もう一人のサイヤ人が桃白白の弟子になる話   作:麻寿津士

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其之十一 恐るべき男

「先にレッドリボン軍から片付けよう」

 

見よう見まねでレッドリボン軍の飛行機を運転しながら、酷く冷静にフーイは言った。

キッチリと縛り、目隠しまで施したブルー将軍はカメハウスに預けてある。

先ほど、街中くの公衆電話で通報してあるので、間もなく警察が来て回収してくれるだろう。

 

「賛成!」

「だよねー。悟空ならそう言ってくれると思った!」

「でも、オラ、あいつらの家知らねぇんだよな……フーイはしってんのか?」

「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました」

 

オートパイロットと書かれたボタンを押すと、ファイルボックスをごそごそ漁る。

そのなかから特に大きな地図を取り出して広げると、ある地点に赤い印がしてあった。

三角形を二つくっつけたリボンのような図形の中には、「R・R」と書かれている。

 

「ここが本拠地に間違いないよ。ナビのマップにも記録してあるし」

「よーし、それじゃあ筋斗雲で……」

「待った待った!」

 

外に飛び出そうとした首根っこをフーイが慌てて捕まえた。

 

「最初はさ、この飛行機でゆっくり近づこうよ」

「なんでだ?」

「相手を油断させるためさ」

 

得意げに話す彼女の口ぶりには、独特の雰囲気がある。

明らかに、人から聞きかじった知識を他人の前でひけらかす時のそれだった。

 

「向こうも多分ドラゴンボールのレーダーを持ってるから、私達の大体の位置は知ってるはず」

「じゃあ急いだ方がいいんじゃねぇか?」

「チッチッ。敵はさ、私達の移動速度を見て、大体これぐらいで到着するだろうって算段をつけるわけよ」

「うんうん」

「ってことは、その到着する時期に合わせて準備しようって考えるじゃん」

「そうだな」

「じゃあ、私達が相手の予定より先に到着したら?」

「……あいつらを不意打ちできる?」

「そういうこと!」

 

ニヤッと笑ってみせると操縦かんを握り直し、オートパイロットのスイッチを切る。

あたりに丁度良さそうな広場を見つけると、そこへ向かってゆっくりと機体を下降させた。

 

「そういうわけで、2,3日は途中でキャンプしながら目指そう。

 日が暮れそうだし、今日はこの辺りでご飯にしようよ」

「お前、頭いいなぁ!」

「でしょ~?」

 

ぴょいっと二人そろって飛行機から下りると、備え付けのサバイバルバックから、寝袋やら何やらを取り出す。

ホイポイカプセルの中にきちんとしまい、フーイがポケットへ大事に入れた。

 

「じゃ、どっちがおっきい晩御飯を捕まえられるか勝負だ!」

「お――!」

 

揃って小さなこぶしを突き上げる様子は可愛らしい。

が、周囲の動物は恐怖を感じ、身を震わせたとか、震わせなかったとか。

 

 

 ~・~・~・~

 

 

「よく来てくれたな」

 

近頃毎日のように入り浸っている作戦会議室ではなく、レッド総帥は本来の定位置である執務室のイスに収まっていた。

とある、特別な来客を自ら出迎えるために。

 

長い三つ編みに可愛らしいリボン。

薄いピンク色と紺色の中華服。

それに似合わない、太い眉毛と口ひげを蓄えた、人相の悪い顔。

細く鋭いがどこか締まりのない目、とがった鼻。

そして、胸のあたりには大きく丸に殺の文字。

背中にはストレートにKILL YOU!(お前を殺す!)と書かれている。

 

そう、彼こそは紛れもない。

 

「世界一の殺し屋、桃白白だじょー」

 

桃白白本人だった。

 

「あらかじめ言っておきますが、私の仕事料は法外ですぞ」

「仕事をきっちりやってくれさえすれば、いくらでも払う」

「一人始末するにつき、一億ゼニーいただきましょう」

「一億ゼニー……!!」

 

法外どころか、普通に生きていれば夢物語のような金額に、思わずブラック補佐は目を見開いた。

けれどレッド総帥は動揺することなく、寧ろ当然であるかのような態度で落ち着いている。

 

「しかし、貴方はとても運がいい。

 今年は私の『殺し屋さん20周年記念キャンペーン』で半額セールを実施中である。

 一人につき5千万ゼニーでサービスしましょう」

「…………ど……どうも……」

 

が、よどみなく告げられた、文章としては間違っていないものの、何かがちぐはぐな文言に、また違う様子で目を見開き、ぽかんと口を開けた。

どうにもゆるんだ独特の雰囲気に、ブラック補佐が疑わしそうに片眉をあげる。

 

「本当に貴方、桃白白さんでしょうね……」

「試してみられるかな?」

 

睨んだわけではない。凄んだわけでもない。

ただ、どこか楽し気に、ニヒルに笑ってみせただけ。

それでも、何故か確信を抱かせる。

 

頷けば殺される。それも、小枝を折るように、アリを踏むように。

 

「い、いや別に……」

 

ほんの少し汗をかいて、ブラック補佐が顔の前で両手を振る。

丁度その時、執務室の頑丈なドアが叩かれた。

努めて控えめにしようとしているが、明らかに乱暴で、どうも焦った様子が感じられる。

 

「どうした、はいれ」

「失礼します!レッド総帥!」

 

息を荒げながらも、兵士はきっちりと規則通りの敬礼を見せる。

涙ぐましいほどの生真面目さだったが、そんな彼をしても動揺は堪えきれない。

総帥の許可を得るよりも先に、怒鳴るのに近い大声で喚く。

 

「例の子供らしき反応が、急速に近づいています!」

「なんだと!?」

「これまでの速度であれば、2日後に到着予定でしたが、今のままではっ」

「まさか明日にでも」

「い、いえっ!さ、さ、さっ……」

「3時間後か!?」

「30分後ですッ!!」

「「な、なにぃっ!?」」

 

声をそろえて驚く二人を、どこか冷めた目で桃白白は眺めている。

 

「どうやら時間があまりないようですな。標的を教えてもらいましょうか」

「こ、この二人です」

 

慌てて胸ポケットからブラック補佐が二枚の写真を取り出す。

 

一枚は特徴的な髪形に、山吹色の胴着をまとった尻尾の生えた少年。

もう一枚は灰色の瞳で鋭く睨む、真緑と黄色の胴着を着た少女。

 

その二枚をよくよく見つめ、特に二枚目を念入りに観察すると、桃白白は。

 

「ふ…く……くはっ!わはははは!」

 

笑った。

先ほどのニヒルな笑みよりもずっと深く、面白そうに、楽しそうに、心の底から。

決して明るいとは言えない。人相のせいか性格のせいか。

本人としては他意がないのに、恐ろしく邪悪に見える。

 

「わ、笑い事じゃないんですよ!

 ただの子供だと思ったら大間違いです、並の強さじゃありません!」

「知っている」

 

と、っとささくれてごわついた指先が、彼に触れた。

そのままスポンジか何かに突っ込んだように、指が体の中へ沈む。

一瞬、たった一瞬で、ブラック補佐は物言わぬ死体となって崩れ落ちる。

真っ赤な毛の長い上等な絨毯へ、真っ赤な血が水たまりのように広がる。

 

「な、なにをっ、どうしたんだ桃白白!」

「どうしたもこうしたも、まさかこの私へ、弟子を殺せなどという馬鹿馬鹿しい依頼をする者が現れるとはな」

「なっ!?」

 

咄嗟に構えた兵士の銃は、一瞬で手元から消える。

びゅっと舌を長く突き出してキツツキのように頭を振ると、もう一つ死体が増えた。

 

「そ、そんなばかな……わ、わかったぞ!貴様もドラゴンボールを狙っているんだな!だからあのガキどもを」

「ドラゴンボール?」

「しらばっくれるな!そうか、お前の手下ならあの強さもッ……!」

「何を言っているか分からんが、心配するな」

 

ごと、と背の低い男の頭が机の上へ落下する。

胴体のほうは、椅子に座ったままいつまでも殺し屋の方を指さしていた。

 

「出血大サービスだ、貴様の分の代金はタダにしておいてやる」

 

 

 

 

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