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有馬記念に向けてウマ娘達やトレーナー達が忙しく動いている時、他にも忙しく動いている人達がいる。
それはウマ娘達の記事を書く記者達である。
少しでも売れるために記者達は必死に人気ウマ娘達に取材を試みる。
SIDE:ナリタブライアン
「ナリタブライアンさん!有馬記念に向けての心境をお聞かせください!」
「ナリタブライアンさん!ライバルとなるウマ娘は居るのでしょうか!」
記者たちは注目頭であるナリタブライアンに取材しようと必死でお互いを押し合いながら取材する。
「有馬記念は当然以前から楽しみにしていたし当然全力で勝ちに行く。ライバルは女傑と名高いヒシアマゾンとメジロマックイーンに勝ったライスシャワーくらいだろうな。姉貴が出れないのが残念だがまた戦う機会もあるだろう。うだうだと語るのは趣味じゃない。トレーニングがあるからもういいか?」
「ああ!待ってください!」
ナリタブライアンの素っ気無い態度に記者達は何とか話を続けようと必死になる。
「お前たちの仕事はウマ娘のケツを追いかける事か?随分と楽な仕事だな」
元々の気質とマスコミに対してあまりいい印象の無いナリタブライアンはそう言って記者を睨みつけると記者が怯んだ隙に立ち去って行った。
「全く・・・マスコミは嫌いだ。そもそも貴様らの記事だと私にライバルなどいないと書いていたではないか。白々しい」
ナリタブライアンはそう言ってトレーニングの準備としてストレッチを開始する。
「・・・ライバルか」
ナリタブライアンにライバルは居ない。
それはナリタブライアン自身が自覚している事だ。
「姉貴が羨ましい。鎬を削るライバルに私も出会いたいものだ」
ヒシアマゾンは良く自分に突っかかってくる。
だがライバルと呼べる程ギリギリの闘いをした事は無い。
ライバルが居ない。
ナリタブライアンが強すぎるのか、それとも己に匹敵するだけのウマ娘が居ないだけなのか。
ナリタブライアンはそんな事を考えながらトレーニングを開始した。
SIDE:ヒシアマゾン
「ヒシアマゾンさん。有馬記念に向けて何か一言お願いできますか?」
「ナリタブライアンに勝つ!そうすれば優勝だろ?」
強気なヒシアマゾンは記者達にそう答える。
「他にもライスシャワーなど有力なウマ娘が出場していますが・・・」
「勝つのはアタシかナリタブライアンのどっちかだ。他のウマ娘には悪いがそれは譲らない」
「成程!それだけ自信があるという事ですね」
ヒシアマゾンの強きの発言に記者たちが声を上げる。
「ナリタブライアンのライバルはアタシだ!他の誰にも譲らない!」
記者たちにヒシアマゾンはそう宣言した。
「・・・ライバルか」
記者たちの取材が終わった後ヒシアマゾンは一人そう呟いた。
「本当にアタシはライバルなんだろうか」
人一倍負けん気が強く同期のナリタブライアンに突っかかっては行くがナリタブライアンとギリギリの闘いをした事はまだない。
自称ライバル、それを裏付けるかの様に週刊誌の記事にはナリタブライアンの事は書かれていてもそのライバルについては書かれていない。
怪物に女傑では太刀打ちできないのか。
「そんなはずは無い!アタシはナリタブライアンを超えてやるんだ!」
一瞬の弱気を振り払ってヒシアマゾンは己に活を入れた。
SIDE:ナイスネイチャ
「ナイスネイチャさん、今年も有馬記念おめでとうございます」
「は~いありがとうね~。ネイチャさん今年も頑張りますよ~」
バー経営者の母を持つナイスネイチャは母親譲りの気軽いトークで記者たちに答える。
小さい頃から人と接する事、応対した相手に求められるキャラクターを演じる事になれているナイスネイチャは記者からの受けもいい。
ただしそれは同時に記者に悪意無き偏見を持たれる要因にもなっていた。
「今年はあの怪物と呼ばれた三冠ウマ娘のナリタブライアンさんに女傑ヒシアマゾンさん、漆黒のステイヤーライスシャワーさんと強力なライバルが居ますが入賞できそうでしょうか?」
今までGⅠに勝った事がない。
確かにそれは事実である。
だが最初から入賞ありきで優勝と問われないのは何故だろうか。
「あっはは~、今年は強いライバルが多いですからね~。ネイチャさん4年連続の入賞危うし!なんてね。全力で頑張りますよ~」
そんな気持ちは全く見せないようにしながらナイスネイチャは取材に答えていった。
「・・・優勝か」
いつからだろうか、善戦マンとしての自分を否定しなくなったのは。
いつからだろうか、優勝はと尋ねられる事がなくなったのは。
いつからだろうか、張り付けたような笑顔で喋るようになったのは。
もちろん自分自身だって勝てない事への口惜しさはある。
トウカイテイオーが怪我で出られなかった菊花賞。
あの時4着で涙していた自分が今の自分を見たらなんて思うだろうか。
あと一歩が永遠に遠い。
「私だって・・・勝ちたいんだ・・・」
ナイスネイチャはそう呟くとトレーニングを開始した。
SIDE:ライスシャワー
「ライスシャワーさん、有馬記念はやはりナリタブライアンさんをマークするつもりでしょうか?」
「えっと・・・ライスはそれしかできないから、ブライアンさんはやっぱり強い三冠ウマ娘ですから。でも皆強いウマ娘ばかりだから。ライスも負けないように頑張ります」
おどおどしながらもライスシャワーは記者たちに答える。
以前より悪意のある声は少なくなった。
応援してくれる人も増えてきた。
それでもやはり以前の光景が頭を過る。
『なんでお前が勝つんだよ!』
「あの・・・ライスまだトレーニングがあるから・・・ライス、もう行くね」
「ああ!もう少しだけ!」
何かから逃げるようにライスシャワーは記者達から離れていった。
「・・・やっぱりブライアンさんに勝ったらまたブーイングされちゃうのかな?ライスが勝ってもやっぱり誰も喜ばないのかな?」
菊花賞の時も、天皇賞春の時もライスシャワーは祝福されなかった。
それは未だに古傷としてライスシャワーの心に残っている。
「・・・負けても怒られて・・・勝っても怒られて・・・ライス、走る意味あるのかな?ブルボンさん、ライス、分からないよ・・・」
もしそこにミホノブルボンが居たらどんな風に声をかけてくれるのか。
ライスシャワーは陰鬱とした気分のままトレーニングを始めた。
SIDE:ツインターボ
「すみませんがツインターボへの直接の取材は断らせていただきます。彼女は今懸命にトレーニングしています。有馬記念までの残り僅かの時間を無駄にする訳にはいきませんから」
沖野トレーナーの声に記者達はムッとした表情をする者、残念そうな表情をする者など様々だった。
「では質問しますがナリタブライアンさんに勝てる秘策でもあるのですか?」
「そんなモノがあれば皆それをやっていますよ。無いからギリギリまでトレーニングをしています」
「本来出場するはずだったマチカネタンホイザが出られなくなった代わりとお聞きしましたが」
「マチカネタンホイザの事は不幸な事故です。だからこそ彼女の為に走るとツインターボは頑張っています」
「ははっ!望んでも出られないウマ娘が多いのにラッキーなウマ娘だな!」
悪意ある声に沖野トレーナーの表情がゆがんだ。
周りに居る記者は不快そうな顔する者もいるが大半は同じような表情だ。
「師匠はそんな事全然思ってない!」
「テイオー!お前いつから!」
いつの間にか来ていたトウカイテイオーが記者達を睨みつけている。
小柄で可愛らしい顔立ちのトウカイテイオーだがその迫力は歴戦の覇者だ。
あまりの覇気に記者たちは気圧される。
「走りたいのに走れない辛さが君たちに判る!?誰かの思いを背負って走る足の重さが判る!?判るならそんな無責任な事言えないよね!」
どちらも経験したトウカイテイオーだからこそ言える言葉に記者達は何も言えなくなった。
「私は月間トゥインクルの乙名史と言います。では最後に一つだけお願いします。ツインターボさんの有馬記念への思いとは何ですか?」
「それはもちろんイッチバンでゴールして走れなかったマチカネタンホイザと一緒にライブだね」
「実現する事を祈っています」
「うん!師匠に伝えておくね」
トウカイテイオーはそう言っていつもの笑顔を見せた。
「あー・・・以上で質問を終了とさせていただきます。ほらテイオー、行くぞ」
沖野トレーナーは呆気にとられている記者たちをそのままに取材を打ち切るとトウカイテイオーを連れてツインターボの元へと向かった。
幾人かの記者がその姿に頭を下げていた。
「テイオー、お前なぁ」
「分かってるよぉ勝手なことしたってのは!でもあんな事言われて放っておけなかったんだもん!」
「まったく、そう言うのは大人の仕事だろうに・・・でもまあ、さすがテイオーだな」
「えっへへ~」
沖野トレーナーに褒められてトウカイテイオーは無邪気に笑った。
「おーいトレーナーテイオー遅いぞ~!」
「すまん、今行く!」
先にトレーニングを始めていたツインターボが二人を大声で呼ぶ。
「師匠~!」
「どうしたんだテイオー?」
「有マ記念、絶対勝とうね!」
「おう!ターボ負けないぞ!」
ツインターボはトウカイテイオーに笑顔で答えた。
そして、有馬記念がやってくる・・・
ついに始まる有マ記念。
それぞれの思いを胸にウマ娘達が走ります。
暮の中山が今熱気に包まれる。
次回 07話 有マ記念
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