これが逃げるという事だ   作:福泉

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第3シリーズ第3話お待たせいたしました。
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第3シリーズ 皇帝のキセキ 03話 ケモノの衝動

大塚トレーナーの指導を受けながらターボエンペラーは学園生活を楽しんでいた。

当初ライバル心剥き出しだったクラスメート達とも少しずつ距離感を掴み、友人もできた。

チームスピカに所属した勝気なスカーレットランス、小柄な体で頑張るチームカノープス所属のメロディールーン。

そしてチームリギルに所属したゴールデンドライブとゴールデンマキシマである。

名前もよく似た二人は遠い親戚にあたるらしい。

「よう、デビューおめでとさん」

「ブッチギッタらしいな」

性格もどこか似ている二人から祝福の声をかけられた。

「ああ、ありがとう」

「やっぱりエンペラーちゃん強かったぁ・・・」

本当に偶然にもデビュー戦が重なったメロディールーンが項垂れている。

「寧ろちょっとデビューが早すぎたと私は思うわよ」

スカーレットランスの言う通り小柄なメロディールーンにデビューはまだ早かったと誰もが思った。

「でもエンペラーちゃんと戦うには今デビューしないと・・・」

「それにしたって早ぇな」

「ギリギリまで粘ったって悪くはないと思うぜ」

「皆イジワルぅ・・」

ゴールデンドライブとゴールデンマキシマにそう言われてメロディールーンはちょっと拗ねてしまった。

「まあまあ、私は嬉しかったぞ」

そう言ってターボエンペラーはメロディールーンの頭をヨシヨシと撫でる。

やっぱりメロディールーンにデレデレなターボエンペラーだった。

 

授業を終えたターボエンペラーは、大塚トレーナーの指導の下、新井トレーナーのチームメンバーと合同練習を重ねる。

新井トレーナーも師匠の指導を改めて見ながら自分の指導するウマ娘たちに様々な指導をする。

「どうでしょうか・・・?」

「まだまだケモノが抑えきれておらん。今のままでは無理に押さえつけるよりそのまま走ったほうがマシだな」

明らかにペースが安定せずタイムも遅れている様子に大塚トレーナーはそう言った。

「そうですか・・・」

「そう焦るな。お前が打ち倒すべき相手と見ているシンボリルドルフですら己の中のケモノを御するのは簡単では無かった。無理矢理押さえつけるのでは無い。必要な時まで息を潜め、そして開放できるようにするのだ」

「はい!もう一本行きます」

「やれやれ・・・。少し真面目が過ぎるな・・・」

返事をしてもう一度コースに向かうターボエンペラーを見て大塚トレーナーはそう零した。

「今のままでは2000はちと厳しいな・・・。適性からやや外れるが朝日杯の方が良いだろうな」

2000でも走り切れない事は無いだろう。

だが万全を期する為に敢てマイルレースを選択する事にした。

 

そしてレース当日・・・

「いいか、今日は無理にケモノを制御する必要は無い。今のお前にはケモノを抑えたまま勝利するのは不可能だ。まずは1冠、これを目標としろ」

「はい!」

控室で大塚トレーナーの言葉にターボエンペラーはしっかりと返事をした。

 

「3枠4番、ターボエンペラー、2番人気です」

「これは中々攻めた意匠の勝負服ですね」

ジャージを脱いだターボエンペラーの勝負服が観客の目に映る。

黒を基調とした日本軍の勲一等正装によく似せた上着に黒いスカートが翻る。

足は黒いタイツで覆われ軍靴を履いている。

流石に制帽までは被っていないがそれでもキリっとしたターボエンペラーの表情も相まって非常に格好いい。

多くの観客から歓声が上がった。

ターボエンペラーはそのまま一礼するとジャージを拾ってステージ裏に戻った。

 

「・・・まずは1冠・・・抜かるなよ・・・ターボ・・・」

通路を歩くターボエンペラーはそう小さく呟いた。

 

「さあ、朝日杯フューチュリティステークス、デビューしたばかりのウマ娘達が初めて挑むGⅠレース。早くも頭角を現している本日走ります15人。果たして誰がGⅠの栄冠を掴むのでしょうか。出走ウマ娘を振り返ってみましょう。1枠1番、クリタアウディー。東京スポーツ杯に出走経験があります。2枠2番、1番人気アランミリアリア。サウジアラビアRCを勝利しております。2枠3番、アウターペガサス。函館ジュニアステークスを勝利しています。3枠4番、2番人気ターボエンペラー。見事な体躯のウマ娘。重賞初出場ですがデビュー戦からの圧倒的走りに期待がかかっています。3枠5番、マイネルサービス。果たして実力は如何に。4枠6番、3番人気アドマイヤカーズ。デイリー杯ジュニアステークスを勝利しています。4枠7番、シュガーフブキ。未勝利戦を勝ったばかり、果たして重賞初制覇なるか。5枠8番、ディープダイビング。レース経験は豊富です。5枠9番、レッツクーラー。こちらもレース数では負けていません。6枠10番テラベール。レース経験を生かせるでしょうか。6枠11番、テイデンスクール。新潟ジュニアステークスを勝利しています。7枠12番コバノマーフィン。中々厳しい成績と言わざるをえません。7枠13番、ニホンピロタイソン。2戦2勝でGⅠ挑戦です。8枠14番、ファンタジースター。小倉ジュニアステークス、京王杯ジュニアステークスと重賞を制覇しております。8枠15番、エメラルドファイ。ちょっと厳しいかもしれません。以上本日出走の15人でした。まもなくゲートの準備が終わります」

やがてゲートの準備が終わり、スターターの旗が振られてファンファーレが響き渡る。

多くの観客の歓声が競場を震わせる。

そんな熱気に出走するウマ娘達の緊張とやる気が最高潮に達する。

ウマ娘達は係員に促されて次々とゲート入りをする。

「体制完了。・・・スタートしました。ほぼ揃いましてまずは先行争いと言ったところ。アランミリアリア好スタート好ダッシュですがこれを外から9番のレッツクーラーが追い抜きます。さらには4番のターボエンペラーも追い抜いて先頭を狙います」

今日は内なる衝動を抑えきらなくてもいい。

やはりレースは血が滾る。

ここが私の居場所だ!

『だからそこをどけ!』

「ひぃ!?」

「ああ!?レッツクーラーが何かに怯えてコースを逸脱!足が竦んでしまったのか走るのを止めてしまいました!」

先頭を走ろうとしていたレッツクーラーが外に逃げてしまったのでターボエンペラーが先頭になった。

「先頭変わりまして4番のターボエンペラー!2番手にはアランミリアリアという体制になりました!3番手外にアドマイヤカーズ!1番クリタアウディーと続いています!その後ろ8番ディープダイビング!内に3番アウターペガサス!外に14番ファンタジースター!続いて10番テラベール!あとは5番のマイネルサービス!まもなく第3コーナー回っていきます!外から13番ニホンピロタイソンが押し上げていこうかと言うところ!12番コバノマーフィンもそれを追走!その後ろに11番テイデンスクール!15番エメラルドファイと7番シュガーフブキが最後方!9番レッツクーラーは競技を中止しています!」

『走れ!走れ!走れ!』

ターボエンペラーは内から湧き上がる衝動に身を任せて走り続けている。

今はまだお前の自由にさせてやる。

だが必ずお前を制御しきってみせるぞ!

ターボエンペラーはそう強く誓うと前を向いてさらに加速した。

「まもなく残り800メートル!先頭は変わらずターボエンペラー!タイムは46秒後半です!4コーナーへ向かいますリードは3バ身!2番手単独のアランミリアリアですが少し表情が険しいか!?その後ろ2バ身に3番手のアドマイヤカーズこちらも何やら様子がおかしい!ターボエンペラーの猛烈な走りに気圧された様子!」

『もっと!もっとだぁ!』

「はぁぁぁぁぁぁ!」

ターボエンペラーはスパートをかけた。

「第4コーナーをカーブして直線に入ります!先頭は4番のターボエンペラーのまま!外から6番のアドマイヤカーズも懸命に上がろうとするが伸びません!ターボエンペラーがどんどん突き放す!3バ身!4バ身!どこまで引き離すんだ!?5バ身と少し離したところでゴールイン!圧倒的走り!まさに横綱相撲!他者を寄せ付けませんでした!」

圧倒的なターボエンペラーの走りを見て多くの観客が歓声を上げる。

「・・・ふぅ」

ターボエンペラーは大きく息を吐くと表情を引き締めて右腕を高く上げた。

「凄い走りだったな」

「噂じゃシンボリ家の血筋らしい」

僅かに聞こえてきたその言葉にターボエンペラーは歪みそうになる表情を懸命に堪えた。

こんなものではまだ認めて貰えない。

そんな思いを抱いたままターボエンペラーはライブの為に控室に戻った。

 

「ふむ、勝ちはしたが納得していない様子だな」

「トレーナー・・・」

控室で顔を洗っていると大塚トレーナーがそう声をかけた。

「こんな事で腐っている暇はないぞ。お前の野望を達成するにはまだ一歩目に過ぎんぞ」

「分かっています」

ターボエンペラーは気持ちを静めるとライブの準備に向かった。




ゴールデンドライブとゴールデンマキシマ

ゴールデンドライブはゴールドシップとインパクトターボ血統牝馬の産駒、ゴールデンマキシマはマキシマムターボとステイゴールド血統牝馬との産駒。馬主は別人
頭が良く愛想が良い変わりにレース中の破天荒ぶりが目立つゴールデンドライブとレース中は見事な走りを見せるのに普段の生活がハチャメチャで周りを振り回すゴールデンマキシマ
インパクトターボの血をもってしてもステゴ系列の性格破綻を修正できなかったと生産者達は頭を抱えたらしい(なお、他の気性難系列には一定の効果があった模様)


あえてマイルレースを選んだ理由

当時の調教師が「2000メートルでも全く問題は無いがどうにかターボエンペラーに我慢を覚えさせたい。マイルレースなら多少の無理もできるはずだ」と理由を語っている


逸走するイッツクール

実際にイッツクールが何かに驚いて逸走している
何に驚いたのかは定かでは無いがレース後にターボエンペラーに怯える様子からターボエンペラーに驚いたのでは無いかと言われている
このレースを見たファンからは「どこがクールだ!」とツッコまれたらしい


勝ちに納得しないターボエンペラー

今田騎手との相性が悪かったターボエンペラーはレース後も今田騎手に対して不満そうな気配を隠そうとしなかったらしい
この事が決め手となって今田騎手はターボエンペラーを下ろされた
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