ジャパンカップ終了後・・・
「エンペラー、ジャパンカップたのしかったワ」
「次は決して負けんぞ。カイザー」
空港のエントランスで2人は握手をする。
「来年の凱旋門賞、楽しみにしていろ」
「ええ、モチロンよ。次もにげきってミセルわね」
こうしてカイザーシュラークはドイツへ帰っていった。
その後、ターボエンペラーは有馬記念を目指しての大塚トレーナーとミーティングを開始した。
「ターボエンペラー、ジャパンカップの敗因は分かるか?」
「はい、焦るあまりペースを乱した事です」
その言葉に大塚トレーナーは頷いた。
「そうだ、お前の大事な時に怪我をしてしまった俺が言うのは申し訳ないがあのレースはもう少し落ち着いて走る事が出来ていたら勝てていただろう」
「いえ、全ては私が未熟なせいです。トレーナーのせいではありません」
「責任はどちらにもあった。それでいいだろう」
「はい」
「話を変えるぞ。有馬記念だが7冠ウマ娘のドリームアイが引退したためにチャンスとばかりに狙ってくるウマ娘も多い。最も有力に見られているのは当然お前だ。全力で潰しに来るだろう」
無論反則になってしまっては元も子もないがそれでも周りを囲む、徹底的にマークするなど反則しない範囲で妨害する方法はいくらでもある。
「そしてお前は無敗では無くなった」
「はい・・・」
「それがお前にどの様な影響をもたらすのか。負けた体験はプラスに働くウマ娘とマイナスに働くウマ娘が居る。いいか、初心に戻ってやり直すぞ」
「はい!」
SIDE:ゴールデンドライブ&ゴールデンマキシマ
「よう、有馬記念、お前も出るよな」
「ああ、そして一番のライバルは当然・・・」
ゴールデンドライブとゴールデンマキシマがスクワットをしながら会話をしている。
「ターボエンペラー、アイツのゴールデンっぷりは半端じゃねぇ」
「だが、俺たちのゴールデンっぷりだって伊達じゃねぇ」
「「勝つのは俺だ!」」
2人はそう言って拳をぶつけ合った。
「威勢が良いのは良いことだが・・・お前ら何でスクワットさせられとるのか理解しとるか?」
「「ひぃ!すいやせん親分!」」
アンタガタイショーにギロリと睨まれた2人は大慌てでスクワットを再開した。
そんな様子を見てアンタガタイショーはため息をついた。
SIDE:メロディールーン
「残念ですがメロディーさんは弾かれてしまいました」
「うーん、エンペラーちゃんとの再戦は遠いなぁ・・・」
なかなか芽の出ないメロディールーンは残念ながら有馬記念には出られなかった。
「諦めるな!メロルーが頑張り続ければきっとターボエンペラーと戦えるぞ!」
「はい!ターボ先輩!」
小柄なツインターボがメロディールーンを慰めている様子を見ながら南坂トレーナーは来年こそメロディールーンを輝かせて見せると心に決めた。
SIDE:スカーレットランス
「私じゃ無理ってどういう事よ!」
「落ち着けランス」
食って掛かるスカーレットランスに沖野トレーナーはニンジンジュースを差し出しながら落ち着く様に言った。
「お前の適性はマイルから中距離にかけてだ。その中距離でも2200以上はお前には厳しい。いくら長距離としては短い2500の有馬記念でもお前には長すぎる。無茶をすればそれこそ後に響くぞ」
「でも・・・スカーレットさんは・・・」
ダイワスカーレットに強いあこがれを抱くスカーレットランスはどうしても有馬記念をあきらめきれない。
「お前の気持ちは良く分る。だがお前の無茶する姿を見て心配しているやつも居る事を忘れないでくれ」
そう言って沖野トレーナーが指さす先にはスカーレットランスを心配そうに見つめているダイワスカーレットが居た。
「ねえランス・・・貴女が私に憧れて真似をしてくれるのは嬉しいわ。でもそれで貴女が傷ついてしまうのは悲しいわ。だから無理だけしないで」
「スカーレットさん・・・分かりました」
ダイワスカーレットの言葉なら素直に聞いてくれるんだなと沖野トレーナーはため息をついた。
そして有馬記念を迎えた・・・。
『今年も年末最後のGⅠレース有馬記念がやってまいりました!あなたの夢、私の夢を乗せて走ります18人のウマ娘達。注目は6冠ウマ娘、日本の皇帝ターボエンペラー!このレースに出走するウマ娘達の中でも抜きんでた実力と実績を残しています!対抗するウマ娘はいますでしょうか!破天荒ウマ娘のゴールデンドライブか!淀の狂ウマ娘ゴールデンマキシマか!はたまた他のウマ娘なのか!注目です!』
実況の声を聴きながらウマ娘達がステージで衣装を披露していく。
「やっとお前と勝負できるな!」
「ゴールデンドライブか」
「オレもいるぜ」
ゴールデンマキシマも存在を主張する。
「ん?お前たちサングラスなんかしていたか?」
「どうだ?似合うだろう?」
「ゴールデンなデザインだろ?」
衣装に合わせたらしいサングラスを自慢げに見せる2人。
「前から何か物足りないと思っていたんだがつい先日偶然入った店で見つけてな」
「見つけた瞬間これだ!って思ってな」
「・・・そうか」
恐らくトレーナーとは色々もめたのだろうがそれでレースに集中してくれるのならばと諦めたのだろう。
この2人の暴れっぷりはアンタガタイショー以外では押さえつけられない。
いや、アンタガタイショーが居ても完璧には収まらないのだからこの2人の行く末が心配ではある。
『さあ!本日走ります18人のウマ娘を振り返ってみましょう!1枠1番バニート!1枠2番ブレストツーピース!2枠3番日本の皇帝ターボエンペラー!2枠4番ラブズオンリーミー!3枠5番ワールドプレミオ!3枠6番ミラクル!4枠7番ミッキーライラック!4枠8番ペルシャンデイ!5枠9番宝塚記念を制しましたクロスジェンティス!5枠10番カレンブーケドラン!6枠11番モズニッエ!6枠12番オーソリティア!7枠13番フェールメン!7枠14番今年の皐月賞ウマ娘ゴールデンドライブ!7枠15番サラサア!8枠16番オセアグレイブ!8枠17番ユーキャンスミレ!8枠18番今年の菊花賞ウマ娘ゴールデンマキシマ!以上18人フルゲートでの出走です!』
ゲートに入りながらターボエンペラーは大塚トレーナーとのミーティングを思い出していた。
『いいかエンペラー。今度の有馬記念だが、枠番で内側のお前は逃げを選ぶのが今までの定石だった』
『はい』
『だが今度は先行か差し・・・できれば差しでいけ』
『それは・・・』
疲れやすい自分には囲まれてしまう可能性の高い内側での先行や差しは厳しいのではないだろうか。
ターボエンペラーはそう思った。
『そう、今までお前は囲まれるレースは殆どしてこなかった。来年、凱旋門賞を目指すのなら囲まれるレースを経験しておかなければお前は勝てない。日本では結託した妨害は倦厭されるからあまり行われないが海外では露骨に結託してくる。場合によっては同じトレーナーのウマ娘が優勝候補を勝たせる為に犠牲になる事さえある。その時の練習だと思え。勿論勝つ事を諦めるな!お前なら必ず抜け出せると俺は信じている』
『はい!』
ターボエンペラーはゆっくりと目を開いた。
目の前には硬くしまったゲートが映る。
「大塚トレーナー・・・必ず抜け出して見せます!」
全員がゲートに収まった合図が出され、ターボエンペラーはゲートが開く瞬間を待つ。
ガタンッ!
ゲートが開くと同時にウマ娘達は飛び出した。
『スタートしました!先行争いは大外からゴールデンマキシマが突っ込んでゆく!内側1番バニートもハナを譲ろうとはしません!最内と大外の先行争いとなりました!やはりゴールデンマキシマが走るレースは大荒れです!3バ身程離されて集団が形成されています内側からブレストツーピース、外からオーソリティアです!3番のターボエンペラー今日は控えて中段まで下がりました!その周りを他のウマ娘ががっちりと押えます!ターボエンペラーを内側に押さえつけるように大きな集団が形成されました!1週目のスタンド前に入ります!先頭は内バニート外ゴールデンマキシマの2人が争いながら走っています!少し間が開きまして3番手にオーソリティア!内側ブレストツーピース!拍手と歓声に迎えられます!オセアグレイブ、フェールマン!その後ろ内側に押さえつけられる様にターボエンペラー!外側にカレンブーケドラン!ターボエンペラーの後ろを塞ぐのはワールドプレミオとミッキーライラック!この辺りは完全にターボエンペラー包囲網といった形!まもなく第1コーナー!後方で様子を伺うのはゴールデンドライブ!今はまだエンジンを温めています!』
予想通りターボエンペラーの周囲は彼女を警戒するウマ娘達でがっちりと固められてしまった。
「なるほど・・・これは走りづらいな・・・」
囲まれたレースを避けてきたターボエンペラーにとってはこの走りは非常に辛い状況だった。
ペースを上げる事も落とす事もできず、周りのペースに強制的に合わせなければならない状況は非常にストレスが溜まる。
『こんなのさっさとぶち破ろうぜ!』
久しく表れていなかった内なる声が頭をよぎる。
「いいや・・・まだだ・・・」
ターボエンペラーは懸命に内側で堪えた。
『向こう正面に入りまして先頭はどうやらゴールデンマキシマが奪ったもよう!バニートもまだ諦めてはいません!オーソリティオ3番手!ブレストツーピース少し様子がおかしいが大丈夫か!?フェールマンが4番手!最内にターボエンペラー外からオセアグレイブ、大外カレンブーケドランが押さえつけています!その後ろにワールドプレミオとミッキーライラック!ペルシャンデイもここに加わりました!外からクロスジェンティスが上がっていきます!ミラクル、ゴールデンドライブも上がり始めました!まもなく第3コーナーに入ります!』
その時だった。
「ううっ!」
ターボエンペラーの前を走っていたブレストツーピースが突如失速した。
「なっ!どけぇ!」
一瞬慌てたターボエンペラーだったがコーナーに入って外に膨らみ始めた隙を見逃さずに強引に体をねじ込んでブレストツーピースを躱して前に出た。
「そんな!」
外側で押さえつけていたオセアグレイブが絶望的な声を上げる。
『ブレストツーピース失速!先頭はゴールデンマキシマ!バニート2番手だが苦しいか!フェールマン3番手だが内側にターボエンペラーが突っ込んでくる残り600メートル!クロスジェンティス!ゴールデンドライブが外から上がってくる!カレンブーケドランもいけるか!』
「ここからが俺のゴールデンタイムだぜぇ!」
ゴールデンマキシマが全力で押し切ろうとする!
「主役は私よ!」
クロスジェンティスが追い上げる
「ようやくエンジンが暖まってきたぜぇ!」
ゴールデンドライブがようやく本気を出した。
「皇帝の誇りにかけて!負ける訳にはいかない!」
バニートを躱し、2番手に上がったターボエンペラーが末脚を開放する。
『先頭ゴールデンマキシマ!しかしターボエンペラーが迫る!クロスジェンティスとゴールデンドライブも追い上げる!残り200メートル!ゴールデンマキシマ懸命に粘る!ターボエンペラーが並ぶ!クロスジェンティスとゴールデンドライブも並んだ!4人が横一線!』
「こんな所でぇ!負けてたまるかぁ!」『いくぜぇ!』
『ターボエンペラーが抜け出た!わずかですがしっかりと前に出たところでゴールイン!勝ったのはターボエンペラーです!7冠目達成!初代皇帝シンボリルドルフに並びました!』
多くの歓声に迎えられて、ターボエンペラーは右手を高く上げた。
ファンによるキャラクター設定の考察
ゴールデンドライブとゴールデンマキシマのサングラス
恐らくこのレースからつけられたブリンカーが元ネタだと思われる
一定の効果はあったらしくこの後からずっとつけて走っている
ターボエンペラー包囲網
実際の実況でも「ターボエンペラー包囲網」と発言している