
この時、サムシングブルーとスズカミラーの脳裏にはある共通の思いがあった。
((こいつは敵です!))
ウマ娘の本能に突き動かされて二人は行動を開始した。
「ターボさん、久しぶりの再会ですからどこかで二人でゆっくりと話しませんか?」
「ターちゃん、久しぶりに二人なんだからどこかでじっくり遊びませんか?」
「ミーちゃん?ルーちゃん?」
それぞれ左右の腕を掴まれて私は身動きが取れなくなった。
「ターボさんは私と行くんです!」
「いいえ、私とです!」
「ちょ、ちょっと二人とも痛いよ!」
ウマ娘の握力で握りしめられて私の腕が悲鳴を上げている。
「ターボさん!」
「ターちゃん!」
「「どっちの味方ですか!?」」
「あだだだだだだだ!う、腕がもげるー!」
大岡裁きの如く両腕を引っ張られて私は悲鳴を上げた。
「何をやっているのですか!」
その時、偶然通りがかったイクノ先輩が助けてくれた。
「二人とも何を考えているのですかまったく」
「「す、すみません」」
怒るイクノ先輩に二人はシュンとして俯く。
「インパクトー、大丈夫かー?」
「はい、何とか大丈夫ですツイン先輩」
「お二人の事を笑えませんわね。私達も同じ過ちを犯していますし」
イクノ先輩と一緒にいたツイン先輩とマックイーン先輩が私を心配してくれていた。
「あれ?マックイーン先輩今日スピカの特別トレーニングでは?」
「私は膝への負担を考えて今日はお休みですわ。テイオーも休んでいますから多分会長さんの所でしょうね」
復帰こそできたもののマックイーン先輩の足にはまだ不安が残っている。
それはツイン先輩の心臓も同じだ。
「それにしてもイクノ先輩にはいつも助けて貰っちゃって・・・」
「あー・・・インパクト、その事なんだけど・・・」
ツイン先輩が言い辛そうに頬をかく。
「今回だけはあまり助けにはなって無いかと思いますわ・・・」
マックイーン先輩も目を逸らしている。
「どういう事なんですか?」
「イクノさんはその・・・魔性のウマ娘なのです・・・」
「しかも色々無自覚なのにアドバイスだけは適格で・・・魔性のウマ娘製造機なんだぞ・・・」
私はさび付いた機械の様に鈍い動きでルーちゃんとミーちゃんの方を向いた。
そこにはお説教ではなく何かのアドバイスをするイクノ先輩とキラキラした表情でアドバイスを聞くルーちゃんとミーちゃんが居た。
「ご愁傷様ですわ・・・」
「インパクト・・・ドンマイ・・・」
「ははは・・・」
私は乾いた笑いしか出てこなかった。
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