「こんばんは、朱雀の川中です。本日も張り切って名馬を語ろうをやっていきたいと思います」
競馬好きで有名な芸人と競馬は良く分らないがテレビ映えするアイドルが拍手をする。
「さあ!本日は皆さんお待ちかね。インパクトターボを語ろうの回でございます!」
「待ってました!」
小太りな芸人がそう言って囃し立てる。
「もう近代競馬を語るうえでは外せない名馬ですからもう競馬ファンならご存じなのは当たり前ですがNGYの皆さんはご存じ無いですよね?」
「私は競馬を全然知らないので・・・」
「私もです」
アイドル達が申し訳なさそうに顔を見合わせている。
「いえいえ、この番組のコンセプトは競馬初心者に競馬の何が凄いのか、競馬がなぜこうも人を魅了するのかを伝える為の番組ですので大丈夫ですよ」
そう言って川中は番組を進行する。
「ではこちらのモニターにドーン!はい、こちらがインパクトターボです。さてこのおウマさん、ある凄い特徴があるのですが何か想像がつきますか?清州さんどうぞ」
「えっと・・・とっても強かった・・・とかですか?」
指名されたアイドルが悩みながら答えた。
「まあある意味それも正解ではありますね。実際の成績から見てみましょうか。なんと!26戦20勝という好成績を収めています!」
「「「すごーい!」」」
アイドル達が驚いたようにはしゃぐ。
「勝ちに勝ちまくっているのも確かに凄いんですが、一番すごいのは26戦というレース数なんです。中央競馬では基本的に勝てる馬程出走数が少なくなる傾向があります。これはおウマさんが非常に繊細な動物だから無理をしてしまって事故を起こしてしまわないように馬主さん達も警戒するからなんです」
「へーそうなんですねぇ」
「しかもおウマさんの現役期間は短い馬ならたった2年。長い馬でも4年から5年と言われています。それ以上は基本的にレースには出れても勝てないのが普通です。人間に例えるならば現役バリバリの全国大会出ちゃうような大学生に中年のオッサンが挑むようなもんです」
「えーそんなに短いんだ!」
アイドル達は感心したように声を上げる。
「こちらがインパクトターボの全出走レースです」
川中の声に合わせてモニターが切り替わる。
「見ての通り現役期間は3年と半年。そして見てもらえば分かりますが2着4回3着2回と4位以下になった事が一度もありません!」
「えーすごーい!」
「そして持っている記録も凄いです。デビューから皐月賞まで10戦10勝の無敗記録、18連続連帯記録、連帯と言うのは昔は1着2着を予想しなければならなかったので2着までに入るおウマさんの事を連帯と呼んでいるんですがこの18連続連帯は歴代記録第2位です。第1位はかつて日本最強と呼ばれたシンザンという名馬中の名馬が19回でこの記録に迫る成績を出せる馬は今後出ないだろうとまで言われていました」
「ええー!めちゃめちゃ凄いじゃないですか!」
リーダー格のアイドルがそう言って指をさす。
「そんな強い強いインパクトターボですが、もっと凄すぎる記録があるんですがそれが何なのかと言いますと、なんと!驚異の大逃げ率100%です!」
「大逃げって何ですか?」
手を挙げてアイドルが質問する。
「はい、勿論ご説明いたします。おウマさんの走り方にはいくつかの種類があります。最初は一番後ろを走って最後に追い抜く追い込み、次に真ん中より後ろを走って全体の様子を伺いながら追い抜く差し、真ん中より前を走ってチャンスを狙う先行、そして最初から最後まで先頭を走り続ける逃げ、この4つが主な走り方です。そして大逃げとは逃げの中でも特に特徴的な走り方で通常の逃げが単純に先頭を走っているだけなのに対して大逃げはとにかく後ろを引き離して走るんです。もう10メートル20メートルは当たり前、場合によっては50メートル以上引き離す事もあります」
「そんな走り方があるんですね」
「でもこの走り方は一般的では無いと言いますか普通はめったにやりません。それは何でかって言いますと大逃げはこう言う風に言われてるんです。はいこちら」
モニターがまた切り替わる
「大逃げは、勝てない馬のする事だ」
「どういう事なんですか?」
「大逃げという作戦は最初から飛ばしますから当然おウマさんも疲れてしまいます。ほら、良く学校のマラソン大会とかで最初だけ張り切ってトップを走るけど途中で疲れ切っちゃって最下位でゴールする子って居るじゃないですか。あれと同じ様なものだと思ってください」
画面にデフォルメされた小学生が必死に走った後疲れ切ってゴールする絵が映る。
「あー確かにそんな子居ますね」
「ですから大逃げは勝てない馬が奇策として他の馬のペースをめちゃくちゃにしてやろうっていう一か八かの作戦なんです。偶にそのまま逃げ切っちゃうおウマさんも居ますけど大体は途中で抜かれて負けてしまいますね」
「えー!でもインパクトターボは大逃げ100%でめちゃめちゃ勝ってるじゃないですか!」
「まさにその通り!そこがインパクトターボの凄い所なんです!実際にレースがどんな様子なのか見てみましょうか」
映像が切り替わりレースの映像になった。
「えーこれはインパクトターボのデビュー戦の映像ですね。普通デビュー戦で走るおウマさんはレースにも慣れてないですし騎手だってどんな作戦が得意なのか分かってないですから大逃げなんてまずやらないんですがインパクトターボは見ての通りドンドン後ろを引き離していきます」
川中の音声が切れて実況の音声に代わる。
「すでに20馬身近い差が開いています。後続はついに痺れを切らして上がっていくようですが思うように上がれません。インパクトターボだけが第4コーナーに入ります。後続がやっと上がってきますがこれは完全にセーフティリードだ。直線に入ってインパクトターボ一人旅。ですが失速する気配も緩める気配もありません。鞍上の若井騎手ムチは打っていませんが流す様子もありません。インパクトターボ見事な逃走劇で今ゴール板を駆け抜けましたゴールイン」
映像がスタジオに戻った。
「これ以降インパクトターボは引退するまでずっと大逃げで走り続けるという信じられない事をしました。でもこう思いませんか?何でそんな走り方をしたのかと」
「たしかに~」
「その理由はいくつかあります。まず一つ目!」
川中の声に合わせてモニターに表示される。
「常に先頭を走らないと気に入らない性格!」
「えー!」
若干わざとらしい驚きの声があがる。
「調教師や騎手のお話を伺うとインパクトターボは他の馬が自分の前を走っているのがとにかく気に入らないみたいでして、それはもう全力で抜き去りに行ったらしいです。このせいでまず逃げ以外の選択肢が無くなってしまったそうです」
「でもそれだったら大逃げする必要は無いんじゃないですか?」
「ええ、ですので2つ目がこちら!」
再びモニターが切り替わる。
「末脚の弱さと驚異的な粘り強さ!末脚と言うのはおウマさんのラストスパートの事です。ゴール直前の直線で全てのおウマさんは全力疾走します。そしてインパクトターボはこの末脚があまり早くなかったんです。一方で皆さんもそうでしょうけど全力疾走って長続きしませんよね?インパクトターボはこの全力疾走が長続きするおウマさんだったんです」
「なるほどー」
「良く分るレースがありますので映像をご覧ください。どうぞ!」
映像が切り替わりレース場になった。
「こちらはインパクトターボと言えばこのレースと言われている2003年の有馬記念です。この時インパクトターボは3番人気、1番人気は去年の覇者シンボリクリスエスというおウマさんです」
川中が言い終わると同時にレースがスタートする。
「さあスタートしました好スタート好ダッシュを決めたのはインパクトターボです!間にタップダンスシチーを挟みましてその後ろにはやはりこの馬漆黒の追跡者サムシングブルーです!」
川中が自分なりのレース実況を行う。
「ゼンノロブロイと1番人気のシンボリクリスエスが力強い走り!1週目のスタンド前先頭を行くのは逃亡者インパクトターボ!その後ろ2番手に追跡者サムシングブルーがインパクトターボをロックオン!シンボリクリスエスは馬郡の中頃を走っている!万能勇者アグネスデジタルはここにいる!」
川中の実況にもどんどんと熱が入っていく。
「さあ最終コーナーを回ってインパクトターボがまだ先頭!漆黒の追跡者サムシングブルー今日はどうした追いつけない!前年度覇者のシンボリクリスエスもものすごい勢いで上がってきたが苦しい!抜かせない!抜かせないインパクトターボ!粘る!粘る!頭半分でも前に行かせるものか!粘って粘ってゴールイン!」
「うおー!」
他の競馬好き芸人たちの雄たけびが聞こえる。
「凄い凄い!」
アイドル達もレースを見て興奮したようだ。
「そんな素晴らしい活躍をしたインパクトターボですがお父さんとしても非常に優秀です。こちらをどうぞ!」
何頭かの馬がモニターに表示される。
「こちらはインパクトターボの子供で特に目立った活躍をした4頭をピックアップいたしました。まず1頭目が真っ白な白毛馬のシルクヴェール。このおウマさんは白毛という真っ白な毛を持つおウマさんとして世界で初めてGⅠレースに勝利したおウマさんです」
「世界で初めて!?」
「はい、そもそも白毛のおウマさんは競走馬の世界では非常に珍しいんです。世界中の競走馬の中でも0.04%とかそんなレベルの数しか居ません。当然そんな少ない数のおウマさんが勝つのもこれまた非常に珍しいんです。そんな中競馬に白毛馬が登録されてから世界で初めてGⅠレースで勝利したのがこのシルクヴェールなんです」
「うそー!」
「そんなに少ないんだー!」
「そして次がこちら、バクソウオーです。このおウマさんは短距離では負け知らずです。おウマさんのレースは1000メートルから1400メートル以下の短距離、1500メートルから1800メートル以下のマイル、1900メートルから2400メートル以下の中距離、2500メートル以上の長距離と距離で分けられていますが、このバクソウオーは1400メートル以下だと負けがありません!そもそも母方のお父さんがサクラバクシンオーっていうこちらも短距離で無敵を誇ったおウマさんですね」
「へー!」
「そして次がマキシマムターボ!このおウマさんは日本初の凱旋門賞制覇を達成したゴールドシップというおウマさん最大のライバルとして何度も戦っては勝利してますね。そして最後が皆さんご存じターボエンペラー。ついこの間普通のニュースや新聞でも凱旋門賞制覇したおウマさんとして有名になってましたね」
「あー確かにニュースで見ましたー!」
「そんな優秀な血統を残したインパクトターボの凄さ、皆さん分かっていただけたでしょうか」
「はーい分かりましたー」
「ありがとうございます。それではまた来週お会いしましょう!バイバイ!」