また本編はこれにて最終話とさせていただきます。
いくつか後日談などを投稿後、本作品を終了とさせていただきます。
世界から注目される凱旋門賞を前に、人々は慌ただしく動く。
例えばレースの準備だったり、あるいは参加選手への取材だったり。
ターボエンペラーも当然現地の取材や日本からやってきた報道陣からの取材を受けたりと忙しい日々を過ごしている。
取材その1、フランス新聞社からの取材
※通訳が同席して会話していると思ってください
「こんにちはターボエンペラー。フォア賞は見事でした」
「ありがとうございます」
「日本でも優秀な成績ですからこの程度は当たり前と言ったところでしょうね」
「いえ、こちらと日本では芝の状況が大きく異なりますから正直初めてのレースで不安でした」
「やっぱり日本人って謙虚なんですね」
実際に正直に語っているだけなのだがやはりその辺りの反応もギャップがあるなとターボエンペラーは感じていた。
「凱旋門賞では一度敗れているカイザーシュラークとの闘いになりますが自信はありますか?」
「自信がないとは言いませんが簡単ではないと思います。ただ・・・」
「ただ?」
「自信がないからと言って露骨な手段を取るつもりはありません」
その言葉に取材をしていた記者たちの表情が何を言っているんだと言った表情になった。
「実力が足りないのを策で補うのを否定はしません。だからと言って策ありきで己を鍛えるのを止めてしまうのは本末転倒でしょう」
「それはつまり・・・こちらのウマ娘達が手を抜いていると?」
「解釈はそちらに任せます」
その言葉に記者たちは面白くなさそうな表情をしていた。
取材その2、日本新聞社からの取材
「ターボエンペラーさん、凱旋門賞への意気込みを聞かせてください」
「はい、ジャパンカップでの雪辱を晴らす為、また日本のウマ娘達の誇りとなれるよう全力を尽くす所存です」
「カイザーシュラークですね。見込みはどうですか?」
「簡単ではないと思います。ですが私がだせる全力でもってリベンジを果たしたいと思います」
日本での取材ではどうしても悪意が混ざる事があったが今回の凱旋門賞には日本のウマ娘はターボエンペラー一人しか居ない為に純粋に応援してくれる取材にターボエンペラーはある種の潔さを感じていた。
「日本からも沢山の応援が届いていると思います」
「はい、皆さんの期待に応えられる様に尽力いたします」
久しぶりの純粋な応援にターボエンペラーも気分よく受け答えができた。
SIDE:カイザーシュラーク
※会話文はドイツ語だと思ってください
「ハァッ!ハァッ!ハァッ!」
「カイザー、これ以上はオーバーワークだ。一度休憩するんだ」
あの後、私のトレーナーは私のそばから離れる事無くトレーナーを続けている。
流石にそこまでしてくれる彼の言葉を無視する事はできない。
それにこれ以上無理しても能力が上がる事は無いだろう。
「ほら」
私はトレーナーが差し出したタオルを受ける。
「・・・ありがとう」
「俺はお前のトレーナーだからな。お前がやれると言うのなら、俺はお前を全力で支えるだけだ」
私の心を読んだのかトレーナーはそう言って微笑んだ。
私はそんな彼から視線を外した。
この間の喧嘩からどうしても彼に素直になれないからだ。
「カイザー、勝つぞ」
「・・・勿論よ」
素直になれない私を彼はどんな表情で見つめているのか知るのが怖い。
そして凱旋門賞が始まる・・・。
※実況はフランス語だと思ってください
『今年もやってまいりました凱旋門賞。世界各国から集いました20人のウマ娘。果たして勝つのはどのウマ娘でしょうか。前年度覇者カイザーシュラークでしょうか。それともはるか遠く東の国、日本からやってきたターボエンペラーでしょうか。皆さんが注目するウマ娘は誰ですか?』
様々な思いと歓声に包まれるロンシャン競馬場。
私は控室でレースに向けて集中していた。
その時だった。
「エンペラー、お客さんだ」
「私に?」
誰かが訪ねてくるとは連絡を受けていなかったが・・・。
「エンちゃん、応援に来たわよ」
「お母様でしたか。連絡ぐらいくれれば良かったのに」
しかしお母様は何やらニヤニヤしている。
「エンちゃん、サプラーイズ!」
お母様がそう言うともう一人誰かが入ってきた。
「お父様!?」
「やあ、久しぶりだねエンペラー」
そこにいたのは忙しくて最近全く会えていなかったお父様だった。
「仕事仕事でお前の応援を全くできていなかったからな。何とかスケジュールを調整して駆けつけたよ」
「流石のこの人も凱旋門賞は特別なのね」
自分の特別な日は仕事だったのにと言いたげなお母様の表情に私は苦笑するしかなかった。
「ちゃんと補填はしているんだけどな。この間だって行きたがっていた高級レストランに何とか頼み込んで予約したんだがな」
「っもう!そうだけどそうじゃないの!」
女心を分かってほしいお母様と仕事人間で気の利かないお父様。
しかしこれで時々私に隠れてはいちゃついているのだから割れ鍋に綴じ蓋という奴なのだろう。
「あー・・・おほん!そろそろお時間となりますので・・・」
大塚トレーナーがそう言うと両親は少し恥ずかしそうにしながら控室から出て行った。
「まあなんだ・・・緊張は解れたんじゃないか?」
「そうですね・・・気が抜けすぎてなければ良いのですが」
そう言って私は軽く頬を叩いて気合を入れなおした。
『さあ!世界中が注目するウマ娘達が次々とゲートに収まっていきます!世界の頂点に立つのは一体誰でしょうか!』
全員がゲートに収まり、一瞬の静寂が訪れた。
ガタンッ!
ゲートが開くと同時にウマ娘達が飛び出す。
『スタートしました!先頭争いですがやはり前年度覇者のカイザーシュラークが好スタート!しかしそこにアベイ・ド・ロンシャン賞優勝ウマ娘のフォートミストラルが突っ込んでいく!他にも各国のスプリンターとマイラーがカイザーシュラークを取り囲む!一方日本のターボエンペラーは勢いがつかないのか後ろにいます!』
SIDE:カイザーシュラーク
※会話文はそれぞれの言語だと思ってください
私の周りを何人ものウマ娘が囲もうとする。
「その程度でぇ!」
凱旋門賞までに鍛えに鍛えた加速で私は先頭を譲らない。
「嘘!私より早い!?」
「かまわない!このまま体力を消費させれば!」
囲んで潰す事が出来なくなったので私をオーバーペースで疲弊させる方向に切り替えたのだろう。
だが・・・。
「それが分かってて対策してないわけないわ!」
元々スタミナには自信がある。
長距離は流石に厳しいが2400メートルなら押し切れるだけのスタミナを確保した。
「やれる!私ならやれるのよ!」
SIDE:ターボエンペラー
「やはり気に入らん・・・」
私は後ろの方から走りながら前の様子を伺う。
そこには5人のウマ娘に追い立てられるカイザーシュラークの姿がある。
トレーナーからは正々堂々は日本だけが守る頭の固いルールだと言われた。
それは事実だろう。
だが・・・。
「気に入らないものは気に入らない!ウマ娘たるもの!妨害有りきの勝利など誇るな!」
「ひっ!」
私の放つプレッシャーに前を走るウマ娘が怯えて速度を上げた。
『さあ第3コーナーを回ってフォルスストレートを通って第4コーナーに向かいます!先頭は変わらずカイザーシュラーク!その後ろについたウマ娘達はそろそろ限界か!徐々にカイザーシュラークが抜け出して単独先頭に立ちます!後方集団では前を狙って動き始めました!』
SIDE:カイザーシュラーク
「はっ!ここまでのようね!」
「あとは・・・!頼んだ・・・!」
元々中距離適性の無いウマ娘達だ。
途中で完全に力尽きて速度が落ち始めている。
もうすぐ第4コーナーに入る。
ここからが勝負だ!
必ずエンペラーはやってくる!
SIDE:ターボエンペラー
「もうすぐ最終直線か・・・むっ!」
私の前を走るウマ娘達がスッと横に避けて前から疲弊したウマ娘達が下がってきた。
「ちぃ!ここに来て邪魔するか!」
私を確認すると横に広がって蓋をするように邪魔をする。
「やはりお前たちの走りは気に入らん!」
私は激情と共に強く踏み出すと前に突き進む。
「ぶつかるつもり!?」
「愚か者が!広がりすぎて内側ががら空きだ!」
「しまった!」
元々内ラチ側の追い込みウマ娘が不利を受けやすいとしてロンシャン競馬場はオープンストレッチを使用できるように改修された。
毎年必ず使用される訳ではない上に改修されたのが近年だった為に妨害役のウマ娘達もオープンストレッチの事をすっかり忘れていたのだろう。
「カイザァァァァァァァァァァァ!」
内側から全力で前に突き進む。
未だに先頭を走るカイザーを目指して。
『先頭はカイザーシュラークだ!しかし後ろから日本のターボエンペラーがもの凄い勢いで追い上げる!前を走る欧州ウマ娘達をあっという間に追い抜いて追いつきそうだ!』
「いけー!エンペラー!そこだー!」
「エンちゃん頑張って!」
両親の声に後押しされて私は一気に他のウマ娘達を抜き去った。
SIDE:カイザーシュラーク
「カイザァァァァァァァァァァァ!」
やっぱり最大の敵はエンペラーだった。
「来たかエンペラー!」
他のウマ娘とは比較にならない末脚で私を追い上げてくる。
だが一度は勝った相手だ!
「負けるはずが・・・!?」
しかしあの時とは違い私はあっさりと追い抜かれた。
「そんな!負けたくない!」
必死に私は追いすがった。
SIDE:ターボエンペラー
必死な表情で追いすがるカイザーを置き去りにして私はゴール板を駆け抜けた。
『ターボエンペラーがあっという間に突き抜けた!カイザーシュラークも懸命に追いすがるが引き離される!勝ったのは日本の皇帝ターボエンペラーだぁ!まさに皇帝の名に相応しい走りでした!』
私は観客に手を振って応える。
「エンちゃん!」
「わっ!お母様!」
感極まったお母様が私を抱きしめた。
「おめでとう!本当におめでとう!よく頑張ったわね!貴女は私の最高の娘よ!」
「はい・・・ありがとうございます・・・お母様・・・」
私とお母様は涙を流したまましっかりと抱きしめあった。
SIDE:カイザーシュラークのトレーナー
「負け・・・た・・・」
カイザーはゴールを超えた辺りで崩れ落ちる様に膝をついた。
負けた事がそれほどショックだったのだろう。
俺はゆっくりとカイザーに近寄っていく。
「カイザー、惜しかったな」
俺が声をかけるとカイザーは壊れかけのおもちゃの様な硬い動きでこちらを見た。
その表情は驚くほどに絶望に満ちたものだった。
「カ、カイザー?」
「お願い・・・見捨てないで・・・一人にしないで・・・」
そこに居たのは弱り切った少女だった。
そんな様子をみて俺はカイザーがかつてトレーナーに見放されたという事を思い出した。
「・・・大丈夫だ。俺はお前のトレーナーだ。たとえお前が絶対皇帝では無くなったとしても、絶対にお前を見捨てない」
俺はそうカイザーに言い聞かせながらゆっくりと抱きしめてやった。
「本当?」
「ああ、本当だ」
そうさ、俺が見捨てる訳が無いだろう。
俺を始めて一流トレーナーにしてくれた俺だけの皇帝を・・・。
ファンによるキャラクター設定考察
欧州ウマ娘の作戦が気に入らないターボエンペラー
大塚騎手が露骨なカイザーシュラーク包囲網に「欧州のやり方は面白くは無いですね」と発言した事が由来だろう
絶望に満ちたカイザーシュラーク
当時の主戦騎手が敗戦後にオーナーに「俺からカイザーシュラークを取り上げないで欲しい」と涙ながらに懇願したのが由来ではないか