また登場するウマ娘の名前ですが現状アプリ内に名前の出ているウマ娘以外はサイゲームスさんの意向に沿って名前を変更してあります。
基本は元の名前を捩った名前にしてありますが一部アニメに出てきた名前を使用しております。ご了承願います
ツインターボ編の最終話にあたります。
しばらくは番外編などを投稿した後に架空馬の話を投稿したいと思います。
ご感想お待ちしております。
有馬記念、一年の競バを締めくくる最高のレース。
実力と人気を兼ね備えたウマ娘しか走る事が出来ないレース。
そんなレースを見ようと中山競馬場には多くの観客が押し寄せている。
「・・・大丈夫・・・ターボはやれる・・・」
ツインターボは自身に与えられた控室で勝負服に着替えながらそう呟く。
いつも元気で強気なツインターボだが今回は様々なプレッシャーと戦っていた。
「ターボちゃん」
「マチタン」
控室にやってきたマチカネタンホイザがツインターボに声をかけた。
「はい、私の帽子だよ」
「ありがとうマチタン」
「私こそありがとう、私と一緒に走ってくれて」
マチカネタンホイザはそう言ってギュッとツインターボをハグする。
「見ててねマチタン。ターボ一番でゴールするから」
「うん!」
交わす言葉は少なくともしっかりとその思いは伝わった。
ツインターボはさらに決意を固めていつもの笑顔をマチカネタンホイザに見せる。
「私が実況ですとなぜかがっかりされている。最近そんな気がしています実況の茂木です。解説は細江さんですよろしくお願いします」
「そんな事は無いと思いますよ。よろしくお願いします」
独特な口調で喋る実況者と女性解説者のトークが競バ場に響き渡る。
「暮れの中山競馬場、天候は晴れ、良バ場となっておりますが冷え込みは厳しいです。ですが観客の熱気は最高潮、レースの始まりを今か今かと待っております」
「やはり有馬記念は一年の閉めのレースですから皆さんの熱気が違いますね」
「さあ有馬記念を走るウマ娘達の登場です」
実況の声を受けてパドックにウマ娘達が現れる。
「1枠1番、ダウジングサーバル、前走の鳴尾記念では三着と好走をしております」
「今回のメンバーの中では少し厳しい勝負になるかもしれませんね」
「2枠2番、マチカネアレクサ、アルゼンチン共同杯では見事一着、有馬記念でも一着を取れるでしょうか」
「上がり調子が続いているみたいですから期待は持てますね」
「3枠3番はマチカネタンホイザでしたが蕁麻疹を発症し、残念ながらドクターストップにより出走は取りやめとなりました」
「本人も非常に悔しい思いをしているでしょうね」
「3枠4番、カシマミブリン、ダービー三着、菊花賞二着とナリタブライアンへの反逆はなるか期待です」
「悔しい思いをしていますから人一倍気合が入っているでしょうね」
「4枠5番、ツインターボ、今日もハナは譲らない大逃げ・・・んん?あの帽子はどこかで見たような?」
「マチカネタンホイザの帽子に見えますが・・・」
「ああ、資料によりますと同チームのマチカネタンホイザの代わりに帽子を付けて走ると本人が言っていたそうです」
「思いを受け継いで走る。是非とも頑張って欲しいですね」
ツインターボはいつもの落ち着きのない行動はせず帽子を手に取ると胸に当ててマチカネタンホイザの方を見る。
それをマチカネタンホイザはしっかりと受け止める。
「4枠6番、スウィフトンダッシュ、何やらツインターボを睨んでいます」
「去年の七夕賞でやられていますし苦手意識でもあるのではないでしょうか」
「5枠7番、ハイサイシーサー、天皇賞秋を取った二番人気のウマ娘です」
「ナリタブライアンのお姉さんであるビワハヤヒデには何度も負けていますから妹であるナリタブライアンにも負けたくないと言っていましたね」
「5枠8番、ヒシアマゾン、女傑と呼ばれるに相応しい成績を残してきております」
「ナリタブライアンの事を特に強く意識しているみたいですから打倒ナリタブライアンの筆頭かもしれませんね」
「6枠9番、有馬記念の常連ナイスネイチャです。今年こそ一着を取れるでしょうか」
「惜しい所まで何度もいっていますからね。その思いはとても強いでしょうね」
「6枠10番、ライスシャワー、今年も有マにやってきました漆黒のステイヤー。ナリタブライアンを捉えられるでしょうか」
「最近少し調子が思わしくないとの事ですが少し心配ですね」
「7枠11番、怪物三冠ウマ娘、ナリタブライアンです。果たしてこの怪物を倒す者は現れるのでしょうか」
「非常に力強い走りをするウマ娘ですからね。まさに名ウマ娘中の名ウマ娘ですね」
「7枠12番、サクラチトセアメ、長距離の挑戦は今回が初ですがどうでしょう?」
「あまり長い距離は得意ではないみたいですね。厳しいかもしれません」
「8枠13番、チュウハイキャロル、樫の冠を手にしております」
「少ないレースでここまで来ていますから落ち着いて勝負できると良いですね」
「8枠14番、ムッシュシェイク、長距離が得意なウマ娘です」
「ちょっと調子が悪いように見えますが大丈夫でしょうか」
「以上13人のウマ娘達が走ります」
ウマ娘達の紹介を終えて多くの歓声が上がる。
「さあウマ娘達がターフへと入ってきます。各自ウォームアップを開始します」
「この寒さですからしっかりと体を温めておかないといけませんね」
「ゲートの準備が整い今スターターが台の上に立ちます」
そしてファンファーレが演奏される。
手拍子と観客の声が競バ場を包み込む。
「さあ各ウマ娘が続々とゲートに入っていきます。選び抜かれた13人、有馬記念を取るのは誰か。最後のウマ娘が収まりました。・・・スタートしました!ナリタブライアンが好スタートを見せました!ですが内からやはり予想通りにツインターボが飛ばして行きます!」
全力でツインターボがナリタブライアンを抜いて先頭に立つ。
「ツインターボ早くもリードを広げて行きます。二番手集団にはハイサイシーサーなどが居ます。先頭との差は早くも7、8バ身と言ったところ。ナリタブライアンは・・・二番手集団の後方につけておりますがライスシャワーなどがガッチリとマークしております。集団を嫌ってかナリタブライアン外へ出ます。一度目のスタンド前ですがツインターボさらにリードを広げてもはや50メートル以上開いているでしょうか。ツインターボが大きく逃げます。外に出たナリタブライアン二番手集団に並びかけます。さらにその外ライスシャワーとサクラチトセアメがマークしております。ナイスネイチャも外へ出ました」
観客の歓声を受けてウマ娘達が一度目の正面を過ぎてカーブへ入っていく。
「有馬記念の距離は2500メートル、長距離としては短いがそれでもスタミナを問われる距離だ」
「どうした急に」
ウマ娘ファンで競馬場の常連のメガネの観客が友人に話しかける。
「早すぎるんだ」
「ツインターボが飛ばすのはいつもの事だろう?」
「確かにツインターボのペースは56秒に近い尋常ではないペースだが、他のウマ娘達ですら58秒切りそうだぞ」
「なんでそんなに」
「ナリタブライアンが好スタート過ぎたんだ」
「どういう事だ?」
「おそらくナリタブライアンは好スタートを切る事で他のウマ娘達にプレッシャーを与えようとしたんだろう。前寄りではあるが差しが得意のナリタブライアンが前を走ろうとしているとトリックを仕掛けたんだ」
「でもそれが何でハイペースに?」
「ナリタブライアンの予想外だったのがツインターボだ。逃げウマ娘は複数いても大逃げ、しかも後先考えない破滅逃げとも呼べるウマ娘はそうそう居ない」
「そうか!全員がナリタブライアンを意識し過ぎたあまりに!」
「ああ、ナリタブライアンの好スタートをツインターボがあまりの速さでハナを取ってしまったから二番手集団がペースメイクをミスったんだ。自分達が遅すぎると勘違いした。さらにナリタブライアン自身は下がろうとしたが」
「徹底マークのライスシャワーやサクラチトセアメ、全体のペースが速くなった事で引っ張られた後方集団に押し上げられたって訳か」
「ああ、さらにナリタブライアンは集団を嫌う質だ。外へ逃げたが下がろうにもマークがついている」
「そして二番手集団は外に出たナリタブライアンを意識してさらに飛ばす・・・」
「ある種の悪循環が出来上がってしまったな・・・」
二人がそう結論付けた。
「すっごいね~」
「わ!君は・・・?」
「私来年トレセン学園に入学するから学校の下見しながらレース見に来たの!」
二人に話しかけたのは栗毛の幼いウマ娘だった。
「あの青いお姉ちゃん早いね~」
「だが最初が早いだけでは勝てない。それがレースだよ」
「え~ずっと一番って格好いいのに~」
「ならあのお姉ちゃんが勝てるように応援してあげよう」
「うん!」
素直な幼ウマ娘に二人はホッコリした。
(チッ!自分の作戦が裏目に出るとは)
ナリタブライアンは予定外にハイペースになったレースに悪戦していた。
むろんその程度で勝利できなくなる程甘いトレーニングをしてきた訳ではないが長距離レースでのハイペースによる消耗戦はまだ経験した事が無かった。
菊花賞でも先頭は逃げだったがそれでも距離を考えていた為に早いペースとは言えなかったからだ。
思ったよりスタミナの消耗が激しい事にナリタブライアンは少し焦り始めている自分を自覚していた。
(だが大丈夫だ。落ち着け私。このペースのままでも十分先頭に立てる)
この時ナリタブライアンは意図的にツインターボの事を意識から外していた。
そもそもツインターボの勝利は去年のオールカマー以来一度もない。
その全てで大逃げをして玉砕している。
だから最初から居ないものとして計算していた。
だから今の先頭はツインターボではなく自分が付けている二番手集団としている。
(後ろにいるライスシャワーとヒシアマゾンが厄介ではあるが脅威ではないな)
不気味ではあるがどこか覇気の欠けるライスシャワー。
強く自分を意識しているが恐怖を感じるほどではないヒシアマゾン。
もちろん油断して勝てる相手ではないが勝てるかどうか分からない相手ではない。
(私は私のレースをするだけだ)
だがナリタブライアンはどこか漠然と感じる不安を拭い去れぬまま向こう正面の直線へと入っていった。
(ブライアンさんに付いてく、付いてく・・・)
ライスシャワーはナリタブライアンに常にプレッシャーを与えられ、スリップストリームを使える位置を取り続けている。
(でもこのペース・・・ブライアンさんも辛いはず。やっぱりターボさんを警戒から外せない)
ライスシャワーは以前ツインターボとの対戦で苦い思い出がある。
息を入れない大逃げ、それがツインターボの走りだと思い込んでいたが為に仕掛け遅れたオールカマー。
(今日の走りは確かに以前みたいな大逃げ・・・だからこそ仕掛けのタイミングはターボさんで決まる・・・)
ツインターボがどの位置で力尽きるのか、あるいはこっそりと息を入れているのか。
(強いのはブライアンさん・・・でも怖いのはターボさん・・・)
既に一人直線を走るツインターボを必ず視界に入れながらライスシャワーはナリタブライアンを追走する。
(ターボ・・・気負い過ぎている・・・訳じゃあないみたいね)
ナイスネイチャは遠くを走るツインターボを見る。
(トレーニングでどれ程スタミナを上げれたのやら・・・ターボの疲れる位置は知っている・・・そこを過ぎたら仕掛ける!)
チームメイトとして練習を重ねてきているナイスネイチャはツインターボが力尽きる距離をしっかりと把握している。
もちろん態々トレーナーが先輩を頼って別のトレーニングをさせた事も把握している。
だがそもそも長距離レースの適性が低いターボがいくらトレーニングをしても限界がある。
だからこそナイスネイチャは仕掛けるタイミングを変えない事に決めた。
それで逃げ切られたらターボの勝ち、差し切れたら自分の勝ちだ。
(後は勝利するだけ・・・!そう!優勝するんだ!)
自分だってマチカネタンホイザのチームメイトだ。
自分だって勝ちたい。
様々な思いを抱えたままナイスネイチャはその時を待つ。
(アタシとした事が、ブライアンを意識し過ぎた)
ヒシアマゾンは確実に減っていく己のスタミナを自覚する。
元々前目で走るナリタブライアンがまさか先頭を走るのかと思わせる程の好スタートを切った。
実際に先頭を走ったのはツインターボだったがそれでもヒシアマゾンを始め他のウマ娘達は思わず序盤から足を使う事になった。
元々末脚勝負が得意なヒシアマゾンは早いペースのレースに焦る。
(だがブライアンも先頭集団につけている。あいつを無視して抑える訳にもいかない)
ナリタブライアンだって末脚に定評があるのだ。
スタミナを残しても追いつけなければ意味がない。
(とにかくこのペースを維持しつつスタミナを何とか残すんだ)
ヒシアマゾンは大きく息を入れた。
(ターボは大丈夫!最後まで走れる!)
ツインターボは後ろを振り向く事すらなくひたすら走り続ける。
トレーニングの効果は絶大で好スタートを切ったナリタブライアンを簡単にかわして先頭に出ることができた。
【無理だよぉ・・・勝てないよぉ・・・】
(大丈夫!まだ全然疲れてない!)
ツインターボは自身の弱い心を叱咤激励する。
ツインターボは自分の中に常に弱気で臆病の自分がいる事を自覚している。
その自分が表に出てくる事は無いがレースでは常に弱音をはいてツインターボを諦めようとさせる。
あのオールカマーの時でさえ、弱気の自分は変わらなかった。
トウカイテイオーに向けた言葉は弱気の自分に向けた言葉でもあった。
【どうせターボなんて誰も見てないよぉ・・・】
(少なくともマチタンとイクノとトレーナーは見てくれてる!テイオー達だって応援するって言ってくれてた!)
控室には来られなかったがテイオーからのメールで競馬場まで来てくれていることは確認済みだ。
【でもぉ・・・】
(大丈夫!ターボならやれる!まだ足は軽い!肺も心臓も痛くない!)
スタミナは確実に減ってきている。
どこまで持つかは分からない。
それでもツインターボは走る。
自分だけでは無い、マチカネタンホイザと一緒に。
「先頭は変わらずツインターボ、ターボエンジンは好調の様です。後続との差は果たしてどれほど開いているのでしょうか?このハイペースで走り切れるのか。この走りは無謀かそれとも挑戦か。場内の盛り上がりは鰻登りです。二番手集団先頭はハイサイシーサー、外目後方に怪物ナリタブライアンが居ます。その後ろに徹底マークのステイヤー、ライスシャワーがおります。女傑ヒシアマゾンもナリタブライアンの動きを警戒している所でしょうか。ナイスネイチャは中団好位置で控えております。後方のウマ娘達はまだ動かないか」
「中山競馬場は仕掛け所が難しいですからね。特にゴール直前の坂を意識せずにはいられませんね」
「さあ!早くもツインターボが第三コーナーへ入ります!ライスシャワー動いた!ナリタブライアンを抜いて前に出ます!」
レースが終盤にかかり動き始めた。
(何だと!?)
ナリタブライアンはライスシャワーが自分を抜き始めた事に驚いた。
(徹底マークが売りのライスシャワーがなぜこのタイミングで!?掛かったのか!?)
ナリタブライアンは横目でライスシャワーを見る。
(違う!私を見ていない!)
ライスシャワーがナリタブライアンを意識して仕掛けたのなら自分を見ているはずだ。
(・・・待て!ツインターボは今どこにいる!?)
この時初めてナリタブライアンはツインターボを意識した。
(・・・ありえない!?)
この時ナリタブライアンはすでに第三コーナーへと入っているツインターボを見つけた。
(あんなハイペースで走ってまだ落ちてきていないだと!?)
とっくにツインターボとの距離が詰まり始めている。
ナリタブライアンはそう思っていた。
(今から仕掛けるしか!間に合うのか!?それとも持つのか!?)
ナリタブライアンは迷いながらもライスシャワーを追って前に出始めた。
(やっぱり怖いのはターボさんだった!)
ライスシャワーはツインターボが第三コーナーに入ってもあまり減速していない様子を見て仕掛ける事に決めた。
(ターボさんもライスと同じで限界までトレーニングしてきたんだ!才能を努力で補ってきたんだ!)
かつての自分を、そしてライバルのミホノブルボンを思わせるその姿。
(負けない!誰かのヒーローで有り続ける為に!)
まだ迷いは完全に無くなった訳ではない。
それでも自分に出きる事はこれしかないとライスシャワーはツインターボを追いかけ始めた。
(・・・ここね!ターボが疲れるのはカーブの途中!ここで仕掛ければ抜けるはず!)
ナイスネイチャは決めていたタイミングで動き始めた。
早いペースであった為に予想よりスタミナは消耗したがそれでも十分抜けるとナイスネイチャは前に出始める。
周りもライスシャワーやナリタブライアンの動きに呼応して前に出ようと動き始めていたが一足先に動いたナイスネイチャには敵わない。
(負けない!三度目の正直はできなかったけど!四度目で!何度目だって!私を信じてくれる人の為に!)
決意を秘めてナイスネイチャは前に出た。
(ナリタブライアンが動いた!?しまった出遅れたか!)
予定より早くナリタブライアンが動いた為にヒシアマゾンは焦った。
第三コーナーの直前まで動かないと思っていたナリタブライアンが早くも上がり始めた事に驚きながらも離される訳にはいかないとヒシアマゾンはペースを上げた。
(くそ!なんだってこんなに早く・・・!?)
ヒシアマゾンはまさかナリタブライアンが掛かったのかと一瞬思ったがそうでは無い事に気が付く。
(な!?ツインターボがもう第三コーナーに居るだと!?)
まだ離され続けているとは思っていなかった。
(ナリタブライアンも予想外だったって訳か!)
ヒシアマゾンは自身もツインターボを意識していなかった事を後悔したが今更どうにかなるものではない。
(とにかく追い付くんだ!反省はそのあとだ!)
ヒシアマゾンは重くなりつつある足を持ち上げた。
【もう無理だよぉ・・・】
(まだ大丈夫!)
【後ろから来てるよぉ・・・】
(まだ歩いてない!)
【もう限界だよぉ・・・】
(いつもより残ってる!)
弱気の声が大きくなってきている。
ツインターボはその声に必死に反発しながら走り続ける。
いつもならもうこの声に負けていたかもしれない。
第三コーナーももうすぐ終わる。
【もう十分走ったよぉ・・・】
(まだ走り終わってない!!)
いつもならゴール直前かゴールを過ぎている距離。
だがまだ直線にすら入れていない。
(まだまだぁぁぁぁぁ!!)
起き上がりそうになる体を懸命に前に倒し、ツインターボは第四コーナーへと突入した。
「さあツインターボが最終コーナーに入ります!後続ウマ娘達が懸命に追い上げる!距離がググっと縮まりますが果たして間に合うのか!?それともセーフティリードになるのか!?集団が縮まりここで二番手集団の先頭がライスシャワーに変わります!その後ろを外からナリタブライアン、その後ろ内からヒシアマゾン外からナイスネイチャが追い上げます!」
「このハイペースで皆足が残っているのでしょうか!?」
「最終コーナーを回ってまだツインターボが先頭だ!後続の娘達は苦しいか!しかしこのウマ娘!怪物三冠ウマ娘ナリタブライアンが大外から一気に捲り上げる!場内はどよめきと歓声に包まれている!」
観客の熱気は最高潮を迎えた。
(ハハッ!これだ!私が追い求めていたものは!謝罪するツインターボ!だが勝ちは譲らない!)
ナリタブライアンはどうしようもなく興奮する自分を自覚した。
負けた事が無いわけではない。
だがその負けに対して妙に冷めた自分がいた。
(調子が悪かった。集中できていなかった。自分の走りができなかった。今日はそんな言い訳はできそうに無い!)
勝てるかどうかぎりぎりの闘い。
死力を尽くした戦いにナリタブライアンは熱く燃えていた。
(やっぱりブライアンさんは強い!先に仕掛けたのにもう追い抜かれた!)
ライスシャワーは懸命に走るが足が言うことを聞かなくなりつつあった。
スタミナはまだ十分残っている。
だが速度を上げられるだけのパワーが残っていない。
(負けたくない!ヒーローである為に!)
どこか燻っていた心に火が付いた。
ライスシャワーは懸命に前を追い続けた。
(やるじゃんターボ!ここまで粘るなんて!)
いつもならとっくに失速している距離を過ぎてもまだ先頭にたつツインターボを見てナイスネイチャは称賛を送った。
(でも私だって!私だってぇ!)
きっと私は勝てないだろう。
ナイスネイチャはそう思ってしまったがそれでも足を止める事なく全てを出し切ろうと走り続けた。
それは自分の心へのせめてもの反抗心であった。
(まずい!行けるのか!アタシは!)
ヒシアマゾンは自分が完全にミスを犯した事に気が付いていた。
残すべき足はもう残されていない。
(ちくしょう!ナリタブライアンのライバルは!アタシなのに!)
まだ先頭を、フォームがボロボロになりながらも走るツインターボを見てヒシアマゾンは悔し涙を堪えながら走り続けた。
【十分がんばったよぉ!】
(まだ終わってない!)
残り200メートルが永遠に感じる。
【このままだと転んじゃうよぉ!】
(ゴールしてから転ぶ!)
体を前に倒す事でウマ娘は最高速度を出せるがそれはバランスを保つのに非常に体力を使う姿勢だ。
今のツインターボは起き上がりそうになる姿勢を必死に堪えているがそれでも頭がずいぶんと上がってきてしまっている。
【マチタンだってきっと褒めてくれるよぉ!】
(それは・・・)
ツインターボの一瞬心が揺らいだ。
「師匠~!あと少しだよ~!」
(!?)
「もう少しですターボさん!」
「行きなさいターボ!貴女の為に!」
「ターボ!最後まで気張れ!」
「ターボちゃんならあの景色を知っているはずです!」
「お行きなさいターボさん!」
「うぉっしゃー!行けるぜー!」
「頑張れー!ツインターボー!」
(テイオー!スピカの皆!沖野トレーナー!)
「ターボちゃん!」
「ターボ!」
「ターボさん!」
(マチタン!イクノ!トレーナー!)
「あと少しだぞー!」
「ツインターボ行けー!」
(いつも競馬場にいる人たち!)
「がんばれ~!青い髪のお姉ちゃ~ん!」
(あんな小さな子まで!聞いてる!もう一人のターボ!)
【でもぉ・・・でもぉ・・・!】
(お願いだよもう一人のターボ!力を貸して!ターボ一人じゃ勝てない!二人のターボが揃わないと勝てないんだよぉ!)
【・・・分かった】
(ありがとぉ!)
初めて、ツインターボの心が一つになった。
「あれは!?」
カノープストレーナーはターボが淡い光に包まれている光景を目にした。
そして以前沖野トレーナーから聞いた話を思い出した。
『ゾーン・・・ですか?』
『ああ、ウマ娘達がレースで走っている時にゾーンと呼ばれる現象がある。そいつはウマ娘ごとに条件が異なるがそのゾーン状態に入るといつもより速度が出せたりスタミナを温存出来たりするらしい』
『そんなものがあるのですか』
『俺も詳しい事は分かっちゃいないがな。ウチのメンバーだとマックイーンやスカーレット、ゴールドシップはゾーンに入りやすく、ウオッカが一番入りにくいみたいだな』
『それは羨ましいですね』
『入ったからといって必ず勝てるものではないがな。それに条件も良く分からん事が多い。そんなものがある、位に覚えておけばいいさ』
ラストでスタミナが尽きた時、
「負けられないんだぁ!!」
後続が迫ると最後の気力で先頭を維持しやすくなる。
「今日だけはぁぁぁぁぁぁ!!」
ツインターボは起き上がってしまっていた体を無理やり前に倒すと必死に速度を維持した。
「残り200を切っているがナリタブライアン苦しいか!?ツインターボがまだ先頭!懸命に粘る!ナリタブライアン苦しいながらも追い上げる!内ツインターボ!外ナリタブライアン!ツインターボ!ナリタブライアン!まさかまさか!まさかのツインターボ逃げ切ったゴールイィン!これが逃げるという事だ!なんとなんとツインターボが有馬記念を逃げ切りました!友の思いを背中に乗せて!見事に走り切りましたっとぉ!?ツインターボゴール後に転倒!大丈夫でしょうか!?」
「速度は落ちていましたから怪我は大丈夫だとは思いますが・・・」
(あれ・・・?ターボどうなったんだっけ・・・?)
最後の最後まで出し尽くしてしまったツインターボは霞む視界で微かに見える地面をただ見つめる。
「ターボ!しっかりしなさい!」
(あれ・・・ネイチャ・・・?)
ナイスネイチャが体制を変えてくれたようで青空と自分も息を切らせながら心配そうに見つめるナイスネイチャが視界に入る。
「ターボちゃん!」
「ターボ!」
「ターボさん!」
「あれぇ・・・?皆ぁ・・・?」
「良かった気が付いたのね」
ツインターボはようやくはっきりしてきた意識と視界でチームの皆を見つめる。
「ああ!レース!ターボ勝ったの!?それとも・・・!」
「ほら!ターボちゃん」
「ぐえ!マチタン痛いよ・・・ッ!?」
マチカネタンホイザに首だけを無理やり方向転換されて悲鳴を上げるツインターボだが掲示板を見て何も言えなくなった。
そこにははっきりと一番上に自分の番号が示されている。
距離差はハナ。
ランプは確定。
「ああ・・・うぁあ・・・」
自覚して数秒後、込み上げてきた涙が頬を流れ落ち、続いて声にならない声が湧き出る。
「マヂダン!」
「おめでとう!そしてありがとうターボちゃん!」
マチカネタンホイザに後ろから抱きしめられるツインターボ。
二人の目からは大粒の涙が次々と零れ落ちていた。
(負けた・・・全てを出し切って・・・)
ナリタブライアンは掲示板を見つめ、次に天を仰いだ。
(ああ・・・姉貴もこんな気分だったのだろうか・・・)
負けたのにどこか清々しい。
もちろん悔しくもある。
だがこれが自分の望んでいたものだのだと初めて実感した。
ナリタブライアンはきつく握りしめていたコブシをゆっくりと解くとツインターボの方へと歩き出した。
「ツインターボ」
「ぶぇぇ?」
涙と鼻水だらけのツインターボは名前を呼ばれて振り向いた。
「まずは謝罪を、お前を侮っていた。次に賞賛を、優勝おめでとう。そして最後に・・・次があれば負けない!」
そう言ってナリタブライアンは右手を差し出した。
「ぐず!ありがとう!次もターボが逃げてやる!」
鼻をすするとツインターボはナリタブライアンと握手をした。
(すごい・・・ターボさん・・・)
ライスシャワーは何とか3着に入りこめた事を喜びつつもツインターボの走りを思い出していた。
(自分の得意な距離じゃないのに・・・ブライアンさんに勝っちゃうなんて・・・!きっと皆のヒーローになれるね!)
その称賛を自分も受けたいとライスシャワーの心ははっきりと燃えていた。
(ライスも次の天皇賞春!がんばるぞ!おー!)
次の目標に向けてライスシャワーは決意を固めた。
(やったねターボ・・・ネイチャさんは5着だったけど・・・)
ナリタブライアンと握手するツインターボを少し離れた位置でナイスネイチャは見つめていた。
(やっぱりネイチャさんには入賞がお似合いですなぁ)
いつもの自虐に戻ってしまったナイスネイチャにトレーナーが近寄る。
「大丈夫ですナイスネイチャさん。きっと!必ず勝たせて見せますから!」
「うぇぇ!トレーナー近いってば!」
「私が必ず!必ず果たして見せますから!」
「分かった!分かったてばぁ!」
その言葉が現実になるのはもう少し先の事である。
(負けた・・・4着・・・ブライアンと競り合ってすら居ない・・・)
ヒシアマゾンはただただ悔し涙を流し続けた。
(こんなんじゃ!本当のブライアンのライバルなんかになれない!見てろブライアン!次こそは必ず勝ってやるからな!)
ヒシアマゾンは涙を拭うと立ち去った。
「本日の優勝トロフィー授与ですがツインターボさんの強い要望を受けたURAがそれを了承したのでマチカネタンホイザさんと一緒に行います。もちろんウィニングライブもツインターボさんとマチカネタンホイザさんが一緒にセンターで踊りますのでこの特別なライブを皆さん是非お愉しみください」
こうして二人は満面の笑みでトロフィーを受けると二人で高く掲げた。
そしてその後に行われたライブを二人は最高の笑顔で歌いきった。
カノープスメンバー、スピカメンバー、ファンの人たち、そしてあの幼いウマ娘もライブを見ていた。
その後、チームカノープスのチームルームにはトロフィーと一緒にその時の二人の写真が飾られる事になった。
この物語のツインターボの固有スキル
名前:負けられないんだ!今日だけは!
説明:ラストでスタミナが尽きた時、後続に迫られると最後の気力を振り絞って先頭を維持しやすくなる。
効果:速度増加、スタミナ微回復、根性アップ
補足:残り距離200メートル以下でスタミナが尽きた状況でないと発動しない為非常に限定的にしか発動しない
スキルカットイン:汗だくで走るツインターボの背中を青白く光る誰かの手が少しだけ押す(元が星1で星3以降にこのスキルになるので演出が短い)
星1の時
名前:これが諦めないって事だ!
説明:ラストでスタミナが尽きた時、後続に迫られると最後の気力を振り絞って先頭をわずかに維持しやすくなる。
効果:速度微増
次回予告
20世紀名馬100選。
多くの競馬ファンから寄せられた投票を基に決められたその中にあの馬もいた。
ツインターボ81位
これはそんな馬のお話。