凍結極寒世界フロストパンク〜鋼の指導者たち〜   作:アイゼンパワー

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前回のあらすじ
ニューホーム御一行ロンドンからエクソダス
クッソ辛い旅を続けたらなんか蒸気ジェネレーター見つけた
カルデア何故かこの並行世界を捕捉、藤丸を送って観察することに
送ったはいいけど寒すぎて翻訳機壊れた
ニューホーム御一行の長と会見
ダヴィンチちゃん呼ばれてないけど飛び出てジャジャジャジャーン!

以上


新たな家 その2 〜質問〜

一行の対談の場はテントの中に移された。

『じゃ、改めて自己紹介をしよう!我々は人理継続保障機関カルデア。私は技術顧問を務めるダヴィンチ!』

「僕は藤丸、一応マスター……えっと、わかりやすく言うなら隊長みたいな立ち位置かな?」

「私はマシュ・キリエライトです!先輩の補佐をしています。」

カルデア一行の自己紹介は終わった。今度はニューホームの番である。

⦅私はジェレマイア・ジェイコブ・マカリスター。ここ、ニューホームの長、ロンドン脱出の発案者だ。⦆

⦅アーサー・デリック・クロイドン。マカリスターの補佐をやっております。気軽にアーサーとお呼びください。⦆

ここで自己紹介は一通り終わった。

しかしどちらにしても疑問が多い。

ニューホーム側としては支援をもらえるのか、カルデアはなんなのか、さっきの青い何かはどうやったのか。

カルデア側としては何故このような状況になったのか、あの鉄柱はなんなのか。どうしてロンドンから脱出したのか。

⦅質問があるんだが、いいかな?⦆

先に口を開いたのはキャプテンーーマカリスターだった。

『もちろん、どうぞ?』

返答したのはダヴィンチちゃん。藤丸の意思はどこに行った。

⦅カルデアというのはどこにあるんだ?この極寒の世界で今も暖かさを保っているなど信じられない。⦆

藤丸が説明しようとするが……

『カルデアはねぇ……うーん、説明しづらいけどね、一言で言うと並行世界にあるんだよ』

またもやダヴィンチちゃんが答える。可哀想な藤丸である。

⦅並行世界……並行世界ってなんだ?⦆

1886年、並行世界という概念はなかった。まだ世界は一つであり、複数の世界があるなど想像すらされていなかった時代。

『あー、そこからかぁ……まぁ、微妙に違う歴史を辿った世界とでも考えればいいよ。カルデアはそっちのように寒くなってない。でも人類は滅びかけてる。それだけさ。』

マカリスターはあまり信用していないように見える。当然だろう、藤丸はそう思った。こんなトンチキで色々省かれた説明を聞いて信用するわけがない。

『こっちからも質問させてもらうよ』

⦅待て、まだ聞きたいことが『まーまー、あとでいいじゃないか』うむ……⦆

まだ聞きたいことがあるようだが無理矢理割り込んで黙らせた。流石ダヴィンチちゃん、そこに痺れないし憧れないがフリーダムさがとんでもない。

『まず簡単に……どうしてこんなに寒いんだい?なんでロンドンから脱出したんだい?』

⦅一つづつ聞き給え。⦆

簡単にと言ったのに一気に二つの質問をしてきたダヴィンチちゃんをあまり良く思っていないように見える。マシュはこの対話の行く末を心配した。この集落から叩き出されないだろうかと。

⦅まずは、そうだな。寒くなった原因から話そう。⦆

マカリスターが話す

⦅政府によると1885年……つまり去年だな……にどうもふたつの大火山が噴火したらしいが少なくとも私は信じていない。⦆

『というと?』

⦅火山灰程度でここまで寒くなるわけがない。なったとしてもこんなに長期間続くものだろうか?いや数ヶ月も経てば雨なりなんなりで地上に降ってきてまた太陽が顔を出すはずだ。⦆

マカリスターが持論を説く。現在の研究において、火山灰および火山から出る噴出物が形成する火山雲は最長でも2、3年しか保てないし、1000年間最大の火山噴火で実際に温度は低下したものの、それはたったの5℃くらいであった。

しかしこの世界はどうだ、ここはおそらくブリテン島ーー海を越えたのでグリーンランドかもしれないがーーロンドンから北に数百マイル。ここでは-20℃くらい普通かもしれないが、脱出前のロンドンでは-49℃を記録していた。ありえないことだ。とてもではないが火山噴火では説明がつかない。

『つまり……不明と言うことかい?』

⦅そうだ。⦆

ダヴィンチは少々不服そうだ。

好奇心が満たされなかったのが原因だろう。

⦅次の質問は何故ロンドンを脱出したかだったな?⦆

『そうだね、素人目で申し訳ないがロンドンにとどまった方がインフラも整っていて、より暖が取れる環境だったのではないかな?』

⦅ふむ………君は、今、南の方がより寒いと言うことを知っているかね?⦆

これもまた考えられないことである。

一般的には日照時間の長い南方、つまり赤道周辺や南半球の方が気温が高いと言うのは良く知られているがこの世界では違うのだ。

謎の寒波襲来の結果、太陽は姿を隠し、南方は一気に-60℃まで冷え込んだ。原因はいまだに不明である。

これを知らないものはよく『なんで北に行くんだい?南の方が暖かいと鳥でさえ知っているのに』と言うが、その鳥は長い飛行の結果、餌ひとつない大地に辿り着くことすらなく、空の上で凍って、死ぬのだ。

『それは知らなかったな』

⦅その上、あそこはただでさえ慢性的な石炭不足に悩まされていた。全ての家庭や施設が一斉に暖炉をつけ、石炭を消費した結果どうなったか容易に想像できるだろう?⦆

ロンドンは大寒波に襲われる前から各種施設に使用する石炭を他都市からの輸入に頼っており、自ら生み出すことはできなかった。

よって大寒波初期は余裕を持って耐えることができたが、それが長引けば長引くほどインフラは雪や風によって破壊され、ついに石炭は運び込まれなくなり、運命の時が来てしまったのだ。

⦅石炭は尽き、燃やす木さえもなくなった。ロンドンはただ死を待つ街と化したのだ。ところが、先人たちは先見の明を持って石炭が豊富に残されている北極圏に複数の動力および発熱等々の複合した機能を持つ素晴らしい発明品を建造した。それがこの鋼鉄の柱、ジェネレーターだ。⦆

言い終えたのち、マカリスターは両手を広げ、ジェネレーターを抱くような仕草をした。

『なるほど……つまりは石炭やらなんやらの資源のための大脱出だったんだね』

⦅そうだ、ロンドンに残っても死を待つだけ、ならば、未来を求めて、“ウィンターホーム”に向かって旅立とうと言うのが我がキャラバンの目的だった⦆

『だった……?』

ダヴィンチは“だった”と言う部分が引っかかるようだ。

今の目標はなんなのか、ウィンターホームとは何か、聞きたいことは山ほどあるがまずはマカリスターの説明を聞こうではないか。

⦅我々は疲れ果てたのだ。もう体力は尽き、食料もわずかしかない。だからここを暫時的な住居とする。ここで身と心を癒し、その上でウィンターホームに向かって再び旅立つのだ。⦆

⦅サー、よろしいでしょうか。⦆

テントの幕をめくり、一人の男が入ってくる。

⦅ああ、いいぞ。⦆

マカリスターが答える。

⦅ワークショップの技術者からの伝言です。“キャプテン、ビーコンの研究が終了しました。これで熱気球を飛ばし、周囲を観測してその情報をもとに遠征隊を送り出すことができます。次の研究を指定してください”だそうです。⦆

男が報告を終えた。マカリスターは少し悩む様子を見せ、地図を広げた。真ん中には巨大な円柱が描かれており、円形に斜線が引かれている。その上、赤、橙、水色、青といった風に区域が色分けされている

⦅室内温度が低い、場所によっては作業ができないだろう………よし、スチームハブを研究させろ。それが終わったら暖房だ、いいな?⦆

⦅はい、サー。⦆

そして男は出ていった。さて、ビーコンを建てるよう指示を出そう。

『私たちはおじゃまかな?』

「そのようですね。」

「そうみたいだね。」

マシュと藤丸が返答する。

しかしマカリスターはそうは思ってないようだ。

⦅健康な男女をタダで食わせる余裕はうちにはない。働きたまえ。建築の道具は倉庫にある、やり方は周りに教えてもらえ。さぁいけ、ぐずぐずしている暇はないぞ!⦆

そう言ってテントから追い出してしまった。

困ったのは藤丸である。特異点で家を建てたことはあるが、全て木造だったりレンガ製だったのだ。このよう鉄を多用した建築をしたことはない。カルデアにいるバッベジ教授やニコラ・テスラ、エジソン両博士なら溶接でどうとでもしてくれるだろうが、彼らにそのやり方はわからないのだ。と言うわけで周りに聞く。一番手っ取り早い方法だ。

「すいません、新入りなものでどうやって建てるかわからないのですが……」

⦅あんた新入りかい?随分とお若いじゃないの。⦆

答えたのは年配の女性だった。メガネを身に付け、腰にはリベット打ちの工具を持っていた。

⦅工具は持ってるかい?⦆

「ええ、キャプテンに持ってくるよう言われたので」

⦅あんたいい子だね、じゃあ見てなさい、こうやって鉄板に穴を開けて⦆

そう言って蒸気駆動と見られるドリルを手に持ち、回し、容易く鉄板に穴を開けた。

⦅そんでこっちの工具でリベットを打つ。⦆

圧縮蒸気によってリベットを高速で打ち込み、固定する。

⦅あとは頭をいい感じに整えるだけ。簡単でしょ?⦆

慣れた彼女に取っては簡単であろうが素人にとっては簡単ではない。

「ええ、わかりました。」

これでわかるのだから人類最後のマスターはやはり規格外である。

伊達にサーヴァントを率いて毎日世界を取り戻す戦いを繰り広げていない。日々如何に勝ち、如何に生き残り、如何に人々を助けるかに頭を悩ましているのだ。思考力は一級品である。

 

そうしてビーコンは順調に建設された。

 

時は18時、今は見えない太陽も沈んだと思われる時間帯である。

労働者諸君、器具は規定の場所に戻しておくように。仕事の時間は終了だ。

そうして労働の時は終わった。

 

テントにて

⦅キャプテン、食料が減ってきています。このままでは明後日には尽きてしまうでしょう。あと石炭も慢性的に不足しています。もっと高効率な回収法が望まれています。⦆

アーサーは問題点を洗い出し、マカリスターに伝える。

⦅あと数人が凍傷になりかけています。早いうちに救護所を立てる必要も出てくるでしょう。⦆

⦅うむ……わかってる。⦆

苦々しい顔をしながら答える。

⦅場合によっては緊急労働法の制定が必要になるでしょう。⦆

説明しよう、緊急労働法とはその名の通り、緊急事態において施設を24時間運用するために24時間労働を強いるものである。もちろん強い不満が表明されるのは目に見えていることだが緊急だから仕方がないのだ。

⦅しかしどうやって不満を抑える?一回の緊急労働でだいぶ不満が溜まることは周知の事実だろう⦆

⦅ふーむ……闘技場を立てるのも手かもしれません。⦆

⦅闘技場?⦆

⦅ギャンブルと暴力的なショーを好むものは多くいます。斯く言う私もギャンブルは少々嗜んでおりましてね…へへへ……⦆

アーサーは恥ずかしそうに笑う。それは果たして恥ずかしいことなのだろうか。

⦅それはいい案だ。すぐにでもそうしよう。⦆

 

 

そして新たな朝が来る




今回ほぼ説明会になっちゃいましたね。心情描写って思ってたよりもだいぶ難しい……
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