凍結極寒世界フロストパンク〜鋼の指導者たち〜   作:アイゼンパワー

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前回のあらすじ
自己紹介と質問に答えたよ
資源足りない!しゃあないので緊急労働法に署名
凍傷者出る前に救護所立てねば

大体以上


新たな家 その3 〜自立〜

ジェネレーターを見つけ、定住してから3日目。

遠征隊が逸れた住民を連れ戻してくれた。街が喜びに包まれ、感動の再会を祝う中で街の指導部は深刻な問題に直面していた。

ついに食料と木が底を尽きた。石炭ももうそろそろなくなるだろう。

⦅これは深刻な問題だ。⦆

マカリスターはつぶやく。

⦅今残ってる木で製材所が建てれるか?⦆

製材所、それは凍りつき、ひどく硬くなってしまった木を切り倒し、建築に使えるようにするための施設である。素手では収集できない凍りついた木を資材かできるようになる。

⦅ええ、ギリギリ建てれます。⦆

⦅よろしい、東の方に凍った林があったはずだ。そこに設置させろ。⦆

⦅はい、サー。⦆

石炭問題については今も技術者が昼夜問わず研究を行っているがまだ結果は出ない。後に任せたスチームハブや暖房の研究は既に結実していると言うのに。

⦅そういえば石炭ですが研究チームが暫時的な解決策を提出しました。⦆

⦅ほう?⦆

技術者たちが言うには、本格的な炭鉱を立てるにはまだ研究の器具が足りない。あまりにも程度が低いとのことだ。せめて作図台をくれと嘆願書を送ってきた。

⦅ふむ、石炭採掘場……?⦆

眉をひそめ、図面を見つめる。マカリスターは視力があまり良くないので何かを見る時は眉をひそめてしまう。

⦅これはどのような働きをするんだ?⦆

マカリスターは聞く。

⦅圧縮した水を用いて土を洗い流し、埋まっていた石炭を地表に浮き上がらせます。しかしこれ単体では石炭を資源化できません。別途拾い集める必要があります。⦆

しかしこれは従来と比べると効率の高い方法で石炭を地上に露出させ、拾い集めることができる。しかもほぼ無制限に。

⦅素晴らしいじゃないか、ジャンジャン建ててくれ。⦆

⦅あとは食料問題ですな。⦆

⦅一応ハンター小屋を二つと調理場を建てたが果たしてこれで足りるのか……⦆

 

 

「おはよう、マシュ。」

「おはようございます、先輩。」

あったかいとは到底言い難いが、まだ我慢できる室温を保ったテントの中で目を覚ました。

『おはよう、マシュ、藤丸くん。』

「ダヴィンチちゃん、おはよう。」

「おはようございます。」

誰と話すよりも先に通信画面が現れた。

『そっちの世界の簡単な記録を見てね、興味を持ったサーヴァントがいるんだ。』

蒸気と鋼鉄に塗れた世界、そして話を聞く限り一部で階差機関(ディファレンス・エンジン)が実用化されていた世界。これだけ聞けば誰が興味を持ったかすぐにわかるだろう。

『おはよう、マスター。』

画面に映るは鋼鉄の巨体。体の各所から高圧の蒸気を吹き出し、どこが口か知れぬが話している。

そう、階差機関製造の第一人者、蒸気の世界を夢見たもの、チャールズ・バベッジ卿である。

余談だが彼はカルデアにおいて夏になると“蒸気が暑っ苦しい”と言う理由で邪険にされるが、この世界ではまず間違いなく人気者になれるだろう。そばにいるだけで暖を取ることができる上に、その蒸気駆動の鎧は一般労働者の数倍の効率を提供するだろう。

「おはよう、バベッジ教授。」

『早速だが一つ頼みがある。いいかね?』

「もちろん。どんな頼み?」

藤丸とバベッジ卿は親密な関係を結んでいる。藤丸が数学の難問にぶつかった時、教えてくれるのはもっぱら彼である*1

『私をそちらにレイシフトさせてほしい。』

彼は優れた頭脳を持っている。しかもサーヴァントだから食料もいらない。ただ問題が一つある。

⦅おはよう、客人方。⦆

マカリスターの同意である。

「マカリスターさん、ご相談があるのですが……」

⦅なんでも言ってくれ、資源生産がある程度安定してからなら移住も許可する。まぁ……暖かいところからここに移住しようとする変わり者はおらんだろうがなぁ……⦆

話を聞くに石炭採掘場と製材所なるものを建造したためとりあえず木材と石炭には困るなくなったようだ。

救護所もたんまり建てたが食料と人がとにかく足りないらしい。

⦅あまりにも人が少ない。凍傷者の救護のために救護所も建てたがいかんせん人が足りん。あまりにも足りない。もし医者や技術者を連れて来てくれると言うなら歓迎しよう。⦆

それならば話は早い。

「えっと、我々カルデアの中でも優れた技術者の一人を連れて来たくてですね……」

⦅連れて来てくれるなら嬉しい、是非にも連れて来てくれ。⦆

 

 

⦅みんな、持ち場につけ!やるべきことは多いぞ!⦆

 

低く、太い汽笛と共にアーサーが労働時間の開始を宣言し、彼もまた自分の持ち場についた。彼の持ち場はジェネレーターの足元……マカリスターと一緒にジェネレーターの管理を行い、街を導くことである。

 

そして自らの職場に着いた時、見慣れない影があることに気づいた。

それは大きく、分厚く、まるでロンドンにいた頃に見たオートマトンのようだった。

⦅キャプテン、いつの間にオートマトンを拾ったんですか?⦆

⦅アーサー、ちょうどいい。紹介しよう、階差機関の発明者のチャールズ・バベッジ博士だ。⦆

アーサーは一瞬耳を疑った。あの世界的有名人かつ、高名な貴族でもあるあのバベッジ卿*2がこのような辺境にいるとは夢にも思ってなかったのだ。

⦅こ、これはサー・バベッジ。ご機嫌麗しゅう…オートマトンなどと間違えるなど……申し訳ありませんでした。⦆

見るからに腰が引けている。

「そのような固い言葉遣いは不要である。我はこの世界のバベッジではない故。」

⦅は、はぁ……⦆

⦅どうだ!アーサー、並行世界とはいえ、あのバベッジ卿がこのような土地に来てくれたんだ。未来が約束されたようなものじゃないか!⦆

キャプテンは随分と浮かれているようだ。無理もない。あの階差機関を発明した優秀な技術者が助力してくれるとなればもう怖いものはないと言ってもいいだろう。

 

「早速今の研究環境を見せていただきたい。」

⦅どうぞこちらへ、しかし定住したばかりですのでろくな設備もありません。昨日の夜に作図台を設置したばかりでしたので。⦆

「なるほど。であればまだまだ発展途中ということだ」

⦅えぇ。そうですとも。さぁこちらがワークショップです。あとは中の技術者とお話しください。⦆

「うむ、そうさせていただこう。」

 

マカリスター氏はその強面と違って社交性が高いようだ

 

⦅アーサー、派遣した遠征隊から何か連絡は?⦆

⦅まだありません。彼らは目標の鉄橋に向かっています。あと少しで………今ですね、連絡が入りました。⦆

事前に派遣しておい遠征隊は道中幾つもの遺跡や廃棄された工場を漁り、豊富な資源を蓄えていた。彼らに何かあってはならない。

⦅どうやら、えー、オートマトンを発見したようです⦆

⦅ほう、オートマトン!⦆

椅子の肘置きを叩き、マカリスターは立ち上がる。

オートマトン、それは現状人類の発明した最も優秀な労働力であり、兵器にもなりうる。スチームコアの力で石炭や水の補給を必要とせず、その四つ足で半永久的に動き続ける鋼鉄の巨獣である。しかも基本的にパンチカード*3を変えるだけで建築から石炭採掘、鉄鋼精製までなんでもできるときた。

⦅して、それは動くのか?まだ働けるのか?⦆

鼻息を荒く、目を見開いてアーサーに詰め寄る。

⦅え、えぇ。そのようです。⦆

⦅素晴らしい!街に送らせろ、今、すぐにだ!⦆

⦅はい、キャプテン。⦆

こうして一旦アーサーは退室した。

オートマトン、ああオートマトン。、オートマトン。

彼らはいかに寒かろうが、食料が無かろうが休まず働き続ける。効率自体は人間の労働者より劣ると聞いているが二倍の時間働けるため実質的には人よりも高い効率を誇る。何より文句を言わないと言う点が素晴らしい。

 

しかし今後はどうしたものか、家々を温めないと間違いなく病気の者が増えるだろう。テントから脱却せねばならない。

 

そう考えた彼はバベッジがいることも忘れてワークショップに電話をかけた。

 

 

ジリリリリリリ

 

ジリリリリリリ

⦅はい、ワークショップ。⦆

技術者の一人が電話を取った。

世に名を響かせる偉人との対談を中断させられたせいか、声が妙に苛立っている。

⦅マカリスターだ、家の設計を頼めるか?⦆

マカリスターは用件を述べた。

それを聞いた技術者は苦い顔をした。

⦅それだけのためにバベッジ博士との会話を中断させたんですか?もちろんできます。話はそれますが、今スチームコアの仕組みと製造について話していたんですよ、彼はやはり偉人と言われるだけあります。なんとこれを製造可能だと言うのです。しかも階差機関等の計算機さえあれば一両日中に量産の目処を立てて見せるとまで!キャプテン。素晴らしいことですよこれは!⦆

スチームコア。蒸気の供給だけで半永久的に動き続ける上に熱をも供給する人類科学の結晶。彼らには仕組みが理解できず、ほぼブラックボックス扱いであり、多数の重要施設に必要なものの製造方法が何一つない。

⦅それは素晴らしい!しかし今一番重要なのは鉄と家だ。寒波が来ることが観測隊から伝えられている。せめてテントからは脱却しなくては。⦆

声が深刻さを醸し出していた。もしなんの準備もなく、寒波が直撃すれば病人が続出し、医療施設が足りなくなり、街は回らなくなるだろう。まともな住宅が欲しいなどと贅沢は言わない。せめて宿泊小屋を設けなければ。

⦅そのあとは製鉄所の研究を頼む。家を建てようにも鉄が足りないのでは話にならない。⦆

⦅……今日は長い仕事になりそうですな。夜食の手配を頼みますよ。⦆

⦅もちろん、調理場とハンター小屋に捻出するよう言っておこう⦆

 

ガチャリ

 

電話が切れた。

 

⦅はぁ……キャプテンも無理を言う。しかしこれもより良い明日のためか……⦆

そう言いながらバベッジ卿に向かって歩いていく。

⦅サー、申し訳ありませんが仕事が入りましてね。スチームコアの談義については後にしましょう。⦆

「うむ、君とは実にいい話し合いができた。名前を聞いておきたい。」

バベッジは満足そうに微笑み(顔がどこかすらよくわからないが)、名前を聞く。

⦅光栄です、サー。私はジョン、ジョン・マクマナスです。以後よろしくお願いします。⦆

「よろしく、マクマナス君。ところで、仕事とは何かな?我も手伝えるようなものかね?」

バベッジが問いかける。彼はこの世界の技術を見て、聞いて、知った。今彼が望むことは一つ。夢見ていた蒸気の世界の一員となることだ。

⦅いや、博士の手を煩わせるほどでは……⦆

「何かさせて欲しい。あのように夢見た蒸気世界が目の前にあるのだ。我にも何かさせて欲しい。」

⦅そこまで言うのなら……製鉄所の設計をお願いできますか?我々は家の設計を行うので。⦆

この男、厄介な案件の方を丸投げした。しかしそれもバベッジの優秀さを見込んでのことだろう。そうに違いない。たぶん、きっと……

 

 

 

そして夜は更けていき、新しい日を迎えようとしていた。

*1
我がカルデアにモリアーティ教授はいらっしゃいません。テスラ博士はいるけど

*2
この世界では階差機関の発明によって大英帝国にかつてない発展をもたらした功績により、領地と爵位を与えられ、貴族になった

*3
現在で言うプログラムにあたるものである




今思ったけどこのキャプテンってサーヴァントとして来てくれれば第一、二異聞帯割とすんなり行くのでは(purposeの法律から目を背けつつ)
純粋な子供ならきっと信じてくれるさははは(白目
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