「ま、まずいよかなり崩れ始めてきた!」
「急がないと!!」
パラパラと小石やほこりが降ってくる中、クリリンとブルマは必死に足を進める。
走り続けているうち通路は行き止まりになってしまったが、代わりにポツンと井戸があった。
二人は水の中に飛び込み、さらに先へと進む。
水からあがるとこじんまりとした、岩肌の空間に出る。
目の前には今までの警備からすれば随分と無造作に、人が入れるほど大きな宝箱がおかれていた。
蓋を開ければ縁のあたりギリギリまでみっちりとお宝が投げ込まれている。
色とりどり、大小さまざまなの宝石、ネックレス、金塊、中にはサーベルや王冠まで。
「わわわわ――っ!」
「す……すげ……!!やった――っ!」
「こ、これ物凄い金額になるわよ!」
「ほっほっほ……」
手を取り合って喜んでいる後ろから、ゆっくりと近づく金髪碧眼の男。
「残念ながら、その宝はレッドリボン軍が頂くわよ」
「えっ!?」
「レ、レッドリボン……!?」
得意げだが穏やかに、ブルー将軍は微笑んだ。
「ふっふっふ……戦うつもりなら、やってやってもいいぞ……でも相手が悪かったようだな」
自信満々にクリリンが立ちふさがり、不敵な声で言う。
「ほう……大した自信ね……」
「さあ、こいよ」
お互いに構え、鋭く跳ぶ。
しかし、クリリンの拳が届くよりも先にブルー将軍が素早く顔を殴る。
小さな体が岩にぶつかり、ブルマの甲高い悲鳴が響く。
「うぐぐ……」
「ほ――っほっほっ、威勢が良かった割に実力はそんなものなの!?」
「よ…よ~~し……」
何とか起き上がると小さな体が勢い良く地面をけり、ブルー将軍の方へ突っ込んでくる――
――動きのまま、停止する。
戸惑いで動きが止まるがそれも一瞬の事で、何かを悟った彼ははっと上を見上げた。
しかし、クリリンもその一瞬を見逃さず、倒れるほど強く蹴りつける。
「へへんだ!恐れ入ったか!」
「く……くっ!……わ…私の美しい顔を……けけ…蹴ったわね……」
指の腹で地面を引っ掻き、弱弱しく起き上がったブルー将軍に、けれど目立った外傷はない。
ただ、何かが伝う感覚で思わず鼻に手をやると、赤い血がぺたりと手のひらについた。
「血!?鼻血!!」
異常に動揺した様子でブルー将軍は体をわなわなと震わせる。
「こ…こ…この高貴で誇り高き私が……は…はは…鼻血をたらして…………鼻血を……」
「ど、どうしたんだ?」
「最低っ!私ったら最低っ!」
立ち上がった彼は涼しい表情がすっかり歪み、殺気立った顔をクリリンに向けた。
「よ…よくもやってくれたわね……!ゆ…許せないわ私許せない……!」
キッと睨んだその美しく、青く、澄んだ瞳が妖しく眩しく輝く。
見つめられたクリリンはびくりと肩を揺らす。
そして、そのまま動けなくなった。
目の前に敵がいるいうのに、腕一本、指一本自由にならない。
「ぐ……ぐぎ……!」
一歩、また一歩とゆっくりブルー将軍は彼に近づく。
「ほほほほ……いかがかしら?私の超能力は。
恥をかかせていただいたお礼に殺してあげるわ……!」
そこからは完全に一方的だった。
動けないクリリンの体をボールのように蹴り上げ、そのまま殴りつける。
受け身も取れずに壁にぶつかり、ずるずると岩肌をこすって地面におちた。
ぐったりとした小さな体を見ても容赦することはない。
彼の頭より大きな岩を持ち上げ、しっかりと構える。
「さあ!あの世にご招待するわ……
いってらっしゃ――――いっ!!」
勢いよく振り下ろされようとしたその時。
バシュッ!
「むっ!?」
「ん!?」
「えっ!?」
二つの影が水辺から飛び上がった。
「孫くんっ!!フーイっ!!」
ブルマの声にこたえるように、二人は素早く着地する。
「そいつレッドリボン軍よ!私たち殺されるところだったの!やっつけて!」
「レッドリボンか……」
「なるほどね……」
「とうとうお前たちがやってきたのね……」
だらりと地面に倒れるクリリンをちらりとみて、悟空は鋭くブルー将軍を睨んだ。
「クリリンやっつけたのおめえかっ!」
「クリリン?ああこいつね。そうよ、これからとどめを刺すところなの」
「ご…悟空……」
「こんにゃろ――っ!!今度はオラがおめえをやっつけてやる!」
「ほっほっほ――っ!私の恐ろしさを知らないようね!いいわ教えてあげる!
今度のドラゴンボールは頂きよ!」
きっと再び青い瞳が妖しく輝く。
不可思議な光が目の前のいる悟空と、死角から襲おうとしたフーイを捉えた。
「ああっ!孫くん、フーイ、そいつの目を見ちゃだめ――っ!」
「えっ!?」
「いっ!?」
びくりと二人は肩を揺らしたきり、ピクリとも動けなくなる。
「ど、どうなっちまったんだ……!?」
「ここ、これは……!」
「ほっほっほっほっほ……!」
もう一度石を拾い上げ構えると、ブルー将軍はゆっくりと歩みを進めた。
悟空は必死に力んで体を動かそうとするが、ピクリともしない。
フーイの方は静かに目を閉じてしまって動こうとする気配すらない。
「いかがかしら?私の超能力は」
「ぐっ!ぐっ!」
「きえっ!」
勢いよく蹴り飛ばされ、軽々と悟空の体が宙に浮いた。
そのまま高く高く飛んで天井に勢いよく当たる。
「ぎゃふっ!」
「孫くんっ!」
「うぎぎぎ~~……」
「ほっほっほっ、さっきまでの威勢はどうしたの?」
ピクピクと痙攣する姿を満足げに眺めると、今度はフーイを向く。
「今度はお前の番よ!」
思いっきり拳を振りかぶったその顔に向かって、勢いよく砂がかかった。
「な、なに!?めがっ!!」
「悟空!!」
「ジャ~~~~ン、ケ~~~ン~~……」
フーイの呼びかけに答えて素早く起き上がり、拳を構える。
「グ―――ッ!!」
ズドンと鈍い音がしてブルー将軍の体が吹っ飛び、壁に当たって地面に落ちる。
目を回してひっくり返ったその姿を見て、クリリンとブルマは両手をあげて万歳をした。
「すごいじゃないのフーイ!超能力に勝つなんて!」
「片足だけだったけどね。じっちゃんに教わったんだ」
えへへ、と胸を張る姿に水を差すような轟音が響く。
「きゃあああ――っ!」
「こりゃもうだめだっ!逃げないと!」
「ブルマ!ドラゴンボールはどこっ!?」
「そこの水たまりの底よ!」
「よ――しっ!三人は先に逃げててくれ!」
言うが早いかどぽんと悟空は水の中へ飛び込んでしまう。
「あ……あのやろう……!」
「しょうがないわ!先に行って待ってましょ!」
その後、何とか悟空もドラゴンボールを手に潜水艇へ乗り込み、全員そろって脱出した。
途中燃料切れになり、水路の途中で立ち往生してしまうこともあったが、悟空の機転により、かめはめ波を使って海上へ。
筋斗雲にぶら下がるようにして、四人は空を飛ぶ。カメハウスに向かって……。
きらきら、きらきらと波間が光る。
その間から、金色の何かが、ざぱりと浮かび上がった。