『本日は今年の凱旋門賞ウマ娘!ドイツの絶対皇帝と呼ばれているカイザーシュラークさんへの独占インタビューです!カイザーシュラークさん!よろしくお願いします!』
『Mit freundlichen Grüßen.アー・・・ヨロシクオネガイシマース』
どうやら少なくとも日本語を話せないことはないカイザーシュラークが日本語でインタビューに答える。
『おや、日本語が喋れるのですか?』
『ワタシのVater、オトーサンはニホン人デス。ウチではニホンゴあまり話さないからウマクナイです』
『そうなのですね。十分お上手ですよ』
『Danke!アリガトー』
そんな風にテレビではカイザーシュラークと記者の会話が続いていた。
「凱旋門賞ウマ娘カイザーシュラーク・・・ドイツの皇帝ねえ。同じ皇帝として負けられないんじゃない?日本の皇帝ターボエンペラーさん?」
学食で隣の席に座ったスカーレットランスがターボエンペラーにそう言った。
「茶化すなスカーレットランス。それに君も走るのだろう?」
「ええ勿論、ドリームアイも、勿論貴女も、カイザーシュラークにだって負けるつもりはないわ!」
マイル寄りの適性のスカーレットランスだが中距離でも勝ちが無いわけではない。
ただし長距離に近い2400のレースは厳しいとみられている。
「それにしても、貴女とカイザーシュラークが親戚なんてね」
「ああ、私の父の双子の弟が彼女の父親だ。最近は殆ど会わなかったが今は家に泊っているよ」
「さっすが名家ねえ」
「私の家などまだまだ歴史の浅い成り上がりの家だよ。メジロ家やシンボリ家には遠く及ばない」
丁寧に食事を終えたターボエンペラーがそう言ってお茶を飲む。
「ジャパンカップ、勝ちを譲るわけにはいかないがいい勝負をしよう」
「ふふ、貴女に黒星をプレゼントしてあげるわ」
2人のプレッシャーに周りのウマ娘達が引いていた。
SIDE:大塚トレーナー
「やれやれ、前はこの程度の荷物なら軽々と持てたんだがなぁ」
段ボールを抱えながら大塚トレーナーが歩いている時だった。
「え~もうやだ~!きゃぁ!」
「危ない!」
よそ見をしながら歩いていたウマ娘が段差を踏み外して転びかけた。
「なっ!」
大塚トレーナーは咄嗟に段ボールを手放してウマ娘をかばった。
「ぐぅ!」
「ああっ!大丈夫ですか!」
「こ・・・腰が・・・」
幸いにもバランスを崩したウマ娘に怪我は無かったが大塚トレーナーは腰を痛めてしまった。
「すみません私のせいで!」
「俺の事はいい・・・怪我しなくて良かったな」
その後大塚トレーナーは保健室に運ばれて手当を受けた。
SIDE:ターボエンペラー
「大塚トレーナー!」
「心配かけたなエンペラー。年には勝てんな。腰をやっちまった」
ベットに横になった大塚トレーナーがそう言った。
「大丈夫なのですか?」
「全治2週間ってところだな。無茶するもんじゃねえな」
「そう・・・ですか・・・」
「すまねえな・・・お前の大事な時期に・・・」
「いえ・・・起こってしまった事はしょうがありません。お大事になさってください」
ターボエンペラーは保健室を後にした。
「そうですか・・・大塚先生が・・・」
新井トレーナーに事情を説明し、ターボエンペラーは暫くの間は新井トレーナーからの指導でトレーニングをする事になった。
「私では先生ほどの指導ができるかどうか分かりませんが全力は尽くします。ジャパンカップ、がんばりましょう」
「はい」
ターボエンペラーの返事にはやはりいつもの元気がなかった。
SIDE:カイザーシュラーク
*会話文はドイツ語だと思ってください
私は本番のコースでは無いが似せて作られた練習用コースを走る。
「走り心地はどうだシュラーク?」
ドイツから1日遅れで日本にやってきた私のトレーナーがそう声をかけた。
「トレーナー。何ていうか日本のターフは走りやすいけど硬いわ」
「ふむ・・・日本のターフはハイスピードターフと聞いている。欧州に比べてパワーが不要な分負荷が掛かると言う話だ」
実際に短く刈り揃えられたターフは足に纏わりつくことなく走りやすい。
その分地面から受ける反動が大きくなりクッションの効いたターフになれている私には反動が強くて制御が難しい。
「日本のウマ娘達は良くこんな固いターフで走れるわね」
「あちらからすれば欧州ではよくあんな走りづらいターフで走れるな、と言ったところだろうな」
トレーナーは個人的に日本と交流が深くどちらを贔屓するでもない回答をした。
「それはそうかも知れないわね。アウェーで全く同じだったら態々来る必要性は無いものね」
私はもう一度ターフの硬さを確かめるように何度かジャンプをしながらそう答えた。
「やれそうか?」
「あら?自分が指導した絶対皇帝を信頼してくれないの?」
「信頼と妄信は別だ。で、どうなんだ?」
聞いた話では軍人の家系だったらしいトレーナーの冷静な言葉に私は考えた。
「そうね。相手があの子だもの絶対とは言えないわね」
「ターボエンペラーか・・・確かお前の親戚だったよな?」
「ええ、私の父の双子の兄の娘よ。幼い頃には何度も会っているわ。最近はあんまり会えてなかったけどまさかあっちも日本の皇帝なんて呼ばれてるなんて思わなかったわ」
「ドイツの皇帝VS日本の皇帝か。メディアが喜びそうだな」
「ホントにもうパパラッチにはうんざりよ」
幸いにも日本にはパパラッチが少ない為にやたらに追い掛け回されなくて助かっている。
「日本でも嘗ては酷い騒ぎがあったらしいがな」
トレーナーもパパラッチには良い感情を持っていないので冷ややかにそう言った。
「シュラーク、ジャパンカップ勝ちにいくぞ」
「ええ、もちろんよ」
私はトレーナーに頷くともう一度ターフを走り始めた。
そして、日本中が注目するジャパンカップの日を迎えた。
『さあ!今年もやってまいりました国際招待レースジャパンカップ!今年は何と凱旋門賞ウマ娘のドイツの絶対皇帝カイザーシュラークが参戦いたします!これに対するは日本の皇帝!無敗6冠のターボエンペラーです!さらには7冠の女王ドリームアイも8冠目に挑まんと気合十分です!』
スタンドには大勢の観客が押し寄せ、入場制限すらかかっている。
「ずいぶんと我々は期待されているみたいだな」
ターボエンペラーがステージ裏から外の様子をうかがう。
「ドッチもコーテイの名前をもってるからショーガナイね」
そう言ってカイザーシュラークは不敵な笑みを浮かべる。
「私だって負けるつもりは無いわよ」
ドリームアイが2人を睨みながらそう言った。
「ふん!皆まとめてアタシが勝つんだから!」
スカーレットランスが勝気な笑顔を見せる。
様々な思いを持ちながらウマ娘達はターフに向かう。
『さあ!まもなく始まりますジャパンカップ!本日出走いたしますウマ娘を振り返ってみましょう!1枠1番カレンブーケドラン!1枠2番7冠ウマ娘ドリームアイ!2枠3番ワールドプレシオン!2枠4番ミラクル!3枠5番ベアリングタイト!3枠6番コンビレール!4枠7番ラッキーストロー!4枠8番ドイツの絶対皇帝カイザーシュラーク!5枠9番スカーレットランス!5枠10番ホワイトパリス!6枠11番日本の皇帝無敗の6冠ターボエンペラー!6枠12番マカマカ!7枠13番ディアスマイル!7枠14番ホンダスキー!7枠15番ポールトゥウィン!8枠16番シャークネード!8枠17番スリザリオン!8枠18番グローリーボイス!以上18人フルゲートでの出走です!』
ウマ娘達は係員に案内されてそれぞれゲートに収まっていく。
『さあ!最後のウマ娘がゲートに収まりました!・・・スタートしました!各ウマ娘揃った綺麗なスタート!先行争いは好スタート好ダッシュのスカーレットランス!おおっとそれを躱して先頭に立ったのはなんとドイツの皇帝カイザーシュラーク!欧州で活躍したその剛脚でジャパンカップも逃げきろうと言うのか!』
「嘘!完璧なスタートだったのに!」
「Ich beginne」(先に行くわよ)
逃げウマ娘であるスカーレットランスを悠々と抜いてカイザーシュラークが先頭に躍り上がる。
「Blitzkriegsangriff!」(電撃強襲!)
そして先頭に立つとそのまま後ろを大きく突き放す。
『おぉっと!なんとカイザーシュラークがどんどんとスカーレットランスを突き放す!5バ身6バ身と開いてこれは大逃げだ!まさかのジャパンカップでの大逃げ!この展開は傾奇者逃亡者のインパクトターボを思い出します!』
「やらせるもんですか!」
「そうはさせるか!」
スカーレットランスが追い上げ、ターボエンペラーも前に上がっていった。
「いかん!焦りすぎだエンペラー!」
かろうじて腰の痛みが引いて競馬場までやってきていた大塚トレーナーがそう叫んだ。
しかし観客たちの強い歓声にかき消されてしまいターボエンペラーにその声が届く事はなかった。
『向こう正面に入りまして先頭は大きく離しました凱旋門賞ウマ娘カイザーシュラーク!その後ろ5バ身開いて懸命に追いかけますスカーレットランス!また少し間が開きまして3番手に上がってきましたのは無敗の皇帝ターボエンペラー!4番手に7冠ウマ娘のドリームアイといった並び!その後ろはごった返しております!』
まさか海外の凱旋門賞ウマ娘がジャパンカップで大逃げの様な走りをするとは思わず誰もが大慌てで追い上げる。
しかし後半に残さなければならない為にどうしても横に並ぶウマ娘はいなかった。
「このまま諦めるなんてぇ!」
スカーレットランスは必死に追いかけるが大逃げはした事が無いためにどうしたら良いか分からない。
「やられた・・・ペースを乱された」
予想外のカイザーシュラークの走りにペースを乱されてしまった事をターボエンペラーは悔みながらも諦めずに走り続ける。
「大丈夫!私ならいける!」
ターボエンペラーの後ろを走るドリームアイも想定外の使わされた足に不安を覚えつつも強気に前を狙い続けた。
『さあ絶対皇帝カイザーシュラークが早くも第4コーナーを回り終えて最終直線に入りました!2番手スカーレットランス疲れたのか足色が鈍い!日本の皇帝ターボエンペラーとドリームアイが懸命に上がっていきます!』
「うう!むりぃ・・・」
どうやら適性距離外だったらしいスカーレットランスが失速していく。
「負けるかぁ!」
「私がぁ!」
ターボエンペラーとドリームアイが懸命にカイザーシュラークを追い上げる。
『残り200メートル!渾身の走りでターボエンペラーとドリームアイがカイザーシュラークを追い上げる!カイザーシュラーク足色は衰えない!ターボエンペラー届くのか!日本の皇帝の意地を見せるか!ドリームアイがURA史上初の8冠達成なるか!カイザーシュラークが逃げ切るのか!残り100メートル!ターボエンペラー届くのか!ドリームアイか!僅かにカイザーシュラークが先頭のままゴール!ターボエンペラー敗れる!勝ったのはドイツの絶対皇帝カイザーシュラークです!』
「Ich gewinne!」(私の勝ちよ!)
カイザーシュラークは観客たちに手を振ってアピールする。
「・・・・くっ!」
ターボエンペラーはその様子を拳を握りしめて見つめていた。
ファンによるキャラクター設定考察
怪我をする大塚トレーナー
ターボエンペラー主戦騎手の大塚騎手が直前のレースで相手方からの接触による落馬で全治2週間の怪我をしていた
この事が理由でジャパンカップでの騎乗を回避している
ジャパンカップで大逃げするカイザーシュラーク
実際のレースでも大逃げしている
騎手は後のインタビューで「先頭は取るつもりだったが大逃げは彼(カイザーシュラーク)の意思だ」と語っている
「Blitzkriegsangriff!」(電撃強襲!)
欧州メディアがカイザーエンペラーの走りに「我々は雷に打たれたような衝撃を受けた」というコメントが由来だろう
ペースを乱すターボエンペラー
ジャパンカップ時に騎乗していた騎手はターボエンペラーとの相性があまり良くなく制御に苦労していた