もう一人のサイヤ人が桃白白の弟子になる話   作:麻寿津士

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桃白白が好きすぎたので初投稿です。
よろしくお願いします。


プロローグ
序 月夜の怪猿


「な、なんだ…あれは……」

 

桃白白は世界一の殺し屋としてのプライドも武道家としての自負も忘れ、ただ茫然と目を見開きぽかんと口を開けた。

 

こうこうと光る眩いほどの満月が、ビルほどもある巨大な怪物の姿をどこまでも鮮明に浮かび上がらせる。

毛むくじゃらの体と長い尻尾、毛の無いつるりとした顔と手足は、確かにどうみてもサルの類だった。

不気味に赤々と燃えるように輝く瞳と鋭く突き出た牙は、その顔つきを恐ろしく粗暴なものにしている。

 

大の大人一人分はありそうな拳をふるたび、硬い岩の崖は崩れ、砕け、こんもりとした土山になる。

だんだんと足を踏み鳴らせば重機でならしたような、なだらかで平らな不毛の地が出来上がる。

咆哮は車ほどもある気弾となり、着弾した一帯は更地と化す。

 

あたりに広がる荒野はこうして作られたものだと嫌でも気づかされ、度肝を抜かれた。

思わずごくりと生唾を飲み込み、息を整えようとする。

冷たい汗が一筋背中を伝った。

 

桃白白が元々この地を訪れたのは、「化け物を退治して欲しい」という依頼を受けたからだ。

いつもの唸るほど金だけは持っている悪党たちと違い、今回の依頼人は近隣の善良な村人たちだった。

周囲の村々から根こそぎかき集めただろう1億ゼニーを見たときから、ある程度の脅威を予想はしていた。

無力な集団から捧げられたそれは、単純な対価ではなく、覚悟の表れに他ならなかったからだ。

 

「まさかこれほどとはな……」

 

岩陰に隠れ様子を窺いながら、いつこの岩も石ころになるかわからない、と眉をひそめた。

勝てない、とは思わない。しかし真正面からやり合えばただでは済まないだろう。

グレネードランチャーでも持ってくれば別だろうが、生憎今は持ち合わせがない。

中途半端な手りゅう弾では悪戯に注意を引くだけだ。

 

生き物としての作りが余りにも違いすぎる。

僅かな手の震えを感じ、どっと心臓がなった。

もしかすると人生初めての怯えに近い衝撃を感じ、汗ばんだ手を握り締める。

 

やみくもに手を出せない相手ならば、やるべきことはまず観察だ。

よく見れば動きは酷く単純で直線的であり、隙だらけだった。

いわば狂暴な獣でしかなく、武術に通じるような洗練された技術は何も感じられない。

攻撃も避けるのは難しくないだろうが、如何せん範囲が広すぎる。

 

そんな風に殺す算段を立てはじめたところで、

バチリ

と、目が合った。

 

「チッ」

 

舌を鳴らし、その場から飛びのく。

 

(気配は消しているつもりだったが、野獣の勘と言ったところか)

 

やみくもに振り回された腕の、裂くような暴風が肌に当たる。

ドスドスと緩慢にも見える動きで近づき、手を伸ばしてくる。

大きい分動作は読みやすいが、一挙一動も当然大きい、距離はだんだんと縮まり始めている。

 

(いっそここで仕掛けるか)

 

雨が近いのか分厚い雲がにわかに立ち込め、空を隠す。

昼間のように降り注いでいた月光が遮られると、まとわりつくような夜闇が辺りを包む。

指先に込められた気が、ライターのように仄かに淡く光る。

 

「どどん波――!!」

 

雷のような鋭い一閃が突き刺さるように放たれ――虚空へ吸い込まれた。

 

「何ィ!?」

 

避けられたわけではない。それどころか大猿の動きは硬直している。

いや、既に大猿と呼べる大きさではなかった。

ぽつぽつと振り始めた雨の中、溶けるように怪物はみるみるうちに縮んでいく。

 

「どういうことだ……?」

 

警戒しながら近づくと、大猿がいたはずの場所には小さな肌色の塊がうずくまっている。

それは、どこからどうみても、殆ど赤ん坊に近い幼い子供だった。

怪物の姿など影も形もない。ただ、そうであったと主張する様な長い尻尾がくるりと体に巻き付いているだけ。

 

「………」

 

雨に打たれながらすやすやと眠る子供を眺め、桃白白はじっくりと考えた。

じっくりと顎を擦って考え、懐にあった風呂敷で子供をくるむと荷物のように結び目を掴む。

 

依頼主の元を訪れた殺し屋は、怪物をこの地から追い払いはしたものの殺してはいないという理由で1億ゼニーは受け取らなかった。

そうして彼は粗暴な子供を連れて、姿を消した。

 

 

 




主人公は狂暴なサイヤ人なので、運搬中は暴れるたびに桃白白が殴ったり〆たりして大人しくさせています。
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