もう一人のサイヤ人が桃白白の弟子になる話   作:麻寿津士

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其之十 決着!ブルー将軍

「大人しくそれをこっちに渡しな」

 

ドラゴンボールと大粒のダイヤを手に入れ、喜びを分かち合う亀仙人とブルマ達を襲ったのは、生き残っていたブルー将軍――ではなく、くしゃみをしてしまったランチだった。

片手を差し出しながらもサブマシンガンの銃口を、しっかりと周囲の人間に向けている。

明らかに慣れた手つきと体裁きに、こういう時真っ先に手を出すであろうフーイすらぽかんとしていた。

飛び立ってしまった彼女を見送って、どういうこと?と呟く。

 

「亀仙人のじっちゃんと一緒に暮らしてる人じゃなかった?」

「半分は仲間だけど、もう半分は強盗なんだ……」

「だからどういうことなのさ」

「くしゃみをするたびにいい性格と悪い性格が入れ替わる変人なんだ」

「なんて?」

 

クリリンの告げた答えで余計に混乱し、頭を抱えてうんうん唸る。

その隣では唐突に手に入れたダイヤモンドを唐突に失い、亀仙人がすっかり気を落としていた。

 

「オラ、次のドラゴンボールを探しに行くよ。フーイも来るんだろ?」

「私はもう家に帰るわ。飛行機貸してくれる?」

 

対して、ブルマと悟空はマイペースに自分の用事を口々に話す。

 

「儂はもう飛行機は持っとらんよ」

「え!?じゃあどうやって都まで帰るわけ!?」

「私がのんびり陸まで乗せていってあげますよ」

「じいちゃん、ドラゴンボール預かっててくれな!」

「よかろう」

 

思い思い、口々にわいわいがやがやおしゃべりしていると。

 

――しゅるるるるる――

 

「えっ!?」

「わっ!?」

「なっなんじゃ!?」

 

突然、どこからともなく人数分の縄が現れ、逃げる間もなくひとりでに巻き付いた。

あっというまに全身を縛り上げ、その場に縫い付けられたように身動きができなくなる。

何とか逃れようともがいてみようとするが、絶妙な縛り具合で上手く力を入れることができない。

成す術の無くなった悟空たちの前へ、高らかな笑い声と共に彼が姿を現した。

 

「ほっほっほ!また会ったわね、いかがかしら?私の超能力第2弾は」

「げげげっ!レッドリボンの……!」

「生きてたのかっ!」

 

悟空が飛び掛かろうとするものの、やはり体が動かせず、そのばでぴょこぴょこジャンプするだけに終わる。

気にするものも阻むものもないブルー将軍は、ブティックを物色するかのように、カメハウスの中をゆっくりと見て回った。

無造作に置かれた小さなリュックを見つけ、そのなかにドラゴンボールを発見すると、満足げに見せつける。

 

「たしかに、ドラゴンボールが三つあったわ。遠慮なく頂くわね」

「ち、ちくしょう!」

「あんた達、ドラゴンボールを集めて何を企んでるのよっ!」

「さあね、レッド総帥のお考えは私たちの知るところじゃないわ」

 

悟空の悪態も勝気なブルマの怒鳴り声も意に介さず、優雅に受け答えする。

そしてポケットのあたりから何か取り出し、愛想よく美しく微笑んだ。

 

「貴方達にはいろいろお世話になったし……ボールも頂いたしお礼にいいものあげるわね」

 

と、時計のようなそれの、文字盤とスイッチを見せつけるように掲げる。

 

「強力な時限爆弾ちゃんよ。5分後にセットしてあげたわ。

 5分間たっぷりと恐怖を味わいなさいな」

「い!?」

「……でも、その前に」

 

わざわざ一度、乗ってきたらしい飛行機の中へ戻っていく。

しばらくごそごそと何かを探っていたが、間もなくして戻ってきた。

立派なショットガンを両手に構えて。

 

一般的なものより、口径が一回り大きいように思える。

どんな屈強な男相手でも、頭も顔も、一瞬でミンチにして吹き飛ばしてしまえるであろう。

それを、立ったまま縛られて動けないフーイへ、容赦なく向けた。

眉間のあたりでピタリと狙いが定まる。

 

「どういうわけか、貴方は超能力をちょっとだけ無視できるようね。

 この縄が解けるとは思わないけど、もしも縄抜けなんてされたら、折角の爆弾ちゃんが台無しだもの

 貴方だけは、今ここで、しっかりと殺してあげる」

 

がちゃ、と持ち手の部分の何かを動かす。

銃弾が銃身に装填されたのだろう。

指先に少し力を籠めるだけで、引き金が動いて弾が出てしまう。

 

「やめろっ!!」

「よ、よせ!」

「そうよ、まだ小さな子供じゃない!」

「卑怯だぞ!」

「ひきょう……いい言葉だわ……」

 

罵倒の言葉にも、ブルー将軍はむしろ嬉しげだった。

うっとりと自分の頬に手を添え、ほうっとため息をつく。

 

「貴方も何か言ってごらんなさい?」

「……」

 

フーイは黙ったまま、少しも口を開かない。

だからと言って睨みつけているわけでもない。

しっかりと銃を見つめてはいたが、意識は別のところにあった。

 

ただの銃弾ならあまり自分に効くとは思わない。

けれど大口径のショットガンを、これほどの至近距離で喰らったらただでは済まないだろう。

ひょっとすると、あっさり死んでしまうかもしれない。

 

それは困る。とても困る。

 

黙って飛び出した武者修行の旅で、死んでしまうなんて物凄くかっこ悪い。

鶴仙人だってそれ見たことかと言いながら、きっと物凄く悲しんで泣いてしまう。

天津飯にだって馬鹿にされるだろう。

けれど彼は優しいから、きっと鶴仙人に負けないぐらい涙を流すに違いない。

 

何よりも、桃白白は、きっと、間違いなく、心底がっかりするだろう。

所詮は、この程度だったのかと。

 

それは嫌だ。我慢できない。

誰よりも、何よりも強く、生まれてから一度も勝てない相手。

きっと世界で一番強い、自慢の師匠。

いつの日か、どんな手を使ってでも、勝ってやるのだと、物心ついたころから決めている。

 

その足元にも及ばないうちに死ぬなんて辛すぎる。

 

だから、必死に思い出す。

修行の日々の間、頭で覚えたこと、体で覚えたこと。

言われた言葉、掴みかけた感覚。

 

気弾を撃てるなら、決して難しくない。

コツは、全身に気を巡らせること。

過不足なく、満遍なく。

意識を広く持ちながら集中すること。

 

あの日、気を緩めながら警戒した、あの知覚。

 

「怖くて何も言えないの?つまらないわね。まあいいわ」

 

いよいよ冷たい鉄の筒の、切っ先が近づく。

念入りに、ぴたりと額に当てられる。

 

「死ぬのよ!」

 

引き金がひかれかけたその瞬間、フーイの姿が消えた。

いや違う、勢いよく空に向かって()()()()()()()

 

「なにっ!?」

 

咄嗟に上を見上げ、銃を構えなおそうとしたブルー将軍は、しかし咄嗟に顔を覆った。

小さな体の姿を肉眼ではとらえきれない。

何故なら、彼女は照り付ける太陽を、背にしているから。

 

構えは取れないが、充分だ。

力を足先にこめ、全身を弾丸のように硬くする。

重力を味方につけ、眼下の男に狙いを定める。

高さと重さがそのまま破壊力に還元される、必殺の一撃を不意に食らい彼は――

 

――ぐっと喉を潰した様な短い悲鳴を上げて、なすすべなく気を失った。

 

 

 

 

 




日間総合ランキング34位、二次創作23位ありがとうございます。
令和でも桃白白は大人気ってことですねやったー!
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