これが逃げるという事だ   作:福泉

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少し間が開きましたが番外編を投稿いたします。
ご意見ご感想お待ちしております。


番外編 アプリ版 インパクトターボ ウマ娘ストーリー編 前編

『第1話 参上!大逃げウマ娘!』

 

ウマ娘達がその実力をトレーナーたちにアピールする学園最大の一大行事、選抜レース。

そんな選抜レースでスカウトするウマ娘を見つける為に私は先輩トレーナーとやってきた。

先輩トレーナー(以下先)「お前も早く担当ウマ娘をスカウトできるといいな。選抜レースで少しでも有力なウマ娘を見つけたら直ぐにスカウトに行けよ。基本取り合いになるから絶対にスカウトしたいウマ娘を見つけたら全力で行けよ」

主人公(以下主)「はい、ありがとうございます」

実際にあたりを見回すと多くのトレーナーがタブレット片手にウマ娘達を熱心に見つめている。

実況(以下実)「まもなく選抜レース1600メートル第1レースがスタートします。出場ウマ娘は係員の指示に従ってゲートに入ってください」

開始を告げる実況の声にトレーナー達が練習コースに視線を向ける。

すでにコースに設置されたゲートには係員に案内された出場ウマ娘達が納まっている。

実「スタートしました!おっと一人飛び出したウマ娘が居ます!ゼッケン4番は・・・インパクトターボです!」

1人のウマ娘が圧倒的な速さでリードを築いていく。

インパクトターボ(以下イ)「うりゃー!」

かなりの速さで先頭を走るインパクトターボに一緒に走るウマ娘達は困惑している。

先「あのウマ娘は無しだな・・・」

主「え!?あんなに早いのにですか?」

先「ああ、もうじき理由が分かる」

先輩の言う事がどういう事なのか分からなかったのでとにかくレースに集中した。

イ「まだまだぁー!」

実「インパクトターボまだ先頭!しかし後方のウマ娘達も上がってくる!ゴールまで残り200メートル!インパクトターボ懸命に粘る!何とか1着でゴールイン!」

先「ほう、思ったよりも粘ったな」

主「やっぱり強いじゃないですか」

先「いや、やはり無しだ。上がり3ハロンのタイムだがインパクトターボが一番遅い」

主「それって・・・」

先「勝てたのは他のウマ娘が大逃げに慣れていなかったからだ。選抜レースで大逃げするウマ娘なんて普通は居ないからな」

主「そうなんですね・・・」

私はどこか納得できずにいた。

先「大逃げなんて勝てないウマ娘のやる事だ。あの子もきっとすぐに潰れてダメになる」

先輩の言う事は他のトレーナー達も思ったのだろう。

1着でゴールした彼女には誰も向かわず、2着や3着の子に声をかけるトレーナーばかりだった。

でも私は1着でゴールした彼女から目が離せなかった。

 

『第2話 鋼の肉体』

 

実「まもなく本日の選抜最終レース1800メートル第6レースが始まります。出走ウマ娘は係員の指示に従ってゲートに入ってください」

あれからいくつかのレースを見て何人かのウマ娘に声をかけたが色よい返事は貰えず、ただただ選抜レースを眺めるだけになってしまっている。

先「まあそう落ち込むな。何も今すぐ担当ウマ娘を決めなければならない訳でもないしな」

主「はい・・・」

先輩にそう慰めてもらいながら私は最後のレースを眺める。

実「スタートしました。1人飛び出しましたのはゼッケン1番のインパクトターボ・・・え!?ちょっと間違いじゃないんですか!?え!?あってる!?」

実況の人が驚くのも無理はない。

周りのトレーナー達もざわついている。

なぜなら普通選抜レースを続けて走る事なんかはしないからだ。

先「おいおい!?何かの間違いだろ!?」

選抜レースを複数走るにしても同日は避けるのが当たり前だ。

なぜなら体にかかる負担が尋常ではないからだ。

実「先頭を走るのはインパクトターボ!信じられないでしょうが2度目のレースでも大逃げ!本当に大丈夫なんでしょうか!?」

イ「うりゃりゃー!」

先ほどのレースの疲れを全く感じさせない走りに私は完全に魅了されていた。

先「無茶苦茶だ!こんな事を続けていたら足がもたんぞ!」

先輩の言う通りだろう。

ウマ娘の足は繊細だ。

勿論人間に比べれば頑丈だ。

しかしその強すぎる脚力に耐え切れないウマ娘も多い。

骨折や屈腱炎といった症状はウマ娘とは切っても切り離せない怪我だ。

まして大逃げは通常よりも負担の大きい走りと言われている。

まさかの展開に会場がざわついている。

実「インパクトターボまだ先頭!本当に走り切れるのか!後ろの娘達は間に合うのか!?まもなく残り200メートル!」

イ「抜かせないぃ!」

実「なんと2戦目も逃げ切ったインパクトターボゴールイン!」

流石に疲れたのかゴール後に大きく息をつくインパクトターボ。

私はそんなインパクトターボから目を離せずにいた。

先「やれやれ・・・癖ウマ娘は数多く居るがあんなのは指導できんな。どうあがいても怪我するのがみえている」

先輩はそう言って立ち去って行った。

2回目の勝利にもかかわらずインパクトターボにはやはりスカウトが向かわない。

自分では扱いきれないと思われたのだろう。

私はただ茫然と彼女を見つめ続けた。

 

『第3話 逃亡者魂』

 

選抜レース2日目・・・

前日のちょっとした騒ぎはあったものの問題があったわけではないので今日もレースが行われる。

今日は選抜レース最長の2000メートルレースだ。

まだ担当ウマ娘をスカウトできていない私は今日もレースを見学しにきていた。

先輩は今日は予定があるとの事で一人だ。

さすがに今日はスカウト候補くらいは見つけなければならないと気合を入れる。

そんな事を思いながら選抜レースを眺めていると・・・。

実「まもなく選抜レース2000メートル第4レースを開始します。出走ウマ娘は係員の指示に従ってゲートに入ってください」

主「あれは!?まさか!?」

私の視線の先にはあのインパクトターボが居たのだ。

実「スタートしました。1人飛び出したウマ娘・・・まさかとは思ったけどインパクトターボ!?またぁ!?」

実況の人も三度の出来事に驚愕を隠せない。

周りのトレーナー達も昨日の出来事を覚えている為にざわつきが止まらない。

イ「うりゃりゃりゃー!」

しかもまたまた大逃げだ。

もはやアピールとしては意味がないどころか逆効果だ。

1度の大逃げならまだしも3度も続けての大逃げ。

その上選抜レースに立て続けに出るなんて常識ではありえない。

実「イ、インパクトターボ先頭!その走りは無謀なのか挑戦なのか!後方ウマ娘達は流石に落ち着いた様子でレースを進めています!」

何度も同じ作戦しかしないインパクトターボに他のウマ娘達も彼女を無視して走る事にしたらしい。

実「インパクトターボが先頭のまま最終直線に入りました!後方ウマ娘達も上がってきます!」

イ「負けないぃー!」

実「インパクトターボまだ先頭!届くのか!後方ウマ娘達は伸びが悪い!インパクトターボなんと逃げ切ったゴールイン!」

まさか3回共に逃げ切ってしまうとは誰も思わなかったのだろう。

トレーナー達の騒めきが止まらない。

しかし誰一人としてインパクトターボをスカウトしようとするトレーナーは居なかった。

それはそうだろう。

こんな無茶をするウマ娘を指導できるとは到底思えなかったからだ。

結局私も彼女に声をかける事は無く選抜レースは終わりを迎えた。

 

そして夕方・・・

 

主「結局誰もスカウトできなかったな・・・」

今年1年は先輩の補助でもするしかない。

そう思いながら私は夕暮れの学園内を歩く。

イ「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・もう一本」

主「あの娘は・・・」

トレーニングコースで一人走っているのはインパクトターボだった。

主「おーい、キミ」

イ「はい?私に何か御用ですか?」

主「昨日も今日も選抜レースに出てたのにトレーニングするなんて無茶でしかない。怪我してもおかしくないぞ」

私は思わず彼女にそう言った。

イ「ああ大丈夫ですよ。私今まで走りで怪我した事ありませんから!」

主「それにしたってあんな無茶しなくたっていいじゃないか。あれじゃあスカウトがつかないぞ」

私はツイツイ思っていたことを言ってしまった。

イ「あー・・・その・・・笑わないで聞いてくれますか?」

彼女は恥ずかしそうに話しをしてくれた。

イ「あれは私がトレセン学園に入学する前に母が本物のレースを見ようって連れて行ってくれた時の事なんです。年末の有記念でした。その時私は憧れに出会ったんです」

主「憧れに?」

イ「はい、フォームはボロボロ。速度も速そうじゃない。1番人気のウマ娘には到底かなわない実力しかないはずの小柄な青いウマ娘ツインターボ先輩・・・。それはロウソクが燃え尽きる直前の一瞬の輝きだったのかもしれない。でも私には何よりも輝いて見えたあの走り。私もあんな走りがしたい・・・ううん、あの走りを超えたいと思ったんです」

インパクトターボはそう言って笑った。

私はその笑顔に魅了されていた。

 

『第4話 浪漫を目指して』

 

先「それで、結局昨日も収穫は無しか」

主「はい、何人かには声をかけたんですが・・・」

先「まあそこは相性もあるからな」

自販機で缶コーヒーを買ってベンチに腰掛ける。

主「・・・先輩」

先「なんだ?」

主「憧れを追い続けるのは悪い事でしょうか?」

先「何とも言えんな。憧れで強くなるウマ娘もいる。逆に憧れに潰されるウマ娘もいる。どちらになるか、それはトレーナー次第とも言えるだろうな」

確か先輩は指導していたウマ娘が・・・。

先「俺はあいつの憧れを形にしてやれなかった。だから俺は無理な憧れを抱くウマ娘を指導する事を止めた。そこが俺の限界だったからだ。だがお前はまだトレーナーとして未熟で未知数だ。憧れを抱くウマ娘をそこまで導けるのか、はたまた憧れに押しつぶされるのかは誰にも分からん。今、お前がどうしたいか、だ。俺にはそれ以上言えんよ」

主「先輩・・・」

私は先輩の言葉に覚悟を決めた。

主「インパクトターボを・・・スカウトしたいと思います」

先「・・・やはりか」

主「気が付いていたんですね」

先「お前があの娘を見る時の目が嘗ての俺にそっくりだったからな。潰れるなよ。お前も、あの娘も」

主「はい、がんばります」

私は先輩に頭を下げると缶コーヒーを飲み干してインパクトターボを探して歩き始めた。

 

練習コースを探し回るがインパクトターボは見当たらない。

あの様子だと誰かにスカウトされたとは思わないのだが・・・

暫く探しているとようやくインパクトターボを見つけた。

イ「おや?アナタは昨日も会いましたね」

主「やあ、あれからスカウトは来たかい?」

イ「今私がここに一人で居るのにそれを聞くのは少し意地悪じゃないですか?」

インパクトターボはちょっと怒りながらそう言った。

主「じゃあ私がもし貴女のトレーナーになるって言ったらどうする?」

イ「ええ!?本当ですか!?」

主「ああ、君が言った憧れ、本物にしてみないかい?」

イ「トレーナーさん、逃げしかしない私を指導するなんてアナタも浪漫派ですね」

浪漫派と言われればそうなのかもしれない。

イ「ならば見ててください。その浪漫、本物にしてみせます!」

インパクトターボはそう力強く宣言した。

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