もう一人のサイヤ人が桃白白の弟子になる話   作:麻寿津士

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其之八 遺された番人

先ほど見たレッドリボン軍のものより一回り二回り大きな潜水艦。

ガソリンスタンドで見るような給油機に、ガソリンタンク車。

メンテナンスのためだろうか、巨大なクレーンや鉄橋のような通路もあった。

高い天井の下には比喩ではなく、三階建てのビルがそのまますっぽり収まっている。

そこは紛れもない、立派な港だった。

 

「すっげ~~!」

「ひゃ~~っ!」

「海賊たちの港だわ!」

「こ、こんなところに……!」

 

狭い通路を抜けた先、突然広がった巨大な空間に悟空たちは驚きというより、感嘆に近い声をあげる。

 

「うわ、でかい奴だけじゃなくて、ちっさい潜水艇まで何台かある!

 ドラム缶は、これ、燃料?」

「ほら穴の中にこんなすげえとこがあったんだなぁ」

「これじゃあ海賊の基地が絶対に発見されなかったわけね……!」

「これで宝物が締まってあるのは確実になったってわけだ!」

 

意気揚々とあたりを見て回っていると、ブルマが立ち止まり潜水艦を見上げる。

 

「ここにこれがあるってことは、まだほかに洞窟の出口があるんだわ」

「え?」

「なんで?」

「だって、昔はカプセルがなかったのよ。小さくして持っていけないわ」

「あ~、じゃあこの港を潜っていくと、どっかでまた海に出るのかぁ」

「そういうこと」

 

それをじっと隅で聞いている人影が一つ。

軍服姿に涼やかな顔、あのブルー将軍である。

海賊たちの隠し扉を使い、悟空たちとはまた別のルートでこの港にたどり着いていた。

 

なお、部下たちは例の通路で全滅した。

念のため補足しておくが、彼らが間抜けなわけではない。ブルー将軍が優秀なのだ。

少なくとも、罠を抜けるためのスイッチの存在を見抜いた洞察力は、かなりのものと言える。

そして、彼は戦闘面においてもかなりの自信があった。

にもかかわらず、こうして姿を隠している理由もきちんとある。

 

「今ここでガキたちを殺してしまうより、ドラゴンボールを宝を奴らに発見させた方がおりこうさんね……」

 

そうぽつりと溢したところ、

 

「ん!?何かいるぞ!」

 

悟空の言葉を聞き、さっと壁に張り付く。

 

「レッドリボン軍か!?」

「違う!人間の気配じゃねぇ!」

「そこだ!どどんっ」

 

ピッとフーイの指先が真っすぐビルの入り口を指さす。

 

「波ァ!!」

 

真っすぐにとんだ光線の先で、何か硬いものが割れる音がした。

と、洞窟全体がぐらつく。

 

「わわっ」

 

パラパラと降ってくる小石に思わず頭を覆うと、ひゅっと何かがブルマの目の前をかすめた。

 

「きゃ、きゃああああ!!」

 

髑髏の顔、長く伸びた頭、長い尻尾、ローラーで走る姿は明らかに生き物ではない。

恐らくは海賊が侵入者対策に使っていたロボットなのだろう。足のあたりには番号が入っている。

左腕にはマシンガン、右腕には剣。が、剣は根元のあたりからポッキリ折れている。

先ほどフーイのドドン波が当たったのはどうやらこれらしい。

 

ブルマに届かなかったことで武器が壊れている事を認識したのか、ロボットはあっさりと柄の部分を捨てた。

息つく間もなくマシンガンを構え、弾をバラまき始める。

咄嗟にクリリンとフーイは飛びのき、悟空はブルマを抱えて横へ避けた。

 

「こいつ!」

「ダメよ!」

 

再びドドン波を撃とうとするフーイをブルマが止める。

 

「あんたがまたさっきのを使ったら、洞窟が持たないわ!

 孫くんもかめはめ波はつかっちゃだめ!」

「うげぇっ、めんどくさい!」

「わかった!こんにゃろ!」

 

つぶてのように悟空が駆けだし、勢いよく蹴りつける。

クリリンもその動きに答えるように腕を殴りつけた。

息の合った動きで二人はロボットへ交互に攻撃を加え続ける。

が、ロボットはびくともしない。

鋼鉄の拳が素早く動き、クリリンの方を吹っ飛ばす。

 

「大丈夫かクリリン!」

「イテテ……あ、ああ……!

 あいつかなり強いぞ!」

「やるなぁ!」

 

と、動きを止めた二人を狙って再びロボットがマシンガンを撃ち始めた。

四人はそれぞれ車や木箱の影に隠れ、なんとかやり過ごす。

 

「ねぇっ!悟空はここに私と残って!

 クリリンとブルマは先にドラゴンボール持ってきてよ!」

「大丈夫なのか!?」

「いいこと思いついたからダイジョ〜ブ!」

「よーしっ!」

 

クリリンの問いかけにぐっと親指を突き立てたフーイ。

それを見て悟空は再び勢いよくロボットへ飛び蹴りを食らわせ、注意を引く。

 

「いまだ、いけ!」

「がんばれよっ」

 

奥の通路へ向かって走り出した二人を見送り、フーイと悟空はロボットと正面から対峙する。

そのすきをついてもう一人、通路へ駆け込んだがそれには気づかない。

 

「で、いい考えってなんだ?」

「ようは、洞窟が壊れなきゃいいわけじゃん」

 

突進を同時に避け、各々構えをとる。

ゴニョゴニョと告げられた言葉に、悟空は力強くうなずいた。

 

「じゃっ、よろしく!」

 

フーイは勢いよく飛び上がり、そのまま潜水艦の上をめがけて壁を駆け上がる。

骸骨の節穴じみた目がその動きを追って武器を構える。

しかし、

 

「こっちだっ!」

 

よそ見をした間に悟空がそのしっぽを掴み、思い切って水中へ向かって投げた。

重たい体は水に沈んでいく。

それを確認し、彼はフーイから言われたとおり如意棒を使って遠くからその体を固定した。

水中でも動けるのか、棒を動かそうと作り物の手足をバタつかせている。

 

「残念でした!」

 

水面へ穴を開けるように、光線が真っ直ぐに伸びる。

頭部を正確に撃ち抜かれたロボットは、ビクッと震えるように動きを止めた。

次の瞬間、ひと呼吸おいて水柱が上がる。

 

あとには浮かんですら来ない、鉄のクズや部品たちが静かに港の底へ沈んでいった。

 

「「イエ〜イ!」」

 

思わず二人はハイタッチを交わす。

 

「よし、急ごう!」

「うん!」

 

ブルマたちの後を追って通路へ走り出す。

途中分かれ道があったものの、地面に書き残された矢印の方向へ迷いなく進んだ。

それが、書き換えられたものだとも知らずに。

 

 

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